Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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猫同士,276の表情をつかってコミュニケーションをする

2023年12月08日 | その他
Science Newsに,標題の論文が紹介されていました.私は「猫派」で,2匹の猫(キキとレオ)のパパなので興味深く読みました.今回初めて知ったのですが,猫同士は通常ニャーと鳴かず,人間にだけ鳴くそうです(適応と進化により発達した戦術らしい).では猫同士,どのようにコミュニケーションしているのか?が研究テーマです.『Behavioural Processes』誌に報告された論文によると,2名の研究者がロサンゼルスの,里親探しをする猫カフェで,10ヶ月にわたり53匹の猫を観察し,186組の猫同士の出会いを記録し,交流時の表情を記録しました.その動画をFacial Action Coding Systemsを使用して,友好的状況と非友好的状況の表情を,表情筋の動きの数と種類として調べました.

結果ですが,表情はまず3つのカテゴリーに分類されました.①友好的:表情の45%,②攻撃的:37%,③あいまいで分類困難:18%.表情としては,唇を離す,顎を下げる,瞳孔の収縮・散大,まばたきや半まばたき,口唇の角を引く,鼻をなめる,ひげを伸ばしたり引っ込めたりする,耳の位置などがあり,これら計26の顔の動きのうち4つほどを組み合わせて形成され,276の表情になるのだそうです(人間の場合は解剖学的に40以上の顔面筋があり,もっと複雑だそうです).

猫たちがこれらの表情でお互いに何を「言っている」のかはまだ不明だそうですが,猫は友好的なとき(図B)には耳やひげは相手の猫の方向に動かし,閉眼するのに対し,非友好的なときは(図C)耳は平たくなって遠ざかり,ひげも同様に遠ざかり,瞳孔を収縮させて,唇を舐めたりするそうです(図Aは平常時).興味深いことに,猫の友好的な表情の一部は,人間がする表情に似ていて,表情を共有している可能性が示唆されます.



研究者らはペットの猫は人間から餌をもらって集まるうちに,友好的な表情を獲得したのだろうと述べています.また「飼い主が猫の考えを理解するためのアプリに使われるかもしれない」「猫カフェで里親になる可能性のある人が,現在,飼っている猫と仲良くなれる可能性の高い猫を選ぶのに役立つかもしれない」とも述べています.猫と人間の絆を深めるのに役立つかもしれない素敵な研究だと思いました.
Scott L, et al. Feline faces: Unraveling the social function of domestic cat facial signals. Behav Processes. 2023 Oct 18;213:104959.(doi.org/10.1016/j.beproc.2023.104959

Science News(https://www.science.org/content/article/cats-have-nearly-300-facial-expressions


下図は以下のサイトのものを改変 https://www.rd.com/article/cat-facial-expressions/

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