□ Múm / "Go Go Smear The Poison Ivy"
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Blessed Brambles
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Dancing Behind My Eyelids
Release Date; 24/09/2007
Label; Fat Cat
Cat.No.; FATCD46LTD
Format: 1xCD
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http://www.myspace.com/mumtheband
>>
http://fat-cat.co.uk/fatcat/release.php?id=233
>>
http://mumweb.net/
>> tracklisting.
1. blessed brambles
2. a little bit, sometimes
3. they made frogs smoke ‘til they exploded
4. these eyes are berries
5. moon pulls
6. marmalade fires
7. rhuubarbidoo
8. dancing behind my eyelids
9. school song misfortune
10. i was her horse
11. guilty rocks
12. winter (what we never were after all)
13. the amateur show (japanese edition only)
Gunnar Örn Tynes
Örvar Þóreyjarson Smárason
Ólöf Arnalds (violin/viola/guitar/vocals)
Eiríkur Orri Ólafsson (trumpet/pianette/moog/whistling)
Hildur Guðnadóttir (cello/vocals)
Sigurlaug Gísladóttir [mr.Silla] (vocals/various)
Samuli Kosminen (drums/percussion)
Ingibjörg Birgisdóttir (artworks/video)
Múm / "They Made Frogs Smoke Til They Exploded" Video.
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-Kids torture animals and may feel like they are learning something in the process,
but that doesn't make it any less wrong.
-子供は動物を虐待する。そしてその過程で何かを学んでいると感じているかもしれないが、
それによって誤りを少なくする訳ではない。
-Örvar
アイスランドに限らず、北欧・ゲルマン系の古代伝承には、童話的な幼さを臭わす視点から、明快な暗喩を用いながら不気味で残酷な世界観を描き出すものが多く、それは時に性格付けられた動物の野性や、あまりにも感情的で尊敬し難い幼稚な神々の争いに姿を映してきた。
古来から極寒の地で生き延びる為に、人と人、あるいは自然との関係性に希求せざるを得なかった民族性が育んで来た独特の詩情は、ある面で人間の優しさや社会性を裏打ちして支える無垢な残虐性を、普遍的で愛でるべき性質として暖く受容しているような印象さえ感じられる。
Múmの最新作"Go Go Smear The Poison Ivy"(蔦うるしをこすりつけて)は、誰しもが幼年時代、あるいは内面に持ち続ける子供心の無邪気さ、その裏返しにある残酷な遊び心を、あたかも童話の挿絵のように彩色されたキャンパスを暴力的に蹂躙するが如く、オテサーネク的世界に玩具箱をひっくり返したような音楽と、様々な暗示と寓話性、性的なメタファーを散りばめて、血なまぐさい野蛮な本能と抗い難い性欲の感覚を、下世話で深遠な笑いに従えるユニークな詩と共に紡ぐ。
『感じてごらん
月がきみの恋人たちの血を
ひっぱる力 空へと』
ー"moon pulls"
『子猫の首を折ってしまったら、
体を揺すって生きているか死んでいるか
確かめなくちゃいけないよ』
ー"they made frogs smoke ‘til they exploded"
『この実は目
きみの目 ぼくの目
鳥たちはふりむいて
それを見つめてる
食べたがってる』
ー"these eyes are berries"
『いっぽんの鉛筆がきみの肌を破り
汚れた骨に落書きする
きみのズボンは地面にずり落ちて
罪深い石ころでいっぱいになる』
ー"guilty rocks"
??対訳:喜多村 純
昨年まで、Múmは各地のメディアでのパフォーマンスや、Remixプロデュースに引く手数多。(その中には、あのオランダ室内管弦楽団と競演したIannis Xenakisの演奏も含まれる)バンドとしての活動の外においても、中心人物の一人、Gunnar Örn Tynesはライブやソロ活動、もう一方のÖrvar Þóreyjarson Smárasonは2冊の著書を執筆するなどの個々の活動に追われ、その間にバンドの最大の特色であったヴォーカルのKristín Vlatýsdóttirの脱退という大きな転機を迎えます。
4thアルバムとなる今作では、リリースを重ねる毎に欠員を出してきた、その穴を補って有り余る如く、それぞれ異なるキャリアとバックグラウンドに裏付けされた5名の新メンバーを加え、7ピースユニットとして復活を遂げました。レコーディングはÍsafjörðurにある音楽学校をはじめ、アイスランド各地を巡って、時には野外の環境音なども利用して、演奏そのものだけでなく、周囲の空気感も取り込むような形で行われたそうです。
驚くべきはメンバーを一新したことで、Múmとしての作風やアイデンティティは全く損なわれていないどころか、楽曲によっては、記念すべき1stアルバム"Yesterday was Dramatic - Today is OK"のような柔らかいクリック・ハウス色に回帰した節が見られること。しかし、従来に比べて音色のレンジがもっと広い。そう、ビートの粒立ちに決定的な進化が聴き取れます。これには、"The Peel Session"でも競演したフィンランドのパーカッショニスト/プログラマー、Samuli Kosminenの仕事が際立っています。
Samuli KosminenはKronos Quartetとも競演経験のあるスペシャリストで、鉄くずや空き缶、ハンドクラップといった、ありとあらゆるものの打撃音を音楽のピースとして採集、カオティックに何層にも積み木の如く組み上げてエレクトロビートにコラージュし、時には異なったリズムを重ねながら、目の眩むほど肉厚感のある有機的なビート・ストラクチャを構築しています。
その他、今作の初期段階から共同プロデュースも兼ねたEiríkur Orri ÓlafssonはBenni Hemm HemmやSigur Rósのツアーメンバーとして参加経験のあるパフォーマーで、トランペットや口笛の他、MoogやPianettaなどの各種電子演奏もこなしています。ボーカルをはじめ、ギターやヴィオラなどの各種弦楽器を担当するÓlöf Arnaldsは、ソロアルバムも発表している女性マルチ・プレーヤー。加えて、チェリストとして多岐に渡る活動をこなすHildur Guðnadóttirと、ボーカル他マルチ・パフォーマンスを担うmr.Sillaが、紅3点、新たな女性メンバーとなっています。
各メンバーによるフィドルやホーンといった生楽器の室内楽的な味付けは、パレード的でありながら何処か薄ら寒い明るさを帯びて、尚も痛快に響く。手を伸ばせばまるで触れてしまえそうな、歪でザラザラした触覚、さらには痛覚までも刺激し、匂い立つような音の絨毯。古紙に染みを落としたような掠れて捻れたノイズ・エフェクト。リコーダーとハーモニカ、児童のコーラス、Moogやオルゴール、ベルと群れ鳥の鳴き声、ラジオから流れる年代的なポルカ・・・。幼児期の鮮烈な体感の残滓と郷愁が渾然となった世界を描き出す為に、Múmはキャンパスにぶちまける音の素材を選ばない。思いついたままをノートに走り書きするように、その全てが凝縮されている。
異彩を放つのは、全編が寒気のするようなコーラスのレイヤーで構成されたアンビエント・トラック、"winter (what we never were after all)"。無垢で野蛮な悪戯に穢された大地が(しかしそれが必要であったかのように)、深々と降り積もる雪によって覆い隠され浄化されていく情景が目に浮かぶようです。
GydaとKristínの双子が在籍していた頃から、暗く荒涼とした世界観を描き出した"Finally We Are No One"、そして"Summer Make Good"においても、一貫して、幼い残酷さを『痛み』の伴う直接的な情景描写で表現し続けたMúmの作品性。特定の「身体の部位」のモチーフと描写を執拗に繰り返す詩型は、アイスランド童謡の特徴や古来の伝承に通じるものがある。
かつての不穏に凪いだ雰囲気の片鱗は息を潜めているものの、表面上は明るくなった"Go Go Smear The Poison Ivy"のサウンドは、紙一重のパラノイアに瀕した、もっと畏怖すべき狂気を湛えながら、自然界における人の残酷さに必然性と普遍性を見出し、それ以上の優しさに抱擁されたポテンシャルの高い芸術性を認めることが出来るでしょう。そして何よりも、そこにはアイスランドだからこそ育むことが出来た豊かな風土と精神性の逞しさの存在があることを忘れてはならない。
まるで紙芝居を思わせる可変式のジャケット・アートが秀逸。裏表にオリジナル・アートが施されたスリーブが4枚付属していて、前面の額にスライドすることによってアートワークを7通りに入れ替えることができます。イラストを手掛けたのは、"They Made Frogs Smoke Til They Exploded"のVideoも手掛けたIngibjörg Birgisdóttir。ただ、鉛筆と水彩という手法で描かれた人物画は、Örvarの作風です。CDレーベルのリスがカワイイ。
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Blessed Brambles.
bless the weeds that grow the earth
bless like rain and dogs that pee
bless the dogs who talk to ferns
let's kiss the boys who pee in mud
úúúúúúúúú
úúúúúúúúú
bless the weeds that grow the earth
bless like rain and dogs that pee
bless the dogs who talk to ferns
let's kiss the boys who pee in mud
kiss the girls who clean the trees
bless the pee that cleans their leaves
kiss the hands that spread manure
you go go smear the poison ivy,
let your crooked hands holy
bless the dogs who talk to ferns
bless the pee that cleans their leaves
kiss the hands that spread manure
you go go smear the poison ivy,
let your crooked hands holy
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『祝福された木苺』
幸あれ 土の上に茂る草に
祝福を 雨や、おしっこする犬のように
幸あれ 羊歯の葉に話しかける犬たちに
キスしよう 泥の中におしっこする少年たちに
ウウウウウウウウウ
ウウウウウウウウウ
幸あれ 土の上に茂る草に
祝福を 雨や、おしっこする犬のように
幸あれ 羊歯の葉に話しかける犬たちに
キスしよう 泥の中におしっこする少年たちに
キスしよう 木々をきれいにする少女たちに
祝福を その葉をきれいにするおしっこに
キスしよう 堆肥をまく手に
さあ ツタウルシをこすりつけて
ねじれた手は清らかな手に
シダの葉に話しかける犬たちに幸あれ
祝福を その葉をきれいにするおしっこに
キスしよう 堆肥をまく手に
さあ ツタウルシをこすりつけて
ねじれた手は清らかな手に