日々・from an architect

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建築文化を考える国会議員・東京中郵「要望書」を提出

2007-06-24 15:13:29 | 東京中央郵便局など(保存)

6月20日、日本建築センターで行われたDAAS(建築・空間デジタルアーカイブ コンソーシアム)の委員会を途中で退席して、東京中央郵便局に向かった。
国交省肝煎りのDAASは、劣化の激しくなった新建築社の建築写真フィルムを修復してデジタル化し、それをインターネットでプレ公開して建築文化を広く社会に伝えることからスタートした。DAASについてはいずれ報告したいと思う。

地下鉄を乗り継いでたどり着いた東京中郵の職員通用口には、既に国会議員団が到着しており、大勢のプレス関係者が取り巻いている。
鈴木博之教授は森山真弓議員と話しこんでいる。6月6日に行われた勉強会のときの、丸の内に建つ建築の文化財指定状況などについて、森山氏の問題把握に対する熱意と、要点を突いた鋭い指摘に驚いたが、それを穏やかな口調で質問していく格調あるその姿に感銘を受けた。今日の見学会に、内閣官房長官や、法務大臣、文部大臣など4度も閣僚を担ってこられた森山氏がいらしていることにホッとする。
昼前に河村たかし事務所の秘書Mさんから、国会の審議が紛糾して時間調整が気になっていたが、何とか予定通りに行けそうだと電話をもらったばかりだからだ。参議員選挙を控えて政界の動きが微妙だ。

郵政株式会社の担当部長の案内で外部を見た後、客溜まりに入り、大きな窓から東京駅を見る。鈴木博之教授と僕は、この庁舎の設計を担当した吉田鉄郎は、多分意識して赤レンガの東京駅を見せようと、この空間を設計したのだろうと説明する。
屋上に上がった。国会議員の方もプレス関係者も、此処から見渡せる丸の内の風景が興味深そうだ。

勉強会のときも感じたのだが、国会議員はおしゃれで格好いい。河村議員の秘書は「内のだけがねえ!」というが、いやいやなかなか存在感が在って魅力的ですよと僕は言う。平沢勝栄氏と共に超党派の国会議員団の事務局を担う河村議員は、テレビに良く出てそのユニークな発言に微苦笑をもらったりしているが、建築文化を守る志は真摯で素朴だ。森山氏とは趣の違う迫力がある。

郵政の関係者に案内されて会議室に入ると、郵政公社総裁の西川善文氏や、郵政の執行役員Yさんが迎えてくださった。頂いた名刺を見ると、西川氏は郵政株式会社の社長となってる。郵政民営化を西川氏が託されているのだと感じる。
Yさんからも名詞を頂いたが、名前を拝見し、そういえば、学会,JIA、DOCOMOMOからの保存要望書を受け取っていただいたのがYさんだったと思い出した。

見学会と、西川総裁との会合に出席した国会議員は(順不同・敬称略)、森山眞弓、平沢勝栄、木村義雄、中山泰秀、やまぎわ大志郎、澤雄二、河村たかし、石関貴史、佐々木憲昭の各氏のほか、代理として秘書が出席した越智たかお、塩川鉄也各氏の11名である。

河村議員が進行役を担い、森山議員を中心とした議員各氏や鈴木教授が「歴史検討委員会」(鈴木教授も委員として選任されている)や「設計者選定のプロポーザル」状況に対する質疑応答をした後、森山氏から西川総裁に、(保存の)要望書を、重文指定検討を文化庁に申請する書類と共にお渡しした。
なんとも行動力のある議員団だ。

会合は笑い声も起こる穏やかな雰囲気の中で行われ、要望書提出の後、議員各氏からのメッセージが改めて述べられた.
河村議員から「容積率を売ることもできるそうですね」という質問があり、郵政関係者は戸惑いながらもうなずいた。それを受けて、僕も考えていることを述べた。
『この東京中央郵便局が、重文指定も可能な日本の都市を考える上で欠かせない大切な建築であることは既に周知されていること。つまり「建築を文化」として捉え、今回の問題を「残すには何ができるか」という視点で考えてほしい。
河村議員の述べたことは、残すために容積(空中権)移転という方法があるのではないかということで、区域外、例えば大手町地域などへの移転は現行法では難しいとしても、郵政関係者と国会議員(国政)、それに我々建築関係者がそれぞれの役割を担うことによって可能なのではないだろうか』というようなことだ。

河村たかし事務所の許可を得たので、下記に議員団が提出した「要望書」を記載します。
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2007.06.20

要 望 書

日本郵政公社総裁
 西川 善文 殿

 私たちは、歴史を後世に伝え、都市の心象風景を守るために、歴史的建築保存を目指す超党派の衆・参両院議員の会です。
 貴公社の所有される建築物には、その後の近代建築の模範となった名建築が数多く、なかでも東京中央郵便局と大阪中央郵便局は、昭和初期を今に伝える歴史的名建築と言われています。また、東京中央郵便局は、丸の内の東京駅舎とあいまって、東京を訪れる人に、在りし日の東京の姿を語りかけてくるシンボルでもあります。
 文化庁によれば、東京中央郵便局庁舎は、必要な改修のみで保存・活用できれば、国の重要文化財指定を受けることができる建築であるとのことです。
 なにとぞ、歴史的名建築を後世に伝えるため、保存・活用へのご理解を賜り、文化財保護法第27条の規定による国の重要文化財の指定を受けるのに必要な、貴社の同意を賜りますよう、お願い申し上げます。

 「東京中央郵便局庁舎を国指定重要文化財とし、首都東京の顔として
将来世代のために、永く保存・活用を進める国会議員の会」

東京中央郵便局見学会参加者一同
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なお上記の「東京中央郵便局庁舎を国指定重要文化財とし、首都東京の顔として将来世代のために、永く保存・活用を進める国会議員の会」の`国会議員に参加要請を求める呼びかけ人‘は、下記22名である。(順不同・敬称略)
(自民)森山真弓、河村建夫、佐藤剛男、平沢勝栄、渡辺具能、松島みどり、 関よしひろ、宮沢洋一,井上信治、宇野治、中山康秀、亀岡偉民、(公明)斉藤鉄夫、澤雄二、(民主)河村たかし、犬塚直史、石関たかし、松木謙公、笠浩史、白眞勲、(共産)佐々木憲昭、(社民)阿部知子

<写真 東京中郵屋上から丸の内周辺を観察する国会議員>



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7 コメント

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今夜 (絵夢)
2007-08-01 02:12:35
(社)神奈川県建築士会・技術支援委員会の席上で8月2日「残せるか!東京・大阪中央郵便局庁舎」パンフを横浜在住のDOCOMOMO会員(各氏)から頂戴しました。
先生が「こーでねーと」されるのですね。
不肖このm、当日は所要でJIAまで出向けない(先生を生で拝顔出来ない)のが残念です。
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風邪でボーっとしていてコメントをうっかり! (penkou)
2007-08-22 13:55:14
コメントをうっかりしてしまいまして申しわけありません。建築士会の何方がシンポジウム開催を知らせてくださったのでしょうか?
当日夏風邪にやられていまして、ボーっとしながらコーディネータを勤めました。しかしおかげさまで各パネリストの方々のメッセージは素晴らしく、改めてこの建築の位置付けや、残して行く事の大切さを実感しました。
河村峻議員の会場からのメッセージも皆の心を打ったと思います。
日刊工業新聞が8月10日にこの様子を記事にしてくれました。コンパクトでよくまとめてくれたいい記事です。
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パンフを ()
2007-08-22 23:39:37
配布して下さったのは横浜を拠点にご出身地である大分県でもご活躍中のオシドリ建築家KAKU氏です。
お陰様で不肖このmもご夫妻両方とお酒を酌み交わせる仲です(笑)
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残して欲しいと思います (Lyrique☆)
2007-09-03 16:22:54
地震国である事で、補強などの手を入れていく事が面倒だったり、お金が掛かったりと、保存するも大変で有る事は認識していますが、私個人的には、名建造物が消えてしまうのを好みません。
三信ビルと云い、素敵な建物が消えてしまって悲しいです。

耐震とか、土地の有効利用と云う点で、高い建物に建替えてしまうと云う方向の話が有ると思いますが、これを打破するのに「ヒートアイランド現象」は使えないですか?

先日もTV番組(ガイアだったかな?勘違いかな?番組名を忘れてしまったのが残念です)で、風の流れが東京駅ビルで遮られているのを駅ビルを手を入れて風が流れる事にもなると云う、ミニチュアでシュミレーションをしていました。

現在のままなら、駅の改造で郵便局方向は風が抜けやすくなると思うのに、皇居方向へ流れる一定一部の風が遮られ、絶対影響すると思います。

どんなに「耐震はバッチリです!」と言われても、高いビルだらけだと地震の時に怖いですし、丸ビル・新丸ビルですでに高いビルが駅前に建っているのですから、ここで郵便局まで高くなってしまうと、想像するだけで駅前に立つと閉塞感が有るだけでなく、東京駅ビルを建替えて風抜けを良くしてヒートアイランド現象を改善する計画も、高いビルに建替えては風の流れが変わってしまうと思います。

(私好みのビルの趣など)見た目だけでなく、温暖化が問題になっている環境への影響と云う点でも押せないでしょうか?
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追記 (Lyrique☆)
2007-09-03 17:01:01
先ほどは失礼しました。

調べてみましたら、都市を抜ける風の件、やはり「ガイアの夜明け」でした。

http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview070814.html

(2007年8月14日放送)
都市を冷やせ「~ストップ!“ヒートアイランド”~」の回の、【都市を冷やす“風の道”~海風導く川を利用せよ!】で出て来たと思います。

ただ、この前後の時期にヒートアイランドの問題での番組が(ニュースの特別枠など)幾つも有り、東京駅の駅ビルのミニチュアを使った風の通りのシュミレーションの事は、ガイアの番組内だったかが思い出せません。
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疑問は果てしなく (penkou)
2007-09-09 20:12:45
(m)さん
今頃は、小樽のプレスカフェでmoroさんとなにやら美味いものを食いながら、ターマスさんともども楽しんでいるのでしょうねえ(溜息!)
KAKUさんはなぜ?と疑問は果てしなく(笑)
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コメント有難うございます (penkou)
2007-09-09 20:22:36
(Lyrique☆)さん
コメント有難うございます。
残して使い続ける要請を、ヒートアイランド現象改善計画という視点から考えるのは初めての指摘ではないでしょうか。この夏の暑さは、ほって置けないような気がしましたが、考えさせられるコメントだと思います。ニュースの特別枠で問題指摘されたということは、危機感を持っている人が沢山いるということでもありますね。
これからもよろしくお願いします。
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