■横浜インヴェンション講座は、バッハの「半音」の力■
2011.7.17 中村洋子
★先日の カワイ表参道 Bach Wohltemperirte Clavier
「第 14回平均律・アナリーゼ講座 」 で、
お話しました、いくつかの発見を、ご紹介いたします。
★Johann Sebastian Bach バッハ (1685~1750) の、
平均律 1巻の自筆譜は、前回の 「13番のフーガすべて 」 と、
「 14番 前奏曲の 7小節 3拍目 」 までが、失われています。
欠落している部分は、バッハの妻 アンナ・マグダレーナ
Anna Magdalena Bach (1701~ 1760) による、
写譜をもとにして、お話しました。
★欠落部分を、アンナの楽譜で勉強しましたついでに、
バッハ自筆譜と、アンナの筆写部分とを比較してみました。
そこで、私はいい経験を得ました。
まず、 1ページの段数も異なり、
バッハが 6段であるのに対し、アンナは、8段です。
段落をどこで変えるか、それも、一致していません。
★バッハ最晩年の 「 Die Kunst der Fuge フーガの技法 」
BWV 1080、ニ短調 の自筆譜と、
バッハが亡くなった直後に、出版された
「 フーガの技法 」 でも、同じような経験がありました。
出版楽譜は、もっともらしく、小節の途中で段落を変えたり、
一見 「 バッハ風 」 ですので、自筆譜がなければ、
その初版譜でずっと、勉強し、
頭を、ひねり続けることになっていたでしょう。
★あの素晴らしい 「 Suiten für Violoncello solo
無伴奏チェロ組曲 全 6曲 」 の、バッハ自筆譜は、失われ、
第 1資料として、アンナの写譜が、珍重されています。
それはそれで、素晴らしいのですが、
どうも、作曲本人の自筆譜のように、
“ 親切に、分かり易く、楽譜を読む人を導いていく ”、
という感じは、少ないのです。
★バッハの直筆譜が、残存していれば、
多くの疑問点が、容易に解決されたであろう、と思います。
★幸いなことに、 「 Inventionen und Sinfonien
インヴェンションとシンフォニア 」 は、
バッハの類稀な自筆譜が、残っているため、
日々、親切な、バッハ先生から、
“ 直弟子 ” として、直接に、学ぶ幸福を感じます。
★明日、カワイ横浜みなとみらいで、
「 インヴェンション 7番 」 の、アナリーゼ講座を、開催しますが、
バッハは、平均律を 「 1ページ 6段 」 で書いているのに対し、
インヴェンションは、 1ページ 3段で、
「 2ページで 1曲 」 としています。
例外として、 2ページ目の最期に、4段目として、
小さな音符で、追加されているものもあります。
この 「 シンフォニア 7番 」 が、それに当ります。
★そこで、私が昨日、ふっと、思いついたのは、
インヴェンションの 1ページ目の下に、
シンフォニア 1ページを配置し、1ページ 6段 とします。
同様に、インヴェンション 2ページ目の下に、
シンフォニア 2ページ目を、置きます。
これで 1ページが 6段 となります。
( シンフォニア 7番は追加がありますので、7段 )
★このように、バッハの自筆譜を用いて、
上下に、インヴェンションとシンフォニアを配置して、
比較しますと、
バッハの 「 意図、考え 」 が、次から次へと、視覚的に、
くっきりと見え、分かってくるのです。
その効果に、私もびっくりしました。
★さらに、平均律も 12、13、14番を 「 1セット 」 とし、
曲集の後半に、 「 2度のモティーフ 」 と 、
「 半音 」 が登場しますが、
インヴェンションでも、この 7、 8、 9番を 「 1セット 」 として、
くっきりと、 「 2度のモティーフ 」 と、
「 半音 」 が、現れてきます。
★この類稀な 「半音 」 の効果を、同じように、
表現し尽くしたのは、 Franz Schubert(1797~1828)
シューベルトの歌曲集 Winterreise D911、 Op.89
「 冬の旅 」 1827年、です。
私は、この曲集を勉強するたび、
まるで、「 インヴェンションではないか 」 と、感じます。
それは、全曲の構成から受ける印象なのですが、
その和声を、子細に勉強しますと、バッハの 「 半音 」 の扱いが、
「 冬の旅 」 第 1曲の 「 Gute Nacht おやすみ 」 に、
明確に、踏襲されているのが、分かってきます。
★(この講座の詳細は、6月 27日のブログを参照)http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20110627
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