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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Way Out West / "We Love Machine"

2009-11-13 17:42:35 | music9
Welovemachine



□ Way Out West / "We Love Machine"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>One Bright Night
Body Motion
Tierra del fuego

Release Date; 08/Oct./2009 (CD Album)
Label; Hope Recordings
Cat.No.; Hope CD084
Format: 1xCD

>> wayoutwest.mu


>> tracklisting.

01. We Love Machine
02. One Bright Night
03. Only Love
04. Bodymotion
05. Pleasure Control
06. Future Perfect
07. Survival
08. Ultra Violet
09. Tales of the Rabid Monks
10. Surrender
11. The Doors are where the Windows should be
12. Tierra del Fuego


Way Out West is Jody Wisternoff and Nick Warren
Jonathan Mendelsohn vocals on Only Love/Surrender/Survival
Damon Reece drums on We Love Machine
Jennifer Raven flute on Body Motion
Steve Robshaw additional guitar on One Bright Night
Justin Goodall additional guitar on We Love Machine



‘Progressive House Legend’、DJ's DJとして多方面からリスペクトされる大御所、J.WisternoffとN.Warrenによるデュオ、Way Out West待望の4th studio Album.

"We Love Machine"というタイトルで示される通り、恍惚に身を揺らし、煌めくような官能の一夜を踊り明かす為の音楽に、本能にズンズンと響くようなマシーンの機械的なリズムと音色は欠かせない。DJ's Musicとは今やそれほどに、心躍らせる歯車として人々の心に噛み合っているのだ。



Way Out Westは常に、あらゆるモードの尖端を走っていた。ブレイクビーツとトライバル・ミュージック、そしてチルアウトとの複合的でスタイリッシュな作風を打ち出したセルフ・タイトルの1st Album。そしてプロッグ・トランス史上、至高のアルバムとして未だ揺らぎない支持を得ている2nd album "Intensify"では、更に複雑なサンプリング・コラージュの上に、シャンソンや民族音楽、映画音楽的手法を加味し、その下に重厚なハウスビートを踊らせた。


しかし3rd "Don't Look Now,"にて一気に方向性を転換。生ドラム主体のアナログな音色に、シンセを軸に構築されたシンプルな曲調を展開。ヴォーカル曲もよりポップに歩み寄ったが、一部ではストイックなまでにミニマルで硬質なダンス・トラックを披露し、このアルバム構成の二極化がひっかかりを生んでいた印象は否めない。



"We Love Machine"は、そんな3rdのアナログ路線を踏襲しつつも、2nd"Intensify"の頃のデジタル・コンプレックスを土壌として、郷愁の70年代フォーク・ロックや80年代のときめくようなディスコ・ミュージックのエスプリを散りばめ、その装飾として最先端のミニマル・ダブやテックハウスのテクスチャを施している。


全ての曲がハイライト・トラックと呼ぶに相応しい多彩な音色に溢れた今作は、表題曲"We Love Machine"の心の浮き立つようなシンセのウワモノと、軽快なドラム、スウィングするベースが駆け抜ける壮快な幕開けを迎える。

1960年代オーストラリアのフォークバンド、The Gloopの"A Famous Myth"をサンプリングした"One Bright Night"は、セピア調の哀愁を漂わせながらも、WOW独特のドライヴ・センスでリードする。この曲をアルバムの最高傑作として推すことにためらいはない。



"Only Love"をはじめ3曲で歌い手を担うJonathan Mendelsohnは、2007年頃よりクラブシーンで頭角を現しはじめた容姿端麗な男性ヴォーカリスト。爽やかでスムースな声質は8-90年代のAORを彷彿とさせるし、心なしか曲調も彼にあつらえた向きが感じられる。


80年代マンチェスターのニューウェーブ・ダンス・アクト、Quando Quangoの"Love Tempo"をサンプリング・ベースにした"Body Motion"も、Way Out West唯一無二のエッセンスが凝縮されたミクスチャー・トラック。一転して星空を翔るような"Pleasure Control"の、SF的で輝々とした浮遊感、後半のオーバースケールな解放感は筆舌に尽くし難い。曲調が緩やかに変化し、始点と着地点が遠くかけ離れるのも、WOW独自の魅力の一つかもしれない。



芳しいアジアンなアトモスフィアを醸し出す"The Doors are where the Windows should be"は、WOWの音楽性における欠かせない側面の一つ、エスノ・ミュージックの要素を前面に押し出したDown-Tempo。これと共に"We Love Machine"の黄昏ともいうべきラスト・トラック"Tierra Del Fuego"も民族音楽のサンプリングで構成された、閉幕に相応しいサイケ調のアンビエント。



個人的にも総じて高く評価せざるをえない作品。何よりも音楽を聴いていて、これほど胸が高鳴ることは久しく無かった。鼓動が重低音に共鳴するたびに、この気持ちに『見覚えのない懐かしい光景』を運んでくるようで、私たちは確かに、機械に恋をしているのかもしれない。


eRa / "eRa Classics"

2009-11-07 14:56:24 | music9
Eraclassicsl


□ eRa / "eRa Classics"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Redemption
Arising Force

Release Date; 02/Nov./2009
Label; Mercury
Cat.No.; 532 315 9
Format: 1xCD

>> http://era.artiste.universalmusic.fr/


>> tracklisting.

01. Redemption  (Caccini / "Ave Maria")
02. Sunset Drive  (Vivaldi / "Spring / Four Seasons")
03. Arising Force  (Verdi / "Nabucco")
04. The Chosen Path  (Verdi / "La Forza Del Destino")
05. Ritus Pacis  (Bach / "Concerto No.3")
06. Adagietto  (Mahler / "5th Symphony")
07. Dark Wonders  (Haendel / "Sarabande & Ombra Mai Fu")
08. Winds of Hope  (Vivaldi / "Winter / Four Seasons")
09. Sombre Day  (Eric Levi)
10. Adagio For Strings  (Barber)

All tracks adapted, arranged and produced by Eric Levi.
Except track 9 composed, arranged and produced by Eric Levi.



Domine Jesu Christe, qui dixisti Apostolis tuis:
Pacem relinquo vobis, pacem meam do vobis:
ne respicias peccata nostra, sed fidem Ecclesiae tuae;
eamque secundum voluntatem tuam
pacificare et coadunare digneris.

- "Ritus Pacis" Pronounced by His Holiness Pope John Paul II



Eric Leviによる唯一無二の混声合唱ホーリーロック、eRaのクラシック・カヴァー・アルバム。発売日まで公式なアナウンスも事前情報もなく、半ばゲリラ的にリリースされました。(発売の数日前になってやっと、fnacにトラックリストと試聴サンプルが追加されていたくらいです。)


ということもあり、正式なナンバリング・アルバムとしてカウントするには?が残る今作。その中身はというと、前作"Reborn"を無かったことにして、"eRa2"の頃の、やや明るく保守的な作風に回帰したとも受け取れるものです。

※ 追記…11/10現在、正式な5th studio albumであることが、本日配信されたOfficial Newsletterによって明言されました。


もともとClassicのフレーズをデフォルメして多く引用してきただけあって、「何故今更フルカヴァー・アルバムなのか?」との疑義を醸す向きもあるかもしれませんが、そこはeRa。これほどに心を震わす旋律を織り交ぜて殆どオリジナルのものにしてしまっているのだから素晴しい。余りにも知られたクラシックの名曲の数々は文字通り「引用されている」だけのもので、"eRa"そのものではない。



楽曲それぞれの基本的な構成は、Classic Resourceからのモチーフの呈示、そしてEric Leviによる"Variations(変奏曲)"の二層造りの組み合わせになっています。

本家テノール歌手のFabrice Montegnaを数曲でフィーチャーし、クラシカル・クロスオーヴァーの趣を狙っているものの、全体としては抑揚を抑え気味で、過去作に比べて感情の爆発力が足りず、その控えめさにやや消化不良感が伴うのは、このアルバムがあくまで「クラシック」の気高さ、静謐さを醸し出そうとしている。ということに尽きるでしょうか。


また、ヨハネ・パウロ2世の祈祷『平和の祈り』をサンプリングした"Ritus Pacis"は、ここ数年のeRaの変容を如実に物語る一曲かもしれず、1st以来、創造言語を用いてファンタジックな独自の世界観を確立し、その音楽書法に置いてすら「何かに似ていて、その何者でもない音楽」である所のeRaが、ここに来て現実世界の境界へと踏み入れ、その教条や祈りに同調しようとしている。その兆しは"Reborn"から顕著であった。



然りといえども、かつて一瞬の出会いで私を心酔させ虜にしてしまった"Ameno (Remix)"のようなシュールでパラノイアックな暗鬱たる作風をもう望むべくもないのだとしたら、それは些か寂しい気もする。今作では辛うじて"Adagio For Strings"にて片鱗を窺うことができるのだけれど。。



--------------------------------------------------------------------------------

+ Strings:
Orchestrated and Directed by Marie Jeanne Serero
except track 9 Orchesrated by Yvan Cassar and Marie Jeanne Serero
Recorded by Peter Cobbin at Abbey Road Studios, London.
Assisted by John Barrett and Gordon Davidson


+ Choir:
Orchestrated and Directed by Guy Protheroe
Recorded by Andy Strange at Abbey Road Studions, London.
Assisted by John Barrett and Gordon Davidson
Additional lead voice: Fabrice Mantegna (tracks 1, 6, 7, 8)


+ Bass & Drums:
Performed by Lee Sklar and Karl Brazil
Recorded by Andy Strange at Air Studios, London
Assisted by Nick Cevonard


+ Guitars:
Performed by Michel Ayme
Recorded by Andy Strange at Dinemec Studios, Geneva.
Assisted by Ewan Hails


+ Synths: Performed by Eric Levi
Programming by Alexis Smith
Mixed by J.P.B and Andy Strange at Omega Studios
Assisted by Nicolas Berger
Masterd by Tim Young at Metropolis Studios.


Artwork by Die Frau (Sylvie B.) - Paris


_*


Joel Kanning / "Ubiquitous Frequency Oscillation"

2009-10-17 17:25:51 | music9
Ubiquitousfrequencyoscillation



□ Joel Kanning / "UFO - Ubiquitous Frequency Oscillation"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>The Visitor
Travelers
One World

Release Date; 24/07/2009
Label; 2009 Joel Kanning
Cat.No.; none
Format: mp3 Album

>> http://www.joelkanning.com/


>> tracklisting.

01. The Visitor
02. Travelers
03. Ashima
04. Dancing In The Mist
05. Twilight
06. One World
07. Messages From Above *
08. Auricle *
09. L'amour Sonique
10. In Excelsis
11. Across Cultures
12. Drifting *


All songs written, performed and produced by Joel Kanning.
* Vocals & Lyrics: Tami Kanning



</object>



DTM世代のNew Age/Electronicaコンポーザー、Joel Kanningによる実質の2nd Album。

『遍現振動』なるタイトルを冠する"UFO"は、まさに私のようなリスナーがかつて見失ってしまった音楽の再顕であり、そこには"Old Fashioned Enigma"ともいうべき、1990年代中期~2000年初頭まで最盛期を誇ったWorld Beat Musicのエッセンスが詰め込まれています。


皮肉にも、同方法論の偉大な先達のフォロワーである彼らが証明してきたのは、New Ageファンが崇めてきたそれらのサウンドの大部分が、在り合せのサンプラーとソフトに依存しているという事実。しかしEnigmaやDeep Forest、その他プログラミング系エスノミュージックのごく限られた名作のそれぞれには、決してサウンドの構成だけでは辿り着けないエスプリが息衝いています。



"UFO"が90年代中末期のEnigmaやDeep Forest、(或はMike Oldfiedの"the song of distant earth"か)のトレースであることは否定しようがないことでしょう。しかし、同ジャンルのリスナーからは半ば失望とともに聞き流されて来た凡百のフォロワーとは一線を画する思い切りの良さ、懐古に徹する姿勢、何よりも「好きな音楽」を奏でているという閃きと発露が感じられる、「今」だからこその傑作と思えてしょうがないのです。


10年前とは違い、World MusicとDance Musicの融合という手法そのものが古くさくなったばかりでなく、当時にとって『最先端』であることの意味が大きかったプログラミングビートが錆び付いた化石となっていて、このジャンルが徐々に推進力を失って行ったのも、そしてEnigma、Deleriumといった御大が決してそこに留まることが無かったのも、時代の必然だったのかもしれません。




何度も繰り返す通り、"UFO"は過去のEnigma(Jens Gadの成分に大きく拠る)とDeep Forestに迎合する折衷的サウンドでありながら、ビートやサンプリングには最新のソフトやシンセを用いた節回しを聴き取ることが出来ます。その音楽性はコピーに過ぎず、しかしコピーだからこそ、リスナーが長らく渇望していた、失われたジャンルの甘美な残響に満ちているのです。




Joel Kanningは近年活動が評価されてきており、昨年はEnigmaが公式に主宰したRemix Contestにおいて、"Downtown Silence (Past Lives Mix) "が準優勝を獲得。Deep Forestのオフィシャル・リミキサーにも採用されています。


(Special Thanks to Oceano!)


Banco De Gaia / "Memories Dreams Reflections"

2009-10-04 19:29:44 | music9
Memories_dreams_reflections



□ Banco de Gaia / "Memories Dreams Reflections"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Starless
Last Train to Lhasa (2004 Live)
Soufie (Now That's What I Call 2009)

Release Date; 22/09/2009
Label; Disco Gecko Recordings
Cat.No.; GKOCD010
Format: 2xCDs

>> http://www.banco.co.uk/


>> tracklisting.

Disc 1 (studio)
01. Spirit Of The Age
02. Starless
03. Echoes
04. Soufie (Now That's What I Call 2009)
05. Tempra
06. Terra Om


Disc 2 (live)
01. Analogique
02. Indecision
03. Soufie (Blue Mix)
04. Qurna
05. China
06. Celestine
07. How Much Reality Can You Take?
08. No Rain
09. Drunk As A Monk
10. Last Train To Lhasa



この20年の間、クラブ/テクノミュージックにエスノ・アンビエントの風を吹き込んだ先駆けであり、アンダーグラウンドシーンのカルト的存在との謂れもするToby Marksの記念碑的アルバム。


Disc 1は彼の音楽的ルーツを辿る内容になっていて、前半部"Reflections"では自身が尊崇する往年のプログレバンドのコピーを、後半部"Dreams"には、今や幻となったデビュー当時のカセット音源をセルフカヴァーでリファインしたものを収録。そしてDisc2 "Memories"では、1990年から2004年に至る貴重なライブ音源から、Banco de Gaiaの軌跡と変遷をノンストップMIXで回顧する。



これから演奏にギターシンセなんか取り入れてみたらどうだろう?

Benco de Gaiaの初期プロデューサーでもあるAndy Guthrieの一声が、Tobyの転機となった。当時、ポルトガルで観光客への余興としてバンド演奏していたTobyは、そのgigを契機にデジタルサンプラーを購入。直後から、現在知られる所のBanco de Gaiaとして活動を開始するに至ります。



"Reflections"パートでカヴァーされているプログレの名曲を聴いて、Banco de Gaiaの原型となるピースが、それらの原曲に既に散りばめられていたものであることに新鮮な感動があります。King Crimsonの煙を燻らすような"Starless"、Pink Floydの聖典"Echoes"の忠実なコピーぶりは、Bancoファンにとっては意表という他ないのではないでしょうか。

"Farewell Ferengistan"から参加しているフォークシンガー、Maya Preeceのあまりにもエキゾチックな"Starless"は、原曲好きにとってもやや面妖であるのだけれど。


エレクトロニカの片鱗を窺わせるHawkwindの"Spirit of the age"は、おそらく30年前に今のテクノロジーがあったなら、彼らもそうしたであろうと思える先進的なアレンジにリミックスされいています。



"Dreams"パートにおいて最新のスタジオ録音で蘇ることになった初期楽曲群は、Banco de Gaiaのコンセプトと持ち味が、その頃から今に至るまで歪みなく貫かれていることに気付かせてくれるよう。

"You Are Here"からは、ややウェットでジャジーなカラーを押し出すようになったBancoではありますが、このアジアン/オリエンタルなミクスチャー、摩訶不思議なグルーヴ感こそが、20年来支持され続けて来た由縁なのでしょうね。



そして珠玉の"Memories"パート。
デビュー初期の熱狂と閃きが迸る前半から、ドラムのTed Dugganを迎えた中盤の円熟期(あるいは混沌期?)を経て、忘れ得ぬ"Last Train to Lhasa (2004 Live)"でのピリオド。


この一枚でBanco de Gaiaの全てがわかる!と、までは言いませんが、バンドとしての彼らの姿を置い続けてきたファンであればこそ、この上ない価値を見出すことの出来るアルバムには違いありません。


Sleepthief / "Labyrinthine Heart"

2009-09-04 03:43:54 | music9
Slh



□ Sleepthief / "Labyrinthine Heart"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Ariadne (The Dividing Sea)
A Cut from the Fight
A Kind of Magic

Release Date; 01/Sep./2009
Label; Neurodisc
Cat.No.; NRO 32102
Format: 1xCD

>> http://www.myspace.com/sleepthief
>> http://www.sleepthiefmusic.com/


>> tracklisting.

01. Here I Confess  / Joanna Stevens
02. World Gone Crazy  / Coury Palermo
03. Skimming Stones  / Kirsty Hawkshaw
04. Labyrinthine Heart  / Jody Quine
05. A Kind Of Magic  / Zoe Johnston
06. A Cut From The Fight  / Kristy Thirsk
07. Rainy World  / Caroline Lavelle
08. Ariadne (The Dividing Sea)  / Joanna Stevens
09. Reason Why  / Zoe Johnston & Coury Palermo
10. Fire King  / Jody Quine
11. Reversals  / Kristy Thirsk
12. I Know There's Something Going On  / Roberta Carter-Harrison



Produced by Justin Elswick
Mixing & Programming by Justin Elswick & Israel Curtis
Additional Programming by Ken Harrison
Guitars by Vic Levak & Joshua Aker
Artwork by Brian Son



火に入る毒蛾の侘しく燃ゆる様よ
陽光の残滓を弄ぶ鏡よ
しかし雲雀は渡るのだ 何者にも惑わされず
何もかもに見放されようとも 為すべきことを為そう
我が意こそ我が身の全て
氷の双眸に無慈悲を誹るのなら
きっと我が哀しみは それほどに深いのだ
夜明けとともに汝と漕ぎ出そう
櫂を掲げ 不信の舫を解くのだ
虚けよ 我が迷宮の心
 

         ーMichael Leonard



このアルバムの為に捧げられたMichael Leonardの詩に誘われて、果てのない闇と眩惑する光の交叉する、十二様に彩られた時間と歌の迷宮へと囚われて行く...

Sleepthiefの2nd Album、"Labyrinthine Heart"は、十二編の歌い手それぞれの心象を描きながら一編の壮大な物語を為し、彼らの幻想でありながら、あなたのリアリティに汎化する。



前作"the Dawnseeker"では、明瞭ながら洗練されたメロディラインに、JustinとIsraelによるNew Age/Electronicaなサウンド・メイキングが完成度の高い統一感をもたらしていましたが、この"Labyrinthine Heart"においては敢えてそこを崩しにかかり、暗く切々と歌い上げるクラシカル・クロスオーヴァーの趣を狙ったディレクションが目立ちます。


偏に言えば、近年エレクトロニカ界隈の時好にもなったGothic Metal風の仰々しさを前面に出しているものの、要所要所ではJustinのテクノ/オルタナへの傾倒が窺えるエスプリが効いたポップな節回しが健在です。ベースやビート回りのプログラミングについては、Israel Curtisの仕事によって、より今風にアドヴァンスドされています。



Joanna Stevensによる"Here I Confess"、"Ariadone (The Dividing Sea)"は、前者の色合いが最も色濃いシンフォニックな曲調に彩られていて、アルバムの印象を大き過ぎる程に決定づけていると言えるでしょう。新進気鋭の男性ヴォーカリスト、Coury Palermoをフィーチャーし、先行シングルにもなった"World Gone Crazy"は、パワフルで刺のあるナンバーで、アルバムにエッジを与えています。


これもまた先行公開トラックとなったKirsty Hawkshawの"Skimming Stones"は、オリジナルとは異なるアレンジで収録。彼女のハイソプラノを存分に活かしたファンタジックで映画的な曲想。一転して暗翳を投ずるのは、Sleepthiefの発起人でもあるJody Quineのタイトル・トラック、"Labyrinthine Heart"。アジアンテイストな前奏から、迷宮のように入り組んだ心模様をセンチメンタルに、そして艶かしく歌い上げる。

今作では貴重となった軽快で爽やかなポップソング、"Fire King"でもJodyは潤いのある落ち着いた歌声を披露。作品の暗い世界観に、一筋の鮮やかな光風を吹き込んでいます。踊るようなベースラインも特筆に値するので、ぜひ重低音の効く環境で聴いてもらいたい一曲。



Zoe Johnstonの"A Kind of Magic"は、今作でも突出したアダルト・コンテンポラリーに仕上がっています。彼女の嗄れた声とヴォーカルラインの絶妙な調和が、幽玄な世界観を隙なく構築している楽曲。


続いて登場するのが、Kristy Thirskの"A Cut from the Fight"。特異なエレクトロ・ポップナンバーでありながら、Sleepthiefらしいクールなフレージングに回帰していて、サースク嬢の特質をこの上なくユーティライズして聴かせてくれています。同じくThirskによる"Reversals"では、ややダブ・エフェクトに頼るきらいがあるものの、ソング・ライティングとしては真っ向から挑んだバラード。


ちなみにKristy Thirskは、本アルバムのリリース直前に第一子である娘を出産。彼女には"Phoenix Evangeline"という、とてもユニークな名付けが行われたそうです。




Caroline Lavelleのホーンヴォイスとチェロが暗愁を漂わせる"Rainy World"も、"A Kind of Magic"と同様に、まるで非の打ち所の無いアダルトナンバー。前作の"Fire from Heaven"もそうでしたが、Sleepthiefの真骨頂は、こういうトラックにこそあるのかもしれません。


このアルバムからは2nd Singleとしてカット予定の"Reason Why"は、Zoe JohnstonとCoury Palermoのバラード・デュエット。声質が似通った二人だけに、そのハーモニーの妙は秀逸。あたかも表裏一体に引き裂かれた慕情を歌い上げるようで胸を打つ。



シンセ・オーケストラのスタッカートから、Hans Zimmerのアクションスコア風に展開する意表の"I know There's Something Going On"は、ABBAのメンバーであったFridaのソロ・プロデュース作品からのカヴァートラック。Roberta Carter-Harrisonが持ち前のスロートヴォイスで冷艶豊かに楽曲を彩っていく。

この楽曲はプロデューサーとしては知る人ぞ知る名匠、Russ Ballad氏によって手掛けられたものですが、RobertaのパートナーであるKen HarrisonとJustinは、原曲に対して大胆なアレンジを敢行。アルバムの最後を飾るに相応しい、勇壮で聴き応えのあるストーリーを奏でています。




以上の楽曲たちで綴られた、歌と幻想の十二回廊、『Labyrinthine Heart』。想い焦がれる人々の心模様を映すように、その天桴は一定の周期を刻まないのかもしれないし、一回りして同じ時を巡るのかもしれない。ただしばらくはその蠱惑する夢想に身を委ね、今もこうして眠りの時を奪われている。


*********************************************************************

A Cut From The Fight.

Is there any way to find some peace for you and me?
Is there anyway that we could deal with this rationally?
I'm in the dark and it's blinding my heart
I really didn't want it all to fall apart


[Chorus]
Guess we sorta lost control
so the fight began and now it's all we know
Guess we kinda lost it all
When the fight began we lost c-c-control


Did you ever think we'd get this far? It's so bizarre
Did you ever think we'd find out trust was a casualty?


Why couldn't we work it out with no blame?
I really didn't need to deal with all the pain


[Chorus]


Control.........
You can go left. I will go right
I don't wanna fight anymore
Don't care who's wrong or who is right
I don't wanna fight anymore


I'm in the dark and it's blinding my heart
I really didn't want it all to fall apart


Guess we sorta lost control
so the fight began and now it's all we know
Now we've really lost it all
When the fight began we lost, we lost control
Guess we sorta lost control
When the fight began and now it's all we know
Now we've really lost it all
When the fight began we lost c-c-control


I guess we lost control
You can go left I will go right
I don't wanna fight anymore

*************************


私とあなたとの間に、何か平和的解決を望めない?
何か合理的な方法がないのかしら
心も暗く鎖されたまま
バラバラになんてなりたくなかったのに


私たち なんだか自制を失いがちなのよ
争うのにわかりきったことだけれど
見失うのにも程があるわね
争いが始まれば ロスト・コントロール


こんなになるなんて思ったことある?突飛すぎるわ
あんなに築いた信頼が 大事故に見舞われるなんて


どうしてお互いを責めずに為し遂げられなかったのだろう?
こんなに痛い結末なんて ほんとに望んでなかったのに


私たち なんだか自制を失いがちなのよ
争いはじめてから ここに至るまで
見失うにも程があるわ
争いが始まれば ロスト・コントロール


コントロールしましょう
あなたは左 わたしは右に
もうこれ以上傷つけあいたくない
誰が正しいか間違ってるかなんてどうでもいい
争うのはもう嫌なのよ


心は暗く鎖されて
バラバラになんて 本当になりたくなかったのに


私たち なんだか自制を失いがちなのよ
争いはじめてから ここに至るまで
いまに完全に見失ってしまう
争いを始めれば失うの ロスト・コントロール
私たち なんだか自制を失いがちなのよ
争うのにわかりきったことだけれど
こうして何もかも見失って
争いが始まれば ロスト・コントロール


自制が効かないのよ
だからあなたは左 わたしは右に
もう傷つけ合うのは止しましょう


Robert Henke / "Indigo_Transform"

2009-08-14 10:36:46 | music9
Indigo_transform



□ Robert Henke / "Indigo_Transform"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Indigo_Transform (excerpt)


Release Date; 03/Aug/2009
Label; Imbalance
Cat.No.; ICM 08
Format: 1xCD
Note: Limited to 1,000 copies

>> http://www.monolake.de/


>> tracklisting.

01. Indigo_Transform [60:00]


Music For The Installation Tap Tim By Fredrik Wretman
Färgfabriken Norr, Östersund, Sweden, 2008-11-08 - 2009-03-29


>> http://www.monolake.de/installations/taptim.html
>> http://www.fredrikwretman.se/



Music produced by Robert Henke 2008
Photos by Robert Henke
Design by snc



虚空に映ろう朧な光暈
漆黒の彼岸に収斂する千重波は
インディゴの深淵よりゆらぎ出づる
幻相の滴瀝に峙ち響く



MonolakeことRobert Henkeが本名名義で発表する実験音響作品の最新作。全世界限定1,000枚のみのリリース。当作品は、スウェーデンの芸術家Fredrik Wretmanのインスタレーション・アート、“Tap Tim”の為に制作された音源をコンパイルしたもの。


モダンアート・ギャラリーとして世界的に名高い、スウェーデン、エステルスンドのfargfabrikenにおいて約五ヶ月間に渡って展示された映像と音響、そして空間の為の構造芸術、“Tap Tim”。

水中を泳ぐ鯉や、光の描く波面といったモチーフに従って、音響面では広大な空間に鳴り響く風洞音、そして水滴が滴り落ちる音をホワイトノイズとして処理、冷ややかで茫洋たるアトモスフィアを構築しています。

Fargfabriken
(http://www.fargfabriken.se/)


Robert Henkeは、Fredrik Wretmanからの依頼に基づき、monolake名義のアルバム"Cinemascope"の収録曲"Indigo"を、長時間のインスタレーションに相応しい内容に再構築。実際にギャラリーで使用された楽曲は、会場の別々の方向に設置された3つのCD Playerから発信されるループサウンドの重畳効果を利用した疑似マルチトラック仕様。

Taptim

3方向の音源それぞれのループピリオドが異なるため、毎時間ごとにその場限りの重ね合わせが起きるというシンプルな原理を採用していますが、このCDでは各音源の冒頭から再生時間を揃えた最初の60分が、Stereo mixdownされて収録されています。


Robert Henkeが同様の素材を用いた"piercing music"では、沸々と湧き出でるような水音が鋭く硬質な印象を喚起していましたが、"indigo_transform"はより静穏かつダイナミックなスケールを感じさせるもの。周期的に轟く巨大な震動音が澄んだ水明を澱ませながら、意識を果てのない無窮の深淵へとひきずりこんでいくような幻像を抱かせるサウンドスケープ。


自然の複写、複写の分裂、差異の増幅。
芸術行為における模造の反復によってアイコン化される音のモチーフ。聴く者の意識の根流を描くものが、遠い記憶の綻びに覘く「自然よりも根源的な」形而上のアルゴリズムに綾なす波であるならば、私たちはきっと、その潮汐に耳を傾けるべきなのだ。


反転した波面に「内と外」との区別がつかないように、「虚と実」は恒に背中合わせの真を擁している。鏡と虚像、表現と享受、刺激と想像、思索と瞑想。どちら側からでも入り込めるし、どちら側にも境界がある。ここに湛えられた音像が映し出すのは、水にたゆたう無意識の原景であり、意識的に模築された箱庭の水音であり、そのどちらでもあるのです。