さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

「日本一のバンタム」必然の王座復帰 栗原慶太、新鋭中嶋をKO

2021-10-20 12:12:31 | 関東ボクシング



ということで昨日は後楽園ホールにて観戦してまいりました。


メインカードとされた試合についてはとりあえずおいて、事実上メインに昇格した試合から。
ここ数年、あれやこれやと「呪われた」日本バンタム級タイトル戦線を尻目に、事実上「日本バンタム級チャンピオン」の仕事をしてきた、と言えるボクサー、栗原慶太が、井上拓真に敗れて失ったOPBFバンタム級タイトルを奪回しました。


初回からサウスポー中嶋一輝の左ストレートは鋭く飛び、右フックも鋭く返りましたが、栗原は冷静に相手を見ていました。
何とかガードし、危ういのもありましたがダックもする。ヒットもありましたが、好打は許さず、というところ。

2回、中嶋は右での「索敵」もそこそこに、左を飛ばしてくる。しかし栗原、この辺から僅かに、体の軸を左へずらしてから打ち始める。
中嶋の左がカウンター気味に出るが、栗原の左フックが中嶋の肩越しに入る。中嶋の足元が乱れ、栗原ひとしきり連打。
しかしまた離れ、両者鋭い強打を狙い合う。ボディ攻撃応酬。







ここまでの攻防を見る限り、両者の、ボクサーとしての作り、その出来不出来が、はっきり見えたような気がしていました。
強打の手応えを求め、それなくば相手を攻略する道を見つけられず、探りも図りもなく自分のベストパンチを狙うだけの中嶋に対し、栗原は正面やや左側からの「攻撃ルート」を見つけ、そこから打ち、同時に、中嶋の鋭い左ストレートを好打されずに済む、微妙な位置取りを探りつつありました。

強打対決を謳われたとおり、共に一打で試合を決める力を持つ者同士ですが、パンチングパワーや一瞬のスピード以外の部分、それは試合の組み立てであり、冷静に相手を見る目であり、総じて言えばスキル、最近ではボクシングIQ、なんて言い方もあるようですが、その辺りでは、栗原が一段上だった、と思います。


3回、早々でしたかね、栗原が左を連続して出し、右が強打出来る位置へ中嶋を追い立てる「セットアップ」をした後、右一発。
インサイドを狙うのかと思っていたら、中嶋の左ガードを巻く右ショートフックに見えました。
これがまともに入って中嶋、ダウン。
ダメージは甚大で、続行しましたが、二度目のダウンで即、ストップ。
中嶋はガード出来ずに右をもらっていました。妥当な裁定でした。







試合後、栗原は歓喜のコメントを色々語っていました。
井上拓真戦で、初回に負傷した挙げ句に敗れたときの姿を思い出せば、ひとつひとつの言葉が、すんなりとこちらの胸に落ちてきました。
もちろん来月、ひとまず?Sバンタムに転じた井上拓真と再戦して雪辱せねば、完全にとはいかないのでしょうが、それでも胸のつかえが取れたような気持ちだったことでしょう。
その負傷が古傷になってはいないか、ということも心配でしたが、試合間隔が空いたのも良かったのでしょうか。
まあ、序盤で試合を終わらせたのですから、問題にはなりませんでしたが。


短い試合でしたが、長年のキャリアで培ってきた冷静で的確な試合運び、対サウスポー攻略としても見事、そして強打健在。
栗原慶太、見事な勝利でした。


対する中嶋一輝は、その力だけなら栗原と伍するものがあると思いますが、上記したとおり、それ以外のところで後れを取った、ということでしょう。
形式上、今回の試合では王者の立場でしたが、実際は表題にも書いたとおり、強打の新鋭、というのが現状で、今回は堤聖也戦に続く試練、それもより厳しいもの、でした。
この経験を糧に、と言いたいところですが、堤戦でも色々省みるべきところはあったはずで、あの試合から時を経ても、自分の良さ「だけ」を振りかざして闘おう、という風が変わっていないのは、ちょっと残念に思いました。
まあ、そこのところを変えるのは簡単ではない、極めて難事なのだろう、とわかってもいるのですが...。




※写真提供は「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。いつもありがとうございます。




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4 コメント

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Unknown (モノクマ)
2021-10-20 16:19:41
(栗原は井上にも挑戦したいといっていましたが)個人的にはおそらく井上統一直後に世界を狙う選手であり、その為のサバイバルマッチとして今回の試合を見ていました

やはり栗原選手の強打と精度は魅力ですね。相手の相性や実力によっては今のままでも世界で勝てる可能性を感じますが、今後、テクニシャンや頑丈でパワーのある相手への対応が見られれば更に期待が高まります

今の立場は違えど、奇しくも井上栗原中嶋は生まれ年は一緒で皆魅力的な強打の持ち主ですから、3人の今後の飛躍を期待します
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2021-10-20 18:23:54
>モノクマさん

栗原については、井上以外のタイトルホルダーと当たって、少なくとも変な試合はしない、伍して闘えると思いますが、そこまでにはもうひとつ、何か実績が欲しいところではあります。国内で赤穂亮や井上拓真に敗れていますが、どちらかと再戦出来れば良いなあ、と。そこで成長した部分を見せてほしいですね。中嶋は心情的には応援したいところがあるんですが、今回の試合ぶりからは、試合数を重ねても根本的に変えられないもの(技術や精神面、さらにいうなら「情緒」面で)が見え、それが足枷になっている、と見えてしまって、今後に明るい予見は持ち得ないです。現時点では、ですが。
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Unknown (アラフォーファン)
2021-10-21 10:23:16
中嶋くんについては以前、神の左 山中さんの名を冠した試合で部の悪いドロー(実質負け?)と思われる試合をして、それから二年近くだと思いますが、あまり成長が見えなかったですよね。もちろんあの時より右フック、ボディ打ちは多少追加されたかもしれないですが、基本相手を見て、考えて試合組み立てる事が苦手なのか、そのあたり頭打ち感ありますよね。井上兄弟という見本あり、ただそれが活かされていないのが残念です。
さて、栗原くんについては見事でした。たくまくんに負けたのはバッティングの影響が主要因と見ており、もう一度チャンスあって良いですよね。ジムの力からすると難しいかもですが、世界ランカー対決、どこかで見たいです。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2021-10-23 14:56:01
>アラフォーファンさん

中嶋、年齢は栗原と同じですが、ボクサーとしてのキャリアを言えば、快勝の中に苦戦もあり、というところで、伸びる時期、変われる時期はあったはずだったんですが、ひょっとしたらそれを過ぎて、固まってしまったのかもしれませんね。
栗原、今回は見事でした。挑戦者でしたが、実質は「新鋭撃退」の図、でしたね。
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