音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■伝通院で、素晴らしい「ダウド」のチェンバロを弾きます■

2008-07-17 19:00:19 | ■私の作品について■
■伝通院で、素晴らしい「ダウド」のチェンバロを弾きます■
           
                08.7.17 中村洋子

★「伝通院納涼コンサート」が、明後日の19日(土)に開催されます。

今回は、モモセハープシコード(株)様の、ご好意で、

素晴らしいチェンバロを、貸し出して頂くことが出来ました。


★≪French double manual harpsichord
    after N.et F.Blanchet1730 William Dowd 1982≫

というチェンバロで、CD録音でよく使われる名器です。

1730年に、ブランシェという人が製作したチェンバロを、

1930年に、W.ダウドが再現した二段鍵盤の楽器です。


★この楽器を弾きますと、

チェンバロという楽器が、とてもよく分かります。

リハーサルの合い間に、バッハの「インヴェンション」を

弾いてみましたが、“なんと弾きやすい”と驚きました。

特に、ピアノ演奏の際に苦労する、腕の交差する部分や

長いトリルが、苦もなく弾けます。


★フレーズの作り方、さらに音色も、

“バッハが、このように意図して、作曲したのだろう”と

楽器が、私に教えてくれます。

この発見を、26日の「インヴェンション・アナリーゼ講座」でも

お話したい、と思います。


★≪当日のプログラム≫

ソプラノ: 五十嵐郁子、

ヴィオラ&ヴァイオリン: ダーフィット・シッケタンツ

チェンバロと作曲、お話: 中村洋子 の3人が出演いたします。


★≪曲目≫

①ガルッピ作曲 「チェンバロソナタ5番」ハ長調 1楽章

②「アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集」
                    
より、8番ポロネーズ、

以上の2曲は、チェンバロ・ソロで、楽器の説明もいたします。


★③ヘンデル作曲 「メヌエット」

④⑤「アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集」
            
より、最も有名な4番と5番のメヌエット、

これを、「ヴァイオリンとチェンバロ」、

「ヴィオラとチェンバロ」の、2種類の組合せで演奏し、

ヴァイオリンとヴィオラの音色の差を、実感していただきます。


★⑥⑦⑧は「アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小曲集」                            

より、16番Marche(マーチ)  22番Musette(ミュゼット)

7番Menuet(メヌエット)

⑨バッハ作曲 「管弦楽組曲第3番」より、Air(エアー)

⑩中村洋子作曲 「越殿楽の秋」

以上が、ヴィオラとチェンバロで演奏されます。


★⑪中村洋子作曲 「星の林に月の舟」 「秋の七草」

「巨勢(こせ)の春」 「夕波千鳥」~万葉集による歌曲~

⑫童謡より 「うみ」と 「ホタル」=中村洋子編曲

⑬中村洋子作曲 「津軽の春」

以上は、ソプラノとチェンバロです。


★最後は、昔懐かしい 「赤とんぼ」を、

ソプラノ、ヴィオラ、チェンバロの三重奏でお楽しみいただきます。

伝通院本堂の、素晴らしい音響も、どうぞお楽しみください。


★ガルッピ(1706~1785)は、最近、耳にすることが

多くなった作曲家です。

バッハより約20年遅く、イタリア・ブラーノ島で生まれました。

バッハは、マルチェッロやビバルディーの協奏曲を編曲することで、

イタリアの音楽を学びました。


★ガルッピは、そのB.マルチェッロの紹介で、

A.ロッティに音楽を学びました。

チェンバロソナタを85曲、作曲しました。

チェンバロソナタという、新しい形式の先駆者といえます。

バッハが、聖トーマス教会の楽長であったように、

ガルッピは、ヴェネチアのサン・マルコ聖堂で、楽長を務めました。


★大きな視点で見ますと、マルチェッロ、ガルッピという流れの中に

巨大なバッハが位置していた、ともいえそうです。

ロッティ門下のドメニコ・アルベルティ(1710~1740)にちなんで

名付けられた「アルベルティ・バス」

(“ドソミソ”のように、左手で分散和音を、反復する伴奏音形)が、

このガルッピの曲には、使われていますが、

モーツァルトのピアノソナタにも、

この「アルベルティ・バス」が多く、見られます。


★ガルッピは、バロック音楽から、次の時代への架け橋の役割を

担ったといえそうです。

マルチェッロの作品から、たくさんのものを学んだバッハは、

新しい傾向を知りつつも、その流れに同調することなく、

独自に自らの音楽を、深めていったのです。



★私たち日本人にとって、ヨーロッパのバロック時代の舞曲は、

馴染みのないものです。

しかし、バッハを演奏するうえでは、

その「リズム」や「音の運び」を理解し、知ることは大変重要です。

バッハが、楽長を務めたライプチッヒ「聖トーマス教会」で、

洗礼を受けた生粋の“ライプチッヒっ子”の

ダーフィット・シッケタンツさんが、メヌエットのステップを、

実際に舞台で、ご披露してくださるかもしれません。

ご期待ください。


★午後6時開演、入場整理券(無料)は、午後5時からの配布です。


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