MELAS (mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes) は,脳卒中様発作のほか,筋力低下,高CK血症,低身長,感音性難聴などを呈する疾患で, 分子遺伝学的にはmtDNA の2つのロイシン転移RNAのひとつtRNALeu(UUR) 内の点変異である3243変異を約80%の患者で認める.同じ転移RNA内の他の変異である3271,3252,3256,3260,3291変異でもMELASの症状を呈する場合がある.脳卒中様発作の原因については不明であるが,頭蓋内血管の部分的な血管拡張の障害が存在するという仮説がある.今回,血管内皮依存性の血管拡張に重要な役割を果たすL-アルギニン(NO前駆体:NOSの作用で,L-アルギニンはL-シトルリンとNOを生成する)の投与が脳卒中発作に対して有効であるかを検討した研究が本邦より報告された.
まず24名のMELAS患者と72名のコントロールに対して,血漿L-アルギニン,L-シトルリン濃度を比較したところ,コントロールと比較しMELASではいずれも有意に低下していた(p<0.01).またMELAS患者では発作間欠期より急性期でL-アルギニンは低下していた(p<0.01;L-シトルリンは不変).このL-アルギニンの低下はおそらく血管内皮障害に由来するものではないかと著者らは推測している(根拠は不十分).一方,NO濃度については,MELAS間欠期ではコントロールより高いものの,急性期では有意に低下していた(p<0.01).治療介入としては,24名34 strokesに対して経静脈的L-アルギニンの投与,さらに6名に対して発作間欠期における予防的経口投与を行ったところ,急性期におけるL-アルギニン静注は,頭痛・嘔気・嘔吐・一過性視力低下,閃輝暗点などの症状をいずれも有意に改善した.副作用は点滴速度が速いときに頭痛を呈した患者が2名いたのみであった.予防的経口投与も発作頻度および重症度を有意に改善した.本研究の結果は多施設によるランダム化された研究デザインで再評価すべきであるが,患者にとっても,MELASの病態を解明する意味でも非常に重要なステップになるものと言えよう.
Neurology 64; 710-712, 2005
まず24名のMELAS患者と72名のコントロールに対して,血漿L-アルギニン,L-シトルリン濃度を比較したところ,コントロールと比較しMELASではいずれも有意に低下していた(p<0.01).またMELAS患者では発作間欠期より急性期でL-アルギニンは低下していた(p<0.01;L-シトルリンは不変).このL-アルギニンの低下はおそらく血管内皮障害に由来するものではないかと著者らは推測している(根拠は不十分).一方,NO濃度については,MELAS間欠期ではコントロールより高いものの,急性期では有意に低下していた(p<0.01).治療介入としては,24名34 strokesに対して経静脈的L-アルギニンの投与,さらに6名に対して発作間欠期における予防的経口投与を行ったところ,急性期におけるL-アルギニン静注は,頭痛・嘔気・嘔吐・一過性視力低下,閃輝暗点などの症状をいずれも有意に改善した.副作用は点滴速度が速いときに頭痛を呈した患者が2名いたのみであった.予防的経口投与も発作頻度および重症度を有意に改善した.本研究の結果は多施設によるランダム化された研究デザインで再評価すべきであるが,患者にとっても,MELASの病態を解明する意味でも非常に重要なステップになるものと言えよう.
Neurology 64; 710-712, 2005
