lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

equivalent causality - abstract.

2009-11-24 19:07:25 | Science
Equivalence


量子論における観測問題は、宇宙における存在を解き明かす根本原理に関わりながら、未だ議論の紛糾が絶えない命題の一つである。


「波束の収斂」が確率的にもたらす決定論的世界の選択(分岐)。最新科学ではEPR問題の情報因果性による合理性や、「シュレーディンガーの猫」の微小時間的な可逆性が実証され、相対論と量子論の矛盾を埋めながらスタンダードを構築しつつある。

しかし量子や場といった概念の根源的な実在性については、広大不可侵な領域が残ったままであると言わざるをえない。コペンハーゲン解釈最大の「間隙」である、「観測者も系に含めた記述」を完成させようと、現在でも多様な理論化の試みが為されている。


それらの普遍な分岐点として、「観測」に対して「いつ収斂が起こるのか」というポイントが挙げられる。如何なる解釈に置いても、その「因果」の有無が観測問題の要点なのだ。現代物理学においては、この因果を生成するシステムを記述する術が無い。



私は、量子系において「因果」を証明できないものは「因果同値」であると仮定する。(そのダイナミクスは不完全性定理の系外にあたり、カオス系における有限なLyapunov timeをとる。)そこが記述の為のフレームであると考えるのだ。線形力学などにおいて因果の方向性を同値モデルとする概念自体は知られているが、これを量子観測の分野にあてはめる。


「観測行為」から「収斂」は「因→果」であり、「収斂」から「観測行為」は「因→果」であるという、4対1組のユニットを骨子として構造をモデリングする。量子の運動状態は観測結果によって決まる(主観者と関係性を持った時点で顕在化する)とはつまり、『鏡に付き当たったように』量子の運動状態が観測者の行為を決定すると同義となる。そしてこれは物理原理に照らしてより最もらしく聞こえるだろう。



実際に記述されるシステムは、このような同時発生的「因果ユニット」が複数の離散する次元を跨いだ格子連結的で複雑なモデルを形成するだろうと予想する。そして量子の非局所性は、これらのユニットの連結によるフレームとの空間的な関係に依存して決定すると思われる。

離在する要素間に非構造な関係性が生成されるのも、質量が偏在化するのも、上記のシステムに準位した励起エネルギー間の非共変的な連絡が素になっていると捉えることが可能ではないだろうか。


行政刷新会議 科学事業評決がついに見直し

2009-11-23 09:44:50 | ニュース
□ lens,align.:第三回行政刷新会議~科学事業評決の過ちとリスク (参照)


11/22…民主党は、行政刷新会議の事業仕分けで大幅削減とされた科学技術関連の概算要求維持を表明。特に事実上の凍結とされたスパコン分野の評決を全面撤回。当初の予算要求を通す考えを示した。

当然ながら、あまりにも批判が多かったのだろうが、反論を遮るくせに、事業主側に一方的に説明責任を被せる態度は未だにナンセンス極まりない。(「議論の方法論」という面において劣勢にあったのは、一定の責任がある。)とすれば、 仕分け側の「有識度」「事前調査の信用性」が皆無だったと暴露しているに等しいだろう。それならなぜ事業主の説明を聞こうともしなかったのかと、「事業仕分け」そのものの手法の根本的な問題が浮き彫りとなった形と言える。


一番の問題として、仕分け側のキークエスチョン(論点)に、そもそもの大きな事実誤認や「ズレ」が生じている場合、追求される事業主側は論題の趣旨にまで遡って反論を行う必要がある。しかし、仕分け側はキークエスチョンの乖離を「議論すべきでない部分(不可触な前提事項)」として、異論を受け付けないのだ。特に効果や意義に様々な意見があり、実践されながら議論を徹底するべき科学技術分野とは致命的に相性が悪いと言わざるを得ない。

(※ 11/26...実際に財務省が事実誤認の資料でミスリードを冒したGXロケット評決に至っては、仕分け人の枝野氏はことごとく開発者の反論を「遮って」聞こうともしていない。焦点のズレた質問に「答えることしか許されない」ので、あのような結果を招いたのだ。)


仕分け側にいわゆる「学者」がいないのも不可思議な話だ。自称「事情通である」という民間の有識者は、専門家ではない。そして彼らは「学者は保身のために自己撞着する」とのたまう。では「誰の」知識によって事業の正当性を評価すれば良いのか。要するに、自己撞着に陥っているのは科学分野を評決する「事業仕分け」という議論の形そのものであったという顛末なのだ。


Enigma - "The Lost Ones" all samples & site Relaunched.

2009-11-21 14:35:10 | Enigma
Eptc1


>> http://www.Enigma.de/
>> http://www.enigmaspace.com/


□ Enigma / "The Platinum Collection"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>The Lost Ones (Preview)

(All track samples provided by Andru Donalds at Facebook.)

Release Date; 27/11/2009 (Delayed at Germany)
Label; Virgin
Cat.No.; tba
Format: 3xCDs & Downloads

Eptcback


>> Bio: Platinum Collection (emimusic.de 22/10/2009 added.)
>> lens.align.: Enigma the Platinum Collection revealed. (summary)


間近に迫ったEnigma "The Platinum Collection"のリリースに向けて、オフィシャルサイト・リニューアルなどの動きが目立ってきました。ファンに向けたプロモーションとしては、まだまだ何かが隠されているらしいです。


"The Lost Ones"ですが、先日から各所で公開されている試聴サンプルの情報も統合してみる限り、この20年来の『お蔵出し』ではなく、"Seven Lives Many Faces"からのInstrumental Out Tracks集といった方が良さそうです。SLMFで採用されたメロディやピースの別アレンジが散りばめられたアンビエント・アルバムですね。


あとはインナーブックレットとリマスターについてですが、もともと企画色の強いコレクターアイテムなので、コンテンツ面では、あまり過度な期待を抱かない方が良いかも...


Star Walk - 手のひらに星空を

2009-11-20 13:34:45 | デジタル・インターネット
Starwalk_2


□ Star Walk - the Virtual Astronomy

>> Star Walk 3.3
>> http://vitotechnology.com/star-walk.html

Apple iPhone Software
Version: 3.3
Update: 19/11/2009
Vito Technology Inc.

Iya2009
http://www.astronomy2009.org/resources/products/starwalk/


Star Walkは、人と天体や天文学とを近づけてくれる、天体観測アプリケーションです。星、星座、惑星、メシエ天体の完全リストに加え、月の満ち欠け、ウィキペディアへのリンク、さらに、時間を進めたり戻したりして天体を見ることができるタイムマシン機能があります。
このアプリケーションはIYA2009(世界天文年2009)により認められ、現在はその公認プログラムとなっています。


-iPhoneappreview.comにて10/10と評価されました
-148apps.comにて4.5/5と評価されました
-App StoreのWhat's Hotに選ばれました



機能:

・GPS+Tiltセンサー連動による"Star Spotter" (iPhone 3GSのみ)
(※観測者が天球にiPhoneを翳すと、その視点に追従して星空とデータを表示する。)

・デジタルコンパス連動
・APOD (本日の天体画像)
・地球から見た3Dビュー
・タイムマシン
・月の満ち欠け
・ウィキペディアへのリンク



"Star Spotter"
</object>


"Star Walk 3.0"
</object>



永劫の如し秋夜を点滴す』(日野草城)

天球高く聳立する秋。
しかし女心となんとやら…泣き焦がるような空模様に目が滲みて、今頃過ぎ行く獅子座流星群も侘びしんでいたのだけど、ここ数日はベッドから空にiPhoneを翳して、寝ながらの星空遊泳を楽しんでいます。


Best iPhone Appの呼び声高い"Star Walk"。最近トレンドの“エアタグ”に類する技術で、ユーザの空間とインタフェース上の空間を連結してデータを提供するというもの。3GSのセンサーに連動した"Star Spotter"は、まるで液晶の界面に星空を映しとるような未知の体感を味わえます。

SkyVoyageurやiStellaなど同様の天文アプリケーションは数あれど、ライトユーザに相応しいシンプルな内容でありながら、GPS・Tiltセンサーの追従性における頭一つ抜いた性能で支持されているようです。


iPhoneの動きに合わせて星座が次々とシルエット付きで表示されて行く様は、まるで星空の舞踏会のよう。iPodで音楽を流しながら鑑賞したり、ひたすら一つの惑星の軌道をホーミングしたり、同じ場所の何年も前の星空を眺めてみたり、単なるレファレンス以上の楽しみ方ができるアプリケーションです。



人の「心」と「外世界」を結びつけるデバイスとして、これほど一般的に普及できる形で提供されるものはまだまだ決して多くないですよね。こういった機能を安定的に提供できるiPhoneそのものの可能性はもちろん、デバイスとシステムの新しい関係性を提案していることにもっと大きな価値があるのかもしれません。


Starwalknavi


□ tunes of the day

□ Jonn Serrie

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>The Stargazer's Journey



□ Paul Webster feat. Angelic Amanda

Time (Sean Tyas Dub Mix)




_*



STING / "If On A Winter's Night..."

2009-11-19 20:25:00 | art music
Ioawn


□ Sting / "If on a Winter's Night..."

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Christmas at Sea
Cold Song

Release Date; 27/10/2009
Label; Deutche Grammophon
Cat.No.; UCCH-9008
Format: 1xCD + 1xDVD
Note: Japanese Edition includes Bonus Tracks

>> http://stingwintersnight.com/


>> tracklisting.

CD - "If on a Winter's Night"
01. Gabriel's Message
02. Soul Cake
03. There Is No Rose Of Such Virtue
04. The Snow It Melts The Soonest
05. Christmas at Sea
06. Lo How A Rose E'er Blooming
07. Cold Song
08. The Burning Babe
09. Now Winter Come Slowly
10. The Hounds Of Winter
11. Balulalow
12. Cherry Tree Carol
13. Lullaby For An Anxious Child
14. Hurdy Gurdy Man
15. You Only Cross My Mind In Winter
16. Bethlehem Down
17. Blake's Cradle Songs
18. Coventry Carol


DVD - The genesis of "If on a Winter's Night"
1. Mystery And Storytelling
2. A Primal Memory
3. Shaping The Repertoire
4. Inviting Chaos
5. Outside Their Comfort Zone
6. Slowly Coalescing



All songs arranged by Sting and Robert Sadin

Sting - Vocals, Guitar, Lute
Dominic Miller - Guitar
Kathryne Tickell - Violin
Vincent Ségal - Cello
Julian Sutton - Melodeon
Mary Macmaster - Harp
Ibrahim Maalouf - Trumpet
Ira Coleman - Bass
Strings of the Musica Aeterna Ocrhestra




ホワイト・クリスマス?勘弁してくれ
クリスマスには深い孤独と疎外感を覚える人も多いだろう。この音楽がそんな人たちの慰めになればいいが。


スティングがドイツ・グラモフォンから送り出す2作目のClassical Album。『冬』に纏わる神話や伝承歌を扱った、古風でありながらトラッド・フォーク・クラシック、その何れにも属さない斬新な息吹が吹き込まれた作品です。また、寒い季節に生まれた音楽を更に深められるよう、主だった録音のほとんどは冬のトスカーナに演奏家が介して行いました。


前作、"Songs from the Labyrinth"が、全編に渡ってJohn Dowland (1563-1626)のリュート舞曲のカヴァーであったことについて、彼のバックグラウンドを知る者にとってはもちろん、元々彼の音楽性に中世舞曲に通じるようなエスプリを感じ取っていた私のようなリスナーには、意外というよりも寧ろようやくといった味わい深い出来事だったのだけど、今回カヴァーされているPPMの"Soul Cake"において、紀元前に端を発する原曲のアイデアに基づいて正に「エスタンピ(中世の輪舞曲)」の如き一時の華やかさを添えて以降は、何処か暗闇によって立つ粛々とした安らぎや寂寥感を伴う楽曲に彩られていて、彼が語り部となる「クリスマスの暗い側面」をより深く深く掘り下げて行く内容となっています。



アルバムに付属しているSting自身のライナーは、この作品の動機や扱われた題材も含め、「冬」に基づく文化的な創作や精神世界について、彼自身の鋭い洞察や思索が盛り込まれたものとなっています。中でも印象的なのは、彼が産まれてから青年期までを過ごしたニューカッスルの厳しい冬の生活の情景です。

ずっと暗いわけではないけれど、太陽を目にすることはほとんどなかった。時おり、黄色の冷たい光が、葉の落ちた木々や雪におおわれた屋根の上に浮かんでいた。


冬の厳しさは、人間の精神に新たなエネルギーを齎す為に必要だと説くStingは、まるで『死』のような冬の静謐な美しさを、キリストの復活に代表される神話の元型に準えています。Henry Purcellの"Cold Song"を引用した楽曲では、凍えながら死を請う「希い」にこそ感じられる怨念めいた強烈な生命の力を、不安を募らせていく上昇音階に乗せながら絞り出すように歌っているようで、絶望もまた人の『力』の形であることに思い至ります。



『子守唄』が子供をあやすと同時に、怖がらせる為の役割も担っていると考えるスティングは、器楽やバックコーラスにも定型演奏を脱却させ、あえて不安定な要素を取り込むようディレクション。詩歌の描写する感情と情景という、光と影の輪郭をより際立たせた印象を喚起するものとしています。


ジャズやフォーク、クラシックなど様々なバックグラウンドを持つ粒ぞろいの演奏家たちを招集した今回のプロジェクトは、スティングとプロデュサーのボブ・サディンが指揮を執りながらも、一個の作曲家による楽譜に沿ったものではなく、それぞれの持ち味と即興的なアイデアを加味しながら、レコーディング過程で成長を遂げたもの。はじめは混沌としていたスタジオも、ボブの潤滑剤的な働きによって徐々にまとまりを得たのだとか。



商業主義的な賑わいを見せるクリスマスの側面とは切り離してみても、その時期は人々にとってまた「感謝と施し」の意味合いを持つ祭典でもあり、スティングによるライナー冒頭では、今回の録音に参加したそれぞれのメンバーへの真摯かつユニークな謝辞が飾られ、皮肉にも(?)温かで親しみに溢れたクリスマスの世間的なイメージに似合わしい装いが感じられます。

何より、この20年来Stingの「右腕となり左腕として」彼を支え続けて来たギターパートナー、Dominic Millerの存在感がより際立っているのも感慨深い事象として挙げられるでしょう。


フィドルが疲れ果てたように掠れた音色を奏でる"Now Winter Comes Slowly"のような、あからさまに荒涼とした楽曲だけではなく、"The Burning Babe"(イエズス会士による)といった曲調の陽気さに残酷さを内包したもの、セルフ・カヴァーにあたる"The Hounds of Winter"のように染み入るように冬の情景を迎えるものなど、それらの曲自体にクリスマスと共通する関連を見出すことは苦しいですが、アルバム全体では「冬」を別として聖書やキリスト伝承に着想を得た引用が多く為され、やはり本作品が一貫して「クリスマスの訪れる冬」をテーマとしていることが窺えます。


その代表としては、バスク地方の聖歌による"Gabriel's Message"や、処女懐胎に向き合うマリアとヨゼフの複雑な感情の擦れ違いを描いた"Cherry Tree Carol"が挙げられます。

一方、イザヤ書に基づくドイツ聖歌で、プレトリウスに編曲された「一輪のばらが咲いて」及び英国聖歌「かほどの美徳あるバラはなからん」の引用は、いずれも中世、あるいは紀元前における自然とシンボリズムの融合という普遍的な精神活動が、未だキリスト教を通して受け継がれていることを示したものであり、スティングが論じる、人間を取り巻く四季という環境変化と精神性の関わり、そして温暖化が及ぼす影響は人間の感情にさえ影を落とすのだという憂いにさえ至る配剤となっているのです。



また、「冬」と「人の心」の関わりを情感豊かに描き出す曲想として挙げられる"Christmas at Sea"。ゲール語による女性の労働歌が、祝福の日の朝に厳しい寒苦に晒される船員の心境を詠ったスティーブンソンの詩とハーモニーを為していて、アルバムで最もトラッド的な要素を前面に出した曲と言えます。


最後2曲をしめくくるシューベルト、バッハそれぞれの楽曲における詞も、センチメンタルな情景の中に突き放した冷たさを帯びて、だけど失われようとしている時を、冬に訪れるとされる「霊魂」という元型意識の象徴に委ねて思慕を通わせる、そんな切なさと一抹のぬくもりを匂わせているようです。



※...ボーナストラックは何れも、上述した「子守唄」の解釈に拠る、より接近的なアプローチを試みた三曲が引用されています。「ヘロデ王の幼児虐殺」の物語を聴かせるというコヴェントリー・キャロル(聖史劇『刈り込み男と仕立て屋』から)を筆頭に、ピーター・ワーロックの"Bethlehem Down"もまた、作者自身の悲惨な末期に照らして、その旋律とともに不穏な含みを持たせた子守唄として演奏しています。

William Blakeの「ゆりかごの歌」(ヴォーン・ウィリアムズ作曲)が、穏やかな心境に綴られたアルバム唯一の子守唄なんだとか。


******************************************************************

"Cold Song"
Lyrics by John Dryden


What power art thou who from below
Hast made me rise unwillingly and slow
From beds of everlasting snow?

See'st thou not how stiff, how stiff and wondrous old,
Far, far unfit to bear the bitter cold?
I can scarcely move or draw my breath:
Let me, let me, let me freeze again to death.




いかなる力が下からもたらされて
永遠に降り続く雪のしとねから
ゆっくり渋々と私は起き上がろうとするのだろう?
この身はすっかり固くなり 驚くほど老いてしまい
厳しい寒さにはとても耐えられず
動くことや息を継ぐことさえできないのが
 お分かりにならないのですか?
どうかお願いです 再び凍えさせて
 死を迎えさせてください


          (翻訳:野村伸昭)


logical gravity - 四次元論理・立体考思

2009-11-19 15:57:07 | 日記・エッセイ・コラム
現実社会において、特定の事柄についての論理の二項対立が、事実関係の構築から純粋な二律背反につながることは稀である。


二者以上が共有する社会空間にあって、相互に認知している情報の欠落が論理の相違をもたらす。極端にいえば、一方的な主観に対する一方的な客観との交錯が、論理の正当性(の評価値)におけるパワーバランスを生じ、時間依存的に空間を支配する。

逆に言えば、自身の論理に対して「何故ああいった異論が出るのか?」と吟味した時点で、自らの論理の時空間的な位置づけを、(自身のフィルターを通して)転写することになるのである。


記述された論理は静的で完結されているようでいて、実に時間依存的に展開されるものだ。ロジックの正当性とはつまり、事実関係に矛盾せず共存しうるパースペクティブによって関係が連結される個々のセグメント(離在する脈絡)の写像が、自己に属する論理空間により似ているかどうかで評価されている。ロジックとは重力なのだ。



たとえば法廷などは、論理的な思考過程から真相を得る為のパワーバランスを乱さぬ(事実空間の構築を妨げない)ように配慮されるべき空間の一つだ。そのために感情の自制が重要なのである。しかし現実の裁判員制度では、一刻一刻と変化する人間の感情と言う個々の偏向性を内包し、考慮する形で審判を下している。

「法」とは常に過去の力関係の写像でしかなく、裁判員制度とは、限定的サンプリングによる偶発性の高いロジックの励起を持ち込むことによって、審理をより「現実の時間」に乗せて活性化しようとする試みでもあるのだ。また、その作用はサンプリングの試行を重ねる毎に、法への関わり方(支持・批判の積極性)として必然的に社会に還元されていくだろう。


exformal knowledge. - 汎知性の在り様。

2009-11-15 16:28:38 | 日記・エッセイ・コラム
『思いつきを公式化するのは難しい』

アインシュタインのような天才でなくても、似たようなことは誰もが経験するところである。しかし、人類のパラダイムを転回するほどのアイデアが、一個人の「真に新しい」思いつきであったかどうかというと、これも思いつきでしかないのだが、私はそうでないと感じる。


先日亡くなった偉大な文化人類学者、レヴィ=ストロースの「構造主義」という発想に関しても、それが準拠するところの群論や位相論といった考えは、ブルバキの数学において蓄積を重ねて来たものである。構造主義が欧州的な価値観全土に演繹したものは、社会形成を行う人間の「behavior(振る舞いそのもの)」が、非常に高度な計算結果により共時的に様態化するものである、と表現するに同義である。

また、そのアイデアや価値観自体が、当時全く異質(土壌は出来つつあったが、事実異質ではあった。)のものだとしたら、近代からの文明倫理にここまで広く受け入れられ、敷衍・浸透することもなかっただろう。つまり、「誰もが感じ得る」ことを定式化して体系づけたことが、こうした賢人たちの偉業の核の部分なのである。



インフォーマルな知識や発想を一般化し、誰もが利用・再生できるようにする。これは「科学的手法」を定義する最も根本的な要素ではあるが、逆に、彼らの齎した資源を有用かどうかを判断し定義づけるのは、アイデアを呈示される側、つまり天才ではないマジョリティだ。


天才が天才とされる由縁は、そのようなマジョリティが設定した体系に基づく書法(リテラシー)に基づいて、更に特定分野に長けながら、「天才」とされる条件を自ずから達成していることにある。天才の条件を提示しているのはマジョリティの方であって、アノマリーではない。「天才は必然のもとに生まれる」とは、そういうことなのである。


スポーツの世界でも同様だが、天才はその性質から必定として生産性を求められる。しかし誤ってはいけないのは、それは彼らにおいて決して社会的な義務でも、ましてや「生存の条件」でもないということだ。同じことは思考活動を行う人間全般に言えることである。特定の事柄が生産性を発揮する文脈は、特定の事柄が実効性を持つ限られた位相においてのみ意味を為す。故に我々は特定の社会に一次的に従属させられる「生産する為の生命」ではない。


地球上に遍在する数十億に及ぶ人類種の主観の中にあって、共有されるパースペクティブは通時的に変化して行く。しかしアインシュタインのような天才が発生する確率は限りなく低く、またその功績すら偶然の産物と呼ぶに相応しいものかもしれない。だが確率の低いことは「起こり得る」。『偶然』とは、『必然』をこそ語る言葉に他ならないのだから。


第三回行政刷新会議~科学事業評決の過ちとリスク ※11/26 加筆

2009-11-15 08:05:21 | Science
※ 11/22、民主党は行政刷新会議の事業仕分けで大幅削減とされた科学技術関連の概算要求維持を表明。特に事実上の凍結とされたスパコン分野の評決を全面撤回。当初の要求を通す考えを示した。当然ながら、あまりにも批判が多かったのだろうが、説明を遮るくせに、事業主側に一方的に説明責任を被せる態度は未だにナンセンス極まりない。仕分け側の「有識度」「事前調査」が皆無だと暴露しているに等しいだろう。それならなぜ事業主の説明を聞こうともしなかったのかと、「事業仕分け」そのものの手法に根本的な問題が浮き彫りとなった形と言える。



□ 行政刷新会議 「事業仕分け」 評決結果

>> http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov13kekka/3.pdf


□『科学』傷だらけ iPS細胞生んだ事業や科学未来館

>> http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009111402000066.html


「国が掲げる科学技術立国が揺らぎかねない」。十三日の行政刷新会議の事業仕分けで、科学技術関連の事業が続々とカットの判定を受けた。「不要不急の事業」を削ることが仕分けの目的とはいえ、将来、日本の科学技術研究を担う若手にも余波が及ぶ。「頭脳流出に拍車がかかる」。関係者に危機感が広がった。(中略)先端研究に助成する競争的資金事業は同機構や文部科学省などが行っているが、仕分け人は「重複しており、総予算が膨らんでいる」と判断。一元化も含めて縮小することを求めた。(中略)

◆『優秀な若手流出する』 奨励金『削減』若手研究者育成のための「特別研究員事業」。十三日の行政刷新会議の事業仕分けで「削減」の評決を受け、傍聴に訪れた東京都内の国立大大学院二年の男性は悔しそうに話した。男性は「ポストドクターが多すぎる問題ばかりが議論されていたが、その問題と研究者支援は別次元の話。制度が削減されたら、学者になれるのは金持ちだけ。国を恨んで海外に行く優秀な人材が続出するだろう」と事業仕分けの議論を批判した。



技術立国が技術投資を渋ったら、おしまいである。

連日行われている「事業仕分け」の意義と成果(?)について、天下り財団の縮小や不採算事業の見直しに限っては、個人的には少なからず評価できる部分はあったのだけれど、こればかりは看過できない。


あまりにも無知・拙速な評決に現場も戦々恐々としている。これについては至る所で反対コミュニティが結成されつつあるが、とりあえず私の身近でも科学者有志によって議論の為のサイトが設立されたので紹介したい。

http://mercury.dbcls.jp/w/


言いたいことは山ほどあるが、事業仕分けに倣って要点をシンプルに押さえよう。蓮舫氏の「スパコン、世界一になる必要あるのか。世界一になれなかった時のリスクヘッジは?」「納税者がトップレベル研究者にお金を払った分、納税者個人にもリターンをもらえないと納得できません」という発言に、仕分けチームの愚かしさが集約されている。



まず、スパコンについての言い分を喩えるなら、家計が逼迫しているからといって、東大に受かるかもしれない我が子に「数学は食って行くのに必要ない」などと言ってノートと鉛筆を取り上げる『だけ』のことをする(目的を失った教育支出だけが続く)、というぐらいナンセンスなことであり、これは単純化というよりも正にそういうことなのである。


その一端を担うのが競争的資金(若手研究者育成)の予算縮減である。もともと先進国の中でも少なすぎと言われていた研究者育成費を最大限に活かそうと、奨励金やインターン制の導入など、躍起になって人材育成の為の仕組みを開発して来た現場にとっても悪影響は免れない。ポスドク余りが叫ばれる現状は、決して育成費の無駄と計上されるべきではなく、寧ろ技術投資が「及ばなかった」ために受け皿が用意出来ないと捉えるのが相応しい。ベクトルが全く逆なのだ。


仕分け側は目先の台所勘定で国民の生活費、教育費における支援を謳ってはいるが、同時に技術振興の為の投資・雇用を潰すことで、肝心のはずの子供と国の将来性の芽を摘み取ろうとしているとしか言えない。

中でも、国際的に権威ある賞を受けるなど、早くも方々で成果が目に見える形になり、世界中の関心を集め始めている世界トップレベル研究拠点 (WPI)プログラムの予算縮減が特に痛い。ここまで批判的な材料を内包していて、今回の事業評決が通るとは信じたくは無い。おそらく内部の評価者すら仕分け人を説得できなかったであろう様子は、あの独善的な質疑応答を見れば容易に想像できることだ。

(※11/17追記…本日、「民間の有識者」の意見に財務省マニュアルによる「意図の介入」があることが明らかにされた。仕分け側が専門分野に「有識」であるという前提すら保障はなくなったのだ。)


(※ 11/17 先行きに対して対費用が著しいGXロケット開発の廃止など、仕分けの妥当性が認められる内容も確かにある。しかし、LNGエンジン開発については相当の技術力蓄積が認められ、一緒に潰すのはあまりにも尚早との声も。代替として挙げられるM-V系統のエンジンはコスト面で大きく問題がある。何よりロケット産業をMHI一社寡占状態にしてしまうことのデメリットも。仕分けでは他分野事業でも『勝ち馬』以外への投資は「ムダ」と切り捨てる傾向にあるが、これは発展競争互助の観点からもナンセンスで、非常に危うい結果を招きかねない。)


(※ 11/26 GXロケット廃止については、財務省が倍以上の税金投入額を記載した事実誤認の資料を提出していたことが明らかになった。更に、宇宙開発における本格実用に向けたアメリカ側の打診があった事実も伏せて『需要がない』と断じていたことが判明。仕分け人は意図的な虚偽情報を鵜呑みにして評決を行ったことになる。なにが「有識者」なものか。)
    ↓
今年11月上旬に、GX打ち上げを担当する米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社から、少なくとも2、3機のGX使用の意向が政府の宇宙開発戦略本部などへ伝えられていた。




そもそも日本のスパコンが国内外の生産に利用され、年間維持費の30倍のリターンがあるとされている事実さえ知らないのではないか?という疑問も挙っているが、そういう指摘すら遮って「事実誤認に基づく通達を言い渡すだけ」の仕分け内容なのだから救いようが無い。あちらは「合理的な必要性」を訴えるが、あのような検察が裁判官を兼ねるようなやり方では「合理的な議論の場にはなりえない」ことが問題なのだ。


更に科学事業評決には技術論が重要である。これを仕分け人は拒絶したが、これは収支や稼働率の数値だけを追う他の社会事業とは別次元の問題だ。特定の技術にどのような位置づけと可能性があるのか、それを抜きにしろと言われたら先端科学開発は行えないし、それをしない国家はあっというまに技術先進国から退行し莫大な将来損益を被るのは火を見るより明らかだ。

だいたい、専門知識のない政治家の為に、技術論において審理をする為の有識者がいるのだろうが、その政治家が事業主側の技術論からの異論を受け付けないというのは、全く持って理の通らない話だろう。仕分け側に専門知識を有する有識者がいるという「ポーズ」をとっても、それを行使する代表が全く理解してないのだから、上のような無恥な発言が零れるのである。


ランク一位が目的なのではなく、競争の齎す効果こそが重要だということも、投資部門の赤字は健全な企業である条件なのも、説明するにはあまりにも当たり前すぎて稚拙とも言える内容でもある。



事実、資源に乏しい日本が技術によって食べてきたことは今更説明するまでもないことだが、納税者の一人として私が言いたいことは、「国民の為を思うなら、そこは削らないでやってくれ」ということに尽きる。納税者はいわば「国際貢献する技術立国の国民」という、数値的なリターン以上のアイデンティティすら技術開発の恩恵によって享受しているのだ。

家電から軍事、医療やバイオといった先端科学まで、日本が開発に至った基幹技術は世界中で利用され、必要不可欠な生産性の軸を担っている。こうした貢献度を視覚化しようと、日本発の基幹技術の関わった文化の系統樹をアウトリーチとして提供するという発案も為されている。ここはやはり国民の理解が必要なのだ。そのための拠点として、まさに『科学未来館』の名も挙がっている。



対して、世界不況の発信源であるアメリカはどうかというと、科学政策の指針見直しによって伸びこそ抑えられたものの、予算は削られているどころか過去最高をマークしている。

□ アメリカの機能別非防衛研究開発の動向

>> http://www.aaas.org/spp/rd/histda09.pdf


これに倣って、日本でも今、"AAAS (American Association for the Advancement of Science)"に代表されるアメリカの理系支援団体のような機構の必要性が叫ばれているし、私も過去の記事でその有義性を訴えたことがある。スパコンに関しては、アメリカでは更にASCI(Accelerated Strategic Computing Initiative)などの政策的評価プロジェクトを財源として一気に日本を突き放しにかかっている。(これは核シミュレーションに急務性が認められるためという意見も)

ここで生じるリスクとは何かというと、ユーザとベンダーの結びつきが特に強固なスパコン事業においては、一度攫われた需要を呼び戻すことは数年がかりに渡って容易なことではないし、それによる特許の取り逃しや人材の流出といった、直接生産に関わる機会損失が長くに及んで計り知れないことだ。


そもそも将来にわたって安定的・精密な利用が保障できない分散コンピューティングを、スパコン領域の基礎研究の代替にするなど愚の骨頂である。仕分け人の有識者による「民間の視線」のつもりが、単なる「わかってるつもりの視線」で物言う弊害に及んだ最たる例と言えよう。

彼らは事情「通」でしかなく現場とは無関係の人々であるゆえに、自身の審理に客観的になれないのかもしれない。科学評決全般に及んでは、彼らの主張こそ曖昧な恣意と憶測に満ちていて、残念ながら事業主側以上の妥当性は見当たらないというのが私なりの客観的な評価だ。


近年日本の産学官連携プロジェクトが発展しづらい要因の一つに、やはり資金運用の多重構造化と投資不足がある。名目上のプロジェクトを計上して箱だけは用意するもの、そもそも雇う人員や設備が空っぽだったという問題が以前から取り沙汰されていたようで、民主党はそこを不正な資金流用と見て突いたつもりなのだろう。これは旧政府や当事業者側も大いに反省すべき点で、不透明な収支構造と非効率な予算配分は徹底的に見直し、一元的な資金運用を目指すべきだ。しかしあくまでも、正当な事業を行うには「予算が足りない」という現実の壁があればこそ、そこを更に絞るとなると話は別だ。


SPring-8の開発や設置に関しても、数千億クラスの事業である。そこには様々なしがらみや軋轢が生じても不自然では無いだろうが、それが齎すリターンは生産的な価値においてだけでなく、人間の行く末にすら関わる大変な意義がある。


スパコン投資についても、問題は予算配分と開発区分を国内ベンダーに「パイを切り分けた」という姿勢に効果が疑問視されていることであって、(※ 仕分け側の決定的な事実誤認はここに多い。日本は『ベクトル型』から世界のスタンダードに変わりつつある『スカラ型』の強力版に着手して、『ベクトル型』の分野も勝ち取ろうとしていたのである。主要ベンダー撤退の結果などではない。)発展的な競争を互助する為に、更に潤沢な投資を行うべきだった。あまつさえ、その対効果を一時的なマーケットのトレンドで量るなどは論外である。だからこその国の責務なのだ。

そして今回、民主党がしているのは、まさに基礎研究の齎すリターンを無視して「パイを切り分けるだけ」という行為そのものなのである。


Way Out West / "We Love Machine"

2009-11-13 17:42:35 | music9
Welovemachine



□ Way Out West / "We Love Machine"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>One Bright Night
Body Motion
Tierra del fuego

Release Date; 08/Oct./2009 (CD Album)
Label; Hope Recordings
Cat.No.; Hope CD084
Format: 1xCD

>> wayoutwest.mu


>> tracklisting.

01. We Love Machine
02. One Bright Night
03. Only Love
04. Bodymotion
05. Pleasure Control
06. Future Perfect
07. Survival
08. Ultra Violet
09. Tales of the Rabid Monks
10. Surrender
11. The Doors are where the Windows should be
12. Tierra del Fuego


Way Out West is Jody Wisternoff and Nick Warren
Jonathan Mendelsohn vocals on Only Love/Surrender/Survival
Damon Reece drums on We Love Machine
Jennifer Raven flute on Body Motion
Steve Robshaw additional guitar on One Bright Night
Justin Goodall additional guitar on We Love Machine



‘Progressive House Legend’、DJ's DJとして多方面からリスペクトされる大御所、J.WisternoffとN.Warrenによるデュオ、Way Out West待望の4th studio Album.

"We Love Machine"というタイトルで示される通り、恍惚に身を揺らし、煌めくような官能の一夜を踊り明かす為の音楽に、本能にズンズンと響くようなマシーンの機械的なリズムと音色は欠かせない。DJ's Musicとは今やそれほどに、心躍らせる歯車として人々の心に噛み合っているのだ。



Way Out Westは常に、あらゆるモードの尖端を走っていた。ブレイクビーツとトライバル・ミュージック、そしてチルアウトとの複合的でスタイリッシュな作風を打ち出したセルフ・タイトルの1st Album。そしてプロッグ・トランス史上、至高のアルバムとして未だ揺らぎない支持を得ている2nd album "Intensify"では、更に複雑なサンプリング・コラージュの上に、シャンソンや民族音楽、映画音楽的手法を加味し、その下に重厚なハウスビートを踊らせた。


しかし3rd "Don't Look Now,"にて一気に方向性を転換。生ドラム主体のアナログな音色に、シンセを軸に構築されたシンプルな曲調を展開。ヴォーカル曲もよりポップに歩み寄ったが、一部ではストイックなまでにミニマルで硬質なダンス・トラックを披露し、このアルバム構成の二極化がひっかかりを生んでいた印象は否めない。



"We Love Machine"は、そんな3rdのアナログ路線を踏襲しつつも、2nd"Intensify"の頃のデジタル・コンプレックスを土壌として、郷愁の70年代フォーク・ロックや80年代のときめくようなディスコ・ミュージックのエスプリを散りばめ、その装飾として最先端のミニマル・ダブやテックハウスのテクスチャを施している。


全ての曲がハイライト・トラックと呼ぶに相応しい多彩な音色に溢れた今作は、表題曲"We Love Machine"の心の浮き立つようなシンセのウワモノと、軽快なドラム、スウィングするベースが駆け抜ける壮快な幕開けを迎える。

1960年代オーストラリアのフォークバンド、The Gloopの"A Famous Myth"をサンプリングした"One Bright Night"は、セピア調の哀愁を漂わせながらも、WOW独特のドライヴ・センスでリードする。この曲をアルバムの最高傑作として推すことにためらいはない。



"Only Love"をはじめ3曲で歌い手を担うJonathan Mendelsohnは、2007年頃よりクラブシーンで頭角を現しはじめた容姿端麗な男性ヴォーカリスト。爽やかでスムースな声質は8-90年代のAORを彷彿とさせるし、心なしか曲調も彼にあつらえた向きが感じられる。


80年代マンチェスターのニューウェーブ・ダンス・アクト、Quando Quangoの"Love Tempo"をサンプリング・ベースにした"Body Motion"も、Way Out West唯一無二のエッセンスが凝縮されたミクスチャー・トラック。一転して星空を翔るような"Pleasure Control"の、SF的で輝々とした浮遊感、後半のオーバースケールな解放感は筆舌に尽くし難い。曲調が緩やかに変化し、始点と着地点が遠くかけ離れるのも、WOW独自の魅力の一つかもしれない。



芳しいアジアンなアトモスフィアを醸し出す"The Doors are where the Windows should be"は、WOWの音楽性における欠かせない側面の一つ、エスノ・ミュージックの要素を前面に押し出したDown-Tempo。これと共に"We Love Machine"の黄昏ともいうべきラスト・トラック"Tierra Del Fuego"も民族音楽のサンプリングで構成された、閉幕に相応しいサイケ調のアンビエント。



個人的にも総じて高く評価せざるをえない作品。何よりも音楽を聴いていて、これほど胸が高鳴ることは久しく無かった。鼓動が重低音に共鳴するたびに、この気持ちに『見覚えのない懐かしい光景』を運んでくるようで、私たちは確かに、機械に恋をしているのかもしれない。


Delerium / "Dust in Gravity" World-Premiere preview.

2009-11-10 07:46:12 | delerium
Dig


□ Delerium feat. Kreesha Turner / "Dust in Gravity"

<object height="81" width="100%"> <param name="movie" value="http://player.soundcloud.com/player.swf?url=http%3A%2F%2Fsoundcloud.com%2Fnettwerkmusicgroup%2Fdelerium-dust-in-gravity&amp;show_comments=true&amp;auto_play=false&amp;color=75c6ad"></param> <param name="allowscriptaccess" value="always"></param> <embed allowscriptaccess="always" height="81" src="http://player.soundcloud.com/player.swf?url=http%3A%2F%2Fsoundcloud.com%2Fnettwerkmusicgroup%2Fdelerium-dust-in-gravity&amp;show_comments=true&amp;auto_play=false&amp;color=75c6ad" type="application/x-shockwave-flash" width="100%"></embed> </object>
Delerium - Dust In Gravity by nettwerkmusicgroup

Release Date; 24/11/2009
Label; Nettwerk

>> Join the Delerium New Official e-newsletter.


>> tracklisting.

01. Dust In Gravity (Radio Edit)
02. Dust In Gravity (Album)


11/23にダウンロード・リリースされるDeleriumのNew Single、"Dust in Gravity"の音源が公開されました。2009年度のJuno Awardsノミネート・シンガー、Kreesha Turnerをヴォーカルに迎えたR'n'B調の曲。ストリングスにバッキングするAbstractなシンセサイザーや不協和音にDeleriumらしさが聴き取れます。

先月には"Dust in Gravity"のmusic videoを撮影中のKreesha Turnerの様子が、彼女自身のVideo Blogにて公開されていました。


この曲の処遇を巡っては、以前から噂される"Unplugged Remix Best"?のようなNew Albumに収録されるという見方が強いのですが、このたび新設されたe-newsletterには、"definitive remix collection (リミックス・コレクション決定版)"のリリースが2010年初頭に待機しているとあり、まだ予断出来ない情況ですね。


eRa / "eRa Classics"

2009-11-07 14:56:24 | music9
Eraclassicsl


□ eRa / "eRa Classics"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Redemption
Arising Force

Release Date; 02/Nov./2009
Label; Mercury
Cat.No.; 532 315 9
Format: 1xCD

>> http://era.artiste.universalmusic.fr/


>> tracklisting.

01. Redemption  (Caccini / "Ave Maria")
02. Sunset Drive  (Vivaldi / "Spring / Four Seasons")
03. Arising Force  (Verdi / "Nabucco")
04. The Chosen Path  (Verdi / "La Forza Del Destino")
05. Ritus Pacis  (Bach / "Concerto No.3")
06. Adagietto  (Mahler / "5th Symphony")
07. Dark Wonders  (Haendel / "Sarabande & Ombra Mai Fu")
08. Winds of Hope  (Vivaldi / "Winter / Four Seasons")
09. Sombre Day  (Eric Levi)
10. Adagio For Strings  (Barber)

All tracks adapted, arranged and produced by Eric Levi.
Except track 9 composed, arranged and produced by Eric Levi.



Domine Jesu Christe, qui dixisti Apostolis tuis:
Pacem relinquo vobis, pacem meam do vobis:
ne respicias peccata nostra, sed fidem Ecclesiae tuae;
eamque secundum voluntatem tuam
pacificare et coadunare digneris.

- "Ritus Pacis" Pronounced by His Holiness Pope John Paul II



Eric Leviによる唯一無二の混声合唱ホーリーロック、eRaのクラシック・カヴァー・アルバム。発売日まで公式なアナウンスも事前情報もなく、半ばゲリラ的にリリースされました。(発売の数日前になってやっと、fnacにトラックリストと試聴サンプルが追加されていたくらいです。)


ということもあり、正式なナンバリング・アルバムとしてカウントするには?が残る今作。その中身はというと、前作"Reborn"を無かったことにして、"eRa2"の頃の、やや明るく保守的な作風に回帰したとも受け取れるものです。

※ 追記…11/10現在、正式な5th studio albumであることが、本日配信されたOfficial Newsletterによって明言されました。


もともとClassicのフレーズをデフォルメして多く引用してきただけあって、「何故今更フルカヴァー・アルバムなのか?」との疑義を醸す向きもあるかもしれませんが、そこはeRa。これほどに心を震わす旋律を織り交ぜて殆どオリジナルのものにしてしまっているのだから素晴しい。余りにも知られたクラシックの名曲の数々は文字通り「引用されている」だけのもので、"eRa"そのものではない。



楽曲それぞれの基本的な構成は、Classic Resourceからのモチーフの呈示、そしてEric Leviによる"Variations(変奏曲)"の二層造りの組み合わせになっています。

本家テノール歌手のFabrice Montegnaを数曲でフィーチャーし、クラシカル・クロスオーヴァーの趣を狙っているものの、全体としては抑揚を抑え気味で、過去作に比べて感情の爆発力が足りず、その控えめさにやや消化不良感が伴うのは、このアルバムがあくまで「クラシック」の気高さ、静謐さを醸し出そうとしている。ということに尽きるでしょうか。


また、ヨハネ・パウロ2世の祈祷『平和の祈り』をサンプリングした"Ritus Pacis"は、ここ数年のeRaの変容を如実に物語る一曲かもしれず、1st以来、創造言語を用いてファンタジックな独自の世界観を確立し、その音楽書法に置いてすら「何かに似ていて、その何者でもない音楽」である所のeRaが、ここに来て現実世界の境界へと踏み入れ、その教条や祈りに同調しようとしている。その兆しは"Reborn"から顕著であった。



然りといえども、かつて一瞬の出会いで私を心酔させ虜にしてしまった"Ameno (Remix)"のようなシュールでパラノイアックな暗鬱たる作風をもう望むべくもないのだとしたら、それは些か寂しい気もする。今作では辛うじて"Adagio For Strings"にて片鱗を窺うことができるのだけれど。。



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+ Strings:
Orchestrated and Directed by Marie Jeanne Serero
except track 9 Orchesrated by Yvan Cassar and Marie Jeanne Serero
Recorded by Peter Cobbin at Abbey Road Studios, London.
Assisted by John Barrett and Gordon Davidson


+ Choir:
Orchestrated and Directed by Guy Protheroe
Recorded by Andy Strange at Abbey Road Studions, London.
Assisted by John Barrett and Gordon Davidson
Additional lead voice: Fabrice Mantegna (tracks 1, 6, 7, 8)


+ Bass & Drums:
Performed by Lee Sklar and Karl Brazil
Recorded by Andy Strange at Air Studios, London
Assisted by Nick Cevonard


+ Guitars:
Performed by Michel Ayme
Recorded by Andy Strange at Dinemec Studios, Geneva.
Assisted by Ewan Hails


+ Synths: Performed by Eric Levi
Programming by Alexis Smith
Mixed by J.P.B and Andy Strange at Omega Studios
Assisted by Nicolas Berger
Masterd by Tim Young at Metropolis Studios.


Artwork by Die Frau (Sylvie B.) - Paris


_*


EarthEar Environmental Sound Art: Label Relaunch!!

2009-11-04 07:56:43 | art music
Eesa



□ EarthEar Relaunch: Radio, Sound Blog, CD collections

>> http://earthear.com/

・Copious amounts of streaming audio, with tracks from all 17 EarthEar releases.
・EarthEar Radio, a pop-out audio player that offers a great introduction to this vibrant field
・EarthEar Sound Blog, featuring audio and video from EarthEar artists and other friends worldwide. Add us to your RSS feed, or sign up for email notifications of new posts; they're going to be fun!
・Artist pages with links to their sites and other online destinations that they recommend
・An EarthEar Sound Map, where you can explore our CD and blog audio by region.
・EarthEar Collections, specially priced themed sets of EarthEar CDs
・The Big Sound: still central to our mission is sharing the breadth of this artistic medium ? EarthEar's releases offer a distilled version, but there's much more out there, and you can get started in exploring the rest of the field with our links to artists and labels.



汎地球上の「自然環境」や「民族文化」のマクロ・ミクロな素材を元に、フィールド・レコーディングや実験音響、サウンド・インスタレーションなどに代表される『環境芸術』を総合的に取り扱うミュージック・レーベルの一つとして、私が最も評価している"EarthEar"が11月より本格的に運営を再開しました!


2007年のサイト閉鎖以来、文化・芸術的観点からの非営利環境プロジェクトである" Acoustic Ecology Institute"に心血を注いできたというレーベルオーナーのJim Cummings。1999年の創立より10周年の節目となる今、人類が地球規模の問題に直面し、環境や文化の多様性の価値が更に問われている時代、こういったレーベルの必要性と存在意義に絶好の機宜を得たという所でしょうか。


活動内容ですが、より一層自社ライセンスのアーティストを中心にフィーチャーしていく方針のようです。数年前までは大きなカタログが同封されてきたものですが、今回からはディストリビューターとしてCDBabyと提携し、以前に比べて取り扱い規模を縮小した運営となっているようです。

サイトでは多くのサンプル音源が整理・公開されていますが、"Earth Ear Radio"と題したコンテンツで包括的にチェックできる他、BGM的な流し方も出来そう。"Earth Ear Map"では、音源それぞれのテーマを取材した地域を世界地図上にドロップ。今後カタログの充実に伴って、利用価値が高まりそうです。




□ Recommendations.

さて、そんなEarthEarレーベルの素晴しい音源の数々から、私が個人的にお薦めしたいものを幾つかご紹介します。



Dreamsofgaia2009

□ V.A. / "Dreams of Gaia"

Beneath the Forest Floor

>> http://earthear.com/gaia.html

"EarthEar"レーベルの“顔”とも言うべきカタログ・コンピレーション。2枚組CDで48pに渡るブックレットが付属しています。"Environmental Sound Art"の何たるかを捉えるのに適したハブ的なアルバムで、一口に「環境音楽」とは括れない、自然や動物、そして気候から都市文化までをテーマとした、多様なジャンルの音楽が収められています。

Hildegard Westerkampの"Beneath the Forest Floor"や、Hans Ulrich Wernerの"Dreams and Memories"が秀逸。環境音採集家として権威的な存在であるDouglas Quinを擁するのもレーベルの強みと言えるでしょう。


フィールド・レコーディング素材の加工という音楽的意匠は、20世紀初頭の前衛音楽から最新のエレクトロニカまで、レコーディング・テクノロジーの幕開けと共に様々な試みと実践を積み重ねて来たものですが、同様のジャンルを扱うレーベルは世界中に無数にあれど、"EarthEar"の優れたコンセプトと質の高さが窺える完成度の高いアルバムに間違いなく、事実、"Dreams of Gaia"はセールス的にも稀に見る実績を挙げています。




Timebellsone2009_2

□ Steven Feld / "The Time of Bells 1"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Bormes

>> http://earthear.com/bells1.html

世界各地の日常や伝統を渡り歩いて、『鐘の鳴る風景』を切り取ったフィールド・レコーディング作品。Steven FeldのオウンレーベルVoxLoxとEarthEarのコラボレーション・アルバムとしてリリースされました。

この一作目では、フィンランドやギリシャ、フランスの村落を舞台に、教会や羊飼いの鐘が響く日常の光景を編集。あらゆる文化に根ざす『鐘』というものの役割と人々との関わりを克明に刻んでいます。




Lion2009

□ David Dunn / "The Lion in Which the Spirits of the Royal Ancestors Make Their Home: Vernacular Sounds of Zimbabwe"

Dawn Chorus including Besa Children

>> http://earthear.com/lioninwhich.html

こちらは環境音や自然音のブレンドから浮き彫りにされる、人間という種族の持つ原始的な特質や文化に焦点を合わせようとするもの。人類の起源たるアフリカの地で歌われる、生命力溢れるチャントの数々。文化的価値観の中では宗教や民族といった垣根に囚われた象徴でありながら、それは自然の中に写像されることで全く違った意味を帯びるのかもしれません。




□ Featured Release.

Ecoacoustic2009

□ David Monacchi / "Eco-Acoustic Compositions"

Echoes of a Sonic Habitat
Nightingale - Study

>> http://earthear.com/ecoacoustic.html


EarthEarのRelaunchに際しての記念すべきニューリリースとなるElectro-Acoustic作品。こちらはより電子音響・アンビエント的アプローチで自然音を扱っていて、現在のエレクトロニカに最も近い印象を与えるものとなっています。

水音、虫の鳴き声、クジラや熱帯雨林など、様々な音のピースを「音楽」を触媒として共鳴させたもので、時には伝統楽器を織り交ぜるという楽曲性も展開。ただ、そういった有為性はあくまで「最低限」に抑えられたものであり、自然音との調和と親和性を最優先においた意匠とのこと。


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実は今回のリニューアルで取り扱いを止めてしまった音源にもお薦めしたいものがあったのですが、その中でも、水の流れや雷鳴をコラージュしたEric La Casaの"Stones of the Threshold (Ground Fault Label)"や、タイの象楽団に取材した David Soldier & Richard Lairの"Thai Elephant Orchestra"(象が楽器を演奏する!)は、私にとっては正に必聴盤となっています。


原始に起源を有する音楽文化にあって、『時間と空間を記録する』という現代ならではの技術と発想に依拠する側面の強い『環境アート』としてのミュージック・ジャンル。その様式や在り方も無数にあれば、それぞれのリスナーの関わり方や、何より「楽しみ方」も実に多彩。

その可能性は無限、あるいは逆に画一的という評価も為されるでしょうが、今こうして自身を取り巻く文化や環境を顧みる必要性が声高に謳われる時流にあって、その価値を掘り下げ続けてみるのも道の一つかもしれないですね。