心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

満願成就~四国八十八カ所遍路の旅

2017-06-11 13:43:38 | 四国遍路

 昨年7月から毎月でかけていた四国八十八カ所遍路の旅が、先日、結願(満願)のときを迎えました。見よう見まねで始めた遍路の旅でしたが、慣れない般若心経に戸惑いながら、第一番札所・霊山寺をスタートして1年、先日、八十八番札所である大窪寺に到着しました。今回は1泊2日の日程で11カ寺を巡る旅、同行の皆さんには格別のお気持ちが充満していました。もちろんわたしも、四季折々巡り歩いた寺々を思い浮かべながら、最後のお勤めをさせていただきました。
 第八十三番札所・神毫山一宮寺(高松市) ご本尊は聖観世音菩薩
 第七十九番札所・金華山天皇寺(坂出市) ご本尊は十一面観世音菩薩
 第七十八番札所・仏光山郷照寺(宇多津町)  ご本尊は阿弥陀如来
 第八十一番札所・綾松山白峰寺(坂出市)   ご本尊は千手観世音菩薩
 第八十二番札所・青峰山根香寺(高松市)   ご本尊は千手観世音菩薩
 第八 十 番札所・白牛山國分寺(高松市)    ご本尊は十一面先手観世音菩薩
 第八十六番札所・補陀洛山志度寺(さぬき市)ご本尊は十一面観世音菩薩
 第八十五番札所・五剣山八栗寺(高松市)    ご本尊は聖観世音菩薩
 第八十四番札所・南面山屋島寺(高松市)  ご本尊は十一面先手観世音菩薩
 第八十七番札所・補陀洛山長尾寺(さぬき市)ご本尊は聖観世音菩薩
 第八十八番札所・医王山大窪寺(さぬき市) ご本尊は薬師如来
 朝の7時40分に小雨降る大阪・梅田を出発したバスが最初に向かったのは高松市の一宮寺でした。仏教が伝来して約160年後に創建されたという古い歴史をもつお寺です。みんなで気を引き締めてお参りをしました。本堂前に薬師如来が祀られる小さな祠がありました。石扉の中に頭を入れると、地獄の釜の煮えたぎる音が聞こえるのだそうです。悪いことばかりしている人が頭を入れると抜けなくなるという言い伝えもあります。さっそく頭を入れてみると、確かにゴォーという音が聞こえてきます。でも、頭が抜けなくなることはありませんでした。(笑)

 次に向かったのは天皇寺でした。鳥居をくぐって左に歩を進めると本堂と大師堂があります。平安時代末期、保元の乱に敗れ、この地で亡くなった崇徳天皇の亡骸がしばらくこの寺に安置されていたそうで、隣接する白峰宮には、皇室の印をつけた馬の立像がありました。
 郷照寺がある宇多津町は、塩の産地として知られています。そんな讃岐の国に、弘法大師が中国から小麦を持ち帰り、うどんの作り方を伝えたと言われています。讃岐うどんの誕生です。四国霊場唯一の時宗のお寺で、一遍上人が訪れ、念仏道場に定めました。地元では「厄除うだづ大師」として信仰を集めているのだそうです。
 白峰寺は、讃岐平野に聳える5色山のうち白峰に佇むお寺です。弘法大師と大師の妹の子と言われる智証大師が創建したと伝えられています。青葉が映え、清々しさが漂う、そんな境内を参拝しました。そろそろアジサイの季節を迎えます。
 根香寺に到着して山門付近の茂みの中に現れたのは、牛鬼の像です。昔、人間を食べる恐ろしい怪獣、牛鬼が棲んでいたのだと。それを弓の名手が退治したという伝説です。山門をくぐると、いったん石段で下の参道に下り、少し平地を歩いた後、また石段を登っていきます。小鳥のさえずりを楽しみながら、初夏の陽に輝く明るい青葉の下を歩いて本堂に向かいます。万体観音洞という地下回廊をお参りしました。
 ここで初日の予定は終了。高松市内の温泉宿に宿泊しました。同宿者は5名。上は82歳、下は62歳。これまでにも何度かお目にかかった方々でしたので、ひと足早く結願を祝して乾杯、遅くまで語り合いました。
 翌朝7時40分に宿を出ると、まずは國分寺に向かいました。奈良時代に聖武天皇が全国に建立した国分寺のひとつです。昔の県庁所在地のようなものですから、開創当時はずいぶん広い敷地の中に本堂などが点在していたのだろうと思われます。
 大師堂で住職のお話しを聞く機会がありました。こちらでは四国霊場開創千二百年記念事業として、弘法大師の大日如来像再現活動を行っています。いまは現存しない「蓮華座の八方に獅子を置く」「光背に金剛界三十七尊を備える」「五仏を十字形に配する冠を戴く」、そんな如来像の制作を進めています。その主旨に賛同し、みんなで寄付をしました。
 志度寺の開創は、推古天皇33年(625)にさかのぼります。その後、藤原鎌足の息子、藤原不比等が妻の墓を建立し「志度道場」と名づけました。他のお寺と同様に、幾多の困難を乗り越えてきました。ちなみに志度は、本草学者、蘭学者、医者、発明家などとして知られる江戸時代の奇才・平賀源内の古里で、門前の自性院には源内のお墓がありました。
 屋島の東、源平の古戦場を挟み標高375mの五剣山の中腹に、八栗寺はあります。一般的にはケーブルで向かうことになります。弘法大師が唐に留学する前にこの山に登ったとき、8個の焼き栗を植えたところ、無事帰国して再び訪れると、焼き栗が芽吹いていたことから、八栗寺と名づけられたそうです。山の上にある中将坊は、さぬき三大天狗が祀られています。
 山門付近で二人の青年に声をかけました。1番札所から歩いてきたのだそうです。「大変だったねえ」と言うと、「あと少しです」と明るい声が返ってきました。わたしも、青年を羨ましく思う歳になってしまいました。(笑)
 屋島寺は、源平合戦の舞台・屋島にあります。その昔、唐からやってきた鑑真和上が奈良に向かう途中に立ち寄り、屋島台地に一宇を建立したのが始まりなのだそうです。本堂の横には、大きなタヌキの像が二体。聞けば、四国のタヌキの総大将・蓑山大明神になったタヌキなんだと。淡路の芝右衛門、佐渡の談三郎とともに、日本の三大名タヌキと言われているのだとか。その土地その土地で、いろいろな言い伝えがあります。
 ここでいったん昼食休憩。美味しい讃岐うどんをいただいたあと、展望台から瀬戸内海を眺めました。その昔、こんなところで源平合戦が行われました。
 長尾寺の本堂の欄間には箒の彫りものがあります。物覚えが悪いインドのお坊さんが「毎日欠かさず箒で掃き仕事をしなさい」と言われ、来る日も来る日も掃除していたところ、悟りをひらくことができたようです。亡くなったあとお墓にいくと、見慣れない草がはえていました。「彼は自分の名前を荷って苦労してきた」ということで、「名」を「荷う」ことから、この草を茗荷(みょうが)と名づけたという言い伝えです。それがミョウガを食べ過ぎると物忘れするという伝聞の所以だそうです。科学的には全く根拠のないお話しです。先達さんからお聞きしました。
 いよいよ結願の寺、大窪寺です。切り立った岩山の麓にありました。八十八カ所を巡り歩いた日々を振り返りながら、それぞれに深い思いを胸に般若心経を唱えました。歩き遍路の方々にとっては、バスツアー以上に、感無量の思いを抱かれたのではないでしょうか。わたしも白衣の背に、結願証明の朱印をいただきました。この八十八番札所にて、結願記念の集合写真を撮りました。
 そして最後は1番札所・霊山寺に「御礼参り」です。1年前と同じ木下紀宝さん(尼僧)のお出迎えをいただき、みなで般若心経を唱えたあと、法話をお聴きしました。「無事、結願を迎えられたのは、ご家族、ご縁者の方々の支えがあってのこと。みんなに感謝しましょう」「花の種は、オンリーワンの美しい花を咲かせます。他と比べたりはしません。自分にしかないひとつの花を咲かせましょう」「人生あと50年。いずれお迎えが来ます。肩叩きがあったときが、あなたにとっての最適なときです。年齢ではありません」と。最後は、順番に弘法大師像の前で手をあわせますが、その一人ひとりの背中に手を当てて、これからの人生の後押しをしていただきました。 ということで、四国八十八カ所遍路の旅は無事に満願を迎えました。来月は、御礼参りのために和歌山県の高野山にでかけることになります。

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2 コメント

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結願 (桜井結奈(さくらい・ゆうな))
2017-06-11 21:03:27
四国八十八カ所御巡拝、満願成就おめでとうございます。
もちろん、これから新たな目標も、お持ちのことと思いますけど、ひとまずひとつ目標を達成され安心なさったと思います。
 ブログを拝見して、いろいろ学ばせていただきましたが、四国の霊場の御本尊は観音様が多いんですね。
そういえば、『般若心経』を拝読すれば、説教者は『観自在菩薩(観世音菩薩)』ですし、多くの人から信仰されているからでしょう。
今後、さまざまな御計画もおありの事と思いますが、どうか、お身体に気をつけて御自愛のうえ、頑張っていただきたく思います。

☆お遍路と、見れば人みな、敬礼(きょうれい)す、
               お大師様が、側に居るゆえ。
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ありがとうございます。 (ran_coffeebreak)
2017-06-12 00:01:53
満願成就について、ご丁寧なコメントをいただき、ありがとうございました。
そうですね。ひとつの区切りができたという意味で達成感のようなものがあります。でも、これで終わりではありません。いずれまた遍路の旅にでかけることになろうかと思いますが、当面は少し気持ちの整理をして次を考えたいと思っています。般若心経の理解も、まだまだですからね。ひょっとしたら、平易な言葉でさらりと般若心経にふれていらっしゃる結奈さんの方がお詳しいかもしれません。
月に一度、家をあけて遍路の旅にでかけていましたので、来週は家内への感謝の気持ちを込めて、初夏の北海道に小旅行に出かけてきます。
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