リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

90年代の作品(8)

2021年10月17日 20時32分36秒 | 音楽系
本シリーズの(4)で紹介しました曲(New York)の元曲をご紹介します。この曲は元々は環境保護運動を熱心にされているあるお方の依頼で作った曲です。何に使うのかはよくわかりませんでしたが、とにかく作ってほしいとのことなので私なりのテーマを考えてみました。

桑名市の揖斐川河口から少し手前に龍福寺(浜の地蔵)というお寺があります。



このお寺に松尾芭蕉の句碑が建っています。



石碑には「曙やしら魚白き事一寸」の句が刻まれています。

芭蕉は「野ざらし紀行」という紀行文を書いていますが、これは1684年8月から1685年の2月までの旅を題材にしたものです。その道中に桑名があり、2つの句を詠んでいます。そのうちの一つが龍福寺に立ち寄った際に詠んだ句です。野ざらし紀行には、

二十、曙の白魚
草の枕に寝あきて、まだほの暗き中に、浜のかたへ出でて、
 曙やしら魚白き事一寸

とあります。後にそこに句碑が建てられたようです。

この寺は1959年の伊勢湾台風で句碑もろとも流されてしまい、写真にある寺と句碑は再建されたものです。この寺があるあたりは先述しましたように揖斐川河口にほど近い汽水域で、白魚やシジミ・ハマグリなどの魚介類が豊富に捕れるところです。伊勢湾台風襲来の1年前にこのあたりで潮干狩りをしたことがありましたが、それはもう釣りで言ったら入れ食い状態で、大漁でした。

現在は台風被害あったので護岸工事をして浜がなくなり、合流している長良川には河口堰ができるなど環境は大きく変わってしまいました。もう白魚やシジミ・ハマグリなどが大量に捕れることはありません。「貝新」などの屋号で知られる貝の佃煮屋で白魚の佃煮は超高級食材です。

(つづく)