OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

今年の桜(臨時投稿)

2023年03月31日 | 今日このごろ

 いつもの喫茶店まで往復する散歩道では、500メートルほどの川沿いで最大数人とすれ違う。寒い時期には誰とも会わないこともあった。しかし、ここ数日は100人以上の花見の方と一緒に歩く。満開が近づいた頃にやや寒い日があったせいか、遅れているように感じた。
 3月27日(月)

1 満開にはあと一歩 2023.3.27 徳力第2公園付近

 3月28日(火)

2 樹によっては満開 2023.3.28 徳力第2公園付近

 志井川の今年の桜は、開く時期にバラツキがあった。左の(西側の)桜はまだ5分咲き程度。右側は満開に近い。

3 この樹はもう少し 2023.3.28 徳力第2公園南

 3月29日(水)

4 菜の花も満開 2023.3.29 徳力第2公園

5 散り初めの樹も 2023.3.29 徳力第2公園

 人出が多い。喫茶店もすぐに席が取れない。花見客の中には外国のグループが目立つ。韓国とブラジルかな。こんな無名の場所をよく探したものだ。
3月30日(木)

6 満開 2023.3.30 志徳団地南

 この日は帰り道を変更して、2km南の志井小学校近くまで歩いた。満開の樹が多い。

7 桜並木南端の桜 2023.3.30 志井小学校近く

 このブログで、私が「満開」と認定?した日付は、2019年3月31日、2020年3月31日、2021年3月26日、昨年は3月30日。これらの日付は、TVで言っていた小倉の満開よりも数日遅い傾向がある。かなり揃っていて、今年が遅いわけではない。この後も一週間ほど桜吹雪や花筏の楽しみがある。
 家からかなり遠くまで来てしまったから、バスを利用しようと思っていたが、志井小学校の前まで来たところで目の前を通過してしまった。次は30分後だから待ちきれず、結局バス通りを歩いた。

2023年4月のカレンダー

2023年03月29日 | 今日このごろ

4月 “Zeuglodon”  =Agorophius pygmaeus (Müller)(歯鯨類)
文献:Tuomey, Michael 1847. Discovery of the Cranium of the Zeuglodon. The American Journal fo Sience and Arts, Ser. 2, vol. 4: 283-285. (Zeuglodon頭蓋の発見)
 この論文は原鯨類の頭部が発見されたとするもので、この年に口頭で発表された報告を文章にしたものである。翌年にこのスピーチの内容が別のジャーナルに掲載されているが、順序が逆になったのは印刷の都合であろう。
関係文献:Tuomey, Michael 1848. Notice of the discovery of a Cranium of the Zeuglodon. Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia. Vol. 3:151-153. (Zeuglodon頭蓋の発見の情報)
 この時代には、平たくて前後に複数の副咬頭が並ぶ頬歯を持つクジラ類は、Owenの Zeuglodonとされることが多かった。Müller 1849は、この標本が原鯨類として小さいことを重視してZeuglodon pygmaeusと命名した。「pygmaeus」は小さいという意味。

Müller 1849. Tab. 23. (一部) Zeuglodon pygmaeus頭蓋。歯の図は他の産地のもの。

 この標本は脳函部と前頭部をつなぐ部分が短いことなどから、原鯨類ではないことがわかる。Cope 1895は、この種を模式としてAgorophius属を創設した。この論文は中新世の鯨類に関するもので、Agorophius属の新属提示はホッキョククジラ属の文の中に短く出てくるにすぎない。原鯨類からヒゲ鯨類への中間的なものである可能性を指摘している。現在は分類上の位置は歯鯨類とされ、また地質年代も漸新世前期と考えられている。
 二つのスケッチともあまり出来が良くないので、1916年にDal Piazが示した標本写真を出しておこう。

Dal Piaz 1916. Tav. 1. (一部)Agorophius

 この図は写真だからやや分かりやすいが、暗いところが「つぶれて」いるので今ひとつ。二段目は歯。
 Michael Tuomey (1805-1857) は1840年代のSouth Carolina州とAlabama州で活躍した地質学者。
関係文献:Müller, Johannes Peter 1849. Über die fossilen Reste der Zeuglodonten von Nordamerica mit Rücksicht auf die europäischen Reste aus dieser Familie. Pp. 1-38, Taf. 1-27.(北アメリカのZeuglodon類の化石について、ヨーロッパのその科の化石に関連して)
Cope, E. D. 1895. Fourth Contribution to the Marine Fauna of the Miocene Period of the United States. Proceedings of the American Philosophical Society held at Philadelphia for promoting useful Knowledge. vol. 34: 135-154, plate. 6.(合衆国の中新世海性動物群への寄稿、その4)



四射サンゴの研磨

2023年03月25日 | 化石

 昨年池袋で入手した四射サンゴ化石の断面を見ることにした。標本はこれ。

1 「Horn Coral」モロッコ産 シルル紀? (再掲)白線は切断場所

 二個のサンゴ化石で、ラベルには次のように書いてある。「Horn Coral +400 MYO Silurian Age Atlas Mtns, Morocco」。Horn Coral というのは「角型のサンゴ」古生代は間違いないから、四射サンゴである。次のMYO(Million Years Old)4億年前、シルル紀というのは少し矛盾していて、4億年ならデボン紀で、4億1600万年前までならシルル紀。概数なのかな。産地のHigh Atlas というのはアトラス山脈の高いところという意味ではなく地質用語。モロッコは東西に走る4本の大きな断層帯が走っていて、北からRif, Middle Atlas, High Atlas, Anti Atlasという区分になっている。High Atlasの中で、古生代の地層があるのは大西洋から少し入ったあたり。この辺りの古生代サンゴ類の論文は見つけられなかったので、属名などの候補はない。切ったのは左の標本。

2 モロッコの地質(概略)
 凡例:国名SPスペイン・ALGアルジェリア 海 Med地中海 Atlantic大西洋 地質 下の三つは後ろのAtlasを省略 地名 CasカサブランカCouサメ化石産地のクーリブガ 大幅に簡略化してある。

 標本を入手したのは、断面を研磨してみようというわけ。外壁も失われているし、種名もわからない。というかあまり興味もない。石灰岩の研磨は学生時代によくやっていたから難しくはない。しかし、それは機械と材料が揃っているときの話で、家でやろうと思うと簡単ではない。博物館で切断だけでもしてもらおうかとも思ったが。カッターは一度使うとお掃除が必要だから忙しい学芸員の手を煩わせるのも...というわけで、自宅で切った。最初は金鋸で始めたが、進まないのでダイヤモンドのついた糸鋸を買ってきた。

3 標本のカット 持ちやすいようにクランプを付けている。

4 カットした標本 最後に残ったところが見える

 糸鋸を使うと、カット面が平面にならない。そうなると次の段階で手間がかかるからできるだけ平面になるように。まず荒砥で平面を作り、中砥で面を細かくする、さらに細砥で磨いた後クレンザーで仕上げる。研究室ならターンテーブルを使ってすぐできるが、手作業ではめんどう。それに油断すると研磨面が丸くなってしまう。

5 砥石で磨いたところ。ほとんど何も見えない。

6 研磨面写真 少し見えてきた。

7 研磨面をスキャンして画像処理

 なんとか見られるくらいにはなったが不満。その原因は二つあって、研磨が十分でないことと、化石がかなり結晶化していること。どっちにしても種類はわからない。中軸構造はよくわからないが、もう一つの標本の風化面ではなさそう。ないのなら石炭紀以降の可能性は低くなる。こういう黒い石灰岩は、日本ならデボン紀が多くて、シルル紀のはもう少し明るい色の石灰岩が多いのだが、それがモロッコに通用するとは思えない。最初の写真でも結晶化が進んでいることはわかるのだから、化石の入手の段階で選択ミスがあった。今年末の化石ショーで細チャレンジしようかな。

記念切手の発売(臨時投稿)

2023年03月23日 | 今日このごろ
 縁のあるデザインの記念切手が発売された。
 喫茶店で新聞を見ていたら、「北九州市政60周年記念切手シート」というのが3日前に発行されたという記事があった。小さな写真が付いているが、そのひとつが博物館のように見えたので、確信はないが郵便局に探しに行った。
 最初に訪れたT郵便局は「それは発売すぐに売り切れました。」とつれない返事。そこで近くのS郵便局に回った。やはりここでも「販売は終わりました。」という。ところが、隣にいた局員さんが、「もし在庫がまだあるところがあったら行かれますか?」とおっしゃる。何か思い当たられるところがあるらしいので、お願いして電話で聞いていただいた。するとそこにはまだあるという。早速そのH郵便局に赴いた。この時点でデザインが私に縁の有るものかどうか分かっていないので、とりあえず1シートを予約しておいた。
 受け取ってみると、84円切手10枚をセットにしたシール切手である。テーマは次のもの。北九州市開庁式のモノクロ写真・(以下はカラー)門司港駅・旧折尾駅・スペースLABO・わっしょい百万夏まつり」・いのちのたび博物館・到津の森公園・洋上風力発電・若戸大橋・日本新三大夜景。思った通り博物館内部の写真があったので、手に入ってよかった。S郵便局の係員の方にお礼申し上げる。

 写真は、博物館の切手だけを拡大した。画像が荒く、アミが見えている。切手収集は何十年も前にやめた。最近の切手は格調も印刷技術も高くないので嫌いだ。とくに裏に粘着剤を付けたシール切手は、使用後の切手を水を付けても剥がれないし、大嫌い。十年後に粘着剤がどう劣化するのかも不安。今回のは周辺に目打ち風の凹凸を付けてあるのが、やや救いかもしれない。上の写真ではその目打ち風の線を画像処理で強調してある。
 ところで、このシートは1セット1,330円で購入した。84円切手10枚だからずいぶんボられた気がする。もう一つ気に入らないことがあって、(確認してないが)新聞記事では「1,000枚を発売」となっていた。これが本当なら異常に少ないという気がするのだがどうだろうか。3月20日発売。私が買ったのは3日目だが、2日目は祝日だったから営業2日目。25日からネットでも販売を開始するという(これも確認してない)。

古い本 その138 古典的論文 長頚竜類4

2023年03月21日 | 化石
 前回Muraenosaurus について短く書いたが、著者Seeleyは、同じ雑誌の後の方のページに三つの属を記載した。論文は下記のもの。 
⚪︎ Seeley, Harry Govier 1874. Note on some of the Generic Modifications of the Plesiosaurian Pectoral Arch. Quarterly Journal of the Geological Society of London. Vol. 30: 436-449.(長頚竜類の肩帯のいくつかの属ごとの変異について)
 文中にPlesiosaurus, Eretmosaurus (n.), Colymbosaurus (n.), Muraenosaurus, Rhomaleosaurus (n.), の5属の肩帯を比較している。属名の後に(n.)としてあるのは新属の意味。Muraenosaurusが新属ではないのは、同じ雑誌の前の方のページですでに新属としたのだから。幼いカメ類の腹甲との比較がされているが、要するに長頚竜類の肩帯の骨が、他の爬虫類の肩帯の各構成骨とどのように対応するかということ。この論文では以前にこれについて論じた何人かの「大御所たち」の図を紹介して比較している。Owen (Fig. 4), Huxley (Fig. 5), Conybeare (Fig. 6), Hawkins (Fig. 7), の図を書き直した上で、著者自身の図((Figs. 8-13)を示している。

 このように文中図がたくさんあるが、いずれも復元図で、化石実物の図はない。まず、Eretmosaurusの図。

512 Seeley, 1874. Fig. 9. Eretmosaurus 肩帯復元図

 こういう模式図的な図ではどうかな。注記があってLeocestershireのLias層の標本では「肩帯構成骨は保存が悪いので、これに関する解釈はあとで述べたい」としている。含まれている種については、「OwenがMonograph of Lias Plesiosaursで記したPl. rugosus」を挙げている。年号が書いてないが、おそらく次のもの。
⚪︎ Owen, Richard. 1865. Monograph of the Liassic Formations. Part 1. Sauropterygia. Palaeontgraphical Society, Monograph vol. 17: 1-40, Tabs. 1-16. (Lias層の鰭竜類モノグラフ)
 確かにその34ページにPlesiosaurus rugosus Owenという見出しがある。
 一方、WikipediaではPlseiosaurus rugosusの記載論文として次の文献を挙げている。
⚪︎ Owen, Richard. 1840. Report on British fossil reptiles. Report of the Ninth Meeting of the British Association for the Advancement of Science, Reports on the Researches in Science: 43-126.(イギリスの化石爬虫類の報告)
 この中にも確かにPlseiosaurus rugosusが出てくる。全部で84ページの長い論文で、43ページから開始され、すぐに(45ページ)Part 1, Enaliosauria(Plesiosauria + Ichthyosauriaにあたる)が開始される。時代的に当然Plesiosaurius Ichthyosaurusしか出てこない。この群の特徴が説明され、クジラ類との形態的な類似が言及されている。文中でPlesiosaurの複数形としてPlesiosauriがでてくるのが面白い。57ページからPlesiosaurus属に含まれる種類の話に入る。出てくるのは P. Hawkinsii (p. 57), P. dolichodeirus (p. 60), P. macrocephalus Conybeare (p. 62), P. brachycephalus (p. 69), P. macromus (p. 72), P. pachyomus (p. 74), P. arcuatus (p. 75), P. subtrigonus (p. 77), P. trigonus, Cuv. (?) (p. 78), P. brachyspondylus Conybeare (p. 78), P. costatus (p. 80), P. doedicomus (p. 81), P. rugosus (p. 82), P. grandis (p. 83), P. trochanterus (p. 85), P. affinis (p. 86), で、このぺージからIchthyosaurusに進む。つまり16種を記録しているのだが、1種類がCuvierの, 2種類がConybeareの記載、残りがOwen自身の記載だという。この論文をそれぞれの初出論文だとしていいのだろう。余談だが、Plesiosaurus rugosus はSeeleyが新属Eretmosaurusを作って、Eretmosaurus rugosus (Owen)となったが、1994年に標本が不備であるとしてneotypeを指定された。
⚪︎ Brown, David S. and Nathalie Bardet. 1994. "Plesiosaurus rugosus Owen, 1840 (currently Eretmosaurus rugosus; Reptilia, Plesiosauria): proposed designation of a neotype." Bulletin of Zoological Nomenclature 51.3 (1994): 247-249.(未入手)

次はColymbosaurusの図。

513 Seeley, 1874. Fig. 12. Colymbosaurus 肩帯復元図

 Eretmosaurusよりはずっとマシだ。次は前の論文で新属としたが、図のなかったMuraenosaurus

514 Seeley, 1874. Fig. 13. Muraenosaurus 肩帯復元図

 Seeley, 1874で新属とされたうち残るRhomaleosaurusの図はない。この属の模式種は、1863年にPlesiosaurus cramptoniとして記載されていた種類。その論文は次のもの。
⚪︎ Carte, Alexander and W. H. Bailey, 1863. Description of a new species of Plesiosaurus, from the Lias, near Whitby, Yorkshire. With plates. The Journal of the Royal Dublin Society , Vol. IV, pp. 160-170, pls.?.(YorkshireのWhitby周辺のLias層からの新種Plesiosaurusの記載)(未入手)
 Dublin(アイルランド)のジャーナルであるが、産出地はイギリスの北海側の中央部付近である。非常によく揃った標本らしく、レプリカのスケッチがある。

515 Plesiosaurus cramptoni標本のレプリカ(Henry Ward’sのカタログ 1866から)

 上の図は次の論文にある。
⚪︎ Davidson, Jane, P. 2005. Henry A. Ward, "Catalogue of Casts of Fossils" (1866) and the Artistic Influence of Benjamin Waterhouse Hawkins on Ward. Transactions of the Kansas Academy of Science, vol. 108, nos. 3/4: 138-148. (1866年の「化石レプリカカタログ」とBenjamin Waterhouse Hawkinsが与えた芸術への影響)(未入手)
 1851年の大博覧会で、ロンドンの水晶宮に恐竜のモデルを展示した話は有名だが、その後Benjamin Waterhouse Hawkins(1807−1894)作のコンクリート製の化石レプリカを置いたらしい。詳しいことはここの本題から離れるので興味ある方はお調べを。
 元に戻って、1874年にSeeleyは中生代海生爬虫類などに関する論文を連発した。まず、Muraenosaurusの記載、二番目がここに挙げたGeneric Modification、そのあとワニの脊椎骨に関するもの、魚竜Ophtalmosaurusの記載、そして鳥類のMegalornis記載である。残念ながらこの最後の3つは前に記したように図書館の原本に欠けているところがあって入手できなかったが、目次に掲載してあるのは確認した。いずれも発行日時は1874年2月1日である。アクセス料金をかければ入手可能と思われるが、今回はしない方針。まとめておこう。

Muraenosaurus Seeley, 1874a 模式種:Muraenosaurus Leedsii, Seeley, 1874a
産出地 Huntingdonshire イギリス Jurassic
Eretmosaurus Seeley, 1874b模式種:Eretmosaurus rugosus (Owen, 1840) = Plesiosaurus rugosus Owen
産出地 Leicestershire イギリス Jurassic
Colymbosaurus Seeley, 1874b模式種:Colymbosaurus megadeirus (Seeley, 1869) = Plesiosaurus megadeirus Seeley
産出地 Oxford Clay, イギリス Jurassic
Rhomaleosaurus Seeley, 1874b模式種:Rhomaleosaurus cramptoni (Carte et Bailey, 1863) = Plesiosaurus cramptoni Carte et Bailey
産出地 Kettleness, near Whitby イギリス Jurassic