■ドイツの女性チェリストが、私の「 無伴奏チェロ組曲 1番 」を演奏■
2010.12.3 中村洋子
★師走に入りました。
季節外れの嵐が、日本を縦断しそうです。
大寒波で、凍りついているベルリンで、
12月 4日、5日の両日、
私の 「 無伴奏チェロ組曲 1番 」 が、演奏されます。
★演奏されるのは、Susanne Meves-Rößeler、
ズザンネ メヴェス = ルーセラー さんです。
ベルリン芸大での、ベッチャー先生のお弟子さんです。
この曲を演奏するにあたり、ベッチャー先生から直接、
レッスンを、受けられたそうです。
★コンサートのタイトルは、
“ Mit Flöte und Cello um die Welt ”
“ フルートとチェロによる、世界の曲 ”というタイトルです。
★フルートは、 Barbara Hill さんとの共演です。
私の曲のほかに、バッハ、 カスティーネ、
ヴィラ=ロボス の曲が、演奏されます。
★特に嬉しいのは、 5日の会場が、
ベルリンの 「 シャルロッテンブルク市庁舎 」 の、
フェスティバル大広間
Festsaal des Rathaus Charlottenburg
であることです。
フリーリッヒ大王の 「 シャルロッテンブルク宮殿 」
「 Schloss Charlottenburg 」 にほど近い、
大きな、会場だそうです。
★この 「 無伴奏チェロ組曲 1番 」 は、
ベッチャー先生が、2007年の作曲以来、
さまざまな国で、演奏し続けて、くださいました。
今回、先生からお弟子さんに “ 手渡され ” 、
お弟子さん独自の、新たな解釈による、
演奏がなされることと、思われます。
★以前、ベッチャー先生から伺いましたお話ですが、
チェリストの ヤーノシュ・シュタルケルが、
コダーイの作品を、 初版楽譜で演奏し、
それを聴いていた作曲家・コダーイ本人に
「 初版楽譜と、 第 2版とは相違がありますが、
どちらがいいのですか 」、と尋ねましたところ、
コダーイは、 「 It's OK 」 としか、答えなかったそうです。
★多分、コダーイは、シュタルケルの演奏に、
感銘を受け、何も言うことが無かったのでしょう。
バッハやショパンが、お弟子さんたちに、自分の曲を、
レッスンするに当り、各々の個性を活かした弾き方を、
指導したことは、有名です。
★コダーイは、シュタルケルが、説得力をもって、
見事に、納得のいく演奏をしたことについて、
それを、評価したのでしょう。
★ショパンを勉強するときにも、 「 エキエル版 」 に、
みられるように、パッチワークのような、
“ 継ぎはぎ校訂版 ” を、盲信することなく、
作曲家の自筆譜ファクシミリや、初版楽譜、
作曲家や弟子の残したメモなどを、可能な限り、
入手して、研究すべきと、思います。
★どのようなショパンを弾くかは、ご自分が努力して、
ご自身で作り上げるしか、ないのです。
その真摯な努力が実りますと、シュタルケルのように、
作曲家が、認めるのです。
★作曲後、作曲家がどんなに、推敲の手を入れたとしても、
その曲が、生まれ出た瞬間の、
湯気が立っているような、直筆譜が、
最も、価値の高いものである、と思います。
★自分の作品の演奏を聴きに、ドイツまで行けないのは、
とても、残念です。
これまで、私の 「 無伴奏チェロ組曲 1番 」 は、
ベッチャー先生しか、演奏されませんでした。
それは、この曲が、 「 マエストロ・ベッチャー 」 に献呈され、
さらに、その曲を演奏したマエストロの 「 CD 」 が、
存在する、ということから、
チェリストにとっては、その曲を演奏することは、
大変な勇気を必要とする、 “ 挑戦 ” でもあるのです。
★しかし、今回、初めて先生のお弟子さんが、
この 「 無伴奏チェロ組曲 1番 」を、弾いてくださいます。
これにより、 「 無伴奏チェロ組曲 1番 」 は、
新しい門出を迎え、これから、
世界中の、たくさんのチェリストが、
演奏してくださることでしょう。
★2007年、この曲を、
ベッチャー先生に、お渡ししましたとき、
先生は、 「 この曲は、これから、たくさんのチェリストが、
弾くことになります 」 と、きっぱり、
おっしゃっていたことを、思い出しました。
( 南天の実、椿、サザンカ )
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