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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Craig Armstrong / "Audi R8 Advert"

2007-06-30 07:54:13 | music5
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>> http://www.audi.com/
>> http://www.craigarmstrongonline.com/


Craig ArmstrongとScott Fraserが、アウディの最新モデル、R8のCM曲を手掛けました。物々しいストリングスに、沈み込むようなドープなビートパーカッションが絡むダークな楽曲。これは一般向けに公開されているショートヴァージョンで、プレゼンテーション用のフルレングスバージョンは10分弱の尺があるそうです。うーん。。Audiの知的で重厚、それでいてストイックなフォルムは中々好きなんだけど、嫌いなボンボン上司が乗り回してたのでちょっと複雑。。。





□ Craig Armstrong - The Best Works.

Hans Zimmerに引き続き、この流れに乗じてCraig Armstrong特集も不定期に紹介していきたいと思います。




Vol2


□ "Romeo + Juliet" vol.2

Balcony Scene
Mercutio's Death
Escape from Mantua

由緒あるロイヤルアカデミーの卒業生で、多くの授賞歴、Scholarshipを勝ち取っていたCraig Armstrong。(※数年前に栄誉博士号授与の記事を目にした記憶がありましたが、ソースが確認できません。。)彼もHans Zimmerと同じようにロック/ポップシーンで下積みを経て、当時のポップ-クラブシーンで 辣腕を発揮していたDJ兼プロデューサー、Nellee Hooper(Wild Bunch)に見出されたことにより、次第にMadonnaやMassive Attackなどのアレンジャーとして、知る人ぞ知るというようなカリスマ的な支持を集めていきます。

Buz Luhrmann監督がNellee Hooperを通じてCraigを起用したこの"Romeo + Juliet"以降、監督のビザーレな作品と、それに正気と良心を与える(笑)クレイグの哀愁溢れる作風の切っても切り離せない関係が、"Moulin Rouge"に至るまでしばらく続くことになります。

"Romeo + Juliet"では、主に英国、ブリストルを中心に活躍するポップシンガーや、いわゆる売れ線のアーティストのトラックを要所要所にフィーチャーしていますが、その楽曲をCraigがスコア・アレンジして、劇中に溶け込ませるという、現在でも珍しい手法を用いています。そして、本作はこれまた敏腕プロデューサーとして名高いMarius De Vriesがco-ProducerとしてCraigの助力となっています。


さて、この楽曲の特徴はといえば、下世話で派手な流行音楽やヒップホップビートのデフォルメされた天然色に、教会音楽の悲劇的なエッセンスを振り撒いた、ある意味とてつもなく過激なもの。ラストではワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』をそのまま使う辺りにも、隙のない心憎い演出意図を感じられます。

Craigはこの頃既に、最先端のものとされていたエレクトロ・ビートをMassive Attackで学んでおり、作品中で聴かれる教会風混声合唱のシークエンスにも被せるという革新的な仕事を成しました。この衝撃的な組み合わせが、以降の映画界のスコアメイキングに多大な影響を及ぼしたのは確実で、とりわけハリウッド映画のトレーラーにおいて繰り返し流用されることになります。現在における『混声合唱+ビート』スコアが流行するトリガーを引いた作品に間違いないでしょう。

また、この映画には相応しくない程静謐で美しい"Balcony Scene"は、今でも数々のコンピレーションに取り上げられたり、トランスDJがマスターピース的作品として挙げるなど、時代とジャンルを超えた人気を誇っています。




Pm


□ "Plunkett & Macleane"

Business: Part1/2/3
Hanging
Escape

こちらは映画の知名度が低いせいで、楽曲自体の評価もあまり為されなかった不運な作品。ともあれこれも、クレイグ特有の切り込んでくるようなストリングス、不安と哀愁を煽るヴィブレーションに、当時流行っていたブレイクビーツの要素が絡むという、"Craig Armstrong"の新しさと面白さが余す所なく凝縮された良作です。

"Escape"では張り上げるような大迫力の混声合唱に激しくメタリックなビートを乗せると言う、好きな人には堪らない造りで、これも他の映画の予告編で多く使われました。そして、e.s.Posthumusが混声合唱とオーケストラ、パーカッションという編成を大々的に打ち出したトレーラーミュージックを発表するのも丁度このすぐ後からで、時期が一致するのは決して偶然ではないのでしょう。。





As_if_to_nothing


□ "As if to Nothing"

Ruthless Gravity
Hymn 2
Snow

元々ポップス、クラブミュージックのアレンジャーとして才気を発揮して来ただけに、一個のアーティストとしてのカリスマ性、独創性も群を抜いたものがあります。スコア・コンポーザーとしてのノウハウを活かした非劇音楽であるソロアルバムでは、彼の築き上げてきた孤高の芸術性の集成に触れることが出来ます。

こちらは2nd Album。各方面から選り抜きのヴォーカリストを招いたトラック群も素晴らしいですが、彼自身の当時の興味が、音響系エレクトロニカに傾いていたことを如実に物語る作風。本作でフィーチャーしているAntye Gerie-Fuchsとは後に、彼女のパートナーでもあるVladislav Delayと三人で"The Dolls"という実験音楽ユニットを結成しています。

Photekと共作した"Hymn 2"は、冷たくオブスキュアなドラムンベースにボーイソプラノの物悲しい旋律が印象的な、響きと静寂、光と闇の対比が芸術的な楽曲。"Snow"は、クレイグのトレードマークとも言えるストリングスのうねりが何とも言えず悲壮的で、かつ美しい。U2のBonoとリテイクした"Stay"もハイライトトラックの一つとして挙げられるでしょう。アルバムのイントロとアウトロを飾る教会聖歌風コーラスが、アルバムに虚無的な円環性を与えています。"As if to Nothing...."『何も無かったことと同じ』



詳細は不明ですが、Craig Armstrongは新しく立ち上げたプロジェクト、"Winona"のライブ・パフォーマンスを6月末からヨーロッパ各所で行う模様です。