lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Ruth Ann / "What about Us" Available 4th June on i-Tunes.

2007-05-30 08:20:44 | Enigma
□ Ruth Ann + Michael Cretu (Enigma) / "What About Us"

>> http://www.ruthann-music.com/
>> http://www.crocodile-music.de/enigma/index.php

(レビュー)
>> lens,align.:Ruth Ann / "What about Us"

Release Date; 04/ June/2007
Label; tba
Cat.No.; none
Format: AAC (Exclusive for i-Tunes)

>> tracklisting.

1. No Surrender
2. Go
3. Drive
4. What about us
5. You talk too much
6. Beautiful
7. Dancing into Hell
8. More than Ordinary
9. Letter to Heaven
10. I'd die for you
11. The Woman I Could be
12. Believe in Me


EnigmaのMichael Cretuが、OliveのRuth-Ann Boyleのソロデビューアルバム、『What About Us』をプロデュース、6月4日に日本を含む世界中のi-Tunes Storeにおいてリリースされることが決定しました。

このアルバム、実は2004年に製作されたまま、お蔵入りとなっていたもの。クレトゥは"Voyageur"をリリース後に、Angel("Return to Innocence"のヴォーカル)の2ndソロアルバムの製作と共に、Ruth-Annとレコーディング中であることを明らかにしていましたが、当時はアルバムが完成間近というニュースが入って以来、情報が途絶えたまま自然消滅となるものかと思われていました。

新設されたRuth-Annのオフィシャルサイト(上記)で"What about Us"収録楽曲の全クリップが試聴できますが、作風は驚く程シンプルで、Cretuの他のプロデュース作品からのマテリアル(プリセット音源)やフレーズの使い回しが目立つのが興味深いです。"Voyageur"よりも"A Posteriori"との共通点が多いのも、このアルバムのリリースが一度断念されたものであることを生々しく物語っているようにも思えます。

"No Surrender"は、Enigmaの"Sitting on the Moon"のボーカルフレーズと酷似しているし、"Letter to Heaven"は"Sitting on the Moon"の伴奏そのもの。"I'd die for you"のピチカートは、同じくCretuがプロデュースしたAndru Donaldsの"Just for one Day"のものだったり、他にザッと聴いてみた限りでも色々と確認できます。

"Beautiful"はJens Gadとのコラボレーションだそうですが、そういえば、Jens Gadは自身のプロジェクトである"Achillea"のpre-recording(試作バージョン)でRuth-Annのヴォーカルを起用していたことが思いだされます。こういう生音を使用したチル・アウトと彼女の声は非常に相性が良いのですが、残念ながら、他のダウンテンポなエレクトロダンスでは、その魅力を活かしきれていない印象。


Ruth-Annは、Tim KellettとRobin Taylor-Firthらと立ち上げたブリティッシュ・トリップ・ホップバンド、Oliveのヴォーカルとして活動。Cretuに『彼女の声がEnigmaに必要だ』と見初められ、Andru DonaldsとともにEnigmaの4th Album、"the Screen Behind the Mirror"と5th "Voyageur"に参加。Enigmaとしての最初のフィーチャー曲"Gravity of Love"では、オルフのカンタータとダイナミックなトライバルビートに、神々しいまでにクールなヴォーカルをのせて、衝撃的なインパクトを全世界に齎しました。

彼女のヴォーカルの魅力は前述の通り、漣を描くように吹き抜け、どこまでも透き通るようなフラットで涼しげな声質。似たようなシンガーが存在しない稀有なスタイル。どこか愁いを含んだような表情を見せることもあって、Oliveの持ち味である、アンニュイで灰色の哀愁に満ちたサウンドとは切っても切り離せない存在。しかしEnigmaの仰々しさと妖しさにも全く退けを取ることなく調和を見せ、その意匠は"Following the Sun"で頂点を迎えましたが、その後、何らかの事情で(おそらく"What about us"がお蔵入りとなった経緯と関連があるのでしょう)クレトゥが"A Posteriori"製作前に、サイドプロデュースから孤立。以降、Ruth-Ann名義での活動はアナウンスされていませんでした。オフィシャルのBiographyの更新が待たれます。

※アルバムレビューは、発売日以降に綴ります。




□ Tunes of the Day

□ Enigma

Gravity of Love (Chilled Club Mix)
Following the Sun


"Following the Sun"は"Voyageur"を締めくくる壮大なヴォーカルトラック。地平線が開けるようなアトモスフィアに、"Boum-Boum"のパーカッションがより立体的に浮き彫りにされ、時計の2音がリズムを刻む中、Ruth-Annのヴォーカルが射光の如く現れる。(出だしのメロディは"Silence Must Be Heard"のもの)そして間奏では"Return To Innocence"、"Child In Us"のアコースティックギターのリフがハーモニカの明るい旋律と共に浮上し、サウンドストラクチャはワンループ毎に複雑な幾何学模様を噛み合わせていくように、より高次な軌道へと引き上げられ、鳴動する世界装置の如くハーモニックに鳴り響く。コーラスとアトモスフィアのウェーブが離散していくアウトロでは、グレゴリオ聖歌が消え入りそうなくらいの音量でレイヤーされています。


身命の対価

2007-05-29 23:38:33 | ニュース
松岡利勝農林水産相に心からお悔やみを申し上げます。
本当に悲しい。
人の死は政治的な死であっては絶対ならない。

自殺が罪を雪ぐ目的のものであれば、彼はその身命を持って、政治の果たすべきところを、その真の目的を否定してしまったことになります。だからこそ、政治構造に絡む疑惑やひずみは、個人の責任のみに還することなく、より構造的に反省を促していかなければなりません。彼が命を賭してまで護りたかったものは、護ったもの自身の価値とは無関係であり、おそらくそれによって断罪を受ける可能性のある「関係者」や、「影響」を省みてのことだったのでしょう。ここら辺はまだ明らかになっていないので、「わからないもの」として語ることしか出来ないのですが、それは政治的であるというよりも、むしろ当事者達に向けた人間的な感情であったのかもしれません。

死を遂げた人間の内面は、死という不可侵な隔壁がそれについての生者の言及を永遠に阻みます。おそらくそれは彼自身を苛み続けた苦悩の末の決意であったと、「人の死」以外の何者でもないのであろうと受け取ることが、私たちにできるせめてもの、「人間的な」弔いであるのだと信じます。


Chicane / "Somersault" Sneak Previews.

2007-05-29 08:05:39 | music5
□ Chicane / New Album "Somersault" Sneak Preview.
("Time of Your Life"、"You are Always")

>> http://www.chicanemusic.com/
(右上のプレーヤの灰色のウィンドウをクリック
 →"Somersault Previews"で試聴できます)


Tom Jonesをフィーチャーした"Stoned in Love"、"Come Tomorrow"(Music→Video Sectionでクリップが視聴できます)に続き、ニューアルバム「"Somersault"(宙返り)」に収録される"Time of Your Life"(1stや2ndのインタールード的な曲)、"You are Always"の2曲が公開されましたが、あの"FFTMC"を彷彿とさせる重層なアンビエントとディスコティックなサウンドに回帰していて、わたしはちょっと涙が出てしまいました。。。(ノ_; )

プロモのみのリリースに終わった3rdアルバム、"Easy to Assemble"はファンクに偏ったものの、決して失敗作では無いのですが、やはり1st、2ndとイメージと空気感が全く違ってしまった為か、厳しい評価を受けてしまいました。Chicaneの作品は、その音楽性以上に、心象に響く何か精神性みたいなものと切っても切り離せない部分で支持を受けているのかもしれませんね。"Come Tomorrow"も"Stoned in Love"同様、スピリチュアルでカッコイイとは思うのですが。。。アルバムとしてどうなるのかに期待ですね。


I WANT TO BELIEVE.

2007-05-26 11:29:38 | music5
Belief_


劇場版第2作が製作中のThe X-Files。
モルダー捜査官のオフィスに貼ってあった「シンボル」とも言うべき、"I Want To Believe"ポスターがインテリアに欲しいなー、と思って探してみたら、数年前にFOX公認ポスターが数量限定で販売されていたらしく、現在入手困難の模様。

ということで、↑↑自分でポスターを作ってみました。(-_-
背景の撮影→加工込みで、総製作時間30分以内。
なかなか巧くできてない?(笑
Original(ドラマで使われたもの)はこちら↓
ttp://users.aol.com/hytritium/poster.jpg 

検索してみると、
同様のフェイクやらパロディが大量にあって笑えます。
http://images.google.com/images?svnum=10&um=1&hl=spell&resnum=0&ct=result&cd=1&q=%22I+want+to+believe%22+poster&spell=1





□ Mark Snow / "The Truth and the Light"

Introitus: Praeceps Transito Spatium
Materia Primoris
Otium
Kyrie




□ Mike Oldfield

Tubular X




□ Mark Snow / "THE X-FILES: Fight the Future"

Threnody In X


ドラマの作り方を変えたのが"The X-Files"なら、アンビエントをサウンドトラックにしてしまったのがMark Snow。歴史的とまで評される口笛メロディとタイプライターの音が折り重なるテーマ、不気味かつスタイリッシュなタイトル・デザインと相まって、衝撃的なビジュアルインパクトをもたらしました。OPのラストでは、"THE TRUTH IS OUT THERE"という題字をバックに、山の遠景のシルエットが映し出されるのですが、ここに何とも言い難い荒涼とした厭世感、寂繆感が感じられて良い!><。

Mark Snowはもともとクラシック畑で素養を培っていたこともあり(その後ジャズの指導も受け、Muchael Kamenと共にニューヨーク・ロックンロール・アンサンブルという、クラシックとポップを融合させたスタイルのバンドを結成している。)、劇中では寧ろ喜劇的とも言える、シンセのピチカートのとぼけたメロディが特徴的に印象に残るのですが、やはりアトモスフィアやエスノサンプルをふんだんに使用したアンビエント、インダストリアルなホラートラックが秀逸。彼は12音階技法の作曲家から直接学んだ経験もあるせいか、不協和音の使い方が非常に美味しい。

劇場版一作目である"Fight The Future"では、初の生オーケストラを動員した、エキセントリックかつトライバル、壮大なシンフォニック・ホラー・スコアを完成させていました。パーカッションやデジタル・ビートには、Graeme RevellやHans Zimmerなどの流行の影響が窺えるものの、独特の緊張感は健在。その後、Xファイルとしてのスコアのリリースは途絶えたままですが、次回作への起用と進化を心待ちにせずにはいられません。


Mike Oldfieldの"Tubular X"は、"Fight The Future"のImspired Albumに提供されたもの。『エクソシストのテーマ』としてあまりにも有名になってしまった、"Tubular Bells"の「伝説」の循環メロディが、"The X-Files"に絡み付く。本人がドラマの大ファンであることから実現した楽曲。近年のMikeに見られる、シンセ一本勝負イビサ・チルの傾向が既に顕著となっています。


久にあらむ君を思ふにひさかたの清き月夜も闇の夜に見ゆ

2007-05-25 05:02:18 | music5
Moon



□ lens,align. mix - "Love Song"

love song     (32MB)


>> tacklisting.

1. Love Song / Ronan Hardiman
2. Salve / Ronan Hardiman
3. that Place in Your Heart / Ronan Hardiman
4. Divine Harmonie / nadège
5. From Venice to Vienna / The Zawinul Syndicate
6. Escape / The Thrillseekers
7. Army of Fools / Alisha's Attic


某nさんに作ったコンピ用に用意した素材から、採用しなかった曲を適当に詰め合わせ。手を伸ばしても儚く宙に消えてしまう花びら、そんな慕情と切ない透明感を併せてイメージしました。




Redlight

写真は、とうとう書けなかった先月のお花見日記用のもの。この日は本当に色々あったのだけどー。。。提灯の紅彩が、白く敷き詰めた砂利と桜の色を引き立てながら、仄暗く幽玄な雰囲気を醸し出していました。mixiの方では書きましたが、半裸で写真撮ってたらナンパされました(?)。風が強くて肌寒かったですが、桜吹雪はもう涙が出るくらい綺麗。でも、感動は一人でも出来るけど、やっぱり想い人と分かち合えなければ虚しい。。のかな?でもそれは何故だろう。。。 と、ちょっぴり感じるところがあったのでした。
ってか、もう夏。。。




□ カスタモ for 812SH

Dolphin

http://www.custamo.com/pc/812/screen/nature/dolphins/index.html

携帯各社の夏の新機種が出そろいましたねー。
912SHかっこよくていいな。。
で、こないだ、気分を一転しようと、ケータイのカステムテーマを購入する「カスタモ」を実践。選んだのは「Dolphins」。数々の操作に併せてイルカが跳ぶ!泳ぐ!電卓のスキンもかっこいいし、アクションも多様。そして何よりも、メインメニュー場面(上記写真)が秀逸。水面下を泳ぐイルカのシルエットをバックに、キーに併せて各メニューバーが上下にスライドするんです。後は鳴き声でも入れてくれたらパーフェクトなんだけど、これだけでも結構な容量なので厳しい?




□ tunes of the day

□ Andain

Ave Maria
Here is the House

過去にも取り上げましたが、改めて紹介。
Dave Dresden(Gabriel & DresdenのDresden)によると、昨年12月からAndainのデビューアルバムの製作に掛かっているということです。ついに!!ですね。(現在の正規リリースは、"Summer Calling"と"Beautiful Things"のみ)

(過去ログ参照 →レビューは頁下部)
>> http://blog.goo.ne.jp/razoralign/d/20050409


Delerium / "Silence" Edited Live Video.

2007-05-24 08:37:59 | delerium
</object>

2003年にカナダ/アメリカで行われたDelerium Tourにおける"Silence"のLive Videoをクリップ風に編集したものが、YouTubeにアップされました。なかなか良い出来なので紹介。歌っているのはKristy ThirskとShelley Harland。DVD出て欲しいですね。。




□ tunes of the day

□ James Newton Howard / "dreamcatcher"

Main Title
Pete and Trish

ここで紹介するのは2度目。個人的にKyle Cooper ( >> http://www.prologue.com/)の手掛けたタイトルデザインの最高傑作だと思っている"Dreamcatcher"のOPと切っても切り離せない、珠玉の一曲。  ※現在公開中の"The Reaping"における、イナゴのマクロ・スキャニングをモチーフにしたオープニング・タイトルも秀逸。

(過去ログ参照)
>> http://blog.goo.ne.jp/razoralign/d/20051213




□ Dargaard / "The Dissolution of Eternity"

My Phantasm Supreme

Elisabeth Toriserの耽美なヴォーカルが特徴的なゴシック/ダークウェーブ。(このジャンルにしては)抑制の効いたシンセワークとグレゴリオ聖歌風コーラスが、シネマティックでファンタジーな中世暗黒的世界観を演出していますが、曲によっては安っぽく聴こえてしまうのが難点。




□ Dein Schatten / "Das Ewige Eis"

Abschied

伝説のジャーマン・プログレバンド"Guru Guru"のギタリストBornzeroによるヒュージなゴシック・オペラチック・インダストリアル。凝りに凝りまくった音響や仰々しいサンプリング、ビートワークに、オヤジヴォイスが響き渡る。E Nomineを洗練した印象がありますが、もっと一筋縄ではいかない意匠が施されています。

m11"Abschied"では、超美麗なピアノの循環リフと4分打ちビートが最高に盛り上げてくれるエピック曲。このピアノリフ、どこかで聴いたことがあると思ったら、あの大手ハウスレーベルEYE-Q Recordsに所属していたZyonの"No Fate"という曲のものとそっくり。m12"My Name Is Luc(if)a"は、捩られたタイトルを見てのとおり、なんとスザンヌ・ヴェガの楽曲のカヴァー。ファンタジーRPGのラスボス降臨のようなパイプオルガンの演出がぶっとんでますw

この作品、なんらかの事情で正規発売はされていなく、ジャケットにもバーコードや製品番号の類は記されていません。少々入手困難でしたが、プロモ盤のみ出回っています。




□ Karsh Kale / "Liberation"

Instinct

インドのジーニアス、Karsh Kaleの2ndアルバム。昨年には3rd "Broken English"と並行して、"Liberation"の5.1ch Surround Versionも発売されています。この"Instinct"は、遠くから響いてくる民族合唱と、タブラの超絶リズムが噛み合ったSci-FiなDrum 'n Baseのレイヤリングが白眉。



_*


Hernán Cattáneo / "Sequential Vol.2"

2007-05-23 01:47:24 | delerium
Sequential


□ Hernan Cattaneo / "Sequential Vol.2"

Blue Foundation / "Sweep (Hernán Cattáneo & John Tonks Little Intro Mix)"
Crowdpleaser & St. Plomb / "18 Years"
X- Green / "In Place Solo"
Layo & Bushwacka! / "Saudade (Remix)"
Stel / "Infinity"

Release Date; 15/05/2007
Label; renaissance
Cat.No.; REN34CD
Format: 2xCDs

>> http://www.hernancattaneo.com/
>> http://www.renaissance.com/

>> tracklisting

CD1
1. Blue Foundation ? Sweep (Hernan Cattaneo & John Tonks Little Intro Mix)
2. Crowdpleaser & St. Plomb ? 18 Years
3. Livio & Roby Feat. George G ? Monochrome (Reprise)
4. François DuBois - I Try (Nic Fanciulli Remix)
5 Hernan Cattaneo & John Tonks ? Anime (Sequential Mix)
6. Xplore ? Time Travel
7. DP6 ? Summer Time
8. Kosmas Epsilon ? Paranoid (Eelke Kleijn Remix)
9. 16 Bit Lolitas ? Goodbye Pluto
10. Guy J ? Agent Blue
11. Itamar Sagi - Sparta (Original Mix)
12. X-Green ? In Place Solo
13. TG ? Rhythm Acupuncture (Martin Buttrich Remix)
14. Chaim Feat. Shy ? Popsky
15. Marco Bailey ? Smooth Drive (Danny Howells & Dick Trevor Mix)

CD2
1. Oliverio ? The Second Angel Is Here (Sequential Mix)
2. Spencer Parker ? Neon (Guy Gerber & David K Mix)
3. James Harcourt ? Arachnofunk
4. Steve Mill - Lia
5. Anil Chawla ? Everyone Loves Candy
6. Layo & Bushwacka! ? Saudade (Remix)
7. Merkins ? I Sleep In Sellotape
8. Martin Eilbahn ? Nobody Beats The Biz
9. Nick Muir ? Airtight (Sequential Mix)
10. Martin Garcia ? Paper Dove (Sequential Mix)
11. Alex Dolby - Prodax
12. Graham & Blades - Argie Bargie
13. Stel - Infinity



ブエノス・アイレス出身のup-front DJで、今やRenaissanceの看板を背負いながらシーンの最先端を切って進み、世界的にトップクラスの評価を得ている"the most talented DJ"、Hernán Cattáneo。未発表音源やアンダーグラウンドなExclusive音源を多く交えた本命Mixシリーズ、"Sequential"の2作目です。エルナン自身が『Global Sound』を意識して、スカンディナビア、オランダ、ドイツ、イスラエル、ギリシャ、そして故郷のアルゼンチンといった世界各国から音源を蒐集、これぞプログレッシヴハウス!という重厚でドープなシーケシングで、"Travelling"な感覚を刺激してくれます。

本年のprog comp'リリースでは、one+oneと双璧をなす大作に仕上がっていると言えます。(Nic Fanciulliのリミックスがセレクトされている他、インナースリーブには、James Zabielaへの謝辞もあります。)One+Oneは、トラック毎に主張が強く、全体としては鋭く尖った歪さがあったのに対し、"Sequential"は、正にSequential。アルバムをトラックのシークエンスで聴かせてしまうというMixスタイルを取っています。単なるコンピレーションとしてでなく、全体の流れでアーティスティックなアルバム作品として聴いて欲しい一枚。前の楽曲の一パートが次のトラックの伏線になっている、というDave Seamanがrenaissanceにおいて確立した手法の、一つのプログレッションをここに見ることが出来るでしょう。

印象の総括としては、美麗でスペーシーなスケール感のある、ダークかつブライトネスなサウンド。ハウシーで、深く抉りこんでくるベースが延々とシーケシングされ、緩やかにピークや展開を迎えながら、恍惚を誘います。段々アンビエントにすら聴こえてくる不思議。重低音のドライブ感溢れるDisc1、より扇情的に加速していくDisc2。曲順は「これしかありえない」と思えるほど流れが完成されています。"Sequential"のモチーフを受け継いだジャケットアートもイメージにハマっていますね。


renaissanceが現在最前線でフィーチャーしている、デンマークのユニット、Blue Foundation(Vocalも務める女性コンポーザー、Kirstine Stubbe Teglbjærgが中心となったバンド)の新曲"Sweep"における、ベルのリバースとシンコペーション、儚く消え入りそうなボーカルが相俟った神秘的なイントロが何よりも素晴らしい。この一曲目でアルバム全体の価値が底上げされている感じも抱いてしまうほど。エルナンは今回John Tonksと組んで、"Sweep"の他、自作曲"Anime"を始めとする複数曲を"Sequential Mix"と銘打ってプロデュースしています。Sound Engineerは、同じくDisc2に"Paper Dove (Sequential Mix)"を提供しているMartin Garciaが担当しています。

ギリシャのKosmas Epsilon / "Paranoid"は、気鋭の若手Eelke Klejinが、ozgur canを追随するようなハーシュなエレクトロ・ファンクにアレンジしていて、ここから16 Bit Lolitas / "Goodbye Pluto"へのシームレスなmixに驚き。Guy J / "Agent Blue"とイスラエルのItamar Sagi / "Sparta"のエピックな流れを汲みながら、Renaissanceのお家芸とも言えるトライバルサウンドが堪能できるX-Green / "In Place Solo"へ。そしてDeep Houseのトレンドセッターともいえるビッグネーム、Danny HowellsがDick TrevorとRemixを手掛けた、Marco Bailey / "Smooth Drive"では、一気に視界が開けるような高揚感でクライマックスを迎えます。

Disc2では、イントロから壮大なノイズ・アトモスフィアで幕を開けるOliverio / "The Second Angel Is Here"。ここで4分打ちにギアを変え、Tel Avivのup-front progressiveコンポーザー、Guy GerberとDavid Kによる浮遊感全開のパッドとSEが吹き荒れるSpencer Perker / "Neon"のリミックスへカットイン。そしてSteve Mill / "Lia"では、ようやく輪郭のクリアな哀愁のメロディが登場します。

今回おそらく最大の注目株となっている、Layo and Bushwacka!の"Saudade (Remix)"では、イントロのウィスパーヴォイスから繋がる煌めくようなアトモスフィアとハウシーなシーケンスを経て、ブレイクで挿入されるclick house的な粒状のカットアップ/コラージュで極点を刻みます。こうして複雑怪奇なMerkins / "I Sleep in Sellotape"の悪夢から、Martin Eilbahn/"Nobody Beats the Biz"の、「水の跳ねる音」がレイヤーされた技ありなビートワークで目を覚まし、続くNick Muir / "Airtight"の蒼穹を滑空するようなソリッドなサウンドで、アルバムはいよいよ最高の緊張感を孕んでいきます。そしてそのまま、Alex Dolby / "Prodax"とGraham & Blades / "Argie Bargie"のディープな疾走感で突抜け、零れるようなピアノと重厚なパッドで絶頂を迎えるStel / "Infinity"の終結部、残響を遺して断絶するビートのクレッシェンドで、「旅」は無限の彼方へ至るのでした。




□ Delerium / "Silence (Mat Zo Remix)"

>> http://www.myspace.com/matzomusic

(上記myspaceのStandalone Playerから"Download"が選択でき、プレーヤよりも高音質で聴けるようになっています。)

UKの最若手プロッグDJ、Mat Zoが、Deleriumの"Silence"をリミックスしています。ヴォーカルはSarah McLachlanではなく、2002年以降、ハウス/トランス界隈で流用されていた別人によるもの。先月White Labelでリリースされて以来、各地のProg DJに回され始め、DJ OrkideaのRadio Unityでも取り上げらた他、Solarstoneが"Top 10 for May"にリストアップするなど、決定的な人気を得たようです。

長年カバー曲やユーロ・トランス風のリミックスが乱発され続けているので、今更...と、思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、こういう先端のプロッグからのアプローチは意外と初めてなので新鮮。

Delerium.caのForumでも紹介してきましたが、彼らも同様にリミックスの多さには辟易しているようです(笑)。ただこのリミックスは、これまでのものとは一線を画するレベルにあります。"Silence 2004"はなかったことにして、"Silence 2007"として出ていたら、評価もまた違ったのかもしれません。


Mat Zoは他にも数曲Unofficial Remixをリリースしていますが、myspaceでも試聴できるHolden & Thompson / "Nothing (Mat Zo Remix)"が秀逸なので、是非聴いてみてください。ディープかつ神秘的な、スケールの大きいリミックスです。Markus Schulz Vs. Chakra / "I am (Mat Zo remix)"も同様に素晴らしい。。

(Delerium Maniaxで投稿したものに一部追記)


Terra Ambient / "The Gate"

2007-05-18 15:44:18 | delerium
The_gate



□ Terra Ambient / "The Gate"

Majoun
Sandstorm Dreaming

Release Year; 2004
Label; Lotuspike
Cat.No.;LS-0001
Format:1xCD

>> http://www.terraambient.com/
>> http://www.lotuspike.com/

>> tracklisting

Pilgrim's Road
The Gate
Majoun
Sandstorm Dreaming
Westerly Prayer
Serpent and Stone
Blood


Jeff KowalのTerra Ambient名義による2ndアルバム。あのSteve RoachやRobert Richもサポートしている、アンビエント/エレクトロニカ系レーベル、Lotuspikeよりのリリースです。作風は、上述のSteve Roachなどのフォロワーと言える、エスノ/ダークなアブストラクト・シャワー。ホーミーやトライバル・パーカッション、ディジェリドゥなどの各種民族楽器をデジタル・プロセッシングしてサンプリング、シンセのアトモスフィアやドローンで、闇に轟くようなダイナミックな音響世界を構築するというもの。

どちらかというと流行の路線に比べて作り込みがシンプルで、パーカッション頼りなのが今ひとつ。もう一捻り欲しいところ。Deleriumの別名義であるSynaesthesiaの"Ephemeral"から、エピックな要素を抜いた印象です。近年のニューエイジに対して、生音のスケール感に飢えている方には丁度良いかも。現在はニューアルバム"Wanderlust"が待機中。




□ tunes of the day

□ Front Line Assembly / "Fallout" EP

Buried Alive (dj Acucrack mix by Jason Novak)
Humanity ("Kearley Edit" Remixed By Dan Kearley)
Domination (unleashed) (Re Mixed by Rhys Fulber)

Release Date; 22/04/2007
Label; Metropolis
Cat.No.; MET483
Format; 1xCD

>> http://www.mindphaser.com/

>> tracklisting.

"Unleashed - Mindless mix" By Sebastian R. Komor.
"Buried Alive - dj Acucrack mix" by Jason Novak
"Beneath the Rubble - Combichrist remix"
"Electric Dreams" new song By Bill Leeb and Rhys Fulber
"Armagedon" new song By Bill Leeb, Jeremy Inkel and Chris Peterson. Featuring Jared Slingerland on guitars, and Adrian white on Drums.
"Social Enemy - anti-social mix" remix By Jeremy Inkel
"Low Life - Portion Control mix" remix by Portion Control
"Humanity - Kearley edit" Remixed By Dan Kearley
"Reprobate" A version of "Low Life" Remixed by Greg Reely
"Domination" A version of "Unleashed" remixed by Rhys Fulber
" The Storm" Covenant remix
"Unconscious" New song by Rhys Fulber and Jeremy Inkel

Mixed by Greg "the man" Reely
Mastered By Brian "Big Bass" Gardener



先月リリースされたFLAのNew EP(現在"Fallout"のワールドツアー中)。紹介するつもりはありませんでしたが、 せっかくなので取り上げます。(以前にも述べましたが、ここでは購入した音楽を逐次報告しているわけではありません)

EBMのトレンド・セッター達による"Artificial Soldier"の楽曲のリミックスと、同タイトルのアウトトラックと新楽曲を3曲追加した、本編の"Artificial Soldier"以上に聴き応えのあるEP。 リミックス陣はCombichristや、Portion Control(Bill Leebが特に支持しているユニット)といった蒼々たる顔ぶれですが、内輪のJeremy InkelやAdrian Whiteを迎えた未発表曲の収録もファンには嬉しいところ。

ただ、新進気鋭の鬼才サウンドプログラマ、Dan Kearleyによる"Humanity"の超巧微細なエレクトロ/クリック風のリミックスが頭一つ抜けて良い。こういう異ジャンルからのアプローチは、他のEBM勢にとっても刺激となるのではないでしょうか。インダストリアル/EBM系統は最近聴くのが苦痛になってきた(何年か前までは好きでした)のだけど、こういうトラックは清涼剤になります。"Buried Alive - dj Acucrack mix"は、終盤の哀愁とドライブ感溢れるパッドが迫り上がってくる部分が素晴らしい。


tempus fugit.

2007-05-18 13:57:59 | Science
Breeze

(IXY DIGITAL L2; ISO Auto; Exp.±0; AWB; Evaluative.)



その皮膚の下に真の闇を抱えて
彼の亡骸はあった
生ける何者の侵略を許さずに
あまねく生者を
鳴動する宇宙を
静かに無を湛える鏡の如く従える

吹き荒ぶ風も
草木や枝のざわめきも
彼方にうねる あの白波も
すべて彼の息吹だった

この手に抱いた闇に流れ込む
この亡骸へ この亡骸から
生は突き動かされている
遠い響きに揺られながら
彼は、かつての私の居場所を
映し示したのだ。




□ 性のアトラクター -開示と秘匿 (5/21 >>ロジックを一部補完)

人間の性行動は、他の動物では生殖活動とフレーム付けられるものよりも、その様態自体が持つ情報価値が多様化し、依って、その開示と秘匿が、性に関わる一連のアトラクター(Attractor)を引き起こす大きな鍵となっていると捉えられます。(個人にとっての性情報の価値は、成長過程における刺激信号の偶発的な交雑やフィードバックを経て構成される。)人の知能は、脳内部での情報処理が他者にも認識可能であり、汎用性と保存性の高さに由来するところが大きいのですが、動物では、その大部分を(人間と比較してシンプルな)本能で共有を行っています。

彼らが、訪れるであろう自身の死を、生きる上で与えられる一連の刺激や感覚を、他の個体と確認しあう手段は限られています。(※・・・本能的に「共感」が与えられている可能性は否定できない。また、「見よう見まね」による直接刺激を経た学習と行動パターンの後天的な習得は、広義には人間のコミュニケーション手段と同質である。ここでは、知覚的確認というより、記号的確認と可覚性の予測という意味において、人間と他種生命の刺激共認を区別する。)しかし、人間の場合は、同質(或は、内部、外部に対して同様の反応を引き起こす特定のアトラクタ)の身体刺激をお互いに共有し、持ち合わせている感覚について、他者についても認めることが、(認識の上だけでは)可能です。従って、性に関わるあらゆるレベルの情報については、「開示と秘匿」のシステマティックな様相が、社会性の構築に置いて大変な意味と必要性を持つことになるのです。生命のメタな振る舞いにおいては、性行動に必然的な権限と透明性があるのに対し、人間のbehaviorに視点を絞ると、性的なアトラクタが予め秘匿されていて、アクセスの手続きが複雑化しているというパラドクス。(もちろん例外もある....)

性行動を快感と結びつけられるのは人間だけと言われますが、現状では他種生物の身体刺激を共有する手段は無いので、この証明は不可能です。しかし、人間の最も近しい他者、異性(人によっては性的な対象となる同性)について関わるとき、彼らの関係性の描く様相は、(個体同士では感覚の隔絶があるため)一気にStrange Attractor(位相空間におけるカオスな動態の引き込み領域)に引き込まれてしまいます。お互いに理解しえるのは、性的対象が自身に与えている、或は与えてくれるであろう刺激信号の類型への期待と、相手が自分と同じメカニズムを有していることであって、システムのある段階で、その機能を相互の必要性から行使する可能性があるということ。一方で、どんな形で他者の情報が開示されていようと、個体と個体との関係においてのみ、特定の個体の性的な様態を知ることができるのが、社会性を伴う性行動の一般性です。同時に、個体の性行動に関わる情報は、疫学的、遺伝的、社会的負荷に付随するリスクが併存する為、秘匿と開示の権限の限定が大前提として構成されます。

性的な様態の開示を許した人間との間で、相互に共有する感覚的な負荷が最も高くなるのは、秘匿から開示にいたる刺激的なプロセスにあり、その瞬間に達する微時間的な部分にピークがあると、私は解釈しています。(感覚的なピークがどういうスケールで起きているか、どの時点に価値を求めるかは、個体差があり、人様々。)なぜならば、その時「開示されたもの」こそが、人が予め付与された、「秘匿される前の」性衝動の純粋な極点であり、生物種における生殖行動の目的と達成への回帰だからです。但し、人間はその刺激だけを抽出して欲求を解消する術を備えています。性交渉の相手の性的な様態に惹かれるのは、この共感のダイナミクスが働いているからに他なりません。隔絶されているはずの感覚を、相互のコネクターとして動機に置き換えているのです。

※人間の築く関係性の中で、ある相手に任意の手段で特定の刺激を与えたい、反応を引き出したいということについては、他のあらゆる種類の身体刺激についても同様のことが言える。しかしこの社会の位置づけにおいて、人間の身体反応から特定の信号を引き出すということを原理的な意味において「秘匿からの開示」という論点で切り出せるのは、『性』に関わる問題しかないことに着目しました。






□ Google Analyticsの最新バージョンがリリース

http://services.google.com/analytics/tour/index_ja-JP.html

実は、このブログも以前からGoogle Analyticsで解析を行っています。プロ向け、主にマーケティング層のデータ・コンバージョンやインターフェースが、無料で使えるのが大変な魅力。デザイン的には前の方が洗練されてたような気もするけど、コンテンツ、セッションごとのトラフィックの推移のディテールを、flashを利用してより直感的に、短絡的なプロセスで注釈とともに一覧できるようになっています。




□ 立てこもり事件を見て思うこと。

この種の事件に甚大なエネルギーと関心が注がれるのは、治安に関わる期待効用(expected utility)の保持のために、集団が取らざるを得ないフォーメーションの為である。よって、予期出来ない事態や、犯人の命でさえ、自殺をさせないという形で、不確実性の離散とリスク回避の形を取らなければならない。しかし、犯人が武力によって、大きな権限を有したわけでは決してない。立てこもり事件は、起こした時点でほぼ死に体であり、全ての行動の導出する結果が時間的に制限され、あらゆる被害の効用は、ショートスパンでは一定の限界内に収束する。


不可避な相反効果 -The Inevitability of reciprocity effect.

2007-05-16 19:15:08 | art music
□ 4枚カード問題 推論と社会ルール

>> http://homepage1.nifty.com/NewSphere/EP/b/psych_cards4.html

上記の、有名なウェイソンの「4枚カード問題」、そして「コスミデスの実験」を例にあげるまでもなく、人間の脳は、自身の利益、不利益について、とりわけ他者の「不正」に関しては、その論理性の認識を最も敏感に発揮するようになっていて、それは人が「社会性」を築く上で身につけて来た、最も原始的なbehaviorの一つだと言えます。逆に、個人の帰属する社会ルールは多様化しており、とくにグローバル化の著しい現在の地球上では、お互いの信条や損得を巡って、「大義は我にあり」な衝突が絶えません。

国家・民族といった、地理的なグループの相反に限らず、宗教、学術、企業間など、あらゆる階層の社会性グループについても同様に対立が生じます。集団とはいえ、それは「個人」の集合ですから、その個人は、自身の利益のために集団を構成しているわけです。究極的には、グループに帰属していなくても、全ての個人は隔絶されながら、何らかの思考パターンを他者と共有、あるいは個別に共時的に展開してます。また、あらゆる言説、思考は、何らかの類型として分類可能なものの、「分類可能」であることと、言論の「本質」は全く次元を異とする問題であることを断っておきます。

では、「人は利益の為に自身に教条を課すものである」これを原理的な命題と置き換えると、「個人の利益」とは何か?という疑問が生まれ、無限に解釈が広がってしまいます。しかしここで翻すと、あらゆる個人の価値観は、それが負荷と関係性を持ち得るあらゆる社会性グループに対して、相補的に構造を成すために必然的に他者と衝突し、相互、或は自身の内において利益相反を引き起こす。言説は、そうやって外部の様々な評価や攻撃、議論によって、打ちのめされることもあれば、より補完され、堅牢に表層を構築していくこともあるでしょう。


しかし人間が備える思考や教条は、時間的に不連続面、そして自己矛盾を抱えていないと、閉塞状態に陥る。同じ考え事や一つの行動原理に縛られたままでは、どこかで自分と対立条項を持つ観念領域を内包する、社会的に「必要な」思考や概念にシフトすることができない。単純に人間は、日常生活を円滑にするために、厳密な論理計算は行わないし、ニュートラルに矛盾を甘受します。そもそも人間の脳は「論理的に」物事を解釈する為に作られたものではありません。これは、人は意識的に「ある問題」に直面する以外の時間では、自己のスタンダードを「忘れている」か、あるいは問題に対応する意識の「セグメント」が統括されていない状態なのだと思います。複合的(Complex)な問題について言及するときは、問題の複雑性から、自己の他の主張と食い違う矛盾のある言及がなされてしまうのも、これが要因として働いていると言えるでしょう。転じて、「問題」とは何か。これこそが、外世界と対立し、議論によって相反し得る教条を人に齎すものなのです。


「議論」の過程における最大の障害は、誤謬による論点のズレと攻撃性の超過です。上の心理テストからも予想できるように、人は時に感情によって論理を扱うことがあります。誰かの言説によって自身の感情が負の方向に刺激された場合、心の何処かでは、その言説が巡り巡って、自身が行動する社会の中で、いつか不利益をもたらすかもしれない、という不安が働くのかもしれません。

ここには、無意識に「周囲の他者」への関心が働いています。人は、自身の振る舞いがそれを取り巻く環境に評価され、審判されることを自覚しており、その中でどうにか対立する観念を打ち負かして、それを他者に認識させたいという欲求があるもの。しかし自身の感情にあまりにも敏感になるあまり、「その人の言っていない」ことまで恣意的に解釈として抽出し、それに対して攻撃をする為の「反定立」を立ち上げ、精神的な充足を得るという事柄が、自覚、無自覚に関わらず、公的な弁論、オルグによる社会システムへの義憤、末端では日常会話といった様々なレベルにおいて、過去から往々と繰り広げられています。こうして問題の核心(あるいは核心の探索)を置き去りにして、自身の利益・不利益のみを追求する議論の仕方は、原初の本能にも近い最も野蛮な攻撃性の一つだと、私自身は考えています。


対照的に、社会的にある程度の規模で認知されている言説と言うものは、一つのマーカーと言い換えられるかもしれません。「誰かが」認識可能な形で刻んだ言論に必然・偶然問わずアクセスする人の中で、共鳴できる者が多数いたとしたら、その言説は創発的に「デファクトな」影響力を持ち得ることになります。例えば、ある研究グループが、多額の資金を必要とする仮説を証明したいと思ったら、支持を集める為の理論的な下地と、周知が助けになるでしょう。そのため、あらゆる個人が持ち得る知識や思考は、例えその社会的立場と関係なく見えていても、創発性を築くという意味で価値を持ちます。「自分が発言すること」は、「誰かが言うかもしれないこと」であって、社会を非平衡な散逸構造とした場合、「自分が発言すること」が「誰かが言うかもしれない」ことの確率分布を決定している、つまり「自分がそうするということ」は、「他人も何処かでそうしているかもしれない」ということ。

だから、世界がこうあって欲しいという願いがあれば、まず己に教条を課すことで、例えその情報が秘匿されていようと、必然的に外部に効果が波及する。「あなたがそうした」ということは、「他所でも起きるかもしれない」という確率に循環的に帰結するからです。自身の意識とbehaviorが、そうやって全体の相の振る舞い(個を以て相を生成する原理的なシステム)から導出されているのかもしれないというパースペクティブでは、全ての一人の人間の内省的な世界に均質に意味を付与することが可能になります。


人は永遠に孤独な存在であって、どんな教条を持ち合わせていようと、人間は恒に1対1の関係性の中でサバイバルを行っているのです。刻々と変わる世界環境によって、社会規範も恒に揺れ動く。結局、観念的な議論と衝突をどう処理するかは、対立する相手やグループとどのような関係を築きたいか、ということに由来し、帰結するだけの問題でしかありません。並び立つ矛盾と逆説。「ものを言うことの胡散臭さ」あるいは「沈黙の欺瞞」の選択を超えて、あらゆる言説や観念を構成する信号を組み替えながら、あなたにはこの世の不条理と戦う意識が委ねられています。迷い、見失うことがあれば、自分の感情を苦しめるものは何か、根拠の定かでない損得勘定に意識を割いてはいないかと自戒し、おそらく人はもっと、「忘れること」の意味を知るべきなのです。






□ tunes of the day

□ Steve Reich / "The Cave"

Act III:New York City:The Binding of Isaac
Act III:New York City:The Cave of Machpelah

ライヒの実験的で巨大、且つ超絶的な合唱作品。タイピングを模したパーカッション、聖書に言及したボイステクスト、それをなぞるストリングス、リフレクトする混声合唱が複雑に折り重なります。

作品のテーマは、「Who is Abraham?」。
アブラハムはメソポタミアに生を受けた、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教共通の預言者。タイトルの"The CAVE"は彼の墓が納められているというMachpelahの洞窟を指しています。これはエルサレム、ニューヨークにおいて、イスラエル人、アメリカ人という宗教、文化、政治的な枠を超えて、それぞれの個人的なアブラハム観をインタビューし、そこから生じた対話のテクストを音楽におこしたもの。人が生きる上で抱える教条の源泉とは何か、様々な出自や立場を持つ人々が、それぞれ宗教や伝説とはどう関わり、どう捉えているのかを対比によって浮き彫りにし、俯瞰的なダイナミズムで描いています。終盤の、オーケストラ、テープ、クワイアの各パートがゆっくりとほどけるように遊離して、全楽曲を総括するシークエンスは、得も言われぬ解放感に満ちています。


Delerium / "Lost and Found" Promo Maxi Single.

2007-05-11 03:27:21 | delerium
□ Delerium / "Lost and Found" promo

Lost and Found (DJ Dan Club Mix)

Release Date; 09/05/2007
Label; Nettwerk Records
Cat.No.; none
Format; 1xCD

>> tracklisting.

1. Lost & Found (DJ Dan Club Mix) 8:55
2. Lost & Found (Jaded Alliance Club Mix) 6:58
3. Lost & Found (Blank & Jones Late Night Remix) 6:01
4. Lost & Found (Blank & Jones Electrofied Remix) 9:39
5. Lost & Found (DJ Dan Radio Edit) 3:07
6. Lost & Found (Blank & Jones Radio Mix) 3:29
7. Lost & Found (DJ Dan Dub Mix) 8:51


Delerium / "Nuages Du Monde"からの2nd Single Cut、"Lost and Found"のPromo CD Maxiが先ほどリリースされました。正規盤のリリースは未定ですが、おそらく"Angelicus"同様、ダウンロード販売のみになるのではないかと思われます。

残念なから今回のリリースには、これといって呼び物になるようなキラートラックはなし。どのリミックスもハウス/ファンク系の地味なトラックです。"Angelicus"のAndy Moor Remixがあまりにも良過ぎた。。。のもあるのでしょうけど。Jaded AllianceはConjure One / "Face the Music"にも参加していましたね。エレクトロ・ファンクな尖ったリミックスに仕上げています。USのベテランハウス・プロデューサー、DJ Danは流石の手堅いサウンド・コンストラクションで飽きさせずに最後まで聴かせてくれます。後半の抜けるようなパッド・エフェクトがニクイ。

Blank & Jonesは、"Nuages Du Monde" Japanese EditionのBonus Trackに提供した"Late Night Remix"の他に、より深いDubアレンジを施したテックハウス系のサウンド、"Electrofied Remix"を収録しています。良くも悪くも無難な音。




□ Shelly Harland launched "harght music"

>> http://www.harlandmusic.com/

ニューアルバム、"Red Leaf"のリリースを控えているShelly Harlandが、自身のレーベルHarght Musicを立ち上げたそうです。過去のソロアルバムは同レーベルから再発売、iTunesで購入可能となっています。因み、彼女が参加している現在進行中のプロジェクトは以下の通り。

Guru ? Jazmattazz “Follow the Signs"
http://www.myspace.com/guru7grand

Loverush UK ? “Different World”
http://www.myspace.com/loverushuk

Pole Folder - 4 releases this year
http://www.myspace.com/polefolder

Headstrong ? “Helpless” and working on more tracks
http://www.myspace.com/donjacksonheadstrong

DJ Rap ? currently writing with her
http://www.myspace.com/therealdjrap


何と言っても、Pole Folderとの新曲が楽しみです。"Zero Gold"の壮大なリードトラック"Abrasion"と"Fall in Violet"はどちらも本当に名曲だったので、"4 Releases"という部分には期待してしまいます。彼女をフィーチャーしたアルバムも作れるのではないでしょうか。。



□ Tunes of the Day

□ elfy / "Lisa sans son étoile"

Dialogue Avec L'ange
Lisa Traine
Les Astronautes Et Les Princesses

>> http://elfyka.canalblog.com/
>> http://www.myspace.com/elfyka

フランス発のトリップホップで、流星の如く出現して一瞬のきらめきを遺して消えてしまった幻のアーティスト、elfy。と思っていたら、上記サイトで確認できるように、elfy kaと名義を変え、水面下で作曲、コンサート活動を続けているようです。myspaceでは幾つか新曲が試聴できますね。

作風は、Robertからオカルト色を抜いてライトにした感じの、薄暗いアコースティック/エレクトロポップ。こちらもなつみるくさんに頂きました。彼女の部屋では、elfyが静かに流れながら、うさぎが草をムシャムシャしてる。あたりにはカラフルな針山がコロコロ転がっている。そんなイメージがついて離れません。。。


Kettel / "Whisper Me Wishes" preview.

2007-05-08 15:26:45 | music4
Whisper



□ Kettel / "Whisper Me Wishes"

Release Date; tba
Label; Clone Records
Cat.No.;Dub cd 14
Format: 1xCD

>> http://www.clone.nl/item9313.html
>> http://www.myspace.com/captainkettel
>> http://www.myspace.com/violoncellist

Reimer EisingのKettel名義による最新フルレングス・アルバムが近日リリース予定。2003年のEP、"the Cuddle and then Leave"に、新曲9曲を追加したもので、新曲では同じオランダのチェリスト、Sietsejan Weijenbergによるフィドルをフィーチャーした、より静謐でクラシカルなトラックに仕上がっているとのこと。Clone Recordsのサイトで試聴できます。

この人はほんとに多作なので、いちいちチェックが追いつかない。。。今年3月には本人による高音質アレンジとボーナストラックを追加収録した、"RE:Through Friendly Waters"も発売されています。個人的には、"Volleyed Iron"のようなアートウェイヴ調の純アンビエント作品をまた作って欲しいですね。今年始め頃に行われた日本ツアーも成功に終わったそうです。数年前までは、ここまで人気が出るとは想像出来ませんでした。





□ National Geographic 日本版 5月号

>> http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/index.shtml

特集『ジェームズタウンの遺したもの』が面白い!!
入植がもたらした生活環境と自然環境の劇的な変化、疫病の流行、そして干ばつと交易の破綻が招いた、部族連合ポウハタンの襲撃。Charles C. Mann("1491"の著者)による『植民地建設当時のアメリカ』は必読です。上記オフィシャルにて全文読めますので、是非チェックしてみてください。本誌では先住民世界の地図や、様々な遺物の写真を併せてご覧になれます。キリストの磔がトライバル調に彫られた黒い鉱石の十字架が目を引きます。

Salt
この写真はGoogle Earthからのキャプチャ。National Geographic本誌でも紹介されている、オーストラリアのシンプソン砂漠に描かれている数十kmスケールの模様。自然発火によってソルトブッシュが焼かれて露出した土壌で、風向きが炎の方向を変えるため、このような「絵」が出現するんだそうです。赤いのは鉄分を多く含むため。これは目立つようにレタッチしました。他に紹介されているものでは、衛星から埋没部分を地磁気で画像解析した、シリアの古代都市アルラウダの全容も興味深いものがあります。




□ Tunes of the Day

□ Lisa Ekdahl and Peter Nordahl Trio/ "Back to Earth"

Down with Love
If I were a Bell

ポップ・アーティストとジャズ・シンガーの二つの表情を持つ『スウェーデンの妖精』、リサ・エクダール。声がメチャ可愛い♪ジャズ・スタンダードで湿っぽさには定評のある"Nature Boy"も、彼女が歌うと驚くほど純な響きに(笑)声質がフラットでスムースに通り抜けてしまうので、ジャズにはミス・マッチだと思われる方も居るかもしれませんが、そこに味わいがあって良いようです。

"If I were a Bell"は、学校のチャイムでお馴染みの鐘の音をアレンジしたもので、オリジナルはFrank Loesserがブロードウェイのミュージカル"Guys and Dolls"に作曲した劇中歌をアレンジしたジャズ・スタンダード。The Miles Davis Quintetによるアレンジが最も有名でしょう。ちなみに、あの鐘のメロディは、ロンドンのBig Benの鐘の音がモチーフ。

尚、このCDは、なつみるく(美少女)さんによって寄贈されたものです。彼女から頂いた音源はほぼマスターピース化しております。ここに深甚なる謝辞を申し上げる。m(_ _)m


abstract: Breaking the Antinomie. (反定立が両立するという矛盾を媒介して矛盾を成り立たせる。)

2007-05-06 04:14:02 | Science
カントによれば、数学的二律背反と論理的(力学的)二律背反は区分されるものですが、論理命題を数学的に転写し、かつ数学的に定立と反定立が「重なり合う」ように成り立つ空間がアーキテクトできないだろうか。試料としては、無限級数、論理密度、様相論理学及びユニタリー行列の概念を用いる。制約プログラミング、プロセス工学における非線形代数方程式系の応用をステップとして参照する。思索的要素として、クリプキの「プラス・クワスの懐疑論(plus/quus hypotheses)」(論理体系の局在性、哲学の非普遍性)、また、カントの二律排反という概念が、ヘーゲルによって「悟性的思惟」として退けられていることも念頭に置く。

[ex.]
A→Bという論理展開において、Bに至るまでの論証の手順は無限に考えられる。A→(1→)(2→)Bという道筋もあれば、A→(1.05→)(2.01→)(C→)Bなど、記述される論理的手続きが、「記述されるたびに」数式全体として真性を保持する為に、フレームを変える。それは、あらゆる論理性が導く論証の様相について固有の「定性的な」形状を持つかもしれない。



[可能性]
思弁的論理性の可視化の一般化。
観念的対立条項の計算による解決。