音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Sinfonia10番冒頭から始まる美しいカノン、変哲もない bassに隠された主和音■

2015-07-19 21:02:02 | ■私のアナリーゼ講座■

■Sinfonia10番冒頭から始まる美しいカノン、変哲もない bassに隠された主和音■
 ~ KAWAI 金沢第10回 Inventionアナリーゼ講座 10番 G-Dur~
              2015.7.19   中村洋子

 

 

★7月14日の KAWAI 表参道「平均律第2巻アナリーゼ講座」最終会で、

7年かけて続けてきましたBach の 「Invention & Sinfonia」全15曲、

「Wohltemperirte ClavierⅠ、 Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集 1、 2巻」

全48曲のアナリーゼ講座が終了しました。


★それ以外にもBach の作品は、「Italienisches Konzert

イタリア協奏曲」3回、 「Franzosische Suites フランス組曲」3回、

名曲集3回も、アナリーゼ講座を開きました。

 
★熱心な皆さまに支えられ、完結しましたことを感謝申し上げます。

受講生のお一人のブログにも、書いていただき、嬉しく存じます。
http://glennmie.blog.so-net.ne.jp/2015-07-17

 

 


7月22日は、 KAWAI 金沢で第10回「 Inventionアナリーゼ講座」です。

今回も、 Invention & Sinfonia 10番 G-Dur の詳しい解説とともに、

・「 Fuga の alteration 変応」とは何か。
・「 Franzosische Suite Nr.5 フランス組曲 5番 との関連性」
・「 Suite fur Violoncello solo Nr.4 無伴奏チェロ組曲第4番との関連性」
・「Sinfonia Nr.10 の初稿である Klavierbüchlein の Fantasia Nr.5 が、
              Sinfonia Nr.10とどう異なりそれは何故なのか」

 などを、分かりやすくご説明いたします。


★それらすべてのことは、机上の論理ではなく、Bach をどう弾くかに、

直結しなければ意味がありません。


Invention 10番 G-Dur の1小節目冒頭を、見てみましょう。

上声に「 Subject 主題」があります。

その開始音「 g¹  h¹  d² 」は、G-Dur の 「tonic 主和音」の

音を形成すると同時に、この曲の大切な motif モティーフ でもあるのです。

 

 


★それがどのように展開されていくかについて、講座でお話しますが、

ここでは、この motif モティーフ が Sinfonia Nr.10 で、

どう発展しているかについて、少し、ご説明いたします。


Sinfonia Nr.10の冒頭1、2小節の下声部をまず、見てましょう。

四分音符で「G  H  G  c  d  D  G」と、奏されていきます。


ここは何の変哲もない bass バス の音と、とらえがちです。

実は、この7つの音のうち、1、2番目そして5番目の音を、

繋ぎますと、先ほどの主和音「 g¹  h¹  d² 」の2オクターブ下の

「G H  d」となります。

 

 


この三つの音以外の音を、さらに見てみます。

3、4番目の音が「G  c」です。

この「G  c」は、G-Dur の主音から「下属音」になるという

大切な進行なのです。

 

 

★もう少し詳しく見ますと、

6、7番目の「D G」は、「属音」から「主音」になるという、

これまた、大切な進行です

 

 


楽典には、三拍子は「強 弱 弱」の拍子と定義され、実際に、

そのように弾くことを強いるレッスンもあります。

しかし、この左手下声の、

1、2、5番目の主和音による motif モティーフ と、

3、4番目の4度上行 motif モティーフ 、

そして、6、7番目の同じく4度上行 motif モティーフ を、

一度、分離して弾いてみてください。


★素晴らしく音楽的な bass バス が、浮かび上がってくることでしょう。

そして、3番目の「G」は、4番目の音、即ち2小節目1拍目の「c」に対する、

アウフタクトになります。

同様に、6番目の「D」は3小節目1拍目の「G」に対する、

アウフタクトです。

実に、音楽的な構造、骨格が炙り出されてきます。


★今度は1小節目上声 Subject 主題を見てみましょう。


このように「g¹ h¹ d²」という、 Invention Nr.10 冒頭の三つの音の

 motif モティーフ が、拡大形として浮上してきます。


Sinfonia Nr.10の1小節目冒頭上声に、「g¹ h¹ d²」があり、

下声は2小節にわたって「G H d」が奏され、

お互いがカノンの関係にあります。


これが、本当のBach の生きた 「counterpoint 対位法」です。

その先、どう発展していくかについては、

それを聴く人が分かるよう、どう説得力をもって演奏すべきか、

講座でご説明いたします。

 

 

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■ 中村洋子・ Invention アナリーゼ講座

第10回 「Invention & Sinfonia 第10番 ト長調  G-Dur」

■日  時 :  2015年 7月22日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会  場 :   カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
             ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分)

■予  約 :   Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

     東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

         2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

         07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

         08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

         08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

         09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

         10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

         11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

         13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

           スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

        ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

       ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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