Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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巨細胞性動脈炎の血管病変はFDG-PETで評価する

2022年07月10日 | その他
最近,巨細胞性動脈炎の血管病変のFDG-PETによる評価の有用性を示す論文が複数,目に付きました.まず基礎知識を整理すると,巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis;GCA)は高齢者にみられる大型から中型の血管を侵す疾患です.大動脈とその分枝,頸動脈や椎骨動脈とその分枝に炎症がみられます.前者は大血管型(large vessel GCA:LV-GCA),後者は頭蓋型(cranial-GCA:C-GCA)と呼ばれ,両者がオーバーラップすることもあります.

C-GCAでは,頭痛,顎跛行(咀嚼後,痛みのため咀嚼や会話が困難になる症状)を呈し,側頭動脈の怒張・索状肥厚を認めます.虚血性視神経炎のため15~20%が失明に至るため,早期診断・早期治療が重要です.一方,LV-GCAでは,鎖骨下動脈病変では上肢痛,上肢跛行を,総腸骨動脈病変では下肢冷感,間欠性跛行を呈します.大動脈病変では,胸痛,背部痛を生じます.また不明熱,体重減少,炎症マーカーの上昇を認め,診断に有用ですが,これらを欠く場合の診断が従来,とくに困難でした.

画像診断では,超音波検査,MRI/MRA,FDG-PETが有用で,とくにFDG-PETはメタ解析でも高い感度(90%)と特異度(98%)が報告されています.保険適用にもなっています.ごく最近,FDG-PETが疾患活動性の評価や血管炎の局在判定(椎骨,大腿,膝窩動脈)にきわめて有効であった症例(1),および炎症マーカーは正常であったものの,C-GCAにより再発性脳梗塞を来した症例のFDG-PET所見(2)が報告されています.側頭動脈と椎骨動脈に異常所見を認め,免疫療法後改善しています.全身の血管の評価が可能で,確かに強力な診断,評価ツールになると思います.



1. Swart G, et al. Spinal Cord Presentation of Biopsy-Proven PET-Positive Giant Cell Arteritis. Neurology. 2022;98:982-983(doi.org/10.1212/WNL.0000000000200749)
2. Koizumi N, et al. FDG-PET/CT of Giant Cell Arteritis with Normal Inflammatory Markers. Ann Neurol. 2022 Jun 6. doi.org/10.1002/ana.26428.



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