田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-05-30 18:50:50 | Weblog
5月30日 金曜日
吸血鬼/浜辺の少女 54 (小説)
「玲菜に治療費払ってくれっけ。インプラントにするしかなかっぺよ」
玲菜を乗せてきたバイク男がカッコつけて宇都宮弁ですごむ。
玲菜がぐいと唇をそらせてみせた。歯茎がピンク色だ。
バイクに包囲されている。ライトが隼人と夏子を照射している。
「あらぁ、玲菜ちゃんの歯ならここにあるわよ」
どこに保存しておいたのだろう。
バシと、玲菜の犬歯を指弾としてバイク男の額に打ちこむ。
歯根が見えないほど深く突き刺さった。
絶叫。バイク男にはなにが起きたかわからない。
激痛にのたうちまわっている。
「なにしやがった」
怒号が飛ぶ。族の男も女も武器を手にした。あばれることができて興奮している。
目が不気味に赤く光っている。
怒号。「やっちまえ」
チェインがきしむ。
回転音がする。
ビユウビュウと唸りを上げて迫ってくる。
風を切る音が凄まじい。
夏子と隼人はじりじりと追いつめられる。
「剣で応じるわけにはいかない。こいつらまだ半分人間だ」
「まだ人間にもどるチャンスはあるわ」
夏子も隼人も反撃しない。調子に乗って族の若者たちが肉薄してくる。
「時間はじゅうぶんかせいだわ。この人たちには神父さんの所在はわからない。安心して逃げましょうか」
「やっぱあんたらかよ」
おくれてやってきたバイクからバンパイアのキャップ高野がおりたった。
「玲菜のチームがもめてるって聞いたんでよ。ちうれしいね、こんなに早くまた会えるとは」
高野がニタニタ笑っている。吸血鬼の陰険な笑いに似てきた。
仕込み杖を抜く。隼たちの争いの輪に走りこんできた。
アリャヤアと恫喝の叫びをあげた。
隼人を夏子を切り捨てる。必殺の雄叫びだ。凄絶な剣気だ。
なんのためらいもなく斬り捨てる。鬼島をやられた恨みもある。
剣気には鬼気せまるものがある。相打ちでもいい。ともかく敵を斬る。
喧嘩なれしている。
隼人がどこに隠しもっていたのか、魔倒丸で高野の剣を横にはじく。
高野の剣が高くはねあげられた。
隼人がいままでではけっしてやらない行為にでた。
かえす魔倒丸で高野の腕を斬りおとした。
ごぎりという不気味な手応えがつたわってきた。
ゲオッと高野が吠えた。
ゲギョゲギョゲゲゲと高野がゼッキョウする。
腕が青い血液をふきあげて宙に舞う。
族の仲間には高野の流した血の色までは視認できない。
<バンパイァ>のキャップ高野、北関東の暴走族を統べる最強の男の腕が白刃の柄を握ったまま切断されるのをみた。
腕の1本くらい失ってもすぐに生成してくるだろう。
おれまで、と隼人は人称をかえている。おれまでおかしくなっている。
吸血鬼との闘争でおれまで残酷な感情に支配されている。
高野の剣が虚空で腕から離れ先に落ちてきた。
腕が少し遅れて剣の傍に落ちてきた。
指が土をかいて剣に近寄ろうとしている。

コメント
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