非国民通信

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2010-10-16 23:00:02 | ニュース

若い女性の収入、男性抜く 介護分野などで賃金上向き(日経新聞)

 単身世帯を対象にした総務省の2009年の調査によると、30歳未満の女性の可処分所得は月21万8100円と男性を2600円上回り、初めて逆転した。男性比率の高い製造業で雇用や賃金に調整圧力がかかる一方、女性が多く働く医療・介護などの分野は就業機会も給与水準も上向きという産業構造の変化が背景にある。諸外国に比べ大きいとされてきた日本の男女の賃金格差も転換点を迎えつつある。

 総務省がまとめた09年の全国消費実態調査によると、勤労者世帯の収入から税金などを支払った後の手取り収入である可処分所得は、30歳未満の単身世帯の女性が21万8156円となった。この調査は5年ごとに実施しており、前回の04年に比べて11.4%増加した。同じ単身世帯の若年男性は21万5515円で、04年と比べ7.0%減少。調査を開始した1969年以降、初めて男女の可処分所得が逆転した。

 背景にあるのは産業構造の変化だ。円高や中国をはじめとする新興国の経済成長に伴い、製造業では生産拠点などの海外移転が加速。就業者数は09年までの5年間で77万人減少した。

 仕事を持つ男性の20%超は製造業で働いており、女性の10%と比べて比率が高い。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「ボーナスの削減や雇用形態の非正規化の影響を製造業で働く男性が大きく受けた」と分析する。男性の雇用者に占める非正規労働者の比率は07年時点で3割を超えた。女性は4割以上を占めるが、増加率は男性の方が大きくなっている。

 リーマン・ショックで製造業が打撃を受ける一方、女性の比率が高い医療・介護などは高齢化の進展で労働力需要が高まり、医療・福祉分野は09年までの5年間で就業者数が90万人増加した。完全失業率もこのところ女性が男性を下回っている。

 税金などを支払う前の名目給与で見ても、民間企業を対象とした国税庁の調査で20代後半の男女の年間の平均給与の差は09年に66万円となり、04年と比べて17万円縮まった。厚生労働省の調べでは、大卒の初任給の男女差もこの5年間で縮小している。

 女性は30歳以上になると結婚や出産などに伴って仕事を辞めて収入が大きく落ち込むケースも多い。収入水準が高まることで女性が働き続ける意欲も高まれば、少子高齢化で減少する労働力人口を補い、世帯全体の消費を下支えする可能性もある。慶応大の樋口美雄教授は「結婚後も女性が仕事を続けられるような環境整備を企業や政府は進める必要がある」と指摘している。

 ちょっと面白いデータが出てきました。30歳未満の手取り収入の平均は、女性の方が男性より高くなったそうです。引用元である日経新聞の指摘するところでは性別による業種の偏りの違いがまず挙げられており、男性に多い製造業で賃下げ傾向が顕著であるのに対し、女性が多い医療/介護系では給与水準の上昇が見られるとか。文末にもあるように30歳以上になると女性の収入が落ち込むケースもあり、生涯賃金で見ると男性の方が多い状態には変わりがないものと思われますが、とりあえず性別による賃金格差は縮まっているようです。この縮まるペースを遅いと見るか早いと見るかは人それぞれでしょうけれど。

 ただこのデータ、「単身世帯を対象」とあります。つまり単身ではない世帯はこの限りではない、親や配偶者と同居している世帯は対象外なのでしょうか。ある程度の目安にはなると思われますが、全体を把握したものではなさそうです。何らかの理由、たとえば収入が少ないなどの理由で親元に止まっていたり、旦那の稼ぎがメインで自分の稼ぎは控除の枠内に止めている人などは、統計の対象に含まれていないものと思われます。その辺は多少、割り引いて考える必要がありそうですね。

 とはいえ、30歳未満単身世帯の可処分所得=手取り収入は増加しています。2004年から2009年にかけて男性の平均は下がりましたが、それでも1989年から見れば15%程上昇しているわけです(同時期の名目GDPは20%弱上昇)。女性に関しては言わずもがな。では同時期の全世帯の給与水準はどのように変遷したでしょうか。こちらは総務省ではなく国税庁の発表によるものですが、男女並びに全世帯を合わせた2009年の平均給与は、丁度1989年の水準にまで下落したことが伝えられています(参考)。若年層の所得は若干ではありますが増えている一方で、全体の給与水準は1989年当時と同水準です。若年層の所得が増えた一方、その分だけ中高年の給与水準は減少しているものと推測されます。とかく世代間対立に落とし込みたがる経済誌風に言えば、若年層の雇用のために中高年が犠牲にされている――みたいなことになってしまいそうです。

 ちなみに「収入水準が高まることで女性が働き続ける意欲も高まれば、少子高齢化で減少する労働力人口を補い」ともありますが、この辺はどうなんでしょうか。「妻に働いて欲しい」と思っている夫は増えていると聞く一方、当の女性側は専業主婦志向の方が強まっているという調査結果もあります(参考)。そもそも「減少する労働力人口」などと言いつつ、求人需要は著しく低い水準にある、労働力人口が減少したとしても職にあぶれる人は無尽蔵にいるわけです。こういう状況で辺に就労意欲など高められようものなら、今まで以上に就職したくても就職できない人が増えてしまいます。「完全失業率もこのところ女性が男性を下回っている」とも伝えられていますが、それは「就職しない」という選択肢を持っている人が女性の方に多いからではないでしょうか。もし女性が男性並みに就職しようとしたら、その時は男性以上の超買い手市場になる可能性がある、男性よりも完全失業率が高く、安く買い叩かれやすい環境ができあがることが懸念されます(シングルマザーの置かれた状況はまさに典型的です)。男女格差の是正は課題であるにせよ、今必要なのは「仕事を続けられるような環境整備」ではなく、男女問わず「仕事を続けなくても済むような環境整備」なのかも知れません。なにしろ労働力は余っている、そして労働力が大量に余っている限り、この異常な買い手市場は終わらない、雇用側の絶対的な優位は変わらない、労働者の地位は男女問わず低下するばかりですから。



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3 コメント

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思い切って (nakayosi)
2010-10-17 11:15:18
賃金は前払いで、結婚し妊娠したら1年休暇(^-^/
ぐらいのこと考えても良さそうです。

競争ではなく協力・共同を教えたら、「賃金は月30万円で毎年海外旅行に行かせるなら大学卒業して戻ってきます」なんて・・・高校生に言われました。
魂胆ではなく信念を教えられてます。
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Unknown (HANAKO)
2010-10-17 15:06:46
男女を問わず就業できない人間の問題の方が現在は深刻かつ普遍的なのかもしれません。そういう状況下では働かずにすむ環境を整備した方が有効な事が多いのかもしれません。
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Unknown (非国民通信管理人)
2010-10-17 19:06:17
>nakayosiさん

 労働の対価としては、日本の経済水準からしてもその程度は欲しいですよね。しかるに昨今の労働環境や給与水準では、むしろ働くことによって被る不利益の方が大きいくらいですし。

>HANAKOさん

 労働力不足だというのならいざ知らず、有効求人倍率が0.5程度の時代ですからね。こういう社会で労働参加を促進しようとすると、競争を煽ることにしかなりませんから。
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