1 Kellogg, 1931のデスモスチルス
この論文(既出)は、海生の哺乳類化石に関するもので、記載はDesmostylus から始まる。アメリカのDesmostylus hesperusのスケッチがあるから、文中図を見ておこう。

771 Kellogg, 1931. p. 225. Figs. 1-3. Desmostylus hesperus “上顎臼歯”
見たところ、咬耗していない下顎臼歯の後半と思うが、原文では上顎臼歯となっている。注目するのはサイズで、保存されている部分の前後径が72mmとしている。このスケッチのサイズも原寸の二分の一としていて、紙面上35mmだからほぼ対応する。この計測値は正しいのだろうか? スケールは原文に従って書き込んだ。

772 同じスケールで表した二つの下顎臼歯
上の比較は、左がKellogg, 1931. p. 225. Fig. 3. 右はReinhart, 1959, pl.6, fig. a.で、どちらもDesmostylus hesperus 。しかもKelloggの方(原論文では上顎臼歯、見たところ下顎臼歯)は前方の一列の咬頭が欠けているから、やっぱりサイズが間違っているようだ。
2. Beneden and Gervais のクジラ骨格図
次の論文の内容を整理しておきたい。
○ Beneden, Pierre Joseph van and Paul Gervais, 1869-1879. Ostéographie des Cétacés vivants et Fossiles, comprenant la description et l’Iconographie du Squelette et du Système dentaire de ces animaux. Text: i-viii, 1-634, Atlas: Planche 1-64. Arthus Bertrand, Libraire-éditeur, Paris. (現生と化石の鯨の骨学、・・・)(既出)
この論文は大量の現生を中心とした鯨骨格の図が出てくるから、常に参考にしていたが、何しろ大きな本(意義の大きさと実際の本のサイズの両方)で、写真コピーを撮って(コピー機には乗らない)持っていたが、全容は見渡せないほど。当時は持っている図書館は少なくて、おそらく日本には数冊しかなかったが、現在は.pdf ファイルが手に入る。ここではその内の化石骨について調べてみよう。

773 Beneden and Gervais, 1869-1879. (Text) タイトルページ
テキストと図版(1880発行)は別の本になっていて、サイズも異なる。図版は高さが50cmほどもあって、他の図書と比べると際立って大きい。テキストの方はもう少し小さいが、約650ページあって重い。論文はフランス語で、OCRに対応しないから、翻訳サイトに自分で打ち込まないと翻訳できない。
まずこの図版のスケールについて。図版には最下段に種名が書き込んであり、そこに各Figs. の倍率が記してある。このブログでは、その倍率から計算したスケールを書き込んだ。そのためには原本のサイズが必要であるが、幸いにも手元に学生時代に撮影した各ページの写真があり、そこにはスケールを入れて撮ってある。まず、印刷部分の縦の長さを計算したところ45.8センチであることがわかった。縦を測ったのは、折り込み図もあるから。それをもとにしてできるだけスケールを入れた。
論文の発行年についてだが、分割して発行されたようで、各部分に本来の発行年があるようだが、調べられなかったので、1869-1879 (Text) とした。短く書くときに1879としたところもある。
図にはPlates 1-64の番号が振ってあるが、うち3図版には「Plate 27bis」というように追加図がある。折り込みになった横長の図と、普通の縦長のページの図があるが、初めの方の5枚の横長の図だけは「Plate 1-2」というように番号二つの連続番号が振ってある。これを差し引くと図版数は62枚ということになる。
図版のうち、化石に関する図版はまとめられている。出てくる順にリストを作った。部分的に割れている標本が図示してあるものなどを目安にして、化石の図かどうかを判断した。
引用に際して、「van Beneden」とするのが良いのだろうが、ここでは「Beneden」と略記する。
現生の多くの種類についてはあきらめて、化石属の標本の写真だけを解説するが一部現生のクジラの属に入る化石属にも触れる。それらを3つのランクに分けた。1(残り2属) おもしろそうな種類(ここでは属)。これらにはCetotherium, Eurhynodelphis, Squalodonと、現生のKogiaが含まれるが、前の二属はすでにこのブログで解説したからKogia とSqualodonについて調べた。2(17属)本文に出てくる属 これらについては少しだけ書くつもり。 3(8属) 図版だけに出てくる属 著者自身が種の独立性に疑問があるのだろうから、これらにはなるべく触れないでおこう。
まず、最初に化石の図が出てくるPl. 16.

774 Beneden et Gervais, 1869-1879. Pl. 16.
次の種類の化石が描かれている。右の学名は最近の表記。
Plesiocetus Goropii Figs.1-9. Plesiocetus garopii Beneden, 1859
Plesiocetus Burtinii Figs.10-16. Aglaocetus burtinii (Beneden)
Plesiocetus Hupschii Figs.17-22. Plesiocetopsis hupschii (Beneden) Kellogg, 1931
Plesiocetus Gervais Figs.23-24.
まずPlesiocetus 属について。ヒゲクジラ類の分類については、次の論文が詳しいから参照する。
○ Steeman, Matte Elslup. 2010. The extinct baleen whale fauna from the Miocene-Pliocene of Belgium and the diagnostic cetacean ear bones. Journal of Systematic Palaeontology. Volume 8, 2010, Issue 1: 1-104. (ベルギーの中新世から鮮新世に生息した絶滅ヒゲクジラ動物相と、特徴的なクジラ類の耳骨)<電子版を見ているので、ページは仮>
古い論文がちゃんと出てくるが、細かいところに綴りの間違いがあることがあるので油断できない。
これによると、Plesiocetus属はBalaenopteridaeに属し、命名は Beneden, 1859、模式種はここに出てくるPlesiocetus garopii, Beneden, 1859.となっている。なお、種小名の綴りが Beneden et Gervais, 1869-1879 の図版説明では間違って「Goropii」となっている。