OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

西九州新幹線に乗ってきました 2

2022年11月30日 | 旅行

 「リレーかもめ」から新幹線の「かもめ」への乗り換えはスムーズに進んだ。この日の指定席は、同一号車の同一席が指定されていたから問題はなかった。この「リレー」の乗り継ぎ方法は、前の九州新幹線の新八代の乗り継ぎとよく似ている。違う点は、在来線側の特急が一種類で、すべて新八代終着・始発であること。西九州新幹線では、在来線の佐世保方面へ向かう特急に幾つかのタイプがあるために、号車・座席を完全に一致させられない。

6 武雄温泉駅 2022.11.21

 写真の右が「リレーかもめ21」、左が「かもめ21」。短時間の乗り換えで、鉄道好きにとっては列車先頭の写真も撮れず残念。
 私の場合にはこの日の下りでは同じ番号の座席だったが、上りでは新幹線部分が2号車10番D席、在来線側が3号車11番D席だった。車両番号が一つずれるが、停車位置の関係でほぼ対応する場所に停車していた。座席番号もずれている。まあそれほどの問題ではない。
 では、私の場合新幹線の部分開通でどのくらい時間短縮ができたのだろうか? 今回の旅行では、乗り換え時間を入れないで、往復とも137分(2時間17分)乗車していた。開通前の時刻表では、同じソニックに乗って博多乗り継ぎで、乗車時間160分(2時間40分)、23分の短縮である。もともとそんなに時間がかかる路線ではないから、短縮の比率はある程度大きいが短縮時間はあまり長くない。
 途中の新駅は嬉野温泉と新大村。新大村駅は大村線に接続新駅が設置された。長崎空港から近い。諫早駅は在来線と平行に新幹線ホームがある。

7 嬉野温泉駅 2022.11.21

8 新大村駅 2022.11.21

 列車は揺れが少なくて快適だ。乗車時間は30分程と、短い。ほぼ満席で、外国人も多い。新線だから、写真を撮る人も多い。中には走行中スマホを窓に押し当てて動画を撮っている外人もいた。車窓からの景色は、あまり見所がない。しかもトンネルが多い。今回は新線乗車だから、行きも帰りも左側の窓側の席を選んだが写真を撮るものがない。左側(東側)は逆光となる。

9 武雄温泉発車すぐの御船山 2022.11.21

 諫早近くで、遠くに雲仙岳が見える。

10 雲に隠れた雲仙岳(右遠景)2022.11.21

 諫早からは在来線から離れて東の山の中を通り、やはりトンネルがいくつか続く。長崎駅に到着。

11 かもめ車内 長崎駅で 2022.11.21

12 到着した「かもめ21号」2022.11.21

 先頭車付近のホームには多くの乗客がカメラやスマホを構えている。開通から2か月、まだまだ人気が高い。

西九州新幹線に乗ってきました 1

2022年11月25日 | 旅行

 9月23日に開業した西九州新幹線、武雄温泉から長崎まで69.6kmに乗ってきた。久しぶりの距離の長い新線の乗車である。この前のちゃんとした距離の新線乗車は、2017年5月の北海道新幹線乗車で、乗った距離は長かったが新線部分は38.5kmの新青森から奥津軽までと35.0kmの木古内から函館北斗まで(トンネル部分は既に乗ったという扱い)。それ以来5年ぶりである。
 旅行には小倉発の長崎へのパック旅行を使った。旅行補助の対象になるはずなのだが、「枠がない」との理由で断られた。誇大宣伝という他にない。内容は宿泊と在来線部分・新幹線部分の指定席特急券・乗車券である。北九州から西に向かうと、小倉・博多間を新幹線に乗る切符は買いにくい。理由はこの間の山陽新幹線がJR西日本だから、というのだ。客の要望は気にしないのだろうか。旅行社さんに山陽新幹線・鹿児島本線特急の切符をお願いしても「同時には扱えない」とされたことがある。だから新幹線からの乗り継ぎ特急料金の割引も使えないに等しい。西九州新幹線が九州新幹線と繋がったときには一体どうするのだろう? いつになるかは分からないが。それはともかく新線が営業を開始した以上、乗ってみよう。混雑するのはきらいだから、開業して2か月ほど経ったのを見計らって行ってきた。
 まず10時過ぎのソニックに乗って博多へ。日豊線で大分から来て、小倉でスイッチバックする特急である。

1 「ソニック14」小倉駅入線 2022.11.21

 小倉で降りる人も多いから、座席の方向転換で停車中の通路は混乱する。この日もみなさん手間取っていた。座席の通路側にあるペダルを踏んで回すのだが、客室端にある一人がけの席の転換だけは座席の前面にレバーがある。降りるときにリクライニングを戻さない人もいるし。混乱が収まるのは発車後だいぶん経ってから。
 この特急で博多乗り換えのとき、いつも緊張するのは、「リレーかもめ」などの発車までに数分しかないこと。今回の博多乗り換えは4分。いつも別ホームへの移動が必要だからあまり余裕はない。
 博多からの「リレーかもめ」に乗車。車内は思ったよりも空いている。指定席だから関係はない。

2 博多駅で見かけた「或る列車」 2022.11.21

 私はこういう特別な列車には興味がないが、見かけたので撮っておいた。
 博多から武雄温泉までは1時間3分。もしも山陽新幹線・九州新幹線の「さくら」で小倉から来ると、小倉発を15分ほど遅らせて新鳥栖で乗り継ぐことができる。それも乗り換え時間は25分もある。やはり途中在来線でつなぐということには無理がある。西九州新幹線が開通する直前の9月の時刻表では、博多で在来線同士の乗り換えで、長崎到着は今回の経路と比較して23分ほど遅かったに過ぎない。

3 新鳥栖駅 長崎本線は九州新幹線の下をくぐる 2022.11.21

 長崎本線と佐世保線が分岐する肥前山口駅は、この機会に「江北」駅に改名した。

4 江北駅(旧・肥前山口駅)2022.11.21

 別れていく長崎本線は単線。

5 江北駅を出たところの長崎本線踏切 2022.11.21

 しかもこの先では古い火山の多良岳の縁の曲がりくねった海岸線を忠実にたどるから無駄な時間を費やしていた。各駅間を直線的に複線でつなげば、今度の程度の時間短縮はできるのではないか。
 武雄温泉駅に到着。ホームの反対側に西九州新幹線の「かもめ」が待っている。

古い本 その131 古典的論文 翼竜類9

2022年11月21日 | 化石

 Pteranodonの論文が刊行されたのは1876年の6月だが、同じ年の12月に次の論文が発行された。
⚪︎ Marsh, Othniel Charles, 1876. Principal characters of American pterodactyls. American Journal of Science and Arts, Series 3 vol. 11: 479-480.(アメリカのPterodactyleの主要な特徴)(前出)

 論文はNyctosaurusについて13行ほどの短いもので、図もない。肩甲骨と烏口骨の癒合が弱い点が、Pteranodonと異なるという。この部分は他の脊椎動物では脊椎骨との接続が弱いが、翼竜類では翼との関係でがっしりと接続しているから、特徴としては適切な意味を持つ。

483 Eaton, 1910. Plate 18. Pteranodon sp. 癒合した左肩甲骨と烏口骨(前から)

 前の論文で書いたPteranodon gracilis Marshを模式種に指定して新属Nyctosaurusを設定した。

Nyctosaurus Marsh, 1876. 模式種:Pteranodon gracilis Marsh = Nyctosaurus gracilis (Marsh, 1876)
産出地 Kansas州西部 アメリカ

 次の属Cretornisは、この時代の翼竜では珍しくチェコ産。文献は次のもの。
⚪︎ Frič, Antonin, 1880, Ueber die Entdeckung von Vogelresten in der böhm. Kreideformation. Sitzungsberichte der königlichen-böhmischen Gesellschaft der Wissenschaften in Prag 1880: 275–276.(ボヘミアの白亜紀層の鳥類化石の発見について)
 名前の通り、この時点では鳥類の化石と考えられていた。
 Antonin Frič(=Fritsch)(1832-1913)はチェコの地質学者・古生物学者で、のちにプラハの国立博物館の館長を務めた。
 化石の産出地はプラハの100kmほど東にあるChocné近郊と思われる。この時代の白亜紀脊椎動物の研究はドイツ・イギリス・アメリカのものがほとんどであった。産出したのは烏口骨で、ガチョウに似ているとしてあり、長さ75mmで、顕微鏡的な骨構造がちゃんと残っていること、中空であることが書いてあるが形態的な記載はほとんどない。FričはMarshの研究を知っていて、それと比較した。文献に写真はない。
 種名は、化石コレクターで薬剤師のPotheker Hlaváč博士の名をとって、Cretornis Hlaváčiとつけられた。この化石が鳥ではなくて翼竜であることをFričはのちに知った。少なくとも1905年の著書発行の際には、翼竜類の項に含められている。
⚪︎ Fritsch, Antonin, 1905. Neue Reptilien aus der bömischen Kreideformation. In Fritsch, Antonin, und Bayer, Fr. Neue Fische und Reptilien aus der Bömischen Kreideformation, II. 13-33, pp., Taf. 5-9.(ボヘミアの白亜紀層からの新種爬虫類)
 この論文ではFrič は、Fritschと自称している。Bayer, Fr.は、おそらくFrantišek Bayer(1854−1936)で、チェコの教師・古生物学者ほか。

484  Fritsch und Bayer, 1905 Cover.

 上の本のディジタルファイルは原本の色を出してはいるが、暗くて見づらいのでカラー情報をなくした上で調整した。
 本の前段には短い前書きの後、魚類(p. 3-11, Bayer)の項がBayerによって記されている。13ページからの爬虫類がFritschの著作。首長竜類(15-18)、カメ類(18・19)トカゲ類(20−29)恐竜(29・30)そしてOrnithosauria(30−33)が含まれる。
 Cretornis属は取り下げられ、Ornithocheirus Hlaváčiとして出てくる。Taf. 8にこの翼竜の図がある。

485  Fritsch, 1905 Cover. Ornithocheirus Hlaváči holotype(白地部分)

 この図版には別の種類も混じっているので、そこには網をかけた。この図にあるのは上段の左右が上腕骨、中央は尺骨の遠位部、下段は翼の構成骨である。あれ? 烏口骨は無いのかな? 
 現在、文字の上の記号は規約で除くことになっているから、Cretornis hlavaciとなる。2015年に標本が再記載されている。ここではCretornis属が復活している。もちろん、分類上の位置が変更されても、命名規約で属の有効性に変わりはないし、鳥類であることを意味する語尾も変更する必要はない。
⚪︎ Averianov, Alexander and Ekrt, Boris, 2015. Cretornis hlavaci Frič, 1881 from the Upper Cretaceous of Czech Republic (Pterosauria, Azhdarchoidea). Cretaceous Research, vol. 55: 164-175.(チェコの上部白亜系からのCretornis hlavaci Frič, 1881(翼竜類、Azhdarchoidea)
 そんなわけで、色々と不完全なデータしか探せなかった。

Cretornis, Frič, 1880(1881とする資料もある)模式種: Cretornis hlavaci Frič, 1880.
産出地 Chotzen チェコ

 次はLonchodectes、その論文は下記のもの。
⚪︎ Hooley, Reginald Walter, 1914. On the Ornithosaurian Genus Ornithocheirus, with a Review of the Specimens from the Cambridge Greensand in the Sedgwick Museum, Cambridge. Annals and Magazine of Natural History, including Zoology, Botany, and Geology, series 8, vol. 13: 529-557, Plate 22.(OrnithosaurianのOrnithocheirus属について、付・Sedgwick MuseumにあるCambridge Greensand の標本のレビュー)
 Seeleyが1870年に出版した「The Ornithosauria」は、断片的な標本からその属に25種もの種を考えたので、不評だったようだ。この論文はそれを見直すもの。例えばtype標本には下顎しかないのに、上顎の形態(この場合歯があるか無いか)を「確信している」といった判断で決めたりしているから。
 そこで、Hooleyは、SeeleyのOrnithocheirusを5つのGroupに分けた。
Group No. 1 (Seeleyの11種) Genus Ornithocheirus
Group No. 2 (Seeleyの6種) Genus Lonchodectes n.
Group No. 3 (Seeleyの3種) Genus Amblydectes n.
Group No. 4 (Seeleyの5種) Genus Criorhynchus n.
Group No. 5 (Seeleyのリストになし) Genus Ornithostoma Owen 1859
 これらの属も現在はあまり使われず、OrnithocheirusLonchodectesが残っているにすぎない。この分類に沿って、部分的な標本を体の部位ごとに比較している。Plate 12を伴うが、あまりにも部分的な話で、よくわからない。
 さきほどの各属に模式種が指定してあるものもある。Lonchodectes属の模式種は指定していないが、リストの最初に出てくるL. compressirostris (Owen) =Pterodactylus compressirostris Owen, 1851である。Owenの論文はちょっとややこしいし、ほかの項目にも関係してくるので、次回くわしく。

486 Owen, 1851. Pterodactylus compressirostrisの頭部復元と標本

 上の図はOwenの図版の中から2枚のFig.を取り出して並べ直したもの。標本のスケッチの方向に合わせるために、頭蓋の復元図は左右を反転してある。

 ここでLonchodectes属についてまとめておこう。
Lonchodectes, Hooley, 1914. 模式種:Lonchodectes compressirostris (Owen) =Pterodactylus compressirostris Owen, 1851
産出地 Cambridge Greensand層 イギリス

ツタに実るイチジク

2022年11月17日 | 今日このごろ

 行きつけの喫茶店FFの中庭に、イチジクのような実がたくさん落ちている。

たくさん落ちている実 2022.11.14

 見上げると、隣のコンクリートビルの窓のない高い壁に、つる性の植物がびっしりと付いていて、まだたくさん実がなっている。

外壁に付いた、つるに見られる実 2022.11.14

 喫茶店の常連の方から、「これは何というの?」と聞かれたが、当方は植物を知らないので、スマホで「つる性のイチジク」とか検索し、「オオイタビ」という種類であろうと考えた。しらんけど。

オオイタビ?の実 2022.1.13



 オオイタビFicus pumila (聞いたことのある属名だ)は、クワ科イチジク属の常緑つる性木。関東南部に自生し、植栽されることもあるという。これは熟していないが、熟して割れたものは食べられるという。熟していないのに、こんなに落ちていいのだろうか?
 つる性で、気根で岩やコンクリートに付く。喫茶店の庭でも、ずいぶん高いところまで壁が覆われていた。コンクリートが傷みそうだ。
 実を拾ってきて切ってみた。

切断したオオイタビの実 2022.11.14

 イチジクの仲間だから、内部に花がある。

内部 2022.11.14

 丸い方の中央に多分小さな穴があって、そこから漏斗状の空間が広がり、その中の広い空洞に開いている。内壁には花のもとになる赤いつぶつぶが見える。上の穴から受粉をさせる昆虫が入ってくるのだろうか。

 ところで、ビワガイという巻貝がある。

ビワガイ 2011.2.2採集 小倉北区馬島

 この種類の学名はFicus subintermedia (Sowerby) 、何とイチジクと同じ属名である。オオイタビを調べた時に、聞いたことがある学名だと思ったのはこれだったのだ。植物と動物が同じ属名を使うのは規約上問題がない。他にもツツジの仲間のアセビ属とモンシロチョウなどのシロチョウ属がPierisという属名を共有するという例が有名。スジグロシロチョウの仲間で、Pieris japonicaが記載されたことがある。これはアセビPieris japonica と全く同じであったが、後にチョウの方はシノニムとして消えたという。

ビワガイ 藍島

 ビワガイは、こんな方向から写真を撮れば、イチジクに似ている。イチジクの英名はfig だそうだから(知らなかった)、学名もそれに由来するのだろう。和名がビワ(これも果物だが、楽器の琵琶とはどちらが先か?)に由来するのは間違いようがない。
 話を戻して、オオイタビの内部を見るために切断したら、切断面から粘性の強い液体が出て、ナイフに付着してなかなか取れなかった。イチジクも未成熟の実を切ると乳白色の粘っこい液が出る。オオイタビの実からかなり強い香りが出て、指に残った。決して悪い臭いではなく、シナモンにやや似た香りだった。

古い本 その130 古典的論文 翼竜類8

2022年11月13日 | 化石

 翼竜類の中盤にさしかかったあたり。だんだん馴染みのない属になる。今回はCycnorhamphus属。論文は次のものらしい。
⚪︎ Seeley, Harry Govier, 1870. The Ornithosauria: an elementary study of the bones of pterodactyles, Cambridge University Press, 135 pp. Plates 1-12.(Ornithosauria:プテロダクティル類の初歩的な研究)*

477  Seeley, 1870. Ornithosauria. Cover(一部)

 単行本で、Ornithocheirus属の標本を詳しく記載したもの。だからCycnorhamphus属はついでに記した程度なのだろうか。翼竜類の分類表を記しているがその中にCycnorhamphus属が出てくる。模式種もそこにはっきりと書いてあるのに、本文中では一貫して Pterodactylus suevicusの名前で記述している。検索してみたところ、8か所にこの名前で登場するが、Cycnorhamphus suevicusの組み合わせの学名は一度も現れない。

478 Seeley, 1870.  Cycnorhamphus属 p. 111.

 論文の主題はOrnithocheirus属についてのもので、25種!のこの属の種が出てくる。そのうち20種がSeeleyの命名だという。2013年に、Rodrigues and KellnerはOrnithocheirus complexとして、この類の分類を再検討した(下記論文)が、その中にはSeeleyの挙げた25種のうち22種が取り上げられている。そのうち11種が有効とみなしたが、残りの11種は特徴がはっきりしないなどで疑わしい種とした。
⚪︎ Rodrigues, Taissa and Alexander Wilhelm Armin Kellner, 2013 Taxonomic review of the Ornithocheirus complex (Pterosauria) from the Cretaceous of England. Zookeys, 2013: (308): 1-112. (イギリスの白亜系からのOrnithocheirus complexの命名学的レビュー)
 Seeley, 1870 は、この時代の論文には珍しく、文末に主な論文のリストがある。文献リストは何とその図書がCambridge University Libraryのどこの棚にあるかが書いてある。現在もこの所在表を使うことができるのだろうか? 標本についてもCase・Comp.・Tablet ・Specimenの記号・番号が見出しの左に記してある。記述は標本ごとで、ギリシャ数字のIからXXVまである。すべてOrnithocheirus属の標本である。図版も12枚あるがこの属の標本だけ。
 * インターネットで簡単に見ることができるのは「Gutenberg EBook」というプロジェクトで打ち直したデータである。
 模式種はQuenstedtが1855年に書いたPterodactylus suevicusである。その論文は次のもの。
⚪︎ Quenstedt, Friedrich. August., 1856. Der Weise Jura. In “Sonst und Jetzt. Pterodactyl Sonst und Jetzt. "(地質学の一般向けの講義:白ジュラ層)
 Friedrich August Quenstedt (1809−1889)はドイツの地質学・古生物学者。この本は、一般向けの教科書で、インターネットで見ることができるが、ひげ文字で、非常に読みづらい。

479 Quenstedt, 1856. P. 131. 一部

 上の挿図は、ワニ類のDakosaurus maximusの歯。文章は「ひげ文字」で読みづらい。翼竜類の復元図(下)があって、この種類がのちのCycnorhamphus属の模式種になった。

480 Quenstedt, 1856. P. 130. Pterodactylus Suevicus = Cycnorhamphus suevicus (Quenstedt)

Cycnorhamphus Seeley, 1870. 模式種:Cycnorhamphus suevicus (Quenstedt) =Pterodactylus suevicus Quenstedt, 1856
産出地 ドイツ

 次の属はColoborhynchusで、論文は次のもの。
⚪︎ Owen, Richard, 1874. Monograph on the fossil Reptilia of the Mesozoic formations. Part I. Pterosauria (Pterodactylus) [Gault –Lias]. Palaeontographical Society Monographs:1-14, Plates 1-2.(イギリスの中生界からの化石爬虫類のモノグラフ。Part I. Pterosauria)
 何種類かの翼竜類について記したもの。まず、表題の後の「Gault –Lias」について説明すると、Gault Formationはイギリスの白亜紀の地層で、比較的細粒の堆積物からなる。これに対してLias Groupは三畳紀からジュラ紀の地層で、代表的な泥岩層は青みを帯びている。論文に出てくる種類は、Goult層(白亜紀前期)からのPterodactylus Daviesii、Wealden(白亜紀前期)からのPterodactylus sagittirostrisColoborhynchus clavirostris、Kimmeridge Clay(ジュラ紀後期〜白亜紀前期)からのPterodactylus ManseliiPterodactylus Pleydellii、種未定のPterodactylus属のもの、Great Oolite)(ジュラ紀中期)層からのPterodactylus KiddiiPterodactylus DuncaniPterodactylus Aclandi、Lias層(ジュラ紀)からのPterodactylus Marderi、Dimorphodon Macronyx、の翼竜が登場する。OwenはSeeleyの記した多くの種類のOrnithocheirusには批判的で、鼻先の形状を重視してColoborhynchus属を創設した。ただし、のちにOwenが重んじた鼻先の標本は化石の磨耗によって現れた形態であろうとする意見が出てきた。論文には2枚の図版があって、1枚目にColoborhynchusが出てくる。

481 Owen, 1874. Plate 1(一部:配置を変更した)Coloborhynchus clavirostris Owen. 上顎の先端

 まとめておこう。
Coloborhynchus Owen, 1874. 模式種:Coloborhynchus clavirostris Owen, 1874
産出地:Cambridge, Upper Green Sand イギリス ジュラ紀

 次から二つの属は、Marshの提唱したものだから、論文探しは簡単だろう。まず、Pteranodonから。
⚪︎ Marsh, Othniel Charles, 1876. Notice of a new sub-order of a new Suborder of Pterosauria. American Journal of Science and Arts, Ser. 3, vol. 11: 508-509.(Pterosauriaの新亜目について)
 論文は、アメリカの大型翼竜の一群が、歯がないことなどの特徴が共通していて、新亜目Pteranodontiaをなすことを記している。そこで新属Pteranodonを提唱する。さらに種として、P. longiceps, P. ingens, P. gracilis, P. verox, P. comptusについて記している。論文には図がないから、のちにEaton(1910)が示した模式種の頭部の写真を示す。

482 Eaton, 1910, Plate 1. Pteranodon longiceps 頭部側面 holotype

 Eatonの論文については前に記した(古い本 その86)が、論文データを再録しておく。
Eaton, George F. 1910 Osteology of Pteranodon. Memoirs of the Connecticut Academy of Arts and Sciences, 2: 1-38, pls. 1-31.(翼竜の骨学)

Pteranodon Marsh, 1876. 模式種:Pteranodon longiceps Marsh, 1876.
産出地 Kansas州 アメリカ