「処女」とウソ結婚無効に 仏の地裁で判決 政界から批判(西日本新聞)
フランス北部リールの大審裁判所(日本の地裁民事部)が今年4月、イスラム教徒同士の新婚夫婦について、婚前に新婦が新郎に対し自分が処女であるとうそをついたことを理由に、婚姻無効とする判決を出していたことが分かり、政界や人権団体から猛烈な批判を浴びている。
裁判所に婚姻無効を申し立てていたのは技師の30代男性。訴えによると2006年7月の結婚前、婚約者の女性は貞節を断言していたが、新婚初夜の明け方にうそをついていたことを告白した。「侮辱された」と怒った新郎の父親が女性を実家に送り返し、男性も別れることを決断した。
判決は、この男性にとって女性の処女性が結婚の決定的条件だったとして、女性のうそは民法で婚姻無効を求める要件「配偶者としての重要な資質に問題がある場合」にあたると判断した。男性側代理人は「判決は極めて論理的」としている。
これに対し、女性の人権担当閣外相は声明を発表し、「判決にがくぜんとした。民法の規定が解釈によって女性の地位を後退させた」と厳しく批判。与野党双方からも「判決は宗教の古くさい原理主義を支持した」(国民運動連合議員)、「女性が男性同様、自分で性行動や生き方を決める権利を踏みにじった」(社会党議員)と非難の声が上がっている。
ちょっと取り上げるのが遅れましたが、こんなニュースもありました。言うまでもなく、私はこの判決にはあらゆる点で反対です。色々と論拠がないでもありませんが、なんか疲れたので書きません。代わりにこちらのリンク先でも読んでください。まぁそれ以前に、男と女の関係なんて化かしあいが基本だろ?と。大人なんですから。
1週間くらい前に「エロゲーは保守なんだ!」と主張する記事を書いたわけです。ポルノを通じて多様性と寛容の心を身につけた私からすれば嘆かわしい限りなのですが、数多あるエロメディアの中でもエロゲーは性的な面で最も保守的なジャンルなのです。イスラム教徒にもリベラルな人がいるように、エロゲーの中にも守旧派の性観念に抗う開放的な作品もあります。しかし売上ランキングの上から30位くらいまでを占めるのは、徹頭徹尾保守的な性観念の貫かれた代物なのです。(以下、留保なく「エロゲー」と書いた場合は売上上位を占める主流派のエロゲーを指します)
女性の性が主人公たる一人の男性の管理下に置かれていること、それが女性自身にとっても自主的な望ましいものとして描かれていること、これが売れるエロゲーの必須条件です。多数派から相手にされないようなマイナーメーカーならいざ知らず、注目度の高い(業界内での)大手メーカーがこの原則から外れようものなら、それこそ非難囂々です。ポルノ規制派に「嫌いなら見なければいいだろ」と言っても通じないように、エロゲー購買層に「嫌なら買わなきゃいいだろ」と言っても通用しません。女性の性が管理下に置かれていることを好むだけではなく、そうではない代物が流通することに嫌悪感を持つ、そういう人も多いのです。
隣で寝ている女性が処女ではないとすると、その女性の性が男性である自分の管理下に置かれていないことを意味する、少なくとも管理下に置かれていない時期があったことを意味するわけです。私だったら「まぁ、そういうものだろう」ぐらいにしか思わないわけですが、保守的な性道徳の信奉者にとっては違います。女性の性が管理下に置かれていないことなど絶対に許せませんし、その性が自分の完全な管理下に置かれていない女性など無価値と考えます。そこであるムスリムは離婚を訴え、あるエロゲー購買者はメーカーに脅迫状を送りつけました、と。
冗談みたいな話と思われるかも知れませんが、あるエロゲーのヒロインが処女ではないという理由でメーカーに脅迫状を送りつけた人は実在します。彼らにとってそれがゲームの中の設定であっても、女性の性が自分の管理下に置かれていないことは、それだけ許容しがたいことなのです。直接行動の文化が死に絶えた日本ですから、実際に脅迫状を送りつけるなどの行動を起こす人は少ないわけですが、ゲームに登場するヒロインが処女ではなかっただけで罵詈雑言の嵐になるのがエロゲー業界でもあります。日本の主たるエロゲー購買層はイスラム文化圏、とりわけ名誉の殺人等の因習が残る文化圏の人と、その価値観を共有するところが多いのではないでしょうか。
まぁこの辺は、エロゲー業界だけではなくヲタク業界全般にも少なからず通じるところがあるかも知れません。日本のサブカルは今や産業ロックならぬ産業カルチャーであり、カウンターカルチャーとしての色合いが表舞台に出ることなど最早あり得ない世界です。傍流の文化=サブカルを好む比較的若い層が政府与党を支持する体制側であり、かつての支配層の文化、権威ある文化を好む中流層の方が相対的に野党寄り、反体制に近いのが日本です。その日本のネット世論では、冒頭に引用したニュースを目にして、判決を支持し、女性側を非難する声が多数を占めてもいます。比較的若い世代に根付いているのがどういう価値観、どういう性道徳か、それを露わにしているような気もしませんか?
ちなみにエロゲーの原画家が成人向け漫画も書いていることは珍しくありませんが、基本的に漫画の性表現の方がより前衛的、開放的、変態的であり、リベラルです。しかるにリベラルなエロ漫画を書いていた人も、エロゲーの原画を担当するとなると途端に保守的になるケースが多いです。エロゲーが原作となって成人向けアニメが作られることもありますが、概ねアダルトアニメの性表現の方が前衛的であり開放的であり変態的です。どうして隣接する他のエロジャンルに比して(作り手が同じであってさえ!)エロゲーが際だって保守的なのか、ポルノ通にとって興味深いところでもあります。
エロゲー・若い方が保守で、中間層がリベラルですかね。確かに頷けるしいつも絶妙な分析に感心しながら読ましていただきました。実に日本のいびつで異様な深刻な事態の一端を現しているのでしょうね。
立場によってその原因をどこに捉えるのか、多様な理解の仕方が許される問題でしょうが、ひとつには、敗戦後独立的でありながら非占領下の不自由な国という隠された真実が、最近は米国の独善的政府の出現で露わになってしまい、日本の国民の一部にいらいら感が過激になっていることも無関係ではないだろうなどと考えておりました。
その無粋な宗教の信者の婿さんがどういう条件で嫁さんの告白を聴くことが出来たかにも興味を深くした次第です。嫁さんが楽しくなかったので早く別なのにしたかったなんてことはないでしょうかね?
では。
オタクとは世間では下らないとされているものでも愛することのできる精神を持った人、だと私は思っています。マニアックな物に価値を見出すことのできる人、とも思っています。ですから、本来オタクはそうでない人よりも「みんな違っていいんだ」「あらゆる人の立場を尊重しよう」と思うことができるはずの人だと思うのですが…それは現状夢物語なのでしょうか…?
処女でないことが離婚の正当な理由になると信じられてしまうような社会では、往々にして男性の言葉だけが真実として扱われてしまいそうですからねぇ。事実がどうあれ、気に入らなかったから「処女ではなかった」という理由を持ち出したのかも知れません。真偽の程は不明ですが、まぁこんな人と結婚するよりも、早く別れて別の人と結婚した方が女性にとってもいいことだと考えましょうか……
>ノエルザブレイヴさん
かつてはマイノリティだったオタク文化が、良くも悪くも市民権を得ていることもあるのかも知れませんね。カウンターカルチャーだったロックが市民権を得た結果が産業ロックとなり、権力に抗う心を失ったように、日本のオタク文化もそういう時期に入っている気がします。マイノリティとしてのオタクは、今や周辺領域に追いやられてしまったのではないかとすら思うわけです。
確かに世間の無理解や偏見はありますね。例の秋葉原の通り魔事件でも強引な関連づけが行われそうです。不当な非難を受けることもあるわけですが、逆に見るとこの不当な非難を受けることが、被害妄想(日本が外国に脅かされている、モラルのない連中が増えた、云々)に酔いしれる考え方に昨今では通じているのかも知れません。
あと、評論家や政治家にありがちな、大事件を「おかず」にして自分がいかに「正しい」かをアピールする態度はいただけませんね。だから大事件の報道に接すると怒るより先に気が滅入ります。