地盤沈下の労働市場で始まった ワーキングプアの「静かなる逆襲」(週刊ダイヤモンド)
「働かざる者食うべからず」と言われたのも昔の話。今や働く者でも満足に食えない時代になった。そんな世相を象徴するのが「ワーキングプア問題」だ。ワーキングプアというキーワードがメディアを賑わすようになって久しいが、労働環境は一向に改善される気配を見せず、むしろ景気の低迷と共にますます深刻化していく懸念が強い。そんななか、企業や行政に頼らずに、“あの手この手”を講じて立ちあがる労働者が増え始めたのを、ご存知だろうか?
さて、その馬鹿っぷりを前にしては産経新聞すら裸足で逃げ出す週刊ダイヤモンドの記事を取り上げます(産経新聞ならテレビ欄や天気予報欄など信頼できる記事も載っているのに対して、週刊ダイヤモンドに信頼できる記事が載ったことなど……)。まず「働かざる者食うべからず」と言われたのも昔の話と記事は始まっていますが、むしろ昨今の方が強く言われるようになった気がしませんか? まぁ私はそれほど昔の人ではありませんので、昔の方が寛容だったのかどうか実体験を以て知るところではありませんけれど、少なくとも「働かざる者食うべからず」とは今も盛んに言い立てられていることであり、決して克服済の過去ではないと思います。
「ワーキングプア」と呼ばれる立場にある人を探すことが、これほど簡単だとは思わなかった――。
(中略)
たとえば、国税庁の調査による「平成20年・給与階級別の給与所得者数・給与額」をひも解けば、全国の労働者のなかで、年収200万円以下の個人が全体の約31%を占めていることがわかる。
数年前、格差社会を象徴した「年収300万円時代」という言葉が流行したが、現状はそれどころではない。昨今の大不況に追い討ちをかけられ、低収入に喘ぐワーキングプアが続出する段階に移っている。
この辺の現状認識は間違ってはいません。何しろ週刊ダイヤモンドですから、「どこの国の話だよ」と言いたくなるような日本とはかけ離れた「設定」に基づいて社会/経済を語る論者が当たり前のように居並んでいるわけです。そのダイヤモンド社の水準からすれば今回の記事はかなりマシな方と言えるでしょう。しかるに見出しにはワーキングプアの「静かなる逆襲」とあります。ふむ、追い詰められたワーキングプアがいかに「逆襲」を始めたのか、見てみようではありませんか。
|発想を転換して人生をリセット? 自分の身は自分で守る時代が到来|
正社員としての被雇用者が減少傾向にあるのは憂慮すべき現状だが、一方でこれを逆手に取る発想もある。これまでの生活をリセットし、物価が高い地域から低い地域へと、生活圏そのものを変えてしまう方法だ。
故郷の兵庫県から2年前に沖縄県へ移住したSさん(46歳・男性)は、「正社員で職を得ようと考えなければ、中高年がやれるアルバイトは結構あります」と語る。
(中略)
もちろん、将来に対する不安はつきまとうが、物価の高い本土で派遣社員やアルバイトをするのと比べれば、低賃金でも現時点での生活水準は安定しているという。
これも週刊ダイヤモンドの言うワーキングプアの「静かなる逆襲」なのだそうです。いったい、誰に逆襲しているのでしょうか? そもそも日本国内でそんなに物価に差があるか疑わしい、家賃などはともかく電化製品や家財道具、通信料金や書籍代が安くなるはずもなく、食料品にしたって安売り店が軒を連ねる都会の方が実は安いのではないかと推測されるわけです。まぁ仮に地方に移住して生活費が安くなり生活が安定したのが事実だとしても、それで「逆襲」を受けた人など誰もいないでしょう。おかげで人件費が浮いたとほくそ笑む人はいるかも知れませんけれど……
都会と地方で何よりも相場が違うのは、やはり人件費ではないでしょうか。都市部の方がビジネスには好都合ですが都会では人を安く買いたたきにくい、一方で顧客と直接接する必要がない部門は地方においても問題ないので地方に設置される傾向があります。例えば本社は東京なのにコールセンターは沖縄に設置したりするケース等ですね。本来なら田舎の住人にも都会の住人と同等の給料を要求する権利があるはずですが、なんとなく田舎は給料が安くて当たり前、物価だって安いのだから~と流されがちな部分もあるのかも知れません。ここに挙げられた「Sさん」のように、わざわざ都会から田舎に移って低賃金の仕事を請け負ってくれる人は、結局のところ低賃金の労働力を欲しがっている雇用主の需要を満たしているだけで、「逆襲」を果たしているどころか余計に貢いでいるだけにも見えます。
最も「逆襲」という言葉が相応しい行動を挙げるとしたら、怠業でしょうかね。低賃金労働を拒否する、賃金に見合った範囲でしか労働力を提供しない、適正な賃金が支払われない限りは働かない、一方的に搾り取られてきた労働者が雇用側に一太刀浴びせてこその「逆襲」でしょう。そういう意味での「逆襲」が始まった、使い捨てにされるばかりの労働者が反旗を翻すようになったのであれば、ちょっとした希望とも言えます。特にツッコミどころもなかったので省略しましたが引用元の記事には「キャバクラユニオン」等も取り上げられており、これならば「逆襲」に繋がる動きではあります。しかるに、反旗を翻すどころかわざわざ地方に移ってまで、より低賃金の労働を受け入れるようになった人もいる、「逆襲」とは反対方向へ突き進む動きもまた活発のようです。
地元の仕事を奪う事になります。
沖縄迄流れる勇気があるなら、もっと戦えたのに
中年でも、まともな賃金をよこせと、
ロスジェネだかさかんに運動やら30代やら若者の特権じゃないはず!
我々四十代後半だって反撃しないと!
ま、プレカリアートとか
ロスジェネレーションだかの反貧困デモだってなんか完全な反逆にはなっていない?勝手な感想ですが。
もしも「豊かさなんて諦めた。ひとりで食えれば良し。」ということであれば、...。
豊かさを諦める人が増えるということは、「みんなで豊かに暮らせる社会」を理想とする私からすれば、世の中への「逆襲」に映ります。将来への不安を抱えながら「豊かな社会づくりになんて、与しない。」なんて人が増えれば、社会全体がさらに暗くなってしまいます。・・・そして、「それみたことか。俺を捨てた世間へのせめてもの逆襲だ。」
すみません。暗い想像をしてしまいました。ダイヤモンド誌とは違う「消極的逆襲」を考えさせられました。
>地元の仕事を奪う事になります
あ~、記事を書いている時はそこまで思い至りませんでしたが、そうなっている可能性もあるんですよね。本当、沖縄まで行く行動力があるなら地元で頑張ってくれた方がと思うのですが。ちなみに「ロスジェネ」というのも、ちょっと問題があるのかも知れませんね。今や特定の世代だけの問題ではないわけですから。
>moonさん
本人が満足できていれば……と言えないこともないですが、でもやっぱり低賃金労働で満足する人ばっかりですと、豊かさを追い求める人が駆逐されてしまいそうですしね。「みんなで豊かに暮らせる社会」であるべきだと私も思うのですが、「Sさん」のようにいち早く豊かさを諦めてしまう人が相次ぐと、豊かさを求める声は小さくなってゆくばかりですから。
地方公務員の娘が殺害された事件のYahooの記事のコメント欄の点数上位に
「公務員は私たちを苦しめたから天罰だ!!」
「我々の生活が苦しいのは公務員の人件費のおかげ多くの税金を搾取されているから!!」
こんな書き込みで溢れてました。
んなアホな。こんなバカだから生活がくるs・・いや、失礼。
んーまぁヤフーのコメント欄レベルですので阿呆なコメントで溢れているのはいつもと変わらない光景ですが「生活が苦しい=公務員の人件費のせい」
この発想はありませんでした。
ヤフーのコメント欄とリアル世論はまだ大きな差があると思いますが、ヤフーの利用者が特別にバカだとは思いませんので一般世論の公務員叩きも似たようなこと思ってるのでしょうか。
そもそもなぜ逆襲の矛先が大した権力も待遇もない地方公務員なのか疑問だったのですが、どうやら大衆は未だに地方公務員を高給安定だと良くも悪くも盲信している人が多いようで(ーー゛)
労働環境に不満のある労働者はいい加減露骨な公務員叩きにハマってないで早く雇用側と戦ってほしいものですね。
「やりがい」「厳しい民間競争」なんて勘違いしてるのをみると惨めに見えますから・・
ともかく非国民さんがつっこまれている内容は全然、「逆襲」に見えません。これでは雇用状況の悪い世の中に順応しているだけなのでは?少なくとも雇用条件を良くしようと努めなければ、「逆襲」とは言えないのではないでしょうか。
まぁ相変わらずと言いますか、経営層には怒りの矛先が向かないんですよね。一方で公務員や官僚を悪玉に見立てる論調は強まるばかり。やっぱり豊かさに対する執着がないのか、自分は豊かでないのは許容できるが、豊かに暮らしている(実態はさておき)奴が許せない、みたいな人が多いのかも知れません。
>GXさん
実際はどうなんでしょうね、チェーン店などですと商品価格は全国一律なのに、アルバイトの時給は都市部で高く地方で低いなどの違いがありますので、やはり確実に安いのは人件費くらいではないかと。そこで逆襲と称して労働力を安売りしているのでは、まぁ何かが好転するとは思えませんよね。
都会ではできなかったり競争相手が多すぎるから地方に活路を見いだすなら話は理解できます。
「具体的な職業」と言われれば、医者や士業、農林水産業と答えます。専門性や相当な準備と覚悟が必要な職業に就いて未来を切り開かないと「逆襲」と言えないでしょう。
今までの投稿で辛辣だと思いますが、そういうスタンスで地方で仕事をすることについて考えないと介護員様のご指摘通りのことは十分考えられますので。
お笑いダイヤモンドの記事ではそうでは無いので、呆れるばかりです。
私事ですが、身内にどんな境遇でもきちんと生活設計を立てたいことを「甘えている」と言い放つのがいまして、先日は杯を投げつけたくなりました。
後は被害者が外国人だったり、ちょっと色気のある女性だったりする場合も、世論は加害者よりになりますよね。そうしてみると公務員叩きはやはり差別意識に基づいているのではないかという気がしてきます。
まあお金がないだけですが。