心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

いょっ!晴れ男!~太山寺から国分寺へ

2019-07-23 16:15:00 | 四国遍路

 台風が九州地方に大雨をもたらしているなか、四国は松山に向かった今回の「歩き遍路」。なんと歩いている間、ポンチョを取り出すこともなく、無事に歩き通すことができました。ところがです。大阪への帰路、高速バスが徳島界隈を走っていたとき土砂降りの雨。そんな雨の中、田圃の畦道を歩いているご夫婦のお遍路さんが二人。大丈夫かなあと心配になりました。
 55番札所・南光坊の納経所で「雨が降らなかったのがせめてもの幸い」とお話しすると、「昨夜はたいへんな雨でしたよ。最近、雨が降らなかったので、このあたりでは恵みの雨でした」と。私が寝ている間に雨が降り、歩き出すと止む。お大師さんにお守りいただいた「歩き遍路」だったかもしれません(笑)。
 大阪駅前から松山に向けて出発するとき、リュックをさげ金剛杖をもった一人のご老人にお会いしました。そのご老人(私もほぼ同世代?)、松山駅の一つ手前のバス停でお降りになったので、私が前回歩いた久万高原の方に向かわれたのだろうと思っていたのですが、なんと二日目の宿(仙遊寺宿坊)でばったりお会いしました。聞けば、松山に到着してまずは道後温泉で一服されたよう。その後、伊予北条あたりの温泉宿に一泊、というわけです。何度も歩いていらっしゃるベテランお遍路さんです。その夜は、冷たいビールをいただきながら「歩き遍路」について指南を受けました。
 今回は太山寺から国分寺までの8カ寺を回りました。初日は、太山寺、円明寺と巡ったあと、久しぶりに左に海辺(瀬戸内海)を感じながら歩きました。ただ、雨が降らない代わりにすごく蒸し暑く、意識が朦朧とするときも。計画では大西町まで一気に歩く予定でしたが、浅見駅あたりでダウンしてしまいました。やむなく10分ほど列車に乗ってショートカット。駅前の「あさひや旅館」で泊まりました。宿泊客は私一人でした。ご主人いわく梅雨の時期はいつもこうなのだと。

 2日目は、今治市内を西から東に向けてジグザグに横断することになります。平地を1時間刻みで淡々と歩き続けました。延命寺を打ったあと、大きな霊園の中を歩いて南光坊へ。時おり湿っぽい空気に包まれることもありましたが、泰山寺を経て、いよいよ57番札所・栄福寺へ。すると、映画「ボクは坊さん」のモデル・白川住職が忙しそうにお出かけになる姿。あとで知ったのですが、檀家さんにご不幸があったようでした。
 ここまでは市街地を歩きまわってきたのですが、栄福寺から仙遊寺への道のりは、少しきついものがありました。しばらく歩いていると、土手の中ほどに「犬塚」と記した小さな石碑がありました。土手を登っていくと、大きな池がありました。犬塚池です。
 「四国八十八カ所をあるく」を開いてみると、犬塚の伝説が紹介されてありました。「昔、栄福寺と仙遊寺はひとりの住職が兼ねていて、その住職が賢い犬を飼っていた。それぞれの寺で留守を預かる小僧たちは、鐘を鳴らして犬を呼び、住職への使いを頼んでいた。犬は仙遊寺で鐘が鳴れば一目散に山を駆け上がり、栄福寺で鐘が鳴れば一気に山を駆け下りて用事を伝えたという。あるとき、小僧たちが悪ふざけをして、2つの鐘が同時に鳴ってしまった。犬はどちらに行けばよいのか迷った揚げ句、役に立てないことを嘆いて途中の池に身を投げてしまった。哀れに思った村人たちは、池のほとりに犬塚をもうけて、その池を犬塚池と呼ぶようになった」とあります。悲しいお話しでした。
 その後、深い森の中の傾斜のきつい坂道をふうふう言いながら歩いていくと、上の方に明かりが見えてきます。やっと到着かと思いきや、車道に出て、その向こう側にまた遍路道が続いています。こんなときは疲れがどっと出てきます。もう一度車道が現れ、今度は車道を歩いて登っていく。すると休憩所が見えてきました。そして、やっと山門が現れます。でもこれで終わりではありません。延々と急な坂道が続きます。手摺が備わっているだけましですが、とにかく曲がりくねった坂道を手摺を伝って登っていく。やっとのことで仙遊寺の境内に到着とあいなりました。朝7時に宿を出発して7時間。やっと到着です。
 標高280メートルの作礼山に佇む仙遊寺です。いくぶん肌に優しい空気感が心地よく、夏ゼミもヒグラシに変わりいかにも山の中にいることを実感させます。納経を済ませると、少し早かったけれど宿坊に入りました。ずいぶん立派な宿坊で、外人さんにも不自由しない住環境が整備され、なによりもお風呂が温泉だったのが良かった。夕食の精進料理を美味しくいただきました。部屋にはテレビがないので、時々スマホで選挙速報を見ながら、少し早めに眠りました。
 翌朝6時に朝のお勤めがあり本堂に伺うとご住職のほか3名のお寺の方々、そして同宿の方。30分ほどお経に耳を傾けましたが、グレゴリオ聖歌に近いものを感じたのは私だけでしょうか。静かな堂内に響き渡りました。ケルンの大聖堂と同じです。その後、ご住職のお話しを伺いますが、聞けばご本尊の千手観音菩薩は平安時代の作で、一度だけ本殿消失の際に持ち出されたことはあったようですが、ずっと同じ場所にあり、人びとの暮らしを見つめていらっしゃるのだとか。「動」と「静」。何か深いものを感じました。
 最終日2時間ほど歩いて国分寺をお参りして今回の「歩き遍路」は無事終わりました。境内に立つと、初めてお参りしたとき印象に残った風景がふうっと浮かんできます。この国分寺では、握手修行大師さんと握手したことを思い出しました。案内板には「お大師様に握手をして願い事を一つだけ。あれもこれもはいけません。お大師様も忙しいですから」とありました。
 四国八十八カ所遍路の旅も、59番札所まで歩き進むことができました。あと29カ寺です。2カ月に一度の割合で行けば、まだ先は長い。先のベテランお遍路さんの話では、横峰寺、雲辺寺あたりは遍路ころがしと言われる難所だとか。焦らず気負わず淡々と歩き通したいと思っています。

 明日は、小学校6年生の孫長男君だけが独りになりそうなので、「どこかに連れてってえ」とのこと。一日早いブログ更新とあいなりました。

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2 コメント

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こんにちは! (みいやん)
2019-07-24 13:52:51
晴れ男なんですね~それはラッキーでしたね。
今回も随分歩きましたね~本当に素晴らしいです。

色々な方との出会いもありこれぞこそ一期一会。

歩き遍路では色々なことも学ぶんですね。

犬のお話....本当ならとても悲しいですね。
昔の事です。そういうこともあったのでしよう....
心の中で作り話だといいなぁ~と(笑)

今回も充実した歩き遍路になりましたね。

今日はお孫ちゃんとお出かけでしょうか.....
我が家の孫たちは夏季講習に入ったとかで
いつ来るのかしら。

楽しんでくださいね。
天神祭り宵宮 (ran_coffeebreak)
2019-07-24 23:53:44
みいやんさん
こんばんは。いつもコメントをありがとうございます。

「一期一会」。ほんとうにそう思います。そして多くの気づきをいただいて帰ります。ただ、その土地土地の元気度合いも気になるところです。生き生きとした地場産業がある一方で、道路沿いのお店やレストランの閉店が目につく地域もあります。どこか国の方向が間違っているのかもしれませんね。

「歩き遍路」をしていると、時々犬に纏わるお話しを聞きます。賢い犬が道案内をしてくれた等々。宗教的な思いが膨らんだところもあるのかもしれません。でも、まったくの作り話でもなさそう。

きょう天満橋界隈は「天神祭」宵宮の日。孫君と大阪歴史博物館に行ってきました。明日は花火大会があるのだそうですが、残念ながら孫君はサッカーの練習だとか。楽しい一日でした。

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