音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■Beethoven 月光の自筆譜には、推敲の跡が如実に記されている■

2015-12-24 00:44:15 | ■私のアナリーゼ講座■

■Beethoven 月光の自筆譜には、推敲の跡が如実に記されている■
~ KAWAI 金沢1月アナリーゼ講座は「月光ソナタ」~
             2015.12.24    中村洋子

 

 


★2月発刊予定の、当ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した本は、

≪クラシックの真実は作曲家の「自筆譜」にあり≫という

タイトルになります。

ほぼ校正が終わり、ホッとしています。


★当ブログでは、「それについては講座で詳しく、ご説明

いたします」といつも、書いていますが、この本で、

その「説明」を豊富に書き加えております。

また、「私の手書き譜」もたくさん、掲載しました。


Beethoven ベートーヴェン(1770~ 1827)の、

「Klaviersonate cis-Moll Op.27 Nr.2 月光ソナタ」の、

「Manuscript Autograph  自筆譜」 をどう読むか

についても、詳しく、書き込んでおります。

 

 


★「月光」の自筆譜(1801年)は、かなり完全な形で残っています。

ただし、第1楽章冒頭の1小節目から13小節目までが、

行方不明です。

現存しています自筆譜の最初の1枚目は、

14小節目から26小節目までが記されていますので、

おそらく、不明の1~13小節目は、第1ページとして、

Beethoven は書いていたと、思われます。


★初版譜(1802年)を見てみますと、

見開き左ページ(5段のレイアウト)は、

1~25小節目までとなっています。

自筆譜で不明の最初の1ページが、1~13小節目、

現存する自筆譜1ページ目が14~26小節目ですので、

この初版譜は、ほぼ1小節の違いはありますが、

作曲家の自筆譜と同じ、小節の配分となってます。


★見開き右ページ(5段のレイアウト)は、26~50小節目までです。

そして、Beethoven が推敲に推敲を重ねて到達した、

頂点の36小節目は、なんと、真ん中の3段目冒頭(左端)に、

置かれています。

最も、目につく場所です。


自筆譜と初版譜とを、子細に学ぶことにより、

Beethoven の作曲意図が、自ずと分かってくるのです。

一歩一歩、Beethoven の芸術に近づくことができます。

 

 


★大切な1~13小節目までが失われているのは、

返す返すも残念ですが、Beethovenの作曲から1年後の

1802年に出版された初版譜は、作曲家の意図に忠実な、

優れた楽譜ですので、初版譜により、1~13小節目を

勉強しますと、Beethovenが1楽章の構造をどう考えていたか、

どのような演奏を望んでいたかが、よく分かります。


★現存する1枚目(14~26小節目)の裏のページに、

27~37小節目が書かれていますが、

その32~36小節目を、Beethoven は斜線で黒く塗りつぶし、

もう一度、次のページに27~37小節目を全部、書き直しています。


私の耳に馴染んだ分散和音の、この32~36小節目は、

何気ない分散和音の連続ではないのです。

Beethovenが考え抜いてたどり着いた32~36小節目の決定稿は、

36小節目を頂点とするために、推敲の結果だったのです。


2016年1月20日(水)のKAWAI 金沢アナリーゼ講座は、

この「月光ソナタ」を、勉強いたします。

 

 

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■日  時 :  2016年 1月20日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分

■会  場 :  カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
            ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 )
■予 約  :  Tel.076-262-8236 金沢ショップ

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■Beethoven≪月光ソナタ≫・アナリーゼ講座
~Bachを源泉とし、Chopinへの“架け橋”となった「月光ソナタ」~

★2014年秋から15年末まで、金沢で「Inventionen und Sinfonien
インヴェンションとシンフォニア」の全曲アナリーゼ講座を開催しました。
毎回、濃密な講座でしたので、2016年1&2月は、2回にわたり
「Beethoven Klaviersonate Op.27-2 月光ソナタ」を、じっくりと
勉強したいと思います。

★Beethovenの32のピアノソナタの中でも、「12番 Op.26」の
第1楽章変奏曲とともに、月光の第1楽章はソナタ形式ではない、
特殊な曲といえます。
なぜ、Beethovenがこの曲を「ソナタ」としたのでしょうか? 
幸いなことに、Beethovenの自筆譜と初版譜が存在しますので、
それを基に、分かりやすく解説いたします。

★また、自筆譜の読み方に習熟できるよう、Beethovenの
「Für Elise エリーゼのために」の草稿(draft)をテキストとして
勉強いたします。
さらに、 Wilhelm Kempff ヴィルヘルム・ケンプ(1895-1991)の
「エリーゼのために」の演奏がどうして素晴らしいのか、
それをご自分の演奏にどう生かすかもお話いたします。

★Beethovenの「月光」から導かれたChopinの「Prelude 雨だれ」
についても、解説いたします。
この2回の講座を通して、上記3曲を幅広くご説明いたしますので、
ご自身の楽譜を持参してください。

次回は、2016年 2月17日(水) 

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 ■講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

      東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
     日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

          2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

          07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

          08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
        CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

          08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

          09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」  から出版。
 
         10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                    全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

          10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
       Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

          11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
      チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

          13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
      ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

          14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
       ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

           SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
                            無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
     「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。

            スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
      自作品が演奏される。

         ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」         https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
 https://www.academia-music.com/                           で販売中。

        ★私の作品の  SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/

 

 

  

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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