OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

古い鉱物標本(その14)

2013年04月27日 | 鉱物・化石組標本
古い鉱物標本(その14)
An old set of mineral specimens: part 14


Fig. 38 標本61-65 scale: 5cm
Specimen 61-65: limonite, pyrite, gold ore, argentite, cassiterite sand.

61 褐鉄鉱 美作國勝南郡柵原 (岡山県美咲町柵原)
柵原鉱山は、1991年に閉山するまで、硫化鉄の採掘をしていた。採集鉱物は、地表近くでは褐鉄鉱、地下では磁硫鉄鉱や磁鉄鉱であった。柵原鉱山の鉱産物を輸送するためにあったのが片上鉄道。残念ながら、これには乗ったことが無い。片上鉄道の廃止も同じ1991年。現在も車両や線路の一部が保存されている。
62 黄鉄鉱 越後國北蒲原郡赤谷 (新潟県加茂市赤谷)
赤谷鉱山は、スカルンの銅や鉄の採掘を行った。現在も石灰石を小規模に採掘しているという。この鉱山の輸送のために1984年まで国鉄赤谷線が存在していたが、乗る機会を逃した。標本は結晶面が少しだけ残っている黄鉄鉱の破片。ほかに、結晶面のはっきりしたもっと小さいものがあるが、誰かが追加したもの。最近は、スペイン産の非常にきれいな結晶が安価に入手できる。


Fig. 39 スペイン産黄鉄鉱 scale: 2cm.
Pyrite from Spain.

63 金鉱 佐渡國佐渡郡相川 (新潟県佐渡市相川)
初めてこの標本を見た時には、金があるとは思えない姿に驚いた。もっと重いとか美しいとかツヤがあるとかを予想してしまう。もちろん自然金なら金らしい姿がみられる。写真は私が大学院生だったころ、某標本が廃棄された時に見つけて、お願いしていただいたもので、ラベルがなかったがたぶん兵庫県の中瀬鉱山のもの。判る方ご教示いただければ幸である。


Fig. 40 自然金。おそらく中瀬鉱山。scale: 5cm
Native gold.


Fig. 41 自然金。おそらく中瀬鉱山(上の写真の拡大)。
Native gold (enlaeged).

64 輝銀鉱 佐渡國佐渡郡相川 (新潟県佐渡市相川)
輝銀鉱は、正確には常温では別の鉱物(針銀鉱)に変化しているが、これも輝銀鉱と呼ぶことが多い。微細な結晶が黒い縞状になっていることが多く、「銀黒」(ぎんぐろ)と呼ぶ。63番の金鉱と64輝銀鉱は佐渡島の相川産。相川を含む佐渡金銀山は、世界遺産登録を目指している。すでに一部が国の史跡に登録されている。
輝銀鉱を含む金銀鉱は、串木野鉱山で1968年8月に見学した。お願いしたら切り羽まで案内された。坑内はきれいな水が流れて涼しかった。直前に訪れた高島炭坑の環境との大きな違いが印象的だった。高島では、出火を恐れてタバコを持っていないか入坑前に検査があった。対照的に串木野では休憩室でタバコを吸っていた。


Fig. 42 串木野鉱山の銀黒。上端に濃紅銀鉱。頂き物。scale: 5cm
Silver ore from Kushikino Mine


Fig. 43 串木野鉱山の濃紅銀鉱。上の標本の拡大
Pyrargyrite from Kushikino Mine

65 砂錫 美濃國恵那郡苗木 (岐阜県中津川市苗木)
砂錫(さすず)は、砂粒となった錫石が集まったもの。苗木では1907年頃に最も盛んに砂錫の採掘が行われたという。
錫石は京都府亀岡市の行者山で1967年頃に採集した記憶があるが、標本は残っていない。
(つづく)

最後の蒸気機関車たち その48 1972年6月

2013年04月23日 | 最後の蒸気機関車
最後の蒸気機関車たち その48 1972年6月
The last steam locomotives in Japan. No. 48 (June 1972)




251N 草津線三雲駅付近 1972.6 D51-703 787列車
250-252: Kusatsu line, near Mikumo Station, Shiga Pref..
D51-703は、1972年10月に廃車。


252N 草津線三雲駅付近 1972.6 D51-703 787列車

ちょうど田植えをしているところに遭遇。やっと田植えの写真撮影が出来た。


253N 草津線手原駅付近 1972.6 D51-841+D51 726列車(客車)
253-255: Kusatsu line, Tehara Station, Shiga Pref.


254N 草津線手原駅 1972.6 D51-178 723列車


255N 草津線手原駅 1972.6 D51-178 723列車

登場蒸機 D51(写真251~255)

2020.6.13 写真を入れ替えた。番号の後に「N」が付いているのが改善した写真。

Trivial database of a retired curator, OK.

古い鉱物標本(その13)

2013年04月20日 | 鉱物・化石組標本
古い鉱物標本(その13)
An old set of mineral specimens: part 13


Fig. 35 標本56-60 scale: 5cm
Specimen 56-60: calcite

56 自然銅 羽後國仙北郡荒川 (秋田県仙北市荒川)
ここからは金属鉱物。鉱山名を調べて記す。この標本は荒川鉱山の自然銅。荒川鉱山は1940年に閉山した銅鉱山で、閉山後観光施設として公開されていたこともある。採掘していたのは黄銅鉱で、「三角銅」という特殊な結晶が有名。
57 黄銅鉱 下野國上都賀郡足尾 (栃木県日光市足尾)
足尾銅山は1973年に閉山した鉱山。最盛期には日本の銅の4割を生産していたという。国の史跡に指定されている。足尾鉱毒事件などでよく知られている。わたらせ渓谷鉄道(2005年乗車)はもと国鉄足尾線で、足尾銅山の製品を搬出するために建設された。かつて終点の間藤から先に貨物線があって、精練所のあたりまで伸びていた。
58 磁鉄鉱 信濃國南佐久郡大日向 (長野県佐久穂町大日向)
大日向鉄山は、昭和中ごろまで採掘していたらしい。磁力の強い磁鉄鉱を産した。現在も採集できそう。この標本も、クリップくらいならぶら下げる。佐久穂町大日向は、小海線(1970年8月乗車)から埼玉県に山越えをする武州街道ぞいの地区。


Fig. 36 磁鉄鉱標本にぶら下げたクリップ
Magnetite specimen with a gem clip

黄銅鉱と磁鉄鉱は、北九州市内にも産するところがある。国道から細い道をたどるとズリ捨て場があって、これらの金属鉱物が見られる。何度か参加者を連れて見学に行った。
59 砂鉄 相模國鎌倉郡極樂寺 (神奈川県鎌倉市極楽寺)
江ノ島電鉄(2006乗車)が少し内陸に入って走るところに「極楽寺」という駅がある。そのあたりから稲村ケ崎の西に向かって流れるのが極楽寺川で、河口付近の砂浜に砂鉄がたまっている。このころは川砂にも砂鉄がたまっていたのだろうか。鉱物は磁鉄鉱だから磁石に付く。昔は刀などの原料にしたという。北九州の若松海岸も砂鉄で真っ黒のところがあって、ここの鉄は茶道の「芦屋釜」の原料にされた。
60 赤鉄鉱 美濃國不破郡赤坂 (岐阜県大垣市赤坂)
金生山には、1968年まで赤鉄鉱を採集する鉱山があった。そのあたりの土は今でも赤い。おそらくこれが「赤坂」の名の元になったのだろう。赤鉄鉱の中では不純なもので、「代赭石」(たいしゃせき)と呼んだ。「赤鉄鉱」「褐鉄鉱」などの呼び名は、習慣に基づくので私にはよくわからない。
同じ石灰岩台地である秋吉台でも、石灰岩の風化土であるテラロッサ中に褐鉄鉱を産し、かつて鉄原料として採掘されたことさえある。


Fig. 37 秋吉台上で採集された褐鉄鉱 scale: 5cm
Limonite nodule from Akiyoshi, Yamaguchi Pref.

(つづく)

最後の蒸気機関車たち その47 1972年6月

2013年04月15日 | 最後の蒸気機関車
最後の蒸気機関車たち その47 1972年6月
The last steam locomotives in Japan. No. 47 (June 1972)


6月には草津線にむかった。目標は、田植え直後の水田の向こうを走る機関車の撮影。


246N 草津線甲南・貴生川間 1972.6 D51 + C58-66(後補機) 788列車
246-247: Kusatsu line, between Konan and Kibukawa Stations, Shiga Pref.


247N 草津線甲南・貴生川間 1972.6 D51 + C58-66(後補機) 788列車

撮影中に後に補機が付いているのに気がついてあわてて撮った。


248 草津線貴生川・三雲間 1972.6 D51
 臨時団体列車
248-250: Kusatsu line, west of Kibukawa Station, Shiga Pref.

撮影場所は、貴生川駅から500mほど西に行った杣川の鉄橋である。


249N 草津線貴生川・三雲間 1972.6 D51-934 790列車


250N 草津線貴生川・三雲間 1972.6 D51-885 6785列車

どれも天候にめぐまれず、写真が荒い。
ここに登場したD51の廃車状況は次の通り。D51-934:1973年9月、 D51-885 (前出、埼玉県で保管):1973年11月、それぞれ廃車。

登場蒸機 D51(写真246~250)C58(写真246・247)

2020.6.13 写真を入れ替えた。番号の後に「N」が付いているのが改善した写真。

Trivial database of a retired curator, OK.

古い鉱物標本(その12)

2013年04月11日 | 鉱物・化石組標本
古い鉱物標本(その12)
An old set of mineral specimens: part 12


Fig. 32 標本51-55 scale: 5cm
Specimen 51-55: calcite

51 石墨 越中婦負郡高清水 (富山県富山市高清水)
飛騨変成岩中に多くの黒煙鉱床があって、その一つが高清水鉱山として採掘されていたという。富山市山田高清水は、高岡市から南に20kmほどの山間部にある。
52 金剛石模型 (ブリリアント型)
ダイアモンドが組標本に入っているとは!もちろんガラス製の模型で実物というわけにはいかない。模型は出来が悪く、明らかに面の数が足りない。博物館のショップにこれよりはずっと良くできた模型があったので、購入した。径4cmあるから、実物でこの大きさだとだいぶん高価である。ブリリアントカットは、上面に来た光を反射して返すようにできている。屈折率で方向が変わるから、ガラスでそれを再現することはできない。


Fig. 33 ダイアモンド模型 scale: 2cm
Glass model.

53 琥珀 陸中國九戸郡大川目 (岩手県久慈市大川目)
久慈は日本でもっとも琥珀を多く産するところ。琥珀の博物館もある。1986年2月にO氏のご案内で久慈の白亜紀層を見学した。その時にも海岸の崖に多くの琥珀が入っているのを見た。久慈産の大きな琥珀塊が、市指定の天然記念物になっている。琥珀を野外で初めて見たのは1969年3月。宇部の海岸で見かけ、少し採集した。宇部では後に丘陵地の造成でたくさん産するところを見つけた。瑞浪の釜戸の琥珀(1973年頃)も思い出深い。中央道の建設に伴って大量のコハクが産出した。持ち帰ったものを削ったら中に昆虫が入っていて興奮した。すでにその報告文があったのだが知らなかった。瑞浪市化石博物館の建設直前で、コハクの産出によって展示計画が変更されたほどである。いろどりの少ない化石展示に華やかな色を加えることになった。


Fig. 34 瑞浪市釜戸産琥珀。1973年3月採集 scale: 5cm
Amber from Kamado, Mizunami City, March 1973.

54 硫黄 信濃國八ケ嶽 (長野県八ケ岳)
八ケ岳のいくつかの山には火山活動がある。その噴気から硫黄を産する場所もある。硫黄岳の爆裂火口の中にある本沢温泉ではかつて硫黄を採集する鉱山があった。硫黄鉱山は全国にあってゴムの加硫などのために硫黄を産出していた。現在は原油の精製時に硫黄を除くので、副産物として硫黄ができるのを使う。それで、硫黄鉱山はすべて閉山した。外国には、火山ガスから採集する硫黄鉱山がまだあるそうだが。
火山ガスから硫黄ができているところを初めて見たのは、1968年7月、雲仙小浜温泉だった。
55 輝石 肥前國西松浦郡西ケ嶽 (佐賀県伊万里市西ケ岳)
西ケ岳の輝石は、風化した玄武岩中にあるもので、採集しやすいのは分離して川の砂の中に入っているもの。結晶形がよく判るので昔から有名である。標本は管瓶に6個の2~3mmの結晶が入っているもの。
(つづく)