今月の21日に行うイリスコンサートで、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」を弾く予定にしています。この曲は、1837年、シューマンが27歳の時に作曲されたシューマンの代表的ピアノ曲の一つです。この「ダビッド同盟舞曲集」、その冒頭には次のような古い格言が書きつけられています。
「古い格言」
いつの世にも
喜びは悲しみと共にある
喜びにはひかえめであれ
悲しみには勇気をもって備えよ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/5c/188a5732aec79647417e80ec0891ea02.jpg)
楽譜にこのような、楽語以外の言葉が記されるのは、私の知る限り、とても珍しいことです。それにしてもこの言葉、何とも味わい深い、しみじみと胸に沁みる言葉ではありませんか。さて、このような格言をわざわざ冒頭に記した「ダヴィッド同盟舞曲集」という曲、一体どんな曲なのでしょうか?
この曲集は最初に発表された時は「フロレスタン」と、「オイゼビウス」という二人の架空の人物の名前の連名で発表されたそうです。「フロレスタン」は、積極的で明るく行動力のある人物。一方、「オイゼビウス」は、控えめで女性らしく、もの静かな人物。この相反する二つのキャラクターをもつ二人がそれぞれ掛け合いでもするかのように、全部で18の小曲を紡ぎ出しているという構成になっています。
そもそも「ダヴィッド同盟」自体が、シューマンが考えだした空想上の団体の名前です。当時支配的だった伝統的で古い考えに基づく芸術観に対抗するための団体という設定でした。架空の団体に所属する架空の人物二人がそれぞれのキャラクターに応じて、芸術や音楽について真剣に語り合う、そんな情景を表現しているのがこの「ダヴィッド同盟舞曲集」なのです。つまりこれ、ちっとも舞曲集らしくありません。村の広場にみんなで集まって楽しく踊る、とか、華やかなサロンで紳士淑女が優雅に踊るとか、そういう曲では全然ないのです。
「フロレスタン(F)」と「オイゼビウス(E)」というのはシューマン自身がもつ二面性を象徴していると言われています。18曲からなる組曲で、一つ一つの曲にはっきりと、EかFのどちらが出ているかがわかります。この相反する二面性は、人間、だれにでも多かれ少なかれあるものだと私は思います。だから、どちらのキャラクターも理解できるし、入れ替わりの妙を味わうことが出来て、弾いていて面白くて飽きないのです。この組曲は、キャラクターの入れ替わりのバランスが絶妙で本当に素晴らしいと思います。
作曲家、音楽評論家として大変高い評価を得たシューマンですが、後に精神を病んで、自殺未遂などを経て、最後は精神病院で亡くなりました。私たちの人生も、いつも一筋縄でいくものではありません。喜びと悲しみが交互に入れ替わり立ち替わりやってくるのです。シューマンは、この楽譜の冒頭に載せた古い格言を、見事に音楽で表現してくれたのだと、思わずにはいられません。
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いつの世にも
喜びは悲しみと共にある
喜びにはひかえめであれ
悲しみには勇気をもって備えよ
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楽譜にこのような、楽語以外の言葉が記されるのは、私の知る限り、とても珍しいことです。それにしてもこの言葉、何とも味わい深い、しみじみと胸に沁みる言葉ではありませんか。さて、このような格言をわざわざ冒頭に記した「ダヴィッド同盟舞曲集」という曲、一体どんな曲なのでしょうか?
この曲集は最初に発表された時は「フロレスタン」と、「オイゼビウス」という二人の架空の人物の名前の連名で発表されたそうです。「フロレスタン」は、積極的で明るく行動力のある人物。一方、「オイゼビウス」は、控えめで女性らしく、もの静かな人物。この相反する二つのキャラクターをもつ二人がそれぞれ掛け合いでもするかのように、全部で18の小曲を紡ぎ出しているという構成になっています。
そもそも「ダヴィッド同盟」自体が、シューマンが考えだした空想上の団体の名前です。当時支配的だった伝統的で古い考えに基づく芸術観に対抗するための団体という設定でした。架空の団体に所属する架空の人物二人がそれぞれのキャラクターに応じて、芸術や音楽について真剣に語り合う、そんな情景を表現しているのがこの「ダヴィッド同盟舞曲集」なのです。つまりこれ、ちっとも舞曲集らしくありません。村の広場にみんなで集まって楽しく踊る、とか、華やかなサロンで紳士淑女が優雅に踊るとか、そういう曲では全然ないのです。
「フロレスタン(F)」と「オイゼビウス(E)」というのはシューマン自身がもつ二面性を象徴していると言われています。18曲からなる組曲で、一つ一つの曲にはっきりと、EかFのどちらが出ているかがわかります。この相反する二面性は、人間、だれにでも多かれ少なかれあるものだと私は思います。だから、どちらのキャラクターも理解できるし、入れ替わりの妙を味わうことが出来て、弾いていて面白くて飽きないのです。この組曲は、キャラクターの入れ替わりのバランスが絶妙で本当に素晴らしいと思います。
作曲家、音楽評論家として大変高い評価を得たシューマンですが、後に精神を病んで、自殺未遂などを経て、最後は精神病院で亡くなりました。私たちの人生も、いつも一筋縄でいくものではありません。喜びと悲しみが交互に入れ替わり立ち替わりやってくるのです。シューマンは、この楽譜の冒頭に載せた古い格言を、見事に音楽で表現してくれたのだと、思わずにはいられません。
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