非国民通信

ノーモア・コイズミ

あれ? 意外に……

2011-07-07 22:59:16 | ニュース

「チームドラゴン」始動 松本復興相が異色会見 「民主も自民も公明も嫌いだ!」(産経新聞)

 松本龍復興対策担当相は28日、就任後初となる記者会見を行った。重責を担い吹っ切れたのか、質疑途中にサングラスをかけ、自ら率いる被災者支援チームを「チーム・ドラゴン(龍)」と命名した。

 松本氏は「ひたすら被災者に歩いていく。復興基本法に魂を入れ、骨や肉をつけていく」と語り、被災地復興に全力を注ぐ覚悟を強調。「3月11日以来、私は民主も自民も公明も嫌いだ。(首相退陣が)7月か8月になるか分からないが、このチームは右顧左眄しない」と述べ、「菅降ろし」に明け暮れる民自公3党に強い不快感を示した。

 「チームが失敗したら責任を取るのが閣僚の役目。私は屋上でたばこを吸っていようかと思う」と断言すると、同席した復興対策本部長補佐に就任した平野達男内閣府副大臣は「松本さんは親分肌だ!」との最大級の賛辞。責任転嫁ばかりする首相はますます見劣りしてしまうのでは-。

 さて、松本復興相がわずか9日で辞任したそうです。幸か不幸か最短記録更新はなりませんでしたが、政権としては末期症状です。安倍内閣末期には8日で辞任した農水相もいましたが、こういう反対派に格好の攻撃材料を提供してしまうタイプの人を起用する辺り、菅内閣もいよいよ以て危険な領域に突入しているのかも知れません。では、この松本「元」復興相、いったいどういう人物だったのでしょうか。

 閣僚起用された時点での報道によると、質疑途中にサングラスをかけ「チーム・ドラゴン」などと名乗りだしたとか。何というか、私はこの時点で麻生太郎を思い出しました。どうも「キャラを作っている」感じがするのです。麻生太郎と言ったら家系をひもとけば皇室にまで連なるやんごとなきお公家様ですが、敢えてべらんめぇ口調を披露することで自分なりにアピールしていたわけです。松本氏の場合も、乱暴っぽい口調に加えてグラサンを持ち出すことでキャラを立てようとしているように思えてなりません。まぁ、その辺は私の感想ですけれど。

 とりあえず、「民主も自民も公明も嫌い」というのは私も同感であります。政治的な方向性に関しては菅内閣と大差ないくせに「菅降ろし」に明け暮れる政党、政治家への不快感も理解できるところで、首相退陣がどの時期になろうと右顧左眄しないという態度は概ね評価できるものです。そして「チームが失敗したら責任を取るのが閣僚の役目。私は屋上でたばこを吸っていようかと思う」と断言したとも伝えられています。

 この辺もまた、今時珍しい奇特な政治家だなと、少なくともこの発言に関しては肯定的に思えた次第です。ある意味、世論が要求するものとは対極にありますから。何かに連れ、世間は首相とか大臣とか、あるいは社長とかを事故や災害の現場に向かわせたがるわけです。で、「おまえも現場で実際に作業してみろ」的なことを叫ぶ人も少なくありません。まぁ、事故を起こした会社なり災害に十分な対応が出来なかった大臣なりに「罰」を与えたがる人も多いのでしょう。あるいは、トップが自ら前線で汗を流す、謂わば自己犠牲的に振る舞うことに道徳的な「正しさ」を感じる人も多いと思います。ただ実際のところ、社長や大臣が現場に出すぎると、はっきり言って邪魔なだけですよね。基本的に現場のことは現場の人間が最もわかっているわけで、社長は後ろに引っ込んで所長に任せた方が、あるいは大臣は後ろに引っ込んでレスキュー隊に任せた方が無難です。

 じゃぁ社長なり大臣なりの役目は何なのかと言えば、最前線で現場作業に従事することではなく、「責任を取ること」であるように思います。そういう点では松本氏の発言は私の理解とも合致するのですが、これが近年では流行から外れているわけです。小泉政権時代からその傾向は芽生えていましたが、とりわけ民主党政権発足後の「政治主導」の元では政治家が現場の細かい部分にまで口出しする一方で、逆に上手く行かなかった場合はスケープゴートとして官僚が「犯人」に祭り上げられる傾向がエスカレートしてはいないでしょうか。松本氏のように「屋上でたばこを吸っていようかと思う」=「現場の細かいことは現場の人間に任せ」、それでいて「失敗したら責任を取る」と語るのは、民主党が掲げてきた政治主導の実践とは180度対極に位置します。そして私は、この現代の政界にあっては絶滅危惧種的な考え方を示す松本氏の発言に、ちょっとだけ好意を抱いたものです。しかるに、その9日後……


「コンセンサス得ろよ」復興相、3日宮城知事に(読売新聞)

 松本復興相と宮城県の村井嘉浩知事が3日午後に会談した際の復興相の主な発言(要旨)

 (復興相が先に宮城県庁の会談会場に入室したが、村井知事が遅れて現れた)

 「先にいるのが筋だろう。お迎えするのがね。分からん。俺、大臣室にいる時は立って(来客を)お迎えするよ。もう俺ずっと3月11日から5月5日に1日だけ休ませてもらったけど、ずっとこの仕事をやっているから、何でも相談には乗る。だから、しっかり政府に対して甘えるところは甘えて、こっちも突き放すところは突き放すから。そのくらいの覚悟でやってください。それぞれの市町村で(復興)構想会議とか、絵を描いていると思う。私の基本的な立場はそれぞれの町で伝統や産業や文化が違うから、それぞれの話を聞いて、我々もしっかり見ながらやる。例えば、水産関係でも、(県内の漁港を)3分の1から5分の1に集約するってと言っているけど、県でコンセンサスを得ろよ。そうしないと、我々何も知らんぞ。ちゃんとやれ、そういうのは。今、(村井知事が)後から入ってきたけど、お客さんが来る時は自分が入ってからお客さん呼べ。いいか、長幼の序が分かっている自衛隊なら、そんなことやるぞ。分かった?(報道陣に)今の最後の言葉オフレコです。いいですか?いいですか?はい。書いたら、もうその社は終わりだから」

 その9日後に辞任に至ったのは前述の通りですが、問題となった発言の「要旨」が各紙で掲載されています。まぁ、色々とツッコミどころはあるでしょうか。ここで引用したもの以外にも問題視しようと思えば問題視できるものは多々あるようです。ただ子細に眺めてみると、意外やまともなことも言っているのではないかという気がしてきます。特に引用の真ん中辺り、「それぞれの町で伝統や産業や文化が違うから、それぞれの話を聞いて、我々もしっかり見ながらやる。例えば、水産関係でも、(県内の漁港を)3分の1から5分の1に集約するってと言っているけど、県でコンセンサスを得ろよ。」という行は、やはり今時の政治家には珍しい見識を感じさせるものです。

 言うまでもなく、それぞれの町で伝統や産業や文化が違う、だから政府筋としてはあれこれと介入するよりもまず「聞く」ことが大事です。しかるに世間はリーダーシップ云々と称し、トップがどんどん決断を下していく姿を理想として思い描いてはいないでしょうか。それぞれの町の違いを省みて熟慮や関係者との対話を重ねるより、何の躊躇もなく「こうしなければいけないのだ」と即断即決して一方的に結論を出すタイプの政治家の方が好まれているように思います(橋下とか橋下とか橋下とか)。だからこそ、今回の松本「元」復興相の発言は希少であり、評価にも値するものと感じられるのです。自分が先頭に立ってあれこれと命令していけば世間的にも活躍しているイメージが作れるのでしょうけれど、それはリーダーシップに名を借りた独善に過ぎません。まずは市町村サイドのビジョンに耳を傾けることです。

 残念ながら相手を断罪する音ばかりが好まれ、反対派を「抵抗勢力」なり「利権を守ろうとしている」云々とレッテルを貼っては相手を悪玉扱いし、反対意見を「聞く必要がないもの」として一蹴するのが小泉時代以降に顕著な政治文化でもあります。だから県が漁港を集約するという青写真を描いたとして、当然ながら反対する県民や漁業者も出るでしょうけれど、その場合に最も簡単なのは反対している人々を「利権を守ろうとしている連中だ」として切り捨てることです。たぶん、こういう手法を採っても首長が支持を落とすことはない、むしろリーダーシップを発揮したとして喝采を浴びる可能性の方が高いでしょう。でも、本当に反対派の意見は聞くに値しなかったのか、あるいは県のプラン(漁港の集約等々)によって従来の権益を失ってしまう人のことを蔑ろにして良いのか、その辺は考えられてしかるべきです。反対派を抵抗勢力と位置づけて改革を強行するばかりではなく、事前にコンセンサスを得ておくことも大切なはずです。復興に向けて県が計画を建てる中では諸々の相反する立場の存在が見えてくることと思われますが、ただ反対派を退けようとするばかりではなく合意を取り付けようとする努力も、とりわけ今の時代こそ必要ではないでしょうか。だから「県でコンセンサスを得ろよ」というのも、短いですが重要な指摘なのです。

 そんなわけで、松本氏の発言にはむしろ私の「好み」な部分もあったりします。余計なキャラ作りをしないで必要なことだけ口にするよう努めておけば結果は違ったのではないかと思えないでもありません。まぁ、当人は派手な言動でメディアスターにでもなりたかったのでしょうか。まぁ「今の最後の言葉オフレコです~書いたら、もうその社は終わりだから」みたいな発言も、例によって橋下みたいな人気者がやったのであれば世間的には好意的に受け止められていたのではないかという気もします。暴言を連発することでこそ、「強い姿勢」とばかりに持ち上げられる人もまたいるわけです。大臣に任命されたことで舞い上がってしまったのか、人気者なら許される暴言をジリ貧内閣の一員が真似したが故に今回のような混乱を招いたとも言えます。

 ちなみに「書いたら、もうその社は終わりだから」との大臣発言でしたが、これを報じたどのメディアも「終わり」とはなっていないことは言うまでもありません。むしろオフレコと釘を刺されたにもかかわらず、マスコミ各社が先を争うかの如き勢いで松本発言を報道したことは、現代におけるマスコミの性質を顕著に表しているように思います。結局のところマスコミは滅多なことでは黙らないものであり、ひたすら流行を追いかけるものなのではないでしょうか。マスコミは電力会社に支配されているみたいな陰謀論的世界観が幅を利かせていますけれど、結局のところマスコミを動かしているのは流行です。それが視聴者なり読者にウケが良いとわかればマスコミ各社は遠慮なく報道を過熱させますし、逆に視聴者や読者の関心が薄いとあらば報道も白けたものにしかならない、そういうものなのだと思いますね。

 

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4 コメント

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Unknown (シトラス)
2011-07-12 13:02:48
なんだかんだで人に物事を伝えるには誰がどう言うかが重要ですからね。
橋下や石原と違ってメディアでのキャラが立っていない松本氏があんなことを言ったら印象をよくする人は少ないでしょう。
それはともかく、比内地鶏や福島産の食べ物など、「怪しげなもの」をトップが食べるパフォーマンスを不思議に思っていたのですが、これもおそらくトップを現場に赴かせることの一種なのでしょう。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-07-12 23:29:03
>シトラスさん

 橋下のような人気者が言い放つのと、ジリ貧内閣で別に人気者でもない新閣僚が似たようなことをやるのとでは、メディアの取り上げ方も正反対になってしまうものですからね。松本発言の骨子の部分は意外に悪くないはずなのに、色々と残念なところです。

 後はトップが実際に口にしてみせるパフォーマンスも、色々と虚しいものがありますね。「安全だというのなら、おまえが食べてみろ」と要求する人がいる一方で、いざ食べてみたところで事態が好転するかと言えば、全くそんなことはなかったりしますし……
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Unknown (masatoma)
2011-07-24 00:35:51
言い方は確かに感じ悪いですが、そればかりあげつらって、肝心の発言の中身について検討するマスコミはほとんどなかったですね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2011-07-24 01:04:39
>masatomaさん

 そうなんですよね。あの言い方では反発を買うのは当然ではありますけれど、中身については評価できる部分もあっただけに、その辺「も」メディアには取り上げて欲しかったところです。
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