1876年 Monoclonius
記載論文は次のもの
⚪︎ Cope, Edward Drinker, 1876. Descriptions of some vertebrate remains from the Fort Union Beds of Montana. Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia, vol. 28: 248-261. (Montana州のFort Union層からのいくつかの脊椎動物化石の記載)
論文は前書きもなく各種類の記載で始まる。記載されているのは次の種類。種名の後のカッコに入れたのは、私が記した注釈。なにしろ聞いたことのない学名が多かったから。
Aublysodon lateralis, sp. nov. (Aublysodon Leidy, 1868. coelurosaur)
Laelaps inerassatus, sp. nov. (Laelaps Cope, 1866. coerulosaur. この属名はダニ類に先取されていたので、現在はDryptosaurus 属を用いる。)
Laelaps explanatus, sp. nov.
Laelaps faleulus, sp. nov.
Dysganus encaustus, gen. et sp. nov.(以下の4種は「the Dinosauria」ではCeratopsidaeの表で疑わしい種に入れられている。)
Dysganus haydenianus, sp. nov.
Dysganus bicarinatus, sp. nov.
Dysganus peiganus, sp. nov.
Diclonius pantagonus, gen. et sp. nov. (以下の3種は「the Dinosauria」ではHadrosauridaeの表で疑わしい種に入れられている。)
Diclonius perangulatus, sp. nov.
Diclonius calamarius, sp. nov.
Monoclonius crassus, gen. et sp. nov. (Ceratopsidae)
Paronychodon lacustris, gen. et sp. nov. (coelurosaur)
Polythorax missuriensis, gen. et sp. nov. (Chelonia)
Hedronchus sternbergii, gen. et sp. nov. (chimaera)
Ceratodus eruciferus, sp. nov. (Dipnoi)
Ceratodus hieroglyphus, sp. nov.
Myledaphus bipartitus, gen. et sp. nov. (shark)
たった14ページの論文に、7属18新種を提唱しているのだ。しかも図版はない。正直に言うと聞いたことがある属名はAublysodon, Diclonius, Monoclonius, Ceratodus ぐらいか。種小名はすべて知らない。調べてみると知らなくてもいいかな、と思う種が多い。
332 Cope, 1876 Monoclonius記載の最初の部分(p. 255下端と256上端)
ここの主題であるMonoclonius 属について次の論文がある。
⚪︎ Dodson, Peter, 1990. On the Status of the ceratopsid Monoclonius and Centrosaurus. In: Carpenter, K. and Currie, P. J., (edits.), Dinosaur Systematics. Cambridge University Press. Cambridge, 231-243. (未入手)
この論文でDodsonは、Copeが記載した標本を調べ直して、不完全で十分な特徴があるとは言えないとして、この属を疑問属とした。したがって現在はほとんど使われない。
Edward Drinker Cope (1840-1897) はアメリカの古生物学者。
以上の調べから次のデータが今のところもっともらしい。
Monoclonius Cope, 1876. 模式種: M. crassus Cope, 1876. ただしDodson, 1990 によれば属種ともに疑問ありという。
産出地 Fort Union層 Montana州 アメリカ
1877年 Camarasaurus
Camarasaurusを記載した論文は次のもの。
⚪︎ Cope, Edward Drinker, 1877. On a gigantic saurian from the Dakota epoch of Colorado. Paleontological Bulletin. No. 25: 5-10. (ColoradoのDakota時代からの巨大な爬虫類) 1877.8.23
まず、このジャーナルから調べてみよう。インターネットにデジタル化したものが掲載してあって、読むことができる。No. 1(1873) からNo. 39 (1884)まで(全694ページ・表紙や中間の白紙を含む)が収録されている。No. 25のジャーナル名は上記の通り「Paleontological Bulletin」なのだが、No. 1の題は「Palaeontological Bulletins」と二か所も違う。なお、Palaeontoのaeは連字「æ」である。しかし最初にある目次に当たるところでは「Palaeontological Bulletin」と単数になる。No. 21(1876)からは連字がなくなってeになる。(No. 30/1878で一冊だけaeに戻る)さらにNo. 32が重複するなど、突っ込みどころが多い。このことについては、「古典的恐竜」の最後でもう一度整理する予定。
333 Palæontological Bulletins, Nos. 1-13. Title page
「Palaeontological Bulletin」のほとんどの論文に図はなく、No. 32あたり以降に数枚あるだけである。恐竜の図はない。
334 Cope, 1881. Plate 6. Dimetrodon incisivus 脊椎など
上の図は、Paleontological Bulletin, No. 32.のもの。そのように文献を記すと、次のようになる。
⚪︎ Cope, Edward Drinker, 1881. Second Contribution to the History of the Vertebrata of the Permian Formation of Texas. (Figures). Paleontological Bulletin, No. 32: 1-22. Plates 1-6. (Texas州のペルム紀層の脊椎動物史への二番目の寄与)
しかし、実際にはこの図はCopeの他の論文の再録。その論文は次のもの。
⚪︎ Cope, Edward Drinker, 1880. Second Contribution to the History of the Vertebrata of the Permian Formation of Texas. Proceedings of the American Philosophical Society, Vol. 19, No. 107: 38-58, Plates 1-6. (同上)
形としては、1880年5月7日に開催された学会講演の記録である。引用の時にもとの論文を見ないと、年号が違う上に、テキストを読んでいないことになる。また、本文だけでなくFigs.の説明も不完全である。