Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

銀の夜

2014-12-07 22:43:19 | 日々の雑感・近況
話は前後しますが、前述の「大いなる沈黙へ~グランド・シャルトルーズ修道院」を観る前夜、マリオ・ジャコメッリの写真集を眺めました。
特に見たかったのは
”Io non ho mani che mi accarezzino il volto(1961-63)/私には自分の顔を愛撫する手がない(1961-63)”
と題するセニガリアのヴェスコヴィレ神学校の若い神学生を撮った一連の写真でした。
不思議なリズムがあり、どこかユーモアを感じさせるこのシリーズの中の一枚が須賀敦子さんの『コルシア書店の仲間たち』の「銀の夜」に登場します。

本の中では「わたしには手がない やさしく顔を愛撫してくれるような・・・」と訳されて紹介されている”Io non ho mani che mi accarezzino il volto”というジャコメッリがその作品の題として使っているこの一節は、彼女の作品にしばしば登場する神父ダヴィデ・マリア・トゥロルドの処女詩集の冒頭であり、彼女が見たというモノクロの写真の絵葉書について「笑ってはいるけれど、ちょっとこわそうに足もとを見ているこちら向きの人物は、まぎれもなくわかいころのダヴィデで横を向いた眼鏡の男は彼の親友のカミッロ・デ・ピアツにちがいない」と続いて述べられています。

雪の舞うその向うにスケートをする若い神学生たち・・・
この夜見た写真が脳裏に残っていたところに「大いなる沈黙へ~グランド・シャルトルーズ修道院」の冒頭が雪がざんざん舞う情景だったのでその偶然に驚かされました。
コメント
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