リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

今村泰典講習会

2021年10月21日 23時38分52秒 | 音楽系
桑名で今村泰典講習会が開催されました。



コロナ感染が下火になってきているとは言え、感染対策を念入りに行い、今回は抗原検査も実施致しました。氏の講習会は今までも何回か開催していますが今回の参加は最多で、受講が7名、聴講が5名となりました。まだリュートを始めて間もない方からプロを目指す方まで幅広い層からの参加がありました。



今回は参加の方が若返ったのが今迄になかったことで、またリュート以外にギターの方やマリンバの方の参加もありました。一番若い参加者がギターの名古屋市内の高校生お二人で、学校が終わってから桑名まで駆けつけてくれました。お二人とも今村氏のレッスンに熱が入り、時間をオーバーしがちで制限時間で止めるのが心苦しかったです。

平日にもかかわらず大勢の方に来て頂き若い層も多かったのでまた来年も開催したいと思います。


90年代の作品(9)

2021年10月20日 14時37分05秒 | 音楽系
ゲーム音楽シリーズの最後です。依頼された仕事を一応期限までに納品しましたが、もう一曲だけ予備として作ってほしいと言われたので、電話で依頼を受けている間にチャチャッと数秒作ってみました。タイトルもYobi、そのまんまです。(笑)

Yobi

すごいチープでいい加減な作りの曲ですが、結局昔のゲームのBGMですからこんな感じの方がかえって似つかわしいのだという気もします。制作会社からは特にクレームもありませんでしたから、まぁそれなりによかったんでしょう。あ、数秒で作ったというのは頭の中の段階です。実際には楽譜に書いてコンピュータ(PC9801)に打ち込んで音色を選ぶ録音をするなど作業は1時間くらいはかかります。今の若い人は楽譜を紙に書かず、というか楽譜すら作らずいきなり音を入れて即完成というふうにやっているみたいですが、私は古い人間なので一応それなりのスコアを起こしてから音にします。もっともここ何年かは紙でスコアを書くことはありませんが。



2017年の10月

2021年10月19日 22時34分23秒 | 日々のこと
なんか急に寒くなりました。涼しいというより寒いといった方がいいです。確か先週までは半袖短パンでほぼ夏と同じような格好をしていましたが、今日は長袖長パンツ、靴下も履きました。

実は今年とよく似たパターンがありました。2017年です。その年の10月8日に桑名六華苑でバロック・リュートのソロコンサートをしました。10月も8日になったらさぞかし秋の爽やかな気候で、リュートもよく響くことだろうと考えて、オールガット弦に張り替えてコンサートに臨むことにしました。

ところが10月に入ってもなんか夏のような湿度と気温の日が続き、8日ならなんとか秋らしくなってくるだろうという希望的観測もみごとに裏切られ、コンサート当日の8日はまるで夏のような湿度、気温でした。六華苑の会場は冷暖房設備がないのです。ですから春と秋のいい季節を選んでコンサートをしているのですが、長くここでコンサートをさせて頂いていますが、少々気温が高めの日はあっても湿度が高い日は一度もありませんでした。

いい気候の日であれば開け放たれた窓からは爽やかな風と時折鳥の鳴き声が聞こえて来てそれはそれはコンサートに最適なのですが、当日は外からの湿った空気が入っているし、さりとて締め切るともっと暑いし、曲の前半の繰り返し前ですでに弦はガタガタに狂ってきました。特にバス弦、狂い方は数セントといった生やさしいものではありません。もうほとんど半音です。おかげで何度も調弦をし直しながら演奏することを強いられました。

その年もコンサート後しばらくして、急に晩秋のようになりなんか秋がなかった感じでした。今年はそれに比べるとまだマシでしょうけど、それでも一気に気温が落ち込んでしまったので、もう少しゆるい角度で季節が進んでほしかったですね。


90年代の作品(8)つづき

2021年10月18日 21時37分07秒 | 音楽系
芭蕉が「曙や・・・」の句を詠んだ季節はいつ頃でしょう。野ざらし紀行の件の句のひとつ前は、

十九、桑名
本統寺にて
冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす

があり、曙や・・・の後は「木枯らし」や「雪」ということばが出てきて、


二十五、故郷での年越し

がありますので、曙や・・・は12月の寒い頃の桑名の浜だと思われます。


早朝に浜に出てみると、漁師が網を引いている。そこにかかった一寸ほどの白魚の白さが鮮やかで、目に染みるようだ。(野ざらし紀行、現代語訳付、上妻純一郎現代語訳より)

揖斐川は東に流れ海に注いでいます。まだ薄暗い中、東の水平線上からは曙光が差し始めます。私は曙が漁師の網の中の白魚にあたっている光景も思い浮かびました。曙が白魚の半透明部分を淡い紅色に染め、白魚の白さを際立たせているその光景です。

1684年の暮れ、ヨーロッパではヨハン・セバスチャン・バッハが生まれる少し前、芭蕉が目にしたその光景を失われた豊かな浜のオマージュとして音楽にしてみました。タイトルは、Illusion(まぼろし)にしました。

Illusion

ちなみにこの曲を依頼して下さったお方はこの曲をお気に召さなかったようでした。どうもフォークソングみたいにギターをジャンジャンジャンとかき鳴らしながら歌う曲をご希望だったようです。そうおっしゃって頂いてたら、それなりのものは作ろうと思えば作れますが、まぁ人選を間違えていましたね。(笑)そう悪くない曲だとは思いますが、もったいないことをされたものです。

1989年の作品。保存ソースはメタル・テープ。カセットデッキからのアナログ出力をDAW(Squoia15)に出力、24bit/48kHzで録音。それをmp3形式にエクスポート。

90年代の作品(8)

2021年10月17日 20時32分36秒 | 音楽系
本シリーズの(4)で紹介しました曲(New York)の元曲をご紹介します。この曲は元々は環境保護運動を熱心にされているあるお方の依頼で作った曲です。何に使うのかはよくわかりませんでしたが、とにかく作ってほしいとのことなので私なりのテーマを考えてみました。

桑名市の揖斐川河口から少し手前に龍福寺(浜の地蔵)というお寺があります。



このお寺に松尾芭蕉の句碑が建っています。



石碑には「曙やしら魚白き事一寸」の句が刻まれています。

芭蕉は「野ざらし紀行」という紀行文を書いていますが、これは1684年8月から1685年の2月までの旅を題材にしたものです。その道中に桑名があり、2つの句を詠んでいます。そのうちの一つが龍福寺に立ち寄った際に詠んだ句です。野ざらし紀行には、

二十、曙の白魚
草の枕に寝あきて、まだほの暗き中に、浜のかたへ出でて、
 曙やしら魚白き事一寸

とあります。後にそこに句碑が建てられたようです。

この寺は1959年の伊勢湾台風で句碑もろとも流されてしまい、写真にある寺と句碑は再建されたものです。この寺があるあたりは先述しましたように揖斐川河口にほど近い汽水域で、白魚やシジミ・ハマグリなどの魚介類が豊富に捕れるところです。伊勢湾台風襲来の1年前にこのあたりで潮干狩りをしたことがありましたが、それはもう釣りで言ったら入れ食い状態で、大漁でした。

現在は台風被害あったので護岸工事をして浜がなくなり、合流している長良川には河口堰ができるなど環境は大きく変わってしまいました。もう白魚やシジミ・ハマグリなどが大量に捕れることはありません。「貝新」などの屋号で知られる貝の佃煮屋で白魚の佃煮は超高級食材です。

(つづく)

デンスケの修理

2021年10月16日 13時47分19秒 | 日々のこと
とある業者さんに出してあったカセットデンスケ( SONY TC-D5M)の見積もりがやっと届きました。8月中頃にその業者さんに送ったんですけど、見積もりには(先客がたくさんいるので)時間がかかるとのことで、約二ヶ月後にやっと届きました。人気なんですねぇ。

古いオーディオ機器の修理に関しては業者さんも専門分化しているみたいで、前回修理に出した19インチ幅のデッキを修理してくれる業者さんとカセットデンスケみたいな小型のものをやってくれる業者さんは別になっています。ひとつの業者さんで何でもやってくれるという訳ではないみたいです。

SONY TC-D5Mの不具合はスピーカーが鳴らないだけでしたが、実際に点検してもらうと何点か問題点が出てきているのそれらも調整をお願いしました。

前回別の業者さんに修理をしてもらった2台のデッキ(カセットとDAT)は使っていますが、このデンスケはどっかで売ろうかなと考えています。純正の革のケース入れて保管してあったので、革のケースはぼろぼろになってはいますが、本体は驚くほどきれいな品です。メルカリあたりで高値が付けられるかどうか。

His Master's Voice、ニッパーくん

2021年10月15日 14時13分16秒 | 日々のこと
押し入れを整理していましたら、犬の置物が出てきました。



ビクターのトレードマーク、ニッパー君です。蓄音機に耳を寄せ亡き主人の声を聴いていたというニッパー君です。これは桑名市内のH堂という楽器屋さんから頂いたものです。もう50数年くらい前だと思いますが、当時のH堂は楽器だけでなく、レコードや当時はやりつつあったステレオセットも扱っている最先端の「総合音響店」でした。私の父親はそこでメーカーは忘れましたが結構なお値段のセパレートタイプのステレオセットを購入しました。

お店は多分ビクターの特約店みたいになっていたのでしょうか、件の犬の置物がおいてあったんですが、私はそれをいたく気に入り、お店の人に無理を言って頂いたものです。まぁウチは上客だと思われていて、そこのドラ息子の我がままだから仕方なしに聞いてやったという構図なのかも知れません。

ニッパー君は長い間しまってあったので、汚れも目立つし、左足が折れて接着した痕がありました。まぁこれは捨てるしかないなと思ったんですが、ひょっとしてメルカリで3000円くらいなら売れるかなと、調べてみましたら、1000円台からいっぱい出品されていました。

1000円台だと送料がかさみほとんど儲けにならなりません。面倒くさいのでやっぱり不燃物だなと思いつつ出品物の写真を眺めていたらあることに気づきました。それはウチのニッパー君と顔つき、体つきが皆違うのです。出品物間では共通するものがあるのに、ウチと同じようなものはひとつもありません。

そこで調べてみるとこの犬の置物は人気なので昔からずっとサードパーティーによる生産が続けられているみたいで、出品されているのはその類いのものが多いようだということがわかりました。

ひょっとするとウチのはレアなお宝?と思い、テレビの鑑定団の情報を調べてみましたら、10年くらい前になんと鑑定額20万で出ているではありませんか!

ウチのも可能性はありますね。「出自」は、(多分日本ビクター)→H堂ですから、いわば純正品なのは間違いないでしょう。しかし残念なことに足が折れていて修理痕があります。足を折ってしまって接着剤でくっつけたとう記憶はないのですが・・・ということでメルカリに5万で出品しました。ちょっと高いかな。(笑)それに買う方からすると、きちんとした鑑定書はついていないので一か八かで買うわけですが、そんなものにポンと5万は普通出さないかも知れません。まぁちょっと様子を見ていましょう。


90年代の作品(7)

2021年10月14日 17時11分02秒 | 音楽系
前回のPalaoの別テイクと、ゲームミュージックの続きであるAustraliaという曲をご紹介します。曲のタイトルと内容の関係は何もありません。

Palaoの別テイクは、フルートとクラリネットとウッドベースの音源で作ってみました。ちょっとウッドベースの音が途切れて別の楽器の音になっているところもありますが、その辺はご容赦のほどを。

Australiaはゆったりした感じの曲想で、アルトフルートと小型のハープの音色です。この曲もヴァイオリンとアーチ・リュートで実演をしたことがあります。

Palaoの別テイク
Australia

これら一連のゲーム音楽はゲーム中ずっと流れているので全てエンドレスになるよう作ってあります。あと1曲まだゲーム音楽が残っています。

90年代の作品(6)

2021年10月13日 22時59分17秒 | 音楽系
ゲーム音楽の続きです。

ゲームではパラオ島のステージがあるみたいで、なんかよくわからないまま適当に作ったのがこの曲です。

Palao

どうしてパラオの曲がボサノバ調なのかは自分でもよくわかっていません。制作会社からダメダシはなかったのでまぁこれでよかったんでしょう。

録音では音色は変えてありますが、音は三声しか使っていません。音が重なるのは3音のみですが十分ハーモニックでしょ?これはそういう書き方をするとそうなります。バッハの三声のフーガも縦には3つしか音は重なっていませんが、豊穣なハーモニーが聞こえますが、それと同じです。まぁバッハと比べるのもナンですけど。ゲーム用なのでこの曲はエンドレスです。録音では適当なところでフェイドアウトしていますけど。

自分の作った曲の中でもこの曲は特にお気に入りです。ですので、実演用の版も作って演奏したことがあります。ヴァイオリンとアーチリュートのために書き直しました。リュートパートは全くリュートの都合で書いていませんので意外と難しくなってしましましたが、まぁ誰にも文句は言えません。(笑)

ヴァイオリンのパートはアドリブ風のソロをつけて、曲はエンドレスではなく、ちゃんとエンディングをつけました。この手の曲は、クラシックしか演奏したことがない人はなかなかうまく弾けません。ポップ調の曲をこなせるバロック・ヴァイオリンを弾ける人はいないかな。


NHKクラシック音楽館

2021年10月12日 16時15分56秒 | 音楽系
日曜日に放送されたNHKのクラシック音楽館、「日本のピアノ」は見応えがありました。18世紀に大黒屋光太夫が聴いたことがあるピアノ音楽の話から始まって現代に至るまでの日本におけるピアノ音楽を辿った力作でした。

演奏はどっかのライブの引き回しではなく、全てスタジオでとったものです。一般的にはほとんど知られていないと思われる戦前の大家、大澤壽人の大作、ピアノ協奏曲第3番「神風協奏曲」が全曲演奏されたのには驚きました。それもスタジオライブです。TVの(ラジオも)クラシック音楽番組がほぼ死に絶えている中、これだけ硬派の番組を作ったNHKに拍手です。

ちなみに「神風」は昭和12年に東京・ロンドン間を飛行するという偉業を成し遂げた神風号のことです。特攻隊の協奏曲ではありません。神風号は朝日新聞社が制式化前の九十七式司令部偵察機を陸軍から譲り受け長距離飛行に適するように改造を加えた機体です。

それに続く松平則頼の主題と変奏(ピアノとオーケストラの曲)、早坂文夫のピアノ協奏曲といった大曲も全曲演奏されました。最後は矢代秋雄の小曲でしめるというなかなか味のあるエンディングでした。これだけのものを制作する企画力も相当なものでしょうけど、制作費も相当かかったことでしょう。

武満徹なら知っているけど戦前の日本の作曲家なんて大したことはないと、どっかで自虐史観がすり込まれてしまった方、そしてそもそも何もご存じでないという方もぜひこの番組を見てもらうといいと思います。17日までNHKのサイトでお見逃し配信を見ることができます。最近はNHKに対して色々雑音もあるようですが、NHKもちゃんとやっとるんや、ということを示した番組でした。