■「指の練習曲」どころか、完璧な「四声体和声」の前奏曲、
フランス風序曲のフーガ■
~平均律1巻「第5番 D-Dur」 アナリーゼ講座のご案内~
2018.8.4 中村洋子
(百日紅の蕾)
★万物が焼け焦げるような、炎暑が止みません。
時々伺いますレストランに、木の枝が素敵に生けられていました。
たわわに実をつけているかのような枝です。
「何の実かしら」と、お尋ねしましたら、
「実ではないのです、百日紅(さるすべり)の蕾ですよ」。
★透き通るように赤い百日紅の花は、夏空の青と好対照で、
いかにも「夏の花」ですが、
咲く前の蕾を愛でる審美眼に、脱帽しました。
決まり切ったイメージにとらわれず、
自分の目で見、自分で「美」を発見するのは、
音楽の勉強も同じでしょう。
★7月21日のアナリーゼ、「平均律1巻第4番 cis-Moll」は、
大曲でした。
≪蝶(てふ)の舌やゼンマイに似る暑さかな≫
芥川龍之介
蝶の舌のように、暑さで目が回ってしまいます。
★次回アナリーゼ講座のお知らせです。
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■第5回「平均律第1巻アナリーゼ講座」第5番D-Dur
Prelude & Fuga
2018年9月22日(土)
・5番プレリュードの根底に、厳然として存在するバッハの音楽の源泉
・フーガは蓄積したエネルギーを大空に発散し、
新しい幕開けとなるフランス風序曲
■昨年出版しました≪「ベーレンライター版平均律第1巻楽譜」の
添付解説≫、P2~8の「バッハ序文」の解釈(中村洋子)で、
この5番プレリュードについて、詳しく解説しております。
https://www.academia-music.com/products/detail/159893
"5番プレリュードは指の練習曲"とする浅薄な解説書もございますが、
それは論外としましても、ここで現れる絶え間ない16分音符と、
それを支えるバスの8分音符は、何を意味するのでしょうか。
■「クラヴィーアユーブング第2巻・フランス風序曲」と、
「同第4巻・ゴルトベルク変奏曲第16変奏」、そして、
この「平均律第1巻5番フーガ」は、ともに≪フランス風序曲≫の性格を
宿しています。上記私の解説書P31~32[注28]をお読み下さい。
オーケストラ作品のような、生命力溢れ、豪華な光り輝く音楽です。
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■プレリュード:
このプレリュードは「指の練習曲」どころか、
完璧な「四声体和声」によって書かれています。
その「四声体」は、何を根幹としてバッハの心から湧き上がってきた
のか、その源泉を具体的に、分かりやすくお話いたします。
■ フーガ:
4番 cis-Moll フーガのもつ、大海の波がうねるような圧倒的な
エネルギーを真正面に受け止め、跳ね返し、新しい幕開けとする
フーガです。
このフランス風序曲により、広大無辺の世界が眼前に広がります。
この5番フーガは、「10番 e-Moll フーガ」と直結していく意外性
をも秘めています。
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★「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」第16変奏は、
豪華な「G-Dur(ト長調)」のフランス風序曲と、フーガです。
では、その前の第15変奏はどうでしょうか?
★「Goldberg-Variationen」30曲中、わずか3曲しかない
「g-Moll (ト短調)」です。
それ以外は、すべて「G-Dur(ト長調)」です。
イエスの受難をも想起させるような、沈痛にして、物問いたげな
「第15変奏」の後に、「第16変奏」1~15小節の、
喜びが炸裂するような、フランス風序曲
と、16~47小節のフーガが、
続きます。
★この「第15変奏」と「第16変奏」との関係が、
「平均律1巻第4番 cis-Moll」と、
「平均律1巻第5番 D-Dur」
との間にも、見られます。
★「第15変奏」と「平均律1巻第5番 D-Dur フーガ」を、
見比べますと、大変よく似ていることが、一目で分かります。
ここに、Bachの作曲の構築法が、よく現れています。
講座で、それをお話いたします。
https://www.academia-music.com/news/59
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