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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Delerium / "MYTHOLOGIE"

2016-09-26 23:53:25 | delerium



□ Delerium / "Mythologie"

>> http://delerium.ca
>> https://metropolisrecords.bandcamp.com/album/mythologie

Release Date; 23/09/2016
Label; Metropolis records
FORMAT; 1xCD, DIGITAL

>> tracklisting.


01. Blue Fires  (featuring Mimi Page)
02. Zero  (featuring Phildel)
03. Keep on Dreaming  (featuring Jaël)
04. Stay  (featuring JES)
05. Angels  (featuring Mimi Page)
06. Ritual  (featuring Phildel)
07. Seven Gates of Thebes
08. Ghost Requiem  (featuring Geri Soriano-Lightwood)
09. Once in a Lifetime  (featuring JES)
10. Made to Move  (featuring Mimi Page)
11. Continuum  (featuring Leah Randi)
12. Dark Visions  (featuring Mimi Page)


□ "Dark Visions"





□ "Continuum"






□ "Blue Fires"




"dark ethereal and ambient soundscapes along with several lyricists blending their signature atmospheric sounds with a unique, modern edge."


カナダのエレクトロポップ・デュオ、Deleriumの15th Album。今作はメジャーレーベルNettwerkを離れ、彼らの本体プロジェクトであるFront Line Assemblyが属する古巣Metropolisからのリリースとなる。

プロデュース陣はBill Leeb、Rhys Fulberの中心メンバーに加え、近年FLAに加入した Jared SingerlandとCraig Johnsenを起用。ここに来てFLAと全く同じ構成メンバーによるトラックメイキングを執ることにより、Deleriumは初めて、本当の意味でFLAのペルソナの別側面と言えるようになったのかもしれない。


また、これを機に女性ヴォーカリスト陣もフレッシュで瑞瑞しい顔ぶれに一新されており、サウンドも従来どこか後ろ髪を引かれるような『New Age』への目配せがあったスタイルを捨て去り、完全に『今風』なEDMの時勢に振り切れた、洒落たポップセンスを披露している。特に今作のソングライターとして最も特徴的と言えるMimi Pageは、アルバム全体のコンセプトさえ決定づけている。


事実、"Mythologie"に収録された12曲は、それぞれが個性的なヴォーカリストをフィーチャーした、個々に独自の世界観を持つ楽曲であるものの、そのサウンドディレクションはこれまでにないほど統一され、かつDeleriumに取って新境地となる分野に踏み出している。高音域のパッドやアトモスフィア、コーラスの重層的な響きは、どちらかというと過剰にフェミニンでセンチメンタルな印象を抱かせてきた後ろ暗い陰を、眩い光の中に葬り去るような力強ささえ感じられ、そのコンセプチュアルなサウンドは、Dave McKeanのデザインしたジャケットアートにも象徴的に描かれている。


逆説的だが、音楽マーケットの最先端書法に乗るというやり方は、むしろ彼らの本体ユニットであるFLAのディレクションに強く表れている。しかしそれは、ダブステップやダウンステップを取り入れながらも、彼ら独自のダークで肉体的なシンセワークに融合された、尚『異次元』の音楽であった。Deleriumにおいては、その特徴的なポップ書法であるレトロな音色のアルペジオ、メランコリックなベースライン、もはや錆び付いたブレイクビーツなど、Deleriumとしてリマーカブルされる軸は依然として研ぎ澄まされている。



そして恒例のインスト曲のうち"Continuum"は、"Spheres"時代のDeleriumのサイケデリックな思想世界の当世的解釈とも言えるサウンドであり、15作を経て連綿と紡がれた、彼らの進化の極点を垣間見ることが叶う楽曲である。この『神話』をしたためたページの果てを、我々が未だ知ることはない。




JÓHANN JÓHANNSSON / "Orphée"

2016-09-17 23:10:27 | music16



□ Jóhann Jóhannsson / "Orphée"

>> http://www.johannjohannsson.com

RELEASE DATE: 16/09/2016
LABEL: Deutsche Grammophon
FORMAT: 1xCD


TRACK LIST

01. Flight From The City
02. A Song For Europa
03. The Drowned World
04. A Deal With Chaos
05. A Pile Of Dust
06. A Sparrow Alighted Upon Our Shoulder
07. Fragment I
08. By The Roes, And By The Hinds Of The Field
09. The Radiant City
10. Fragment II
11. The Burning Mountain
12. De Luce Et Umbra
13. Good Morning, Midnight
14. Good Night, Day
15. Orphic Hymn


□ "Fragment II"





□ "A Pile Of Dust"



“Wowing listeners with his unique blend of subtle electronics and epic orchestral flourishes” FACT


アイスランドの現代音楽家、フィルムコンポーザーであるJóhann Jóhannssonのフルオーケストラ作品。"The Miners’ Hymns"以来、6年ぶりのアーティスト・アルバムとなる。


オウィディウスの『変身物語』の題材であるオルフェウス神話にインスパイアされた今作は、技術史をテーマにした"IBM 1401, a User´s Manual"から、"Fordlandia"等の大作主義の流れを汲むことなく、全15曲それぞれが粒揃いの小品集といった印象を与える。然し一曲一曲にミニマルな構成を組み敷いているものの、オーケストラからエレクトロニクスまで幾つものレイヤーを薄氷のよう繊細に積み重ねた音色は、静謐で儚く、かつ耽美な箱庭を形成している。



ポストクラシカルの最先鋒でありながら、現代作曲家としてはショスタコーヴィチやプロコウィエフ、ウィリアム・ウォルトンやコルンゴルトなどと並び賞賛され、映画音楽家としては次世代のトーマス・ニューマン、マイケル・ナイマンとの呼び声も高いヨハン・ヨハンソン。彼にとって神話的美しさの象徴的な存在であるオルフェウス詩というテーマは、芸術の底流にある変化や愛、そして死といったメタファーと対峙する、一人の表現者としてのマイルポストなのかもしれない。



"A Pile of Dust"や"Fragment II"、"The Burning Mountain"、"Good Morning, Midnight"などの音の欠片から想起されるのは、炎や火花のように散りばめられた、息を呑むくらいに美麗な刹那の陰影であり、エフェクターを通して増幅される儚い音像が、1990年代の前衛室内楽を思わせる手法により、純度の高い悪夢のようなモンタージュを醸し出している。実験音楽の黎明期からの伝統書法であるテープループは、ジャン・コクトーの1950年の映画『オルフェ』から、「ロールス・ロイスのラジオから流れる暗号メッセージ」を引用したものだという。


オウィディウスの詩に基づいて作曲され、ポール・ヒリアー率いるTheatre of Voicesをフィーチャーした"Orphic Hymn"は、ヨハンソンが今作の完成までに費やした6年という研鑽の歳月を締めくくるに相応しい、荘厳な合唱曲に仕上げられている。