lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Johann Rosenmüller / Gli Incogniti | Amandine Beyer / "Beatus Vir?"

2010-10-29 19:42:38 | art music
Beatus_vir


□ Johann Rosenmüller / Gli Incogniti, Amandine Beyer /
 "Beatus Vir? (Motets and Sonatas)"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Sonata Decima a 5
Nisi Dominus

Release Date; Aug./2010
Label; Zig-Zag Territoires
Cat.No.; ZZT100801
Format: 1xCD

>> http://www.zigzag-territoires.com/

>> tracklisting.

Beatus Vir ?
01. Sonata Decima a 5 (Sonate a stromenti da Arco et Altri, Norimberga 1682)
02. Jubilate Deo (Manuscrits Inédits trouvés à la Bibliothèque de Berlin)
03. Misericordias Domini (Manuscrits Inédits)
04. Sonata Settima a 4 (Sonate a stromenti da Arco et Altri, Norimberga)
05. Coeletes Spiritus (Manuscrits Inédits)
06. Nisi Dominus (Manuscrits Inédits)
07. Sonata Ottava a 4 (Sonate a stromenti da Arco et Altri, Norimberga)
08. Salve mi Jesu No. 421 (Manuscrits Inédits)



Johann Rosenmüller (1619-1684)
Oelsnitz - Leipzig - Hambourg - Venice - Wolfenbüttel

Gli Incogniti
Amandine Beyer violon et direction


Raquel Andueza soprano
Wolf Matthias Friedrich basse
Alba Roca violon
Marta Paramo, Yoko Kawakubo altos
Baldomero Barciela viole de gambe
Francesco Romano théorbe
Anna Fontana clavecin et orgue




"Amandine Beyer and Gli Incogniti have discovered these unpublished vocal pieces in which majestic, quasi-operatic sinfonias introduce psalms or other liturgical texts, with voices and instruments answering each other colla parte ? as if the composer wanted each musician or singer to transcend his or her own limits.The voice can also sometimes flare up like a flame, an existential interrogation. "


Rosenmüller - The Enigma of the Baroque Sacred Music.


バロック音楽史上初の『フリーランスの作曲家』。ヴェネツィア期には協奏風宗教曲においてルター派の作曲家に多大な影響を齎し、創造性に溢れる偉大な業績を残しながら、最も多くの謎に包まれた不屈の音楽家、ヨハン・ローゼンミュラー。

晩年のモテット&ソナタ集である"Beatus Vir?"は、新たに発見された写本から、歴史に埋もれ今なお殆ど知られていない、このバロック時代の『特異点』ともいうべき意匠の数々に光をあてようとするものである。



1619年、ザクセンのエルスニッツに生を受けたローゼンミュラーは、ライプツィヒで音楽を学び、重要なポストに次々と就任。1655年、ついに聖トマス教会のカントルへと採用されるという時に、突如として『ホモセクシュアル』の不可解な嫌疑をかけられ逮捕されるが、すぐに脱獄を決行。(未だ事実関係は不明)


2年間ハンブルクに身を潜め、Giovanni Rosenmillerの偽名でヴェネツィアに渡り、サン・マルコ聖堂でトロンボーン奏者の職に就きながら作曲活動を継続。1678年にはピエタ養育院合唱音楽長をつとめ、イタリアン・バロック界を席巻する評価を得たことで、1682年にドイツ本国の特赦により帰郷。その2年後に他界するまで、ヴォルフェンビュッテル宮廷楽長として作曲活動を全うした。



ここに収録されているソナタは1682年にニュルンベルクで発行されたものであり、及びモテットはベルリンの図書館に所蔵されていたスコアで、同様に彼の晩年の集大成というべき作品であると考えられている。

彼の遺稿は今でこそ希少だが、17世紀末から18世紀までのドイツ・イタリアの宮廷・教会の財産目録には、ローゼンミュラーの名が多く散りばめられ、彼がシュッツやブクステフーデと並んで、当時最も名声を誇った作曲家であったことを裏付けているという。しかし現在では、その刊行物の10%に満たない史料すら見つかっていないのだ。



第一次大戦終了時まで、バッハ以前の教会カンタータは、聖書と自由詩の引用から成るダイアローグ、協奏風モテット、コラール変奏曲、ソロあるいは循環カンタータなど、ごく限られた様式に基づいていると考えられてきた。ローゼンミュラーに言及した最も古い論文の登場は1932年まで待たなければならないが、彼を『レッシングの記述に拠るクロプシュトック』と準える向きもある。誰もがその偉業を讃えるが、誰もがその作品の重要性を為す本質について理解を遅らせて来たというのである。


今日の声楽研究では、特にローゼンミュラーのヴェネツィア期におけるラテン詩編の重要性が脚光を浴びているものの、あまり顧みられて来なかったという協奏風ミサ曲についても、ドイツ、イタリアを通じたバロック音楽の転換点とも言うべき要素が特徴づけられているという。


その音楽的特異性とはすなわち、重唱、独唱、合唱、弦楽アンサンブルといった様々な表現手段を用いた論理的構造、フィグーレンレーレに基づく不協和音程の使用、および次々と転調を繰り返しながら展開する調性的和声である。特に、金管楽器が旋律楽器としての役割をもつこと、およびエコー書法は、ヴェネツィアの影響を明確に示しており、この特徴は、協奏風ミサ曲にもラテン語の詩篇曲にも見られるものである。
『J.ローゼンミュラーのミサ曲 - ボーケマイヤー・コレクションにおける協奏風ミサ曲の研究』園田順子 著


事実、ローゼンミュラーの協奏曲はこの上なく『モダン』に響く。緻密でありながら豊穣で、荘厳でありながら官能に満ちている。Amandine Beyerは、このCDに収められた二つの最も重要なシンフォニア、"Nisi Dominus"、"Misericordias Domini"について、そのリトルネッロ(反復構造)の特異性を挙げて、「潜在する構造性に裏打ちされた演奏者との対話であり、彼らの参加性と表現力を要求するもの」と解釈している。



17世紀末のシンフォニアの発展と人気の定着は、ローゼンミュラーの貢献に拠る所が最も大きい。

半音階フーガからの導入による"Soanata Settima a 4"では、ブロック・コード化されたサラバンド風アダージョの形式を経由、次にプレスティッシモで幕を閉じるABA構造を敷いていて、ヴェネツィア・オペラのシンフォニア様式を色濃く反映したローゼンミュラーの意匠の到達点となっている。『退屈なスキマティズムを脱却しながらも、内的な緊張を構築している (Holger Eichhorn)』

器楽演奏において、精緻な論理構成とアーティキュレーションの明瞭な区分が、必要欠くべからずものとされるようになったのも当時頃からであり、そのマニフェストは、これらの作品の初の収録音源となる、この演奏でも引き継がれているという。



ローゼンミュラーの最晩年の作品であるとされる"Nisi Dominus"は、ダビデの子ソロモンによる『詩編18』に基づいた典型的なシンフォニアとして幕を開けるが、リトルネッロから導かれる第二ヴァースからは、物語の展開に併せてサラバンド風アリアやマドリガーレの装飾、象徴的な保続音に加え、哀しみのモチーフとして半音階が用いられるなど、コンテクストの寓意に音を呼応させるという繊細な手法を完成させている。


第三・四ヴァースからは浮遊感のあるアリア・コンチェルトが、リトルネッロと不協和的なアダージョによって断続的に展開され、第五ヴァースで冒頭のシンフォニアが教会の頌栄を伴って回帰する。頌栄の文にある通り、『Sicut erat in principio(始めに在りしごとく)』為るのである。



CDの解説では、その他の楽曲についても、特筆すべきコンテクストの構造上の理由と音楽的特徴の結実点が多く挙げられているので、バロック・オペラの『ミッシングリンク』ともいうべき、この最も偉大で謎多き作曲家について興味を抱かれた方には是非手に取って頂きたい。




最後になったが、演奏を務めたGli Incognitiは、既に一流のソリストとして数多くの音源を収録し、名を馳せているヴァイオリニストのAmandine Beyerが率いる楽団で、主にバロック関係のパフォーマンスで活躍している。

ゲスト・ソプラノのRaquel Anduezaも、近年ますます国際的な注目を集めている美貌のソリスト。豊潤で透明感のある天性の歌声は、どこかタイトながらも、声量によって損なわれることのない清麗さに溢れていて、いつまでも聴いていたいと思わせる稀有な魅力がある。





montage.

2010-10-27 08:05:37 | Science
Rained
(iPhone 3gs; Camera; Cameratan; MoreMono.)




□ my twitter log storage.

AIP_Publishing: Remembering The Father Of Fractals: Measuring the scale of Benoit Mandelbrot's achievements http://dld.bz/3DaT #AIP_ISNS



kristac: Stanford's new stem cell building is amazing. Stem cell researcher Irv Weissman explains why (hint:Art+Science=cool) http://bit.ly/byD25B



AIP_Publishing: Controlling vibrational resonance in a multistable system by time delay http://dld.bz/349H #AIP_CHAOS #nonlinear dynamical systems #physics



AIP_Publishing: New hypothesis about how complex life emerged on Earth http://dld.bz/3hDr #AIP_INSN #evolution



appliedgenomics: The excellent #DNA Exchange reviews SNPedia - what some of you will know as the ‘Wikipedia for DNA’. Check it out at: http://bit.ly/d1HaD1



bioruby: #bioruby 1.4.1 released http://lists.open-bio.org/pipermail/bioruby/2010-October/001507.html



YoshinoriTamada; HGCは(医科研でもいいが)昨日のタイミングでHGCスパコンが日本人ゲノム解読に使われていることをプレスリリースなりでアピールすればよかったのに.スパコンの必要性を世にアピールする絶好の機会だった.世の中ほとんどの人はゲノム解読とスパコンが結びつかない.


efflorescence.

2010-10-13 22:57:21 | Science
Mistsky
(iPhone Camera; iPhoto.)



信号の反復は、共有される記号の意味を強める。
消費は生産に、究明は創造に向かうストラテジーであり、
組み替えられていく記号の真性は、
変幻する事象の意味と根源でつながっている。


故に快楽とは私たちの輪郭を成し、
得難い確信のもとに掻き毟られた傷痕なのだ。

依て愛の対象とは、平伏されざる記号の
イデアルな使役の動態を指向するものとなり、
自己の遍在化過程を、彼我を組成する記号の
遍在化過程として定着させようとする。




□ my twitter log storage.


□ ルイス・カーンの「物質は燃え尽きた光」とは至言であるけれど、実際には物質はなお燃えて輝いてる光そのものなのだ。

光速は客観的に捉えれば、今の大きさの宇宙全体を縦断するのに500億年以上かかるスピードのことだけど、光そのものに主観があるとした場合、相対性理論に拠れば、光そのものが体感する経過時間は一瞬だ。


つまり光速度のパラドックスとして、「光の個にとって彼は何処にでも存在する」そして物質は光である。

宇宙開闢時より、光は自身を一つに結び続けている。時空間上の「個々」を共有する「個と個」の繋がりとは、「個と群」の規模、即ち「時間の差異」とは、光速度の相互作用に要する時間の総和によって与えられる。それは過去に一つにあったものであり、今なお一つにあるものなのだ。



□ イノベーションとは、個別の問題の総和に対して公約数を求め、その「積」を得るに等しい概念だが、もともと解決したい対象が置かれる空間の全事象は、問題の「総和」のみで構成されている。



□ 経営というものは科学と違って、哲学を理論の上にも下にも置けないものである(@ ̄ρ ̄@)



□ 私は愛という感情を1つしか知らない




naturejapan: Nature 今週のハイライト: 進化:複雑性の生体エネルギー論 http://nature.asia/aa1z9z



□ RIP: Benoît Mandelbrot: http://www.math.yale.edu/mandelbrot/ フラクタル理論の提唱者、ベノワ・マンデルブロ氏、逝去。



□ RT OxfordJNLsJapan: 世界有数の規模の電子ジャーナル・コンソーシアムの誕生 (NII発表)http://bit.ly/cRlXSd



□ MaxCalを用いた非平衡力学過程への一般推論アプローチ RT @AIP_Publishing: Maximum caliber inference of nonequilibrium processes http://dld.bz/ze7R #AIP_JCP #Markov



□ RT GenomeWeb_News: Foundation Report Recommends 'Virtual Institute' to Advance RNA Research Across Europe: The European Science Found... http://bit.ly/cVSq6W



□ RT GenesDev:
Novel mechanism of p53 induction after DNA damage & dsRNA formation by p53 mRNA UTR basepairing: http://bit.ly/cbVu6m, http://bit.ly/bo3iNC



□ RT AIP_Publishing : Chaos Focus Issue: Intrinsic and Designed Computation: Information Processing in Dynamical Systems http://dld.bz/x5qP #AIP_CHAOS



□ RT naturejapan : 現代投資理論を生物システムに応用した理論を構築 http://nature.asia/9RdcVH



□ 力学系における情報処理 RT @AIP_Publishing: Intrinsic & Designed Computation: Information Processing in Dynamical Systems http://dld.bz/x5qP #AIP_CHAOS



□ RT @OxfordJNLsJapan: 文献検索に役立ちそうな検索エンジンリンク集 100 Time-Saving Search Engines for Serious Scholars (T) http://bit.ly/ckUsMX



□ 環境の悪化で消滅に向かう個体群は、ある時点で臨界点を通過、それを越えると消滅が不可避となる。今回、消滅する運命にある個体群の成長方程式に、臨界減速(CSD)と呼ぶ点を発見。RT @naturejapan: 個体群が終末に近づく時 http://nature.asia/bVQFx3



□ RT @AIP_Publishing: Paramagnetism in single-phase Sn_(1-x)Co_xO_2 dilute magnetic semiconductors http://dld.bz/w4af #AIP_JAP #applied #physics #research







Delerium / "Voice: An Acoustic Collection"

2010-10-11 22:16:28 | delerium
Voiceacoustic


□ Delerium / "Voice: An Acoustic Collection"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Too Late, Farewell
Vienna

Release Date; 05/Oct./2010
Label; Nettwerk
Cat.No.; 30850
Format: 1xCD

Delvoice_1_2 Delvoice_2

>> http://delerium.ca/ (Buying information)


>> tracklisting.

01. Send Me An Angel  (ft. Miranda Lee Richards)
02. Dust In Gravity  (ft. Kreesha Turner)
03. Too Late, Farewell  (ft. Butterfly Boucher)
04. Silence  (ft. Sarah McLachlan)
05. Innocente  (ft. Leigh Nash)
06. Vienna  (ft. Elsiane)
07. Lost & Found  (ft. Jael)
08. Flowers Become Screens  (ft. Kristy Thirsk)
09. Love  (ft. Zoe Johnston)
10. After All  (ft. Jael)
11. Orbit Of Me  (ft. Leigh Nash)
12. Touched  (ft. Rachel Fuller)


Delerium is Bill Leeb & Rhys Fulber
Additional Producers (any instruments) :
Dru Masters, Phil Lehmann, Troy Samson, Mike James, Andre Wahl and Carmen Rizzo.
Piano: Guy Pearson, Roy Salmond
Acoustic Guitar: Tony Barnard, Joe Cruz, Mark Nash
Bass: Leah Randi
Violin: Mark Robertson, Emlyn Singleton
Cello: Alan Smithee, Caroline Dale
Flute: Amy Tatum
Double Bass: Allen Walley
Guitar + Vibes (tr.11): Mark Jowett
Strings Arrangement (tr.12): Jane Scarpentoni
Mixing: Greg Reely
Engineering: Jake Jackson, Olga Fitzroy, Ashburn Miller
Mastering: Ted Jensen @Sterling Sound
Artwork: Carylann Loeppky




DeleriumがNettwerkレーベル移籍以降に発表したVocal Trackを、Bill Leeb自身も含めた新旧プロデューサーを招いてアコースティック・アレンジを施した記念碑的コンピレーション。

その内、"Send me an angel"、"Too Late, Farewell"、"Vienna"の3曲は、アルバム・コンセプトに沿った形式の未発表新曲となっています。新進気鋭のフォークシンガー、Miranda Lee richards。オーストラリア人シンガーソングライター、Butterfly Boucher。シネマティックな作風で急激に支持を集め、Deleriumのツアーにも参加しているペルー出身のトリップホップ・シンガー、"Elsiane"がそれぞれの新曲を提供。



"Nuages Du Monde"リリース直後の2007~2010年現在までの、4年に渡る長期の制作期間を経てリリースされる運びとなった本作は、Kristy ThirskやLeigh Nashなどを起用した楽曲についてはスタジオでの新録音、或は"Dust in Gravity"や"Silence"等については、Vocal Trackを残してダブ・ミキシングを行うといったように、各楽曲について製作主旨は異なります。


ポップ転向後のDeleriumを特徴づけるヴォーカリストのMulti-Featuring方式は、遡れば1997年の"Karma"でのネット回線を経由したスタジオ録音に端を発するもので、以降のアルバムでカナダ在住のボーカリストだけでなく、ヨーロッパから東欧に至るまでの国際色豊かなシンガーを取り揃えるようになった背景には、こうしたネット社会の成熟過程の他、彼らを支持するファン層の世界的な広がりや分布と、ポップスに翻訳される汎宗教・土着的な音楽性とが、それほど無関係ではないように思われます。(当時のニューエイジ音楽市場の文脈とは切り離してみても)



また、Bill Leebが数年前に受けていたInterviewにおいて、彼の楽曲におけるPop Flavorのインスピレーションの源として、Sade (シャーデー)の影響を特に強調して挙げていたことがあって、今のところ本人が強く希望していた彼女とのコラボは実現していないものの、たとえば"Dust in Gravity"をはじめとする最近の作風や、この"VOICE"のパーカッシブなアレンジに照らしてみても、その成分は薄まるどころか、今になって殊更に露呈されるようになっている印象。



ここからは個人的な感想ですが、"VOICE"においては所謂"Unplugged"という手法ではなく、"アコースティック風"という所の雰囲気を重視したアレンジが為されています。つまりまだまだKeyboardやオーヴァーダブの占める割合は大きく、クラブシーンにおける"Chill Out Mix"といった方が適切なサウンドに聴こえます。


それぞれの楽曲については、Instrumentsが"Stripped Down"されていると説明されてはいますが、実際にはStringsの他にKeys, Percussion, Bassの新要素をふんだんに着せ直している為、表題から期待されるような、Deleriumのポップセンスをありのままに強調する「素朴さ」といったものを求める向きには添えないかもしれません。



今回お馴染みのプロデューサー陣に加え、"VOICE"のサウンド・プロダクションを全体的に牽引しているのは、イギリスのコンポーザー、Dru Masters。彼はドラマやドキュメンタリー、CM向けに、主にシンセやオーケストラを多用した楽曲を多く製作する傍ら、BananaramaやMediaeval Baebesのプロデューサーとしても名を挙げています。


クラシック楽器の演奏者についても簡単に触れておくと、恐らく最も有名なのが、English Chamber Orchestra所属で、U2やSinéad O'Connorの作品にも起用されているチェリスト、Caroline Dale。ヴァイオリンのEmly Singletonは、The London Session Orchestra所属、彼女も数多くのPop、Rock作品に参加しています(Paul Schwartzのアルバムにも)。コントラバスのAllen Walleyは、あのMichael Nyman Bandでの演奏経験もある熟練のパフォーマー。Mark Robertsonも数えきれないほどのサントラ作品に参加している職業音楽家です。



Deleriumというバンドが指向するもの、そのエッセンスたる『歌声』に新たな魅力を吹き込もうとした"VOICE"。

その試みの成否はともかく、私にとってはヴォーカルのバックにカチッとはめ込んだようなインストゥルメントが少し退屈ではあるのだけど、Bill Leebの故郷を舞台に歌った"Vienna"の、どこか懐かしいトリップホップ風レゲエ歌唱、そして作品を締めくくるRachel Fullerの可憐で繊細な歌声を露にする"Touched"については手放しで絶賛できる。アウトロにかけて落葉みたいに零れていくピアノの音色に心打たれます。


Enigma / "Social Song"

2010-10-08 17:25:57 | Enigma
Enigmasoc_logo

□ Celebrating 20 years of ENIGMA :
 Create "ENIGMA'S SOCIAL SONG'' together with Michael Cretu!!!

>> http://www.enigmasocialsong.com/
>> http://www.enigmaspace.com/



</object>



Enigmaの歴史的アルバム"MCMXC a.D."が発表されて20周年。
この節目を記念して、世界中のファンとの結びつきを強めるべく、Michael CretuがENIGMAの曲作りをSocial Innovationの形式で一般人と行うプロジェクト、"Enigma's Social Song"が立ち上げられました。


ちなみに、先日公開されたCretuの新モバイル・スタジオ、"Merlin"を用いた処女作となるとのこと。詳オフィシャル・サイトにて要項と仔細に渡る条件が明示されていますが、それぞれに期日が設けられた3つのプロセスを以下に要約すると、



Stage1: ヴォーカルの公募 (残り40日)

"Social Song"の核となる歌声。
あなた自身、あるいは知人のボーカルをyoutubeにアップロードします。(※ youtubeアカウントが必要)。あるいは、そうして投稿されたVideoの中から、あなたが気に入ったものに投票することが出来ます。

クレトゥはまた、世界各国のフォークロア、民族的なフレーズも強く求めていると加えていて、『ストレンジなほど良い』とか。もちろん著作権の発生するフレーズは禁止しているとのこと。



Stage2: トラックの選定 (11/16-)

上記の投票結果に基づいて、クレトゥが3つの異なるアレンジを施したベーシック・デモを作曲。ファンがこれらの内から、起用したい楽曲を投票によって選択します。更に、リード楽器などの変更も要望できるなど、曲の細かい部分について意志を反映できるようになるとか。



Stage3: Mixの決定 (12/14-)

以上のプロセスを踏まえ、最終的なミックスを決定します。
完成した楽曲は"Social Song"、つまり利用するユーザ全てに共有されるものとなり、フリーダウンロード・トラックとして公開されます。

電子版ブックレットには、ボーカルを提供した人々の名前が全てクレジットされる他、投票や意見交換を行ったユーザもリストされる予定。




これが3つのプロセスですが、意外と短期間のレスポンスで製作されるようで、ファンのみならず、様々なバックグラウンドを有する新規カスタマーの心理もキャッチしやすいですね。

以前の"Art Work"プロジェクトに引き続き、Enigmaのプロデュース・チームがネットを利用したプロモーションに乗り出して、クレトゥ自身が最大限の協力を惜しまないのは、もちろん、この20年間Enigmaを支え続けて来たファンへの感謝であると同時に、当時は『謎』に包まれたコンセプトとして発足したENIGMAの美学と哲学の追求が、今は彼自身の驚嘆と共に、世界中の人々を結びつける「音楽の魔力」の謎へと向けられているからなのかもしれません。


Delerium / "Epiphany" Live DVD.

2010-10-06 20:05:26 | delerium
Epiphanydvd_3


□ Delerium Live DVD / "Epiphany"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Love (Live)
Incantation (Live)

Release Date; 28/09/2010
Label; MVD Visual
Cat.No.; MVD5029D
Format: 1xDVD

Region: 0 NTSC
Aspect Ratio 16:9
Dolby Digital / Stereo and 5.1ch Surround
Running Time: 135min.

Film Director: Nasty Byte
Front Cover Art by Carylann Loeppky


[Back Image]

Epiphanydvdback


>> tracklisting.

01. Angelicus
02. Love
03. After All
04. Terra Firma
05. Innocente
06. Self-Saboteur
07. The Way You Want It To Be
08. Twilight
09. Flowers Become Screens
10. Silence
11. Incantation
12. Forgotten Worlds



Delerium is Bill Leeb and Rhys Fulber
Vocals: Kristy Thirsk, Leigh Nash and Elsiane
Guitar: Sean Ashby
Bass: Brian Minato
Drums: Ashwin Sood


</object>

□ "Epiphany" Video Preview. (3 Tracks)

>> http://vimeo.com/15463185 ("Terra Firma")
>> http://vimeo.com/13592655 ("Self-Saboteur")
>> http://vimeo.com/15005147 ("The Way You Want It To Be")

Delerium has enchanted audiences worldwide with its unique blend of Electropop. Sacred and World Music. Filmed October 2008 at Washington D.C.'s award-winning Nightclub 9:30, with additional footage from Atlanta, West Palm Beach and Montreal, "Epiphany" captures the ethereal essence of a Delerium concert realized as "paintings in motion". Produced and directed by Nasty Byte. Also contains the bonus short film "Delerius".




Deleriumのライブコンサート映像化作品としては、初の公式リリースとなるDVD。監督を務めたのは女性映像作家Nasty Byte。彼女は数年前からDeleriumやFrontline Assemblyを始め、これまで数多くのエレクトロポップ、EBM系バンドのライブを取材し、youtubeにある自身のチャンネルなどで公開してきた実績がある。


紹介文にある通り、丁度2年前にワシントンD.Cの由緒あるナイトクラブ、"930"にて行われたコンサートの模様に加え、アトランタ、パルムビーチ及びモントリオールでの映像を収録したDVD。ライブ音源は5.1ch SurroundにMixされ、ステージ上のパフォーマンスに時折VJ映像を織り交ぜた内容となっている。個々のメンバーのポートレートや、コンサートの舞台裏を取材したBonus Film、"Delerius"も納められている。


バックスクリーンに映し出される映像(過去のPV内容も含む)は、Delerium名義でライブ活動を始めた2003年当初から、ビルの元妻であるCarylann Loeppkyが手掛けたもの。



参加メンバーの仔細なプロフィールついては、このブログでも繰り返し触れて来たため割愛させて頂く。今回、新参となるのはBassの日系人・Brian Minatoと、add-VocalのElsiane。トリップホップ・デュオのヴォーカリストであるElsianeは、先ほどリリースされたばかりのDeleriumのアコースティック・アルバム、"Voice"にもフィーチャーされている。



Dellive
(左から Kristy Thirsk、Elsiane、Leigh Nash)



アルバムリリースとしては2006年の"Nuages Du Monde"以降、新作が途絶えているDeleriumだが、中心メンバーであるBill LeebとRhys Fulber(今ライブには不在)は、FLA名義を始めとする数々のライブツアーに余念がなく、今もカナダ・アメリカ、ヨーロッパ等を巡って積極的にそれぞれの活動を続けている。



Nettwerk移籍以降のデレリアムの立役者と言えるKristy Thirskも、シンガーとして『ライブ』という形に並々ならぬ拘りを持つプロフェッショナルであり、彼女が"Delerius"のインタビューで答えているように、コンサートを通じて目の前に居るファンとの繋がりを感じることを特別な瞬間として捉えているようだ。


すっかりポップ化を遂げた現在のデレリアムの根底にあって、Skinny Puppy時代からBill Leebが脈々とバンド活動の核として据えていたもの。マイナージャンルにおいて十分な評価と知名度を獲得し、ポップシーンでも世界的なブレイクを果たしながらも、各地のライブハウスを巡り生きた「パフォーマンス」にこだわり音楽に挑む動機たる軸は、表面的に変化を続ける音楽スタイル以上に、実は全くブレていないのかもしれない。



Deleriumのようなスタイル、即ちポップ・エスクにワールドミュージック、宗教音楽などの要素を加味した音楽のライブでの再現は難しく、とりわけオーヴァーダブを多用したヴォーカルのあしらい方は、Delerium自身、このライブにおいてもやや苦しい部分が見受けられる。

勿論Bill Leebは、豊富な経験から『弱み』を自覚しているようで、再現性という点については端から諦めている節がある。その部分を補って余りあるのがKristy Thirskの超絶的なヴォーカルであり、CD音源とは趣向の違うギターやキーボードの畳み掛けるようなパフォーマンスは、観客の期待を裏切って尚、グイグイとステージに惹き込んでいく魅力に溢れている。



一方で、"Angelicus"、"Twilight"のように、オフ・ボーカルでインストの殆どがCDからのトラックが占めている楽曲もあるが、寧ろここは音楽の都ウィーンで育まれたBill Leebの作家性というものに再注目すべきシーンであろう。

"Delerius"のインタビューで、Bill LeebはDeleriumに通じるインスピレーションとして、幼少の頃に聖歌隊にいたことや、ヴァイオリンを学んだ経験を皮肉を交えて結びつけている他(Bill "ウィーンでは誰もがモーツァルトになりたがった")、中東地域の映画に登場する祈祷曲に魅せられたという点も明かしている。


一方で Jean Michel JarreやTangerine Dreamなどのシンセ・ミュージックにも憧れを抱き、25歳でシンセサイザーを購入。彼はその経験を『パンドラの箱を開けたようだった』と表現している。



最後に、Bill自身の口から語られた"Delerium"というバンド名の驚きの由来(笑)についても(他メディアでも公表されていたものの)、当インタビューがしっかりと捉えているので、是非その目で見届けて頂きたい。


Marcus Fjellström / "Schattenspieler"

2010-10-01 13:55:30 | art music
Schattenspieler



□ Marcus Fjellström / "Schattenspieler"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Liquid Fire
Untitled 090616

Release Date; 28/09/2010
Label; Miasmah (Norway)
Cat.No.; miacd013
Format: 1xCD

>> http://www.kafkagarden.com/
>> http://www.miasmah.com/recordings/cat.html#MIACD013


>> tracklisting.

01. The Disjointed
02. Bis Einer Weint
03. Antichrist Architecture Management
04. Untitled 090616
05. Tremolous

"House Without a Door" Suite
06. Monolith & Bunker
07. Noir Revisited
08. Perspex
09. Liquid Fire

10. Tenebrous
11. Uncanny Valleys


(Tracks 6-9 originally commissioned fot the film
"House Without a Door" by Bernd Behr)


All tracks composed and produced by Marcus Fjellström
"The Disjointed" Orchestral peace performed by Nordic Chamber Orchestra
"Noir" cover illustration by Anton Grandert at antongrandert.com
Booklet illustrations by Marcus Fjellström
Cover design, add. illustrations & manipulation by Erik K. Skodvin
Mastered by Andreas Tilliander at Repeatle
Worldwide distribution by Baked Goods




"Combining wonderfully crackly ambient textures with ancient sounding classical instrumentation, Fjellstrom's music is perhaps like a sonic equivalent to the cinema of the Brothers Quay or Guy Maddin in its stylised and revised recreation of something old, monochromatic and somehow already familiar." -Boomkat.




ベルリンに拠点を置くスウェーデンの前衛音楽家、Marcus FjellströmがノルウェーのMiasmahレーベルより送り出すArtist Albumの3rd。モノクロームのホラー・フィルムを彷彿とさせる、狂気と恐怖を滲ませたホーンテッド・ミュージック。



"Schattenspieler"(影絵師)は、自身が過去にレコーディングしたアンサンブル音源に加え、電子音やクラックノイズなどで刻まれた粒度の荒いテクスチャを『闇と静寂』に準えたキャンバスとし、壊れた旋律の一片一片を執拗に、そして散り散りになりながらも、濁った輪郭を保持するほどに断続的なディゾナンスを紡ぎながら、「音」が聴く者の意識下に染み落とす『影』の動態を弄ぶ。



1979年、スウェーデンに生を受けたFjellströmは、若い頃よりオーケストラを用いた音楽活動に身を投じ、以降エレクトロニカや映像芸術を交えた多岐に渡るスキルを磨きながら、現在ではSwedish Royal BalletやScottish Chamber Orchestraに作品を委嘱されるほどの評価を獲得。

その他インディペンデント・レーベルから数多くのアンサンブル・ソリスト作品をリリースし、David FirthやBernd Behrらによるアート系フィルムのサウンドトラックも積極的に手掛けるようになった。


今作に収録されている、"House Without a Door Suite"と題された四楽章からなる組曲も、数々のエキシビジョンが国際的に評価されているドイツ人映像作家、Bernd Behrの同名のショートフィルムに提供されたものである。



Fjellströmのキャリア自体、この"Schettenspieler"を性格づける要素である、「聴覚刺激の視覚拡張性」という点において集約されているように思われる。Angelo Badalamenti風などと喩えられているオープニング・トラック、"The Disjointed"では、「音楽」の音色や旋律が脳裏に「光景」を描く様態から一歩進み、その荒廃したテクスチャに傷跡を遺す、波立つようなノイズを介して、人の「情動」が如何に「表象文化の記録媒体」というテクノロジーに依存し、又その歯車を軋ませているのか、というメタ的な視点を促している気がしてならない。



因みに"The Disjointed"では、そのタイトルの示す通り、彼の過去作品のパーツが散りばめられている。その一部は2002年の作品"Silver Mansion Trauma"からの電子音と、Carmen Chanの奏でるパーカッションであり、もう一部は2006年の"Degenerator"から、 Christian Lindbergが指揮するNordic Chamber Orchestraの演奏が用いられた。


"The Disjointed"のモチーフは、"Untitled 090616"の咽び泣くような物悲しい木管楽器の音色によって変奏され、"Uncanny Valleys"では、よりクリアに象りされたオルガンのメロディとして回帰するが、旋律の末尾は光の届かない深淵へと沈降し、行き場を失ったかのように蠢くベースが薄気味悪く木霊する。

この他にも、各曲間の繋がりは、特定の音色やフレーズをブリッジとしてモーフィングするように、ある種の関係性を保って推移していく。



"Antichrist Architecture Management"は、エレクトロニカ色を前面に出したミニマル・トラックでありながら、その時間的対称性は微妙に崩れつつ、音と音との断続的な空隙に意識を陥れる『罠』と呼ぶべきアンバランスな構造が見え隠れしている。





固形化した雑音のアスペクトと重厚なトレモロが織り成す"Tremolous"に導かれて、"Monolith & Bunker"で幕をあげる"House without a Door"組曲。気が遠くなる程かけ離れた彼岸を見渡す巨視的な空間構造において、とてつもないダイナミクスが擦れ合うような轟鳴を響かせている。



吹き荒れる風、闇の中を寄せては返す波、軋むドア、見知らぬ足音、時計は狂った刻を打ち続け、鼓動は意志に逆らって心を引裂いていく。

それらの音が降り積もるかの如く渾然し、ある一点で臨界を迎えた刹那に離散する。そして何者にも縋り付くことが許されない絶望的で不条理なカオスに囚われてしまう。何処にも辿り着けない漸近線。これが循環する悪夢の終点であり、"Schettenspieler"が描く幻影の手触りである。