古い本 その26 宇宙
ジャンル:50年・60年
前回は昆虫好きだったころに関連する本を紹介したが、中学生から友人の影響とそのころのできごとのために、宇宙関連にも興味を持った。ただ、そのころ読んだ本はあまり保管していない。あるのは大学生時代に読んだと思われる本が少しだけ。
24 シュテルンフェルト・著 金光不二夫・訳 「人工衛星」 岩波新書 1958
岩波新書「人工衛星」については、昨年(2019年)7月20日の当ブログ「月面着陸50年」のときに記した。シュテルンフェルト・著 金光不二夫・訳 岩波新書 1958 というものである。
1957年にソビエトは突然「人工衛星の打ち上げに成功した」と発表した。直径58センチのアルミ製の球体で、2メートルほどのアンテナが4本付いていた。アンテナは、やや開いた一方向に向いていたから、まるで飛んでいるときにアンテナがたなびくように後ろに向いていたような印象を受けるが、そういう意味は全くない。機能は(今から考えると)おもちゃのようなもので、本体の温度変化を0.3秒ごとに発信していたにすぎない。近地点215km、遠地点939kmの楕円軌道で、近地点が低いから(ちなみに現在の有人衛星・国際宇宙ステーションの近地点・遠地点とも約400km、ひと月に2kmほど「落ちて」くるそうだ。)空気抵抗が大きく、打ち上げから3か月ほどで大気圏に落ちた。名前をスプートニクといった。
原著はスプートニクより前の発行、日本語版は1958年1月25日初版発行で、1957年10月4日のスプートニク打ち上げから113日後であるから、スプートニクの大気圏再突入の11日後である。「訳者まえがき(1957年12月付け)には、そのあたりを記してある。さらにまえがきの追補というものが1958年10月付けで短く記入してある。本文210ページまでが原著の翻訳で、211ページから224ページまで「人工衛星第一号・第二号」として宮地政司氏の文が追加されている。さらに225ページから「ツィオルコフスキーから人工衛星(スプートニクとルビがふってある)まで」と題する訳者金光不二夫の文が追加されている。これには、スプートニク1号(1957年10月4日打ち上げ)、同2号(1957年11月3日:実験動物としてライカ犬を載せていた)、同3号(1958年5月15日)の記録が加えられている。
私の持っている本は、1961年8月29日付の第4刷となっている。従って、1957年の末に宮地氏の寄稿と、訳者まえがきの付いたものを初版として発行し、後(1958年5月以降)に訳者の追加文章とまえがきの追補が加えられたことになる。そうなると初版と別の第2版といった名前になるのがふさわしいと思う。
私がこの本を購入したのはずっと後のことだと思う。というのは内表紙に私の蔵書印が捺してあるのだが、その蔵書印を作ったのは1970年ぐらいだったから。とは言っても、蔵書印を捺したのは入手した時とは限らない。いずれにしても、中学・高校時代に宇宙・天文関係の大きな出来事が続いたのが、私の興味を引いていたのは間違いがない。この本の存在と、有人M君の影響、そしてガガーリンと握手したことが大きな影響をくれた。
アリ・アブラモビッチ・シュテルンフェルトArio Abramovich Shternfel’d(1905−没年不明)は、ポーランド生まれ。ソビエトで宇宙旅行に関する研究を行った。
金光不二夫(1927−2000)は東京出身のロシア語翻訳家。
宮地政司(1902−1986)は、広島出身の天文学者。東京天文台長や日本地図センター長を務めた。
25 畑中武夫・著 「宇宙と星」 岩波新書 1958
この本も入手時期などはわからない。蔵書印も捺してある。本の構成は、巻頭写真4pp、まえがき、第1章「夜空の星」第2章「星はすべて太陽だ」第3章「銀河系の構造」第4章「流転する宇宙」、追補、といったもの。全部で183ページである。初版発行は1956年であるが、所持している本は1970年8月発行の第25刷!というもの。いずれにしても、宇宙の年齢が50億年としていたころの本であり、相対性理論は取り込まれているし、中性子星も概念が書かれているが、ブラックホールやもちろんダークマターや重力波はない。
畑中武夫(1914−1963)は和歌山出身の天文学者。東京天文台天体電波部長などを務めて、電波天文学の研究を拓いた。
理科年表 丸善出版
26-1 理科年表2014 表紙
高校生の最後頃から、毎年理科年表を購入していた。最初の一部分は捨ててしまったが、博物館退職頃までの約40年間のうち数年分欠如があるがほとんどの号を所持していた。退職時に博物館に寄贈したが、2011年から2014年のものを手元に残してある。各種のデータを調べるのに便利で、例えば海外旅行に行く際にその都市の平均気温などをすぐに調べることができた。現在はネットがあるので使わない。
時々見た表の例を挙げると、各惑星の衛星の表がある。最初の頃はかなり少なくて覚えようかと思ったぐらいだったが、惑星探査機が訪れるようになるとたちまち増えていまや数え切れない。例えば、木星と土星の衛星の数は、20世紀末頃にどちらも18個ぐらいだったのが、2014年の理科年表にはそれぞれ67個・65個としてある。これらの数字は怪しいものや、いったん「発見」されたものの、その後観測されていないものまであるから、まさに「数え切れない」というのがふさわしい表現。
26-2 理科年表2014 地磁気偏角
上のページは偏角を表すもので、北磁極・南磁極がよくわかる。南アメリカ大陸あたりの異常も見える。地磁気はこういった地球物理学関連のデータの中で最も変化の激しいところだろうから、すでに今年の図は変更されているに違いない。逆に言えば、昔のデータを調べるのに「理科年表」が揃っていれば便利。各地の卓越風向など気象統計なども面白い。川内原発付近の卓越風が、理科年表と九州電力の表が随分違っているのも気になる。少し古いのしか持っていないから、こちらのデータは地磁気と違って長い年月の統計だから、現在のものが全く異なることなどありそうにない。