3月 Zeuglodon cetoides Owen (原鯨類)
文献:Owen, Richard 1839. Observations on the Basilosaurus of Dr. Harlan (Zeuglodon cetoides, Owen). Transactions of the Geological Society, London, Ser. 2, vol. 6: 69-79, pls. 7-9.
アメリカのHarlanはBasilosaurus標本を、権威のイギリスのOwenのもとに持参して、意見を乞うた。Owenは、歯根が二つあることなどから、これを哺乳類と判断した。またHarlanの論文を検討して、属名の命名としては不十分とし、新属名Zeuglodonを提唱した。Owenの図は1月の図と同じ標本(右上顎)でHarlanの図と比べてわかりやすいが、前方が欠損しているのはなぜだろう?
Owenは上記の論文で新種名をZeuglodon cetoidesとしたが、のちにKellogg他は、属名Basilosurusを有効としたので、Basilosaurus cetoides と表すことになった。現在の表記は命名者名をカッコに入れてBasilosaurus cetoides (Owen)となる。
Richard Owen (1804-1892) はイギリスの生物学者・古生物学者。
前月の解説で、中生代の大型絶滅爬虫類の最初に命名された属、魚竜類、長頚竜類、モササウルス類・恐竜を記したが、二名法の確立前のものだから、すべて属名と模式種の命名論文が異なる。化石鯨類を含めて最初の属の命名者と模式種の命名者を整理しておく。
魚竜類:最初の属 Ichthyosaurus 1821 Beche et Conybeare:模式種 I. communis Conybeare 1822
長頚竜類:Plesiosaurus 1821 Beche et Conybeare:模式種 P. dolichodeirus 1821 Conybeare
モササウルス類:Mosasaurus 1822 Conybeare:模式種 M. hoffmannii 1829 Mantell
恐竜:Megalosaurus 1824 Backland:模式種 M. backlandi Mantell ただし、このとき「恐竜」という名称はまだなくて、1842年にOwenが初めて使用した。その論文についてはまもなく「古い本」シリーズで記す予定。
化石鯨:Basilosaurus 1835 Harlan:模式種 B. cetoides (Owen)
Owen 1839 Plate 2.(一部)Zeuglodon cetoides 上顎頬歯の歯根断面図
Owen 1839 Plate 3. 上腕骨
上記のOwen論文には3枚の図版がある。Plate 1が、カレンダーの図、Plate 2は歯根が2つあることを示す断面図と長い脊椎骨(たぶんこれがholotype)、Plate 3は上腕骨。図版説明はなくて、本文中に解説してある。サイズもあまり書いてない。たとえば上腕骨のサイズは「実物の二分の一」としてあるが、ディジタル化の比率がないから原本を見ないとわからない。Kellogg 1936は多くのBasilosaurus cetoides標本を精査した。この上腕骨は"Refered specimen"の最初にある標本の一部で、United States National Museumの標本番号840、全長420mmの左上腕骨と記している。なお、holotype はAcademy of Natural Sciences of Philadelphia のNo. 12944Aという長さ約18cmの椎体。実際にはカレンダーの1月と3月に使った上顎の方が豊富な情報を持っている。Owenが脊椎骨に注目しているのは、骨端が哺乳類であることを示しているからだろう。Owenの記載では、この脊椎骨について詳しく記載されているが、holotypeであることが明確に示されているのだろうか?
文献:Owen, Richard 1839. Observations on the Basilosaurus of Dr. Harlan (Zeuglodon cetoides, Owen). Transactions of the Geological Society, London, Ser. 2, vol. 6: 69-79, pls. 7-9.
アメリカのHarlanはBasilosaurus標本を、権威のイギリスのOwenのもとに持参して、意見を乞うた。Owenは、歯根が二つあることなどから、これを哺乳類と判断した。またHarlanの論文を検討して、属名の命名としては不十分とし、新属名Zeuglodonを提唱した。Owenの図は1月の図と同じ標本(右上顎)でHarlanの図と比べてわかりやすいが、前方が欠損しているのはなぜだろう?
Owenは上記の論文で新種名をZeuglodon cetoidesとしたが、のちにKellogg他は、属名Basilosurusを有効としたので、Basilosaurus cetoides と表すことになった。現在の表記は命名者名をカッコに入れてBasilosaurus cetoides (Owen)となる。
Richard Owen (1804-1892) はイギリスの生物学者・古生物学者。
前月の解説で、中生代の大型絶滅爬虫類の最初に命名された属、魚竜類、長頚竜類、モササウルス類・恐竜を記したが、二名法の確立前のものだから、すべて属名と模式種の命名論文が異なる。化石鯨類を含めて最初の属の命名者と模式種の命名者を整理しておく。
魚竜類:最初の属 Ichthyosaurus 1821 Beche et Conybeare:模式種 I. communis Conybeare 1822
長頚竜類:Plesiosaurus 1821 Beche et Conybeare:模式種 P. dolichodeirus 1821 Conybeare
モササウルス類:Mosasaurus 1822 Conybeare:模式種 M. hoffmannii 1829 Mantell
恐竜:Megalosaurus 1824 Backland:模式種 M. backlandi Mantell ただし、このとき「恐竜」という名称はまだなくて、1842年にOwenが初めて使用した。その論文についてはまもなく「古い本」シリーズで記す予定。
化石鯨:Basilosaurus 1835 Harlan:模式種 B. cetoides (Owen)
Owen 1839 Plate 2.(一部)Zeuglodon cetoides 上顎頬歯の歯根断面図
Owen 1839 Plate 3. 上腕骨
上記のOwen論文には3枚の図版がある。Plate 1が、カレンダーの図、Plate 2は歯根が2つあることを示す断面図と長い脊椎骨(たぶんこれがholotype)、Plate 3は上腕骨。図版説明はなくて、本文中に解説してある。サイズもあまり書いてない。たとえば上腕骨のサイズは「実物の二分の一」としてあるが、ディジタル化の比率がないから原本を見ないとわからない。Kellogg 1936は多くのBasilosaurus cetoides標本を精査した。この上腕骨は"Refered specimen"の最初にある標本の一部で、United States National Museumの標本番号840、全長420mmの左上腕骨と記している。なお、holotype はAcademy of Natural Sciences of Philadelphia のNo. 12944Aという長さ約18cmの椎体。実際にはカレンダーの1月と3月に使った上顎の方が豊富な情報を持っている。Owenが脊椎骨に注目しているのは、骨端が哺乳類であることを示しているからだろう。Owenの記載では、この脊椎骨について詳しく記載されているが、holotypeであることが明確に示されているのだろうか?