田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-05-26 07:53:23 | Weblog
5月26日 月曜日
吸血鬼/浜辺の少女 51 (小説)
一族が人と共存する。
わたしのように。
人と共存する。
ことを考えればいいのに。
窓の外。
大谷の方角から。
夜が訪れようとしていた。
渦巻く妖気は分厚い暗青色。
夜の雲となっていた。
操られたものたちが、塀の外に群れていた。
操られたものたちが、壁の外に群れていた。
塀を壁面をどんどん拳でたたいている。
中には体を叩きつけてくるものもいる。
鬼島が消滅した。
隼人に斬られた。
死なないわけの鬼島が灰となった。
それでいらだっている。
それでリベンジを企てている。
塀が壁が振動する。
建物全体が揺らいでいる。
迷惑ではという隼人のことばへの返事だった。
「ご心配なく。聖水で清められているこの領域には近寄れません」
そういわれても、夏子は肩をすぼめる。
「わたしたちは、会うべくして会ったのです。これは神の意志です。夏子さん。隼人さん。力を合わせてこの宇都宮と鹿沼を吸血鬼の侵攻から守りましょう」
夏子が元気をだす。うなずく。
隼人もおおきくうなずく。
ぼくが夏子と会えたのも。
神の御心だ。神に、従う。
隼人が決意する。
顔がひきしまる。
神父と、夏子、隼人は右手を重ねた。
鹿沼と宇都宮を死守することを誓う。
三人の合わせた手から青いフレアが立ち上った。
聖堂の天井に。
さらに、空に輝く星々まで。
青い炎を透かして見る夏子は美しかった。
一族のものを敵に回しても故郷を守る。
その決意に夏子は発光している。
その悲壮な覚悟に夏子を輝いていた。
母を助けるために兄とたたかった。
雨野を助けるために大谷の地下にのりこんだ。
でもこんどは故郷鹿沼のため。
宇都宮のため。人々を吸血鬼から守るため。
そのこと、そのためにこそ、決意した。
はやとは夏子を見守っている。
夏子といつまでもいっしょだ。
いつもいっしょにいたい。
絵を描きながら、永遠に生きたい。
いや、夏子とならいつでも死ねる。
生と死。それは同意語だった。

コメント
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