OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

季節はずれの台風

2011年05月30日 | 今日このごろ
 昨日(29日)、台風2号が九州の南を通過した。北九州は少し風が強く、かなりの雨量だった。今日の天気予報は20%と回復しそうだったし、波浪予報も3mとたいしたことがなさそうなので、藍島に行ってみた。目的は漂着物と化石。
馬島をすぎると、うねりが強くて船は大揺れ、へさきからは船の高さを超える波しぶき。私は船に酔わないので平気だった。風はやや強く、この季節にしては寒かった。
藍島の「縦貫道」を通って北端千畳敷へ。漂着物は北端と南端に多い。北端の降り道から海岸を見下ろすと流れ着いた海藻でいっぱい。



興味深いものはなく、風化したヤシの実があったぐらい。腐ったアメフラシの中から、キチン質みたいな透明な薄い板が見えている。引きだすと半円形の軟らかいもので、先日(5月15日)の馬島で化石研参加者がとられたものと同じもの。その折は「たぶんアメフラシの殻にあたるもの。」と答えたが、それで良かったようだ。その日はタツナミガイの殻も採集されていたが、それは石灰化していて硬い。



流れ着いた海藻の海側に、うみそうめんが多い。昨日はそれほど荒れていなかったのだろうか。うみそうめんは、最初明るい黄色で、次第に赤くなり最後は薄茶色に変わっていくが、中にはずいぶん派手な色のもある。



化石を少し採集するが、たいしたものはない。ヤシの実をもう一つ。今度は風化していない。



ここを切り上げて、南端瀬崎に向かうが、瀬崎の「貝ベルト」も海藻で埋もれて貝拾いもほとんどできない。海岸植物におしゃれな蛾がいたので撮影。帰って調べるとブドウスカシクロバという種類らしい。



透明で黒い縁取りの翅とボディーのメタリックが特徴。植物の方は知らない。

帰途の船は波がおさまって熟睡。台風明けで渡船も混まなくて快適だった。

5月の投稿はこれでおしまい。11回の投稿で、12日からは三の倍数日に決めてみた。世界のナベアツとは関係ない。三日に一度というのはかなり多く、今後難しそうな気がする。まあ、できるところまで。

漂着搗き臼

2011年05月27日 | 変なもの


福井県の漂着物について、いつも興味深い記事が掲載される某ブログに、5月26日付けで、つき臼の漂着が記されている。
北九州でも臼が漂着していたのを見たので、報告しておこう。近い日付で二つの臼が漂着したのは偶然だろうか?



福井のものと比較してずいぶん風化が進んでいるが確かに臼の形をしている。高さは50センチぐらい。もとは六ないし八角柱のように見えるが確かではない。漂着場所は小倉北区の馬島北海岸で、4月28日に見て、横向きだったのを起してこの写真を撮った。5月15日に再訪したときにも同じ場所にあった。福井のと違って取っ手の彫り込みは見られない。木製であるが年輪ははっきりしないので南方のものだろう。ヤシ科のようにも見えるが専門でないので確かでない。当方は化石採集に訪れたので、もちろん持ち帰っていない。


大阪で入手した化石

2011年05月24日 | 化石
5月5日付けの本ブログに次の記事を記した。
>「マダガスカルの白亜紀の魚」という標本に気がついた。たぶんウミユリの萼部だと思ったのでその旨お店の人に告げた上で購入。<


この標本、帰宅してじっと観察した結果、お店の人のおっしゃる通り魚類化石ではないかと考え直した。理由は 1 ウミユリなら分岐があるはずだが見られない、 2 ウミユリの萼部と思われるところに規則性がない、 など。
そこで、シリコンラバーで型取りをしてみた。


シリコンラバー(パテタイプ)を等量取る。


指で錬って均質にする。


標本に押し付ける。約5分でプラスチック消しゴム(変な語!「消しプラ」とは言わない。)ぐらいの硬さになる。

この方法の良いところは道具が不要なこと。まわりも汚れることはない。すこしオイルが指に付くくらい。





でき上がった型は、化石の成分が溶けた後の空洞を充填するものなので、もとの生物のレプリカにあたる。この方が実物と凹凸が一致するので元の生物を考えやすい。左右側面の対称性もあるようだし、胸びれらしい条線もあって魚類らしい。背骨が見えないので普通の魚類化石とは違って見えるが、それは鱗が硬くて大きいので化石になって残っているため。ウミユリと思ったのは間違い。お店の人にも謝りたい。
さらにネットで検索を繰り返し、これの正体を推測した。その結果、これは南アフリカからマダガスカルに分布するカルー層の三畳紀前期の部分から産出するAustralosomus merlei だろうと考えた。体側の五列の硬い大きな鱗の列などが一致する。原始的な硬骨魚類の軟質魚類に属するので、現生でいえばチョウザメが最も近いことになる。フォリドプレウルス科に属する。ネット上の資料では「フォリドプレウス」(属)とか「フォリドプレウス科」となっているが、語源から言えば「フォリドプレウルス」および「フォリドプレウルス科」のほうがよいので、ここではこれを使う。原文は「Pholidopleurus」「Pholidopleuridae」。
カルー層(Karoo Supergroup)は石炭紀から三畳紀の淡水成層で、哺乳類様爬虫類(現在は爬虫類からはじき出された。そうすると名前が変。なんというのだろう。)などの産出が有名。マダガスカルにもカルー層が点々と分布するので「マダガスカルの白亜紀の魚類」というラベルの一部を信用すると、たぶん北部マダガスカルのAmbilobe というところのものだろう。名高い恐竜の産地 Mahajanga から400kmほど東北に行ったところ。


5月の馬島

2011年05月21日 | 化石
化石研究部会(自然史友の会)の例会に参加した(5月15日)。行き先は小倉北区の馬島。つい先日(4月28日)に行ったばかりであるが、その時は一人、今度は33人が集合した。
日曜日朝の馬島・藍渡船は時刻が早く、しかも満席が予想されるために早めに渡船場に到着。実際には満席には少し達しなかったようだ。
船着き場から北海岸に。化石を採集したり、学芸員の方の詳しい説明を聞きながら反時計回りに移動して北端に到着。ここは見事な生痕化石やクロスラミナの見られるところ。解説を聞いてから付近で化石を探すが私は見つけられない。やっと鳥類の化石一つを見つけたが、やはり一人の方が探しやすい。


生痕化石がいっぱい


ハンモック状クロスラミナ

さらに進んで船着き場に帰る。今日は不調だった。

先日の馬島の採集標本のクリーニングができたので、報告しよう。採集場所は馬島北岸。




オドンタスピスのクリーニング前と後。


ネガプリオンの標本の両側。スケールは1cm。

学校の太陽光発電

2011年05月18日 | 今日このごろ
学校の太陽光発電

天気のいい日は運動のために歩いている。おおよそ家から2.5kmほどまで、なるべく歩いたことのない道を選ぶ。1時間半以上をめやすに、時速4ないし5kmで歩くので、歩く日は6kmから10kmほどになる。
昨年11月に歩いていたとき、ある市立の小学校の校門の横のフェンスに、「太陽光発電設備校」という看板を見た。学校名と設置時期、設置位置の略図、最大発電量などが記してある。
学校は太陽光発電に適している。屋根を利用すれば発電パネルが広く置けること、電力需要がほぼ昼だけにあること、比較的一定の需要があること、音がしないことなど。さらに児童・生徒に対する教育的効果は大きな意味がある。それで、教育委員会も良いことをしていると思ったが……。気になったのは、発電量でその学校は最大3kWとなっていること。わが家の太陽光発電も同じ3kW。学校がこれと同じでいいのかな?
帰って、教育委員会のホームページを見ると、平成21年度までに北九州市内の市立小中学校79校に太陽光発電施設が設置されていることを知った。その内訳は、3kW(4校)4kW(2校)5kW(11校)10kW(61校)50kW(1校)となっている。平均9.3kWである(数字は最大発電量。日照や太陽の位置などの条件の揃ったときの発電量で、ずっと3kW発電できるわけではない。)。わが家も太陽光発電を持っているが3kWなので、学校発電は3倍くらい。4月になってから散歩で学校発電の看板を見かけると写真を残すことにした。ところが最初の5校で3kWが4校ある。小さな所だけをたまたま見たのだろうか?後にこの判断は間違っていたことが分かったが。
今春になって暖かくなったので散歩を再開した。何か目標があると歩きやすいので、家から半径2.5kmの円内にある13の市立小中学校を全部回ってみた。その結果が次表。順不同。同じ頭文字の学校もある。

学校名    発電量 設置年度 調査日 学級数
Y小学校     3    22   4.17   22
M小学校    10    22   4.17   31
T小学校     3    22   4.10   18
K小学校    10    22   4.15   16
O小学校     3    22   4.18   16
K小学校     3    22   4.09   31
S小学校     3    22   4.18   17
N小学校     3    22   4.18   15

K中学校    10    22   4.17   15
Y中学校    10    22   4.17   13
M中学校     3    22   4.17   16
S中学校     3    22   4.15   21
K中学校    10    22   4.15   14

おどろいたことに、すべての学校13校に太陽光発電設備があって、そのうち3kW(9校)10kW(4校)で、平均5.2kWである。誤解していたのは設置年度で、この地域はすべて22年度なので前述の教育委員会ホームページの統計には入っていない。だから3kWがいくつあっても矛盾はない。それにしても、家の近くでは22年度に小さな発電量の施設ばかり作ったということになる。








      
写真は13校の看板。O小学校を除いて上記の表の順。ただし最後の写真はO小学校看板で、ちょうど後に発電パネルがあったので1校だけ大きな写真を掲載した。
看板によると10kWの発電で14教室の照明電力にあたる(もちろん最大の時)と書いてある。そうすると上のリストの13校のうち、照明電力が足りることがあるのは2中学校のみとなる。3kWで足りるわけがない。最近は各教室にテレビ設備があるし、職員室の分や、ほかの電力も使うだろう。少なくとも20kWぐらいは要ると思う。そうすると現在のように校庭などの片隅に鉄柱を設けて設置するのはよくない。空いている屋根や屋上を使うほうが良さそうだ。
結論:学校の太陽光発電は教育的効果の面では大きな効果があり、多くの学校に設置されていることや、校門横にしっかりと解説してある点などが評価できるが、電力需要を満たすほどではないのが残念。また施設の屋根などの有効利用が望ましい。