非国民通信

ノーモア・コイズミ

時代の申し子

2024-01-07 22:04:45 | 雇用・経済

11万人分の情報持ち出しか 国委託事業、パソナ元派遣社員(共同通信)

 独立行政法人「中小企業基盤整備機構」は26日までに、助成事業の事務局を委託していた人材派遣大手パソナの元派遣社員に貸与していた業務用パソコンから約11万人分の個人情報が持ち出された可能性があると発表した。元派遣社員が業務で知り得た企業に対して補助金の申請を有料で支援するとメールで持ちかけていたことが分かり、調査の過程で発覚した。

 同機構によると、持ち出された可能性があるのは「中小企業等事業再構築促進事業」の補助金が採択された約7万5千事業者(約11万人分の氏名などを含む)の情報。元派遣社員が保存、閲覧していたほか、ファイルが外部に持ち出されていたことが確認された。

 

 私の勤務先でも実務は業務委託先の派遣社員が担っているところが多く、まぁ日本中どこも同じようなものなのだろうな、と思いました。では実務は委託「先」が引き受けるとして、委託「元」の会社の人間は何をやっているかと言えば「変革」が主たる業務でしょうか。例えば従来は内製していたものを外注し、代わりに外注していたものを内製に切り替えるなど、飽くことなく変革を求める経営層の求めに応じて成果をプレゼンし続けるのが本社社員の役割と言えます。

 こうした変革の繰り返しによって経営層を満足させることには概ね成功しているように思うところではあるのですが、結果として日本は内戦状態にある国と同レベルの低成長を達成しました。私の勤務先と同様に不毛な変革ごっこを繰り返しているだけの会社も多いのか国内シェアでは上々の地位をキープしてこそいるものの、その国際的な地位は30年前に比べて凋落が顕著で、まぁ何が間違っているのかは考えるまでもない状況でしょうか。

 ともあれ私の勤務先グループでも、個人(顧客)情報の管理を業務委託先の派遣社員に丸投げしているところは少なくなく、ここで引用したパソナと同様の事例は他でも普通に起こりうるものです。ただ厳格な管理が求められる個人情報であろうとも、直接雇用の正社員に実務を担わせるのは無駄と、そう感じている経営層は多い、どのような事件が起ころうとも、そこは変わらないように思います。代わりに行われるのは監視体制の強化ですとか実効性のないルールの追加ぐらいのものでしょう。

 ちなみに私の勤務先の話を続けますと、近年は急速に副業に関する規定が緩和され、簡単な申請で通るようになりました。昨年の春闘は会社側の完勝に終わるなど賃金の引き上げには消極的な我が社ですが、その代わりか副業で稼ぎやすい環境作りに力を入れているようです。報道される「パソナ元派遣社員」も本業とは別に個人での営業活動を行っていたようで、これは無許可であるのかも知れませんが、「賃金を抑制する代わりに副業を容認する」私の勤務先グループに当てはめれば、賢い行動であったと考えられますね。

 そもそも岸田内閣の方針からして「資産所得倍増プラン」であって、決して本業の稼ぎを増やそうとするものではないわけです。より多く投資するだけの「資産」を得た人ほど儲けられる、そんな社会を現政権が築こうとしている中では、「真面目に本業に従事するよりも、何か別の手段で資産を築く」ことが現代日本を生き抜くための方策にならざるを得ないと言えます。ましてや派遣社員とあらば仕事で成果を上げても自身の給与が上がる可能性は皆無に近いわけです。そこで職務上で知り得た情報を駆使して個人営業に走った人がいたとしても、果たして道を誤ったのは誰なのかと問いたくもなります。

 一見するとGDPが低く見える国でも、実は捕捉されない地下経済が盛んで意外に住民は裕福な社会もあると言われます。日本のGDPは諸外国に次々と追い抜かれていく状況ですが、しかし地下経済の規模はどうなのでしょう。闇バイトや転売、売春など公的な統計に表れにくい経済活動は日に日に身近なものとなりつつあります。「表」の仕事を地道にこなしても給料は上がらない、その代わりに投資で儲けてください、というのが国策になっている中では、「裏」の仕事で投資に回すための資産を獲得しようとする人が増えたとしても必然ではないでしょうか。今回のパソナの一件も、個人が時代に適応しようとした結果だと言うほかありません。

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