日々・from an architect

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唖然とし、情けない竹中平蔵氏の東京中郵論考:壊し始めてしまうことを恐れる

2008-10-05 23:33:42 | 東京中央郵便局など(保存)

朝日新聞10月2日「私の視点・郵政民営化1年」での、元総務相竹中平蔵氏の論には、唖然とし憤りを覚える前に、なんとも情けなくなった。竹中氏は言う。民営化というのは、民間人に経営を委ねるということで、政治家が日本郵政の経営者を政治の場に呼び出しているのはけしからん。そして「政治は経営の邪魔をすべきではない」と明言する。

更に続ける次のコトバには、これが日本の財政(行く末)を担った元大臣の言うことかとがっかりした。「政治の口出しはほかにもある」というのだ。
「例えば、東京駅前の東京中央郵便局の建て替え問題。日本郵政は再開発によって高層ビルを建て、不動産事業を収益の柱に据える計画だが、超党派の国会議員らが『歴史的建造物だ』という理由で保存を主張し、建て替えを止める動きがあった。付近の丸ビル、新丸ビルは建て替えられているにもかかわらず、東京中央郵便局だけを全面保存しろというのだろうか」。

そうだ、超党派の国会議員だけではなく、僕たち建築の専門家や大勢の市民は、「全面保存しろ」と言っているのだ。この郵便局庁舎が、丸の内についても、日本の都市や人の生活する空間を考える上でも、なくてはならない大切な建築だからだ。竹中氏でさえ、「歴史的建造物だ」と明言しているではないか。

この朝日新聞のオピニオン`私の視点`ワイドは、話題になった(なっている)出来事に対して、3名の立場の違う関係した方々の論考を記載して、その課題を時折世に問うシリーズである。今回は、元日本郵政公社総裁の`旧特定郵便局について`、自民党衆議院議員の`3事業の一体的経営に戻せ`、そして竹中氏のタイトルは「政治は邪魔をするな」だ。政治家が作ったシステムなのに。

この庁舎はもともと国のもので、国民の税金で建てられた、つまり国民のものだ。同時に、国会の場で文化庁が「重要文化財に値する建築だ」と見解を明らかにした建築でもある。
僕たちは、郵政民営化の是非を問うのではなく、かけがえのない「日本の文化遺産」を次世代に継承したいと必死に活動している。シンポジウムや座談会を開催してこの建築の存在や価値を検証し、ビラをつくって街頭に出て市民にも呼びかけている。
それを受けて、論議した千代田区区議会議員が全会一致で保存要望書を日本郵政に提出した。超党派の国会議員168名が、保存を求めた要望をしたのも同じ考えだ。
なにも民営化を云々しているのではなく、「日本の建築文化」を大切にしたいと考えているからだ。
金に替えられない。いや、空中権移転についての法整備も勘案し、経済性も視野に入れてのことでもある。

赤レンガの東京駅やレンガで造られた丸の内の建築の中に在って、白いタイルを貼って開かれていく新しい時代を世に生み出したこの庁舎は、郵政を率いた建築家吉田鉄郎の代表作である。世界に知られているこの建築を失うことは、日本が文化国家ではなく、「金」でしか価値判断をしない国であることを世界に表明することになってしまう。
ぼやいてはいられない。日本を率いる(はずの)元大臣には、建築は人の叡智を傾けて生み出した文化であることを理解してほしいと心から願う。

今回のプロジェクトはどこかおかしい。本来区や都の景観審議会や都市計画審議会を経て設計されなくてはいけないはずなのに、既に官報公告によって入札が行われている。有識者による「歴史検討委員会」の答申も公表しない。竹中氏はいずれ完全民営化というが、現在株は100%国が持っているし、郵貯を除いて郵便事業の30パーセントを国が保有すると聞いている。
僕たち「中央郵便局を重要文化財にする会」が問うた不審事項についての質問状には回答がない。

着工は来年の6月だと公表されているが、ドサクサ紛れの間に、壊し始めてしまうことを恐れる。


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1 コメント

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官報 (官報)
2009-03-18 12:38:55
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