2009.2.2
『ヘルパーの散歩同行』は介護保険では認められないことになっていた。少なくともほとんどの自治体も、各訪問介護事業者もそういう認識でいた。
ところが参議院の大河原雅子議員が提出した『ケアマネジメントで散歩の必要性を認めた場合には、ヘルパーによる散歩の同行を保障すべきではないか』との質問趣意書に対する昨年12月2日の政府の答弁書において、散歩は『自立支援、日常生活活動の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介護できる常態で行うものについては、利用者の自立した生活の支援に資するものと考えられることから、介護報酬の算定は可能である』としたのである。
多くの自治体は『散歩は禁止』で足並みをそろえ、事業者にもそのように徹底していたものであることから、これはまさに『絶句』ものの答弁書というわけである。
この『散歩同行』は介護保険制度が始まった頃には認められていたが、制度の第二期に入った03年以降、自治体が否定するようになり、その後禁止の動きが広まっていった。
というのは、厚労省は散歩という言葉は使わなかったが『趣味、娯楽はダメ』という通達を出した。これを受けた東京都は訪問介護の適さない例として『ドライブ、パチンコ、墓参、地域のお祭り、外出』を示した。ここから『ドライブがダメなら同じような行為の散歩もダメ。趣味に通ずる』として『散歩同行』は不可という判断となったものである。厚労省もこの判断を否定していなかった。
しかし介護の現場では、散歩の必要性を訴える声は根強い。『認知症や老々介護の人たちは引きこもりがち。自宅の周りを散歩できれば、心身の症状が上向くはず』と主張する。
勿論、病院への通院のための付き添いや買い物への同行は認められている。そこで散歩を買い物同行で肩代わりしようとすることについては『本来の目的から外れているので不自然。後ろめたい気持ちになる』とケアマネジャーに精神的な負担をかけてきた。
それが突然冒頭のように、規制をかけてきた自治体を飛び越えて、厚労省が『散歩同行』にOKと言ったのだから、自治体や事業者が絶句したというのもうなずける。
ところが今になって厚労省は『通達で示したのはあくまでも例示であり、それ以外は認めないと言ったことはない』などと弁明しているという。この変わり身の早さにはあきれるというより感服する。
何はともあれ、今回の話題は良い方へ変わったのだから良しとしよう。