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古い本 その137 古典的論文 長頚竜類3

2023年03月13日 | 化石
 次の属に行く前に、一つ追加する。1865年にLeidyは次の論文を書いた。
◯ Leidy, Joseph, 1865. Cretaceous reptiles of the United States. Smithsonian Contributions to Knowledge. vol. 14, no. 192: 1-135, pls. 1-20. (アメリカの白亜紀爬虫類)
 この論文では多くの爬虫類を扱っているが、「恐竜」という分類目を表題に使っていないし、いくつかの他の分類群のものがワニに入れられているようだ。まだしっかり読んでいないので、ここで扱っている長頚竜類のどれが入っているのか調べていない。少なくともCimoliasaurus magnus, Discosaurus vetustus, Piratosaurus plicatus の3種類が出てくる。最初の種類は、ここで初めて記録されたものではなく、1851年にLeidyが記したもの、と書いてある。この論文は見落としていたが、次のもの。
◯ Leidy, Joseph, 1851. [No title]. Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia. vol. 5: 325-328. (タイトルなし)
 学会の記録のような記事で、タイトルはなくて「Leidy博士は多くの化石骨を見せて、口頭で次のように特徴を示した。」と示しているから、新種記載であるかどうかは微妙。内容は短くなく、特徴や計測値がちゃんとしている。「New JerseyのGreen Sand からの同一個体の13個の脊椎骨をもとに、Cimoliasaurus magnusを設立した」としているから、命名する意思はあったようだ。しかし、脊椎骨だけで、分類群は書いてなくて、比較したのはPoekilopleuron Bucklandii(獣脚類) とMosasaurus だから、あまり説得力はない。なお、大文字のGreen Sandと言うのは、当時のニュージャージー州の鉱産物であった海緑石砂岩で、時代は白亜紀。後に(1854年)同じ雑誌に短い記事があるが、「似た骨がある」と言うだけでほとんど何も書いていない。1851年のCimoliasaurus magnusが新属・新種記載であるなら、前回の記事で「Elasmosaurus 属は1821年のPlesiosaurus以来47年後の二つ目の属」としたのは改訂する必要があろう。
 Leidy 1865 に戻って、文末の図版の内Plates 5-6にCimoliasaurus magnusの標本がある。

505 Leidy 1865. Plate 5.

 この図版のFigs. 1-12は、New Jersey、Alabama州などのDiscosaurus vetustus 脊椎骨、Figs. 13-19は、New Jersey 州のCimoliasaurus magnus。Fig番号はよく見えないから、境界に灰色の線を書き込んだ。

506 Leidy 1865. Plate 6.  New Jersey 州のCimoliasaurus magnus脊椎骨。

 三番目の種類は、Piratosaurus plicatusで、Plate 19に図がある。

507 Leidy 1865. Plate 19. North Dakota 州産のPiratosaurus plicatus 上顎前端。

 Leidyがこの論文で記録した属名は、新属としたものはその後使われなくなり、他はすでに記載されていたものが多い。ここに記したように、新属の記載としては不備があるが、時代的には容認されそうな頃である。CopeやMarshによるアメリカの中生代爬虫類の研究が始まるのは1860年代だし、それに先行するHitchcockの足跡の研究と同じ頃だから、最初の研究の一部であることは確か。今回の記事は属名の先取関係や、模式標本の選択などに未解決の点がかなりあるから、興味ある方はお調べ頂きたい。

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