じつはこの患者さん,心エコーを施行しているといきOff状態になり,顕著な振戦(原文によるとincluding the pectoralis musclesとある)を来たした.そのあと引き続いて興奮状態になり,鮮明な視覚幻覚が出現した.心拍数は133/min,心電図はpacing波形で,QRS波の前には例外なくpacer spikeが認められた.次のL-DOPAを内服し,振戦が消失したあとに,この頻脈も消失した.エピソード後にtroponin T の上昇は認めなかった.
結局,著者らの考えはDDD/R型ペースメーカーが,振戦を患者が運動しているものと勘違いしてしまったのだろうという結論だ.以下,その仕組みを説明すると,DDD/Rの4つの文字は,順に刺激部位,感知部位,反応様式(感知後にどのように反応するか),レート応答機能を表している.つまり,本例のペースメーカーは基本的に心房と心室で刺激し,心房と心室で感知し,反応様式としては抑制と同期の双方を行うというタイプである.問題はR(レート応答機能)だが,DDDのみのpacingの場合,運動したときに脈拍が増加しないことが起こりうる.この欠点を補う工夫がレート応答機能である.すなわち,レート応答機能がついているペースメーカーでは,体動などを感知すると自動的にペースメーカーがその動きの度合いによって刺激を出す回数(レート)を増やす.つまり運動すると脈が早くなり,運動をやめると脈が遅くなるようにペースメーカーが自動的に調節してくれるのだ.しかし,ペースメーカーが振戦を運動と勘違いしてしまう可能性は確かにありうる.実際に,この患者でレート応答機能をオフにしたところ症状は改善した.ということは単純に考えれば,振戦以外の不随意運動でも同様のことが起こりうるわけである.さらにレート応答機能は最近のペースメーカーにはほとんどがついているそうなので,このような症例は案外,見逃されてきた可能性もある.わずか2ページほどの症例報告だが,その意義は大きいのかもしれない.こんな経験された方,もしくはこのペースメーカーに詳しい方はいますか?
Neurology 65; 1676-1677, 2005
結局,著者らの考えはDDD/R型ペースメーカーが,振戦を患者が運動しているものと勘違いしてしまったのだろうという結論だ.以下,その仕組みを説明すると,DDD/Rの4つの文字は,順に刺激部位,感知部位,反応様式(感知後にどのように反応するか),レート応答機能を表している.つまり,本例のペースメーカーは基本的に心房と心室で刺激し,心房と心室で感知し,反応様式としては抑制と同期の双方を行うというタイプである.問題はR(レート応答機能)だが,DDDのみのpacingの場合,運動したときに脈拍が増加しないことが起こりうる.この欠点を補う工夫がレート応答機能である.すなわち,レート応答機能がついているペースメーカーでは,体動などを感知すると自動的にペースメーカーがその動きの度合いによって刺激を出す回数(レート)を増やす.つまり運動すると脈が早くなり,運動をやめると脈が遅くなるようにペースメーカーが自動的に調節してくれるのだ.しかし,ペースメーカーが振戦を運動と勘違いしてしまう可能性は確かにありうる.実際に,この患者でレート応答機能をオフにしたところ症状は改善した.ということは単純に考えれば,振戦以外の不随意運動でも同様のことが起こりうるわけである.さらにレート応答機能は最近のペースメーカーにはほとんどがついているそうなので,このような症例は案外,見逃されてきた可能性もある.わずか2ページほどの症例報告だが,その意義は大きいのかもしれない.こんな経験された方,もしくはこのペースメーカーに詳しい方はいますか?
Neurology 65; 1676-1677, 2005