OK元学芸員のこだわりデータファイル

最近の旅行記録とともに、以前訪れた場所の写真などを紹介し、見つけた面白いもの・鉄道・化石などについて記します。

お世話になります 22 地形図 その3

2016年12月13日 | お世話になります
お世話になります
22 地形図 その3

 前回、ニュージーランドの地形図を紹介した。次はスイス、と思っていたが、なぜか書棚に見当たらないので、今回は中国の地形図を紹介する。中国では全国を網羅する地形図の販売はされていない。有名な所だけに対して作製されたものがある。手元には、チョモランマ(サガルマタ)、英名ではのエベレストの地図(10万分の一)他がある。地形図の裏面に解説などが印刷されている。紙質は今一つ。

1 地形図の裏にある表題

 表題を示したが、周囲の枠線は私の入れたもの。地形図はカラーで、氷河地形の描写はかなり良いが、縮尺が大きいので、ちょっと迫力が無いのはやむを得ないだろう。等高線は40メートル(計曲線は400メートル)と、やや中途半端。

2 エベレスト周辺

 右下の大きな山塊がエベレスト(8848m)。最初の登頂は左下からKhumbu氷河を遡って、Western Cwm (Cwmはウェールズで「谷」の意)に入り、その突き当たりからサウスコル(7907m)まで急な斜面を登り、そこから西南稜をたどって行われた。現在もおおむねこのルートが主流である。サウスコルはエベレストとローツェ(8516m)を結ぶ稜線にある。北からの登頂は。まっすぐに南北に続くRongpu氷河から北稜に登った。ここに記した範囲の北端に自動車道路が見えるが、その終点から20km歩かないと麓に着かない。

3 エベレスト付近の拡大

 近年発行された「そして謎は残った」(文藝春秋社)や「遥かなる未踏峰」上下(新潮文庫)などの本は、この地図を見ながら読むと良いかも知れない。


お世話になります 21 地形図 その2

2016年10月19日 | お世話になります
地形図 その2

 前回5万分の1地形図について記したが、近年の基本地形図は2万5千分の1が用いられた。しかしIT化の進行とともに、「地形図を購入して使う」と言う習慣は全く過去のものとなった。
 私は全国の地形図のうちその図内に踏み込んだものを記録していたが、2010年以後しだいに更新を諦めた。2011年末の時点では全国4320図幅の内、訪問したことがある図幅は2705であった。訪問率は62.6%。島を除くと66.9%に達していた。図幅の3分の2を訪れたことになる。
 日本の地形図には、図幅名のほかに記号番号が付けられている。私のいる「徳力」図幅は「NI-52-2-3」となっている。「NI-52」の部分は「徳力」の含まれる20万分の1地勢図「福岡」を示している。「2-3」というのは、福岡図幅の中の位置を示す。東から2列目の北から3段目と言う意味である。
 前回、美しい地形図としてニュージーランドを挙げた。たまたま当ブログの「古い旅行」シリーズにその地図を掲載したので、そちらも見て欲しい。そのニュージーランドの地形図(5万分の1)では、図幅名と記号番号で整理している。例として、訪れたオタゴ大学はダネーディン(Dunedin)図幅に含まれるがその記号番号は「260-I44,J45」となっている。260の意味は不明である。記号「I」は西から順にアルファベットを付したもの、「44」は北端を01として南に向かって付した番号である。ダネーディン図幅はたまたま右側に7キロメートルほどの本来含まれない半島(アルバトロスコロニーがある)があって、Jに属するものをはみ出して含んでいるので、ちょっと複雑である。北島は東西に「L」から「Z」、南北に01から28を付した図幅、南島は東西に「A」から「O」、南北に24から50となっている(小島を含む)。Zでちょうど収まっているのはめでたい。図幅の裏表紙に位置を示す図が付いている。

1 ニュージーランド北島のHawara図幅の裏表紙

2 ニュージーランド南島のDunedin図幅の裏表紙

3 Dunedin図幅の表紙

 別に記したように、大都市の役所で購入できる。1993年当時の値段は11.95ニュージーランド・ドル。800円以上だから結構高かった。日本の地形図と違って厚紙の表紙がついているから保存しやすい。市街地の表現と色調は今一つだがそれ以外の農地・山地の表現は美しい。実際には5万分の1地形図で市街地を調べるようなことは無いだろうが。

4 Dunedin市街の部分

 次回は他の国の地図を紹介する予定。


長年お世話になっています その20 地形図 その1

2016年09月07日 | お世話になります
長年お世話になっています その20 地形図 その1

久しぶりの「お世話になります」。
私が初めて国土地理院の地形図を購入したのは、1960年の夏だったからいまから56年ほど前。中学校の夏期旅行で蓼科に行く準備として購入した。図幅は5万分の一の「蓼科山」と「諏訪」の二葉。昭和33年(1958年)発行のもの。赤鉛筆で移動の経路が記入してあるが、その後はあまりしなくなった。

「蓼科山」図幅の題字

 学校行事だったこの「合宿」は、私個人の思い出もあるので記憶しているが、二日目に本隊は蓼科山に登山した。私は蝶を見たかったので、稜線にお花畑のある八子ケ峰をたどる方を選んだ。宿泊したのは山紫閣という旅館、と記録されているが、現在その名のものはネットで見当たらない。いくつかのネットの記述が正しければ、現在「滝の湯」というホテルの別館になっているという。その場所は現在の茅野市滝ノ湯で、蓼科湖のちょっと上流にあたり、上記の二つの登山ルートの起点にふさわしい位置にある。多分このあたりに泊ったのであろう。

「蓼科山」図幅の左端。

上の写真の赤線が分岐するあたりが宿舎の位置かと思われる。右に行く赤破線が本隊の登山コース。左に分かれる赤実線が私の参加した「自信の無い」人向けのコース。下端に蓼科湖が見える。
 地形図は古い型式なので今見るといろいろな所に気づく。等高線は尾根が丸くて特徴ある古い線。「諏訪」図幅には諏訪湖があるが湖面には並行した線が引かれている。海域や湖などに引かれていたもので、水深とは関係のないもの。

「諏訪」図幅岡谷市付近

 これら二葉の地形図は、高校生の頃に地形の数的処理の方法を記した学習雑誌の記事に基づいて、谷線や稜線の密度などを数値化するために、余り関係の無い所に各種の線を記入してしまったので、保管資料としては悪い保存状態である。なお、地形図を複写したが、スキャンではなくデジカメで撮って画像処理したために、均一性が悪い。また縦横比の変更やひずみが大きいことをおわびする。

9月9日追記
 地形図の画像が美しくなかったので、スキャンして画像処理したものに取りかえた。ひずみは取り除かれた。なお、「蓼科山」左端の画像の上の方に見られる横線は、紙の折痕。地形図の画像部分の大きさは、上から7.7cm、9.0cm、10.2cm である。


長年お世話になっています その19 タイプライター 2

2015年06月11日 | お世話になります
長年お世話になっています その19 タイプライター 2

 IBMタイプライターのいいところは、この活字玉を取りかえると、字体を変えることが可能なこと。とくにαとかθとかのギリシャ文字も玉を変えることで対応できることであった。ただ、この玉は、取りかえる時の着脱レバーが壊れやすく、値段も高いのが「玉に」キズだった。

5 IBMタイプライターの「替え玉」ストックケース

6 替え玉を使って打った論文(修士論文配布版)1976
 
 写真は、替え玉(意味が違うか?)で、上左からCourier 72、Pica 72、Symbol 10、Orator、カタカナ、Orator L/Aですべて10ピッチ。ほかに12ピッチのシリーズも用意されていて、機械の方のセットを操作するともう少し小さなフォントで印字できた。上位機ではカセットテープ!がついて、印字を記録し、訂正して打ち直すこともできたが、それは使ったことがない。IBM の打ち間違いに対しては、「リフトオフ・テープ」というのがあって、間違った字のカーボンを粘着性のあるテープでもう一度打つことで剥がす、というものだった。
 最も多くこれらを使ったのは、展示のラベルと講演要旨の作製であろうか。私の最初の事前に印刷された講演要旨は1978年の地質学会(清水)のもので手書きにIBMで単語を入れたもの。別の紙に単語を打ってみて相当する字数を数え、その分の空白を空けて手書きするのだ。

7 手書き+タイプ打ちの要旨 1978年4月

 その後、同学会とその西日本支部の四つの講演要旨は事後印刷だったと思う。1986年1月の古生物学会(仙台)と6月の同学会(北九州)の講演要旨は、日本語を和文タイプで、中に挿入される英文をIBMで打った面倒なものだった。上と同様に字数数えを必要とする。

8 和文タイプ+IBMの面倒な要旨 1986年1月

 和文タイプはそう速く打てるものではない上に、英語の字数分を空けて打つのだから相当時間がかかったに違いない。そのせいか1987年1月の同学会(静岡)の要旨は英語を避けて和文タイプだけで打っている。一年後の1988年1月の古生物学会(小金井)の要旨はすでにワープロ(専用機)で作製している。ワープロになっても字体にCourierを選んでいるのは、IBMの強い影響だろう。講演要旨は自分で印刷・筆記して、紙の形にして事務局に郵送していた。
 コンピュータになってからは、制約がほとんどなくなって速く作製できるようになった。今年も古生物学会の季節になって、今月末には個人講演を行うが、その要旨はメールを使ってpdfファイルを送るという方法である。


長年お世話になっています その18 タイプライター 1

2015年06月10日 | お世話になります
長年お世話になっています その18 タイプライター 1

 今回はタイプライターの話。書いてみたら長くなったので、二回に分けて掲載する。
 押し入れに長いこと眠っているタイプライターがある。出してみたらまだ十分に動くが、インクリボンがかなり薄くなっている。まだ手に入るのだろうか?誤って打った時に消す「ホワイト」も手元に無いから消せない。

1 タイプライターのケース

2 タイプライター

 1970年頃に購入したと思う。メーカーはイタリアのオリベッティで、当時よく売られていた。この時代には、英語の手紙や論文原稿はタイプで記すものだったから買ったのだが、記憶している範囲でこのタイプを使って書いた論文は1974年発行の三葉虫に関するものぐらい。あまり研究に使わなかった。最も使ったのは、旅行データの整理で、「乗り潰し」の表をカードにしていた。

3 乗り潰しカード

 左の文字はロトリングで書き、右の距離などをタイプしてある。赤字タイプ打ちも使っている手の込んだもの。どんな手順で作ったら美しくできるのだろうか?当然乗るたびに書き直しなのであまりにも面倒でこの型式はあまり長く続かなかった。ずいぶん前にエクセルの表に変えた。
 論文は何で書いたかというと、大学にあったIBMの電動タイプ。これにはずいぶんお世話になった。博物館にもあったし、最後には自分でも購入した。現在は機械を廃棄してしまった。活字はプラスチック製の玉に付いていて、それが電動でインクリボンを介して紙に打ち付けられる仕組み。玉は記念に保管してある。

4 IBMタイプの活字玉 レバーを半分上げたところ。

(つづく)