非国民通信

ノーモア・コイズミ

選択を迫れ

2016-03-16 23:24:19 | 雇用・経済

「だまってトイレをつまらせろ」 あなたならどうする(朝日新聞)

 ある工場のトイレが水洗化され、経営者がケチってチリ紙を完備しないとする。労働者諸君、さあどうする。

 ①代表団を結成し、会社側と交渉する。

 ②闘争委員会を結成し、実力闘争をやる。

 まあ、この二つは、普通に思いつくだろう。もっとも、労働者の連帯なるものが著しく衰えた現代にあっては、なんだよこの会社、信じらんねーなんてボヤきながらポケットティッシュを持参する派が大勢かもしれない。

 ところが栗原さんによると、船本洲治という1960年代末から70年代初頭にかけて、山谷や釜ケ崎で名をはせた活動家は、第3の道を指し示したという。

 ③新聞紙等でお尻を拭いて、トイレをつまらせる。

 チリ紙が置かれていないなら、硬かろうがなんだろうが、そのへんにあるもので拭くしかない。意図せずとも、トイレ、壊れる、自然に。修理費を払うか、チリ紙を置くか、あとは経営者が自分で選べばいいことだ――。

 

 ……とまぁ、少し前ですが、こんな記事が朝日新聞に載りました。引用した箇所から先は典型的な朝日新聞ワールドで、とりあえず安倍政権を批判したいんだなど言う熱意こそ伝わるものの謎理論満載で説得力は微塵も感じない代物だったりするわけです。その辺はさておき、紹介されたエピソード自体は大いに示唆に富むように思います。チマチマとした団体交渉なんかよりも、手っ取り早い実力行使こそが状況を改善するであろうことは想像に難くありません。

 安倍政権下では毎年、恒例のように経済団体に首相が賃上げ要請を出していますけれど、その結果は微々たるもので被雇用者の平均を取れば、増加する非正規雇用者の低賃金に飲み込まれて上げ幅が見えなくなってしまうレベルです。前政権時代よりマシとは言えるかも知れませんが、とうてい胸を張れるほどの実績ではありません。あるいは後ろ倒しにしたはずの就職活動の開始時期に関しても約7割の企業が解禁前に事実上の選考を行っていたとの調査結果があります。政府による口先だけの要請なんて何の意味もないのでしょう。重要なのは強制力です。

 では上述のトイレの例、企業側に状況を改善させる、そこに強制力を持たせることができるのは①~③のどれでしょうか? 最良の回答は当然、③の黙ってトイレを詰まらせることです。交渉の余地などいりません。状況を改善するほかない状況に経営者側を追い込むこと、それこそが唯一の解決策と言えます。そしてこれこそが、企業にとって都合が良いばかりの「よい子」になってしまった現代の労働者が学ぶべきことと思うわけです。

 日本の非正規労働者の待遇が悪いのは、非正規社員の能力が高すぎるから、と言えます。非正規でも会社の中核業務を担わせるのに十分な能力を持った人材が雇用できるのであれば、わざわざ正規に雇用する必要はありません。派遣社員でも会社優先で行動してくれる、アルバイトでも管理職のような責任感を持って働いてくれるのなら、非正規雇用で働かせるのが経営者にとっては当然の正解になるわけです。それを改めさせたいのなら、生ぬるい交渉では意味がありません。会社側が交渉に応じなくても、非正規社員はしっかり働いてくれるのですから。

 非正規雇用に従事する人が「世の中をよくするために」やるべきことは、まず何よりも怠業でしょうか。黙ってトイレを詰まらせる代わりに、黙って仕事を滞らせることです。その結果に非正規社員が責任を感じることはありません。非正規社員なのに経営者のような気分でいる人は少なくありませんが、まずは非正規としての自覚を持つべきです。責任は会社の偉い人が負うべきもの、非正規たるもの定時になったら業務が残っていても黙って帰り、会社側に選択を強いれば良いのです。今や非正規社員なしで成り立つ会社は希少です。非正規社員の待遇を改善するか、それとも一握りの(実務に疎い)幹部だけで仕事を回すか、それは経営者が選べば良いことですから。


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