田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-05-16 05:40:21 | Weblog
5月16日 金曜日
吸血鬼/浜辺の少女 40 (小説)
「隼人」
「隼人。われら剣道部の全員がこんなにたのんでもダメなのか」
「KYだな。空気読めないみなさんだ。ぼくにはまったくその気はない」
「KYはそちだろう。きょうはただでは帰さんぞ」
と遠山。
剣道部員からの剣を隼人は――逃げた。
竹刀や木刀でも戦えばこちらはダメージをうける。
もう戦いはたくさんだ。
このところ、異形のものとの戦いに明け暮れている。
争うことは避けたい。
「ごめん」
隼人は膝もおらずに後ろに跳んで――逃げた。
隼人を包囲していた剣道部員はその高さと距離の異常さに驚く。
夏子の飛翔能力のほんの一部が隼人のものとなっている。
隼人は夏子に守られている。
いまも、夏子がここにいる。
夏子が助けてくれたと、感じた。
夏子が注ぎ込んでくる精気に助けられた。
部員達が見たのは校門のほうに走り去る隼人の後ろ姿だ。
学生専用のパーキングエリアを走った。
バイクがおおい。乱雑に止めてある。
まえには、きちんとした駐車場だった。
いまはもうすきかってに止めてある。
車やバイクの間を縫うように走った。
止めておいたルノーをめざす。
遠山の剣気にはあきらかに害意があった。
殺意があった。そんな男ではない。
強引に勧誘はするが害意も殺意もなかった。
いままでは……。どうしたというのだ。RN。らしくない。らしくないよ、遠山。
隼人はそれで、指を剣にみたてて相手をしなかった。
大学のキャンパスまで吸血鬼の歯牙が伸びてきているのか。
……吸血鬼の悪意、凶気の波動が浸透してきているのか!!
遠山流の師範が父だ。大学剣道界きっての剣士、遠山遥にしても吸血鬼の犬歯の犠牲になってしまったのか!!
わからない。確かめる前に隼人は逃げだした。
みんなの目が虚ろだった。
なにものかに操られている。
吸血鬼だろう。邪悪な心がみえみえだった。

15

甲高い排気音がひびきわたった。
バイクの群れがパーキングエリアに疾駆してきた。
暴走族バンパイアの高野のハーレが先頭をきっている。
高野がハーレから降りる。
白鞘の日本刀をさげている。にたにた笑っている。
「またあえて、うれしいよ。皐隼人」
遠山も追いすがってきた。
高野と遠山。野山を連れ立って散歩するような雰囲気ではない。
なにかややこしいことになってきた。剣難の日だ。
隼人は指剣をかまえ、ふたりに対峙することになった。
「遠山。操られているのだ。目を覚ませ」
「隼人。お前が悪い。隼人が快諾してくれないから……覚悟しろ」
遠山がふたたび、木刀でおそつてくる。