のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

分蜂の始末に立ち会う

2006年04月15日 | わが家の時時
果樹組合の農家へある幼稚園から園内の木に分蜂しているがどうしたものかと問い合わせがありました。ナシの花の交配用にミツバチを導入している時期です。もしかしたら周辺地域へ迷惑をかけてしまったかもしれません。市川の養蜂業者へ連絡をとり、その始末に立ち会ってきました。

分蜂したハチはサルスベリの幹の下側で直径30cmくらいのかたまりになっていました。体の色は全体に黒く、土着の日本ミツバチのようです。交配用に借り入れている西洋ミツバチは黄色い色をしています。果樹組合としては、まずはひと安心。



業者の方はちょっと近づいてみてハチが攻撃的でないと判断するや、防御服もつけず素手にへらを持ち、空いた巣箱に掻き取り入れました。ハチは黒いものを外敵と見るようで、黒い髪の毛を隠すために頭だけは白い手ぬぐいを被っています。



ハチがまだ飛び回っていましたので、女王蜂が入ったと思われる巣箱をしばらく分蜂していた場所に置いて、巣箱に入るのを待ちました。フェロモンが出ているので、自分の巣なのかどうかはわかるのだそうです。

分蜂というのは、単純にハチの数に比べて巣が小さくなったから起こるというわけでなく、むしろ積極的な世代交代のようです。その理由に、新しい女王ばちの誕生に際して出て行くハチはもとの女王ばちを含む一群といいます。それまでの巣(本家)を後継の新女王ばちとその子供たちに譲り、もとの女王ばちは子飼いの働きばち(老兵)を引き連れて隠居所に引き込むというのが実態のようです。

それまでの巣にいれば安全は保障されますが、分蜂すれば新しい巣が見つかるかリスクが高くなります。場合によっては新しい巣をつくる場所を見つけられずに飢え死にしてしまうかもしれません。種の保存のため、子孫を残すために身を引くということのようです。

もうひとつ興味深い話を聞きました。生まれたばかりの若い働きばちは巣のまわりで仕事をし、ベテランほど遠いところまで飛んで行き、蜜を集めてくるのだそうです。遠くへ出かければ身の危険は高まります。遠くのまだ未開拓の花園から蜜を運べばそれだけ自分の一族に貢献できる。もし戻れなくとも仕方がない。だからハチの死骸は巣の周りにはないといいます。

老兵はわが身を投げ打って子孫のために尽くす。種の保存のための単純な行動規範。ハチに教えられました。