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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)の遺伝的要因

2005年01月13日 | その他
若年性一側上肢筋萎縮症(いわゆる平山病)は,①若年男子における発症,②一側または両側上肢(手と前腕)の筋萎縮・筋力低下,③寒冷時の手のかじかみ,④手指伸展時の振戦,⑤数年間は進行するものの,以後,自然に停止する経過などが特徴である.脊髄造影検査にて,頚部を前方に曲げた時に硬膜管が前方につぶれる所見が特徴的で,この硬膜管の前方移動による脊髄圧迫(脊髄運動ニューロンの圧迫)が病態機序として重要と考えられている.一方,本疾患は民族特異的な発症が指摘されており(日本における報告が主.しかし米,仏,蘭,デンマークなどの報告例もある),さらに同胞発症例も報告されていることから(Arch Neurol. 54:46-50,1994および本論文)その発症に何らかの遺伝的背景が関与している可能性も考えられる.
 一方,脊髄前角細胞の変性脱落に伴い,体幹・四肢近位部優位の筋力低下・萎縮を生じる疾患として脊髄性筋萎縮症 (SMA)が有名である.近年,SMAの原因遺伝子としてSMN1遺伝子が同定され(5q11.2-13.3),病型とは無関係に90%以上の患者においてこの遺伝子が欠失していることが判明した.また相同遺伝子であるSMN2遺伝子のコピー数が病型と関連していることも報告されている(ちなみにSMN1遺伝子は完全長mRNAを産生するのに対しが, SMN2遺伝子の多くはexon 7がスキッピングしたmRNAを産生している).
 今回,インドより平山病14家系15例についてcase seriesが報告された.全例男性であり,兄弟例が1組認められた.臨床的所見に関しては従来の報告ととくに相違を認めないが,全例でSMN1およびSMN2遺伝子の欠失の有無が検討され,全例でSMN遺伝子の欠失を認めなかった.以上の結果は平山病がSMAと同じ遺伝的背景を持つ疾患でないことを示唆する.しかし本疾患が全例男児に発症すること,兄弟発症例が存在することを考えるとX染色体上の遺伝子が関与している可能性も否定できないと考えられる.

Arch Neurol 62; 120-123, 2005
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