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□ 『Xファイル:真実を求めて』
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X-Files (UNKLE Variation on a Theme Surrender Sounds Session #10)
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Home Again
Release Date: 7 November 2008 (Japan)
David Duchovny, Gillian Anderson
Director: Chris Carter
Writers: Frank Spotnitz and Chris Carter
Music: Mark Snow
[あらすじ]
雪の降り積もるウエストバーニジア州の片田舎で、FBIの女性エージェントが謎の失踪を遂げる。直後、事件と何ら接点のないはずのジョー神父から、彼女の誘拐に関わる霊的な『ビジョン』を見たとの報告があり、FBIの捜査に協力を申し出る。
霊視によって、氷に閉ざされた湖から切断された人体の部位を発見する神父だったが、一刻を争う捜査状況の中、彼の汚れた犯罪経歴から事件の取り扱いに困惑した捜査本部は、かつてFBI内に存在していた未解決事件担当部署、"X-ファイル"課において同様のケースを扱っていたフォックス・モルダーとダナ・スカリーに助言を仰ごうと、再び彼らをFBIに呼び戻そうとしていた。
6年ぶりにモルダーとスカリーに会える!
しかも映画館の大スクリーンで!!・*:.。. (ノ´ω`・。)・*:.。
大切に保管していた「傑作選」DVD付属の前売りペアチケットを自分の極秘「Xファイル」から取り出し、モルスカの如く颯爽とコートを靡かせて映画館へ!
とはいうものの、仕事明け30時間不眠のため「あなた疲れてるのよ」状態で鑑賞したせいか、色んな意味で幻妖で奇怪な悪夢を見て来た気分に。。
"Don't Give Up"
映画の大まかなテーマは、"I want to believe"という願いに対して、"Don't Give Up"と投げかけるメッセージを軸にしたもの。モルダーとスカリーの絆は、過去における「仕事のパートナー」という縛りから解放され、6年間の空白期を経て一層結びつきを増し、最初から恋人同士として登場します。脚本や演技にも6年の重みがしっかりと刻まれていました。
TVシリーズのメインスキームだったUFO・政府の陰謀ストーリーはひとまず置いて、今作はほぼ独立した一本のオカルト・ホラー・ムービーを目指していますが、目を背けたくなるような「おぞましい真実」に相対するモルダーとスカリーの関係性がこれほどまでに試され、象徴的に語られたエピソードは未だかつてありませんでした。
あれから6年。謀略により殺人罪の濡れ衣を着せられ、隠遁生活を送りながらも未だ行方不明の妹を探し続けるモルダーと、現在はカトリック系病院につとめ、不治の病に冒された少年の執刀医として深い苦悩を抱えるスカリー。それぞれに「帰るべき場所」があり、それぞれに「あきらめたくない願い」がある。
ストレンジャーによる猟奇的で理不尽な蛮行という、伝統的なアメリカン・ホラーのフォーマットに、X-ファイル特有の一筋縄ではない捻りを交えて、全体を「ヒューマン・ドラマ」として纏め上げるというシニカルかつユーモアな妙味、そしてそこはかとない「垢抜けなさ」(笑)も含めて、実にX-ファイルらしく完成されています。
[※ 以下ネタバレあり]
"Proverbs 25:2, 隠すことは神の誉れなり"
猟奇殺人、臓器売買、幹細胞移植、動物実験、闇マーケット、性犯罪、神への冒涜・・・日の当たる世界より隠匿された、人間という存在ゆえの暗部と欲望が招く惨劇。それは同じく、「命を繋ぎ止めたい」という人の願いが選択した「生命の尊厳」の対極の形であった。
血の涙、犬の生首の写真、血塗られた冷蔵庫、氷片に閉ざされた無数の人間の四肢など、グロテスクかつ皮肉の効いたビジュアルは如何にもX-ファイルらしいシュールなエッセンスが凝縮されています。
この映画を見る上で、キリスト信仰への理解と知識は必ずしも必要ではありませんが、小児性愛やホモセクシュアル、人体損壊、死への挑戦など、劇中で描写される禁忌のモチーフの数々を読み解く一定のリテラシーにはなるでしょう。
大掛かりなSFXとアクションを打った前劇場版とは違い、今作はエピソードとしてはかなり偏狭な舞台で小さく進行していくものでしたが、その闇の深さは計り知れず。(ロケ地・バンクーバーならではの寂れた雰囲気は初期シリーズを彷彿とさせて好きだけど)
吹雪の中、手負いの身体をひきずって山道を孤独に歩み、恐怖の真実に迫ろうとするモルダーの後ろ姿は、まさに私たちが目で追って来た「モルダー捜査官」そのものの面影に立つものでした。
色々と言いたいことはあるけれど、特にクライマックスにおける誘拐被害者の救命シーンは、手術過程までしっかり
見せてくれた方がメリハリが効いたと思う。
ただ、野蛮で粗暴な殺人者の手に落ちたモルダーを抱きとめるスキナー副長官には、積日の信頼と確執の上にグッと来るものがあったし、その絆の固さを知るからこそ、モルダーとスカリーのラストの対話とキスシーンには不覚にも目頭が熱くなりました。良くも悪くもファンに向けられた映画だし、初見の人にも一種のサプライズを与える作品と言えるでしょう。惜しむらくは、必ずしもスクリーン向けのホラー映画では無かったこと。
これまでのシリーズ同様、観客自身が超常現象に様々な解釈を抱くことが出来、イマジネーションを刺激してくれます。結局、霊視を行うジョー神父と犯人側には「隠された繋がり」があることが判明し、神父の力の真偽については、見方によっては十分否定に足る疑念を抱く余地が意図的に残されました。
神父の力を実証して、妹・サマンサの消息に一縷の望みを託したいモルダーと、かけがえのない一人の患者に絶望的な延命治療を施す覚悟のできないスカリー。
彼らが信じたものが「真実」だったのか「偽り」だったのか、それが「過ち」であったにせよ、自らが選択した道を歩み出す契機を得て支え合う姿は、正に切迫した願いを抱えるあらゆる人々の、かくあるべき形なのでしょう。答えは出ないかもしれない、しかし真実を求め続ける姿勢こそが生きる理由に足るのだと。
今はまだ冷たい闇の中を彷徨う2人ですが、彼らを取り巻く世界はいずれ氷解し大きなうねりとなって、幸運の待つ未来へと漕ぎ出す。スタッフ・ロールの背景で提示された映像が、そんなモルダーとスカリーの明日を予言したものだとしたら、ファンとしてこれ以上嬉しいことはありません。
X-ファイルの代名詞といえば、不気味なピアノのリバーブにタイプ音、そして6音からなる暗翳とした情緒を伴う口笛の旋律が耳に残るテーマ曲と言えますが、この映画の音楽もTVシリーズと同じく、かの名曲を産み落とした奇才Mark Snowによるもの。
前劇場版を踏襲した、ドープなプログラミングと壮大なオーケストラを駆使したエキセントリックなホラースコアですが、意外と正攻法なアレンジも得意とする職人でもあります。
エンディングの壮麗なビジュアルと共に驚かせてくれるのは、あのブリティッシュ・エレクトロの寵児とも言えるJames Ravellのユニット「UNKLE」によるテーマ曲のリミックス。オーケストラによる哀愁の旋律とHip-Hopの融合という大胆な作風は彼らの持ち味で、チェロとヴァイオリンによる主旋律と踊るベースのカタルシスが、映画の後味を一層深いものにしてくれています。(本編自体が、エンディングの為の壮大な前フリと思えるほど(笑))