田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-05-27 06:38:56 | Weblog
5月27日 火曜日
吸血鬼/浜辺の少女 52 (小説)
ふたりで精いっぱい生き、ふたりで死にたい。
いつもいっしょにいたい。
隼人と夏子は固く手を握り合った。
ふたりがしっかりと手を握り合ったことで、さらに青い炎は濃く激しく揺らいだ。
夏子と隼人の体が震え音を発していた。
「わたしとともに生きるということは、夜の一族からもホワイトバンパイア――シロッコ、できそこない、と軽蔑されながら生きることなのよ」
「それでもいい。夏子といっしょにいられるなら、どんなことがあってもいい」
夏子!! 
ぼくは、あなたを永遠に命ある限り愛しつづけます!!
愛とは、旋律。
美とは、旋律。
体がまだ小刻みに震えている。
美とは、愛とはこれほどすばらしいものだったのですね。
ふたりにはもはや、愛とか美とか、ことばにだしていう必要がなくなっていた。
ぼくは絵を描きつづけます。
これほどの感動を絵にそそぎこめたら、すばらしいものになるでしょう。
傑作の描ける予感がします。
この感動をひとりでも多くの人に伝えたい。
そして、ブラック・バンパイアの暗躍と戦います。
この町のひとたちの幸せのために夏子とともに戦います。
かれらが、血を吸わず、人と芸術の交歓から生じる精気を吸っていきていけるように進化するまで生きていたい。
夏子が奇形ではなく、吸血鬼の進化の先端ある存在なのだと証明したい。
そう、あなたはシロッコなんかではない。
吸血鬼の未来、あるべき理想の形なのだ。
人と共生できるなんですごい。
それって、すごいことなんだ。
「夏子!!!」
隼人は感極まって夏子に呼びかけた。
夏子をぎゅっとだきしめる。
「わたしのパートナー、隼人。わたしの恋人、隼人。やっと、わたしを恐れず、理解い合える人に会うことができてうれしい」
ふたりの唇があわされた。
永遠のコンビ。
パートナー。
最強の吸血鬼ハンターのチームがここに誕生した。

19

「妖霧の元を断たなければ」
「噴出口をふさいでもだめですよね。元をたたなければ。わたしもそのことを考えていました」
「それには、大谷の洞窟に、吸血鬼の牙城にのりこまなければなりませんね」
おそらく教会は監視されている。
壁を叩く音は途絶えている。
でもヤツラがあのままひきさがるわけがない。
裏口からひそかに三人は街にでた。